【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
レグルス大公の娘ロアナが帝国を訪れたことは周知されている。
そのため、彼女が護衛であるソルドを伴って城内を歩き回ったところで、公式には問題はない。
しかし、現実はそう簡単ではなかった。
「不愉快な視線にござるなぁ」
官僚の多くは自由に城を歩き回るロアナに不躾な視線を送っていた。
いくら問題がないからといって、獣人に対する差別的な感情までを抑えられるわけではないのだ。
彼女もその点にすっかり気づいているようで、憮然とした表情を浮かべながらソルドに囁いた。
「気にするな、いつものことだろう?」
ソルドは飄々とした態度を崩さないまま、彼女に気にしないよう促した。
ロアナはほんの一瞬、軽く肩をすくめてみせたが、それでも前方を見据え歩みを止めなかった。
それから、二人は城内の騎士たちに軽く会釈をしながら、帝国軍諜報部司令官ハズナーが倒れていた場所を目指して進んでいった。
「ソルド氏。やけに騎士達から警戒されている気がするでござるよ」
周囲の視線を気にしつつロアナがささやく。警備にあたっている周囲の騎士達の目線には不穏なものが混じっていた。
「諜報部の司令官が被害者だからな。城内に間者が紛れ込んでいる可能性も考慮してるんだろう」
ソルドが鋭い目つきで辺りを見渡しながら応じると、ロアナもまた用心深げに辺りを窺った。
その後、歩みを止めることなくふと気になっていたことを口にする。
「ところで、ソルド氏。前世ではこういう状況は結構あったでござるか?」
「あってたまるか」
探偵漫画で主人公が住む町じゃあるまいし、とソルドは心の中で毒づく。
「言っただろ。俺の暮らしていた日本じゃ、トラブルを起こすバカは星の数ほどいたけど平和な世の中だったって」
ソルドが前世で過ごしていた日本は、平和そのものであった。
おかしな行動をする輩がたまにいても、それもまた平和の証とも言えた。
ロアナは、ソルドの過去話に対して信じられないように眉をひそめた。
「平和な国で育ったにしては随分と事件慣れしているでござる」
「別に死体は見慣れてないっての。俺の場合、前世の知識がある。だから、この世界では謎とされてるものの答えがわかりやすいってだけの話だろ」
「そういうものでござるかぁ」
博識で冷静沈着なソルドに、ロアナはどこか驚きを隠せない様子でいぶかしげな視線を送った。
ソルドもその視線に気づいてか、肩を竦めて小さく笑うと付け加える。
「まあ、勉強だけじゃなくて、推理小説から得た知識はあったかもな」
前世で、ソルドは学業に励んでいたが、時折こっそりと図書館で推理小説を読むこともあった。
それを思い出したソルドは、少しからかうように言葉を続ける。
「いいか、名探偵がいるところには気をつけろよ。死人がでる」
「それはもう死神でござるよ」
ロアナは思わず呆れたように笑い、足早に事件現場へと向かうのであった。