【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
冷たい石造りの廊下に、二人の足音だけが響く。ソルドはロアナと共に事件が起きた現場へと向かっていた。
「ここだな」
ソルドが先に立ち止まり、乾いた血痕が広がる床を眺めた。
広く静まり返った廊下は、豪奢な装飾と滑らかな石畳で整えられている。
その奥、事件が起きた箇所には淡く血の跡が残り、異様な冷たさが感じられた。
「どうして事件現場付近のほうは警備が薄いのでござるか?」
「容疑者にされたクレアさんはもう捕まってる。城内の騎士が警戒しているのはいるかもしれないスパイだ。事件現場そのものより、事後処理に気を配ってるんだろうさ」
さっそく、ソルドは調査を始めた。
「さすがにこの状況で、証拠を消す余裕もなかったようだな」
床には微かな血痕が残っていた。
「ハズナー司令官はここで刺されたみたいだな」
ソルドが呟きながら現場を調べる。
冷たい石畳の上、鮮明に残る足跡や血痕をたどりつつ、彼は視線を落とし、わずかな黒い毛に目を留めた。
指で摘まんで持ち上げ、ソルドは微かに黒く光る毛を見つめる。
「これ……髪の毛か?」
ソルドは拾い上げた毛を、ハンカチの上に載せて色と質感を確認した。
女性の髪の毛にしては短いようにも見えたが、彼はクレアと会ったことがない。
髪色くらい聞いておけば良かったとソルドが肩を落としていると、ロアナが興味深そうに覗き込んできた。
「なんの毛でござるか?」
「髪の毛くらいしかないだろう」
ソルドの言葉を聞いたロアナは首を横に振り、本来の獅子らしい鋭い目つきで告げた。
「妾の知る限り、これは獣人のものにござるな。匂いと色から黒豹の可能性が高いでござる」
ソルドはロアナの言葉に驚き、再度毛を見つめ直した。
微かに艶を放つその毛は、確かに人間の髪の毛とは微妙に異なる質感を持っているように見えた。
手の中で毛をひねり、光にかざしてその光沢を確かめると、獣人特有のものだというロアナの指摘に信憑性を感じずにはいられなかった。
「黒豹の獣人か……」
口元を引き締め、ソルドは視線を廊下全体に巡らせた。
廊下に並ぶ豪奢な装飾や壁に掛かる帝国の旗は、普段は壮麗さを際立たせるためのものだが、今は重苦しさを増幅させるだけだった。
帝国城の中に何か悪意のようなものが巣食っている。直感的にそう感じたのだ。
「これが計画的な犯行だとすれば、狙われた理由が何かあるはずだ」
ソルドは顎に手を当て、思考を巡らせる。
「ソルド氏、これからどうするでござるか?」
ロアナの問いかけに、彼は少し考え込んでから答えた。
「痕跡を追えば、犯人にたどり着くかもしれない」
「デュフフ……ここで立ち止まっていても進展はないでござるな」
ロアナがニヤリと笑い、それに釣られるようにソルドも笑みを浮かべる。
「動くぞ、ロアナ。匂いを辿って、真犯人の元へ行くんだ」
ソルドとロアナは頷き合い、廊下を駆けだした。