【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
「ソルド氏。匂いを追えそうでござる」
ロアナは床に這いつくばるように鼻を近づけ、匂いを嗅ぎ分けていた。
「信用してないわけじゃないが、本当に追えるのか?」
「まかせるでござる。獣人の匂いは特徴的でござるからな」
ロアナは得意げに胸を張る。その様子は、まるで子供が褒められることを期待しているようだった。
その姿に反して、彼女の能力は確かなものだ。ソルドも彼女の嗅覚を信頼することにした。
「よし、案内してくれ」
ロアナは鼻で匂いを確かめながら、廊下を進んでいく。
時折立ち止まっては方向を確認し、また歩き出す。
「この先でござる」
匂いを追うロアナのあとに続いていくと、最終的に軍部の建物へと辿り着いた。
そこは帝国軍の幹部達の執務室が並ぶ場所で、普段ならレグルス大公を訪ねて帰省してくるソルド達には縁のない場所だった。
「ここは……」
「帝国軍諜報部司令官シリウル・ハズナーの執務室でござる」
ロアナの言葉に、ソルドは思わず息を呑んだ。
「それって被害者の部屋じゃないか」
「ということは、どういうことでござるか?」
ロアナは首を傾げ、ソルドに問いかける。
彼は顎に手を当てて考え込みつつ、ゆっくりとした口調で答えた。
「……暫定真犯人の獣人は、被害者の執務室に侵入したってことになるだろうな」
城に潜り込んでいる獣人だ。諜報部に何か情報を掴まれて犯行に至ったとみるのが妥当だろう。
「しかし、どうして獣人がここまで近づけたのでござるか?」
ロアナの鋭い問いかけに、ソルドは再び周囲を見回した。
帝国城内は厳重な警備体制で守られているはずだ。
それなのに、何者かが諜報司令官の執務室に侵入し、さらには殺害にまで至った理由がまだ掴めないでいた。
「帝国城内部に協力者がいる可能性がある。そうじゃなければ、諜報部司令官の部屋に獣人が侵入することなんて不可能だ」
「協力者でござるか?」
ロアナの瞳が鋭く光った。その表情は好奇心と警戒心が混ざり合っている。
「内部から情報を流したり、侵入を手引きした奴がいると考えるのが自然だろ」
「もっともでござる」
ソルドが言い切ると、ロアナは納得するように頷いた。
「この部屋に辿り着くまでの経路は厳重に守られている。たとえ身体能力の高い獣人であっても、無計画でここまで来られるわけがない」
ソルドの声は一段と低く、緊張感を増した。
「でも、もし内部に協力者がいるのなら話は別だ」
「殺害の動機もスパイであることがバレたから、諜報部に尻尾を掴まれたというわけでござるな」
「尻尾を掴まれた、か」
ソルドは眉をひそめながら呟いた。
彼の頭の中で複雑な考えが巡り、ひとつの可能性が浮かび上がる。
「まさか、な」
少なくとも、その推論はロアナの前で軽々しく述べていいものではない。
ソルドは表情を強張らせると、執務室の扉を控えめに叩いた。