【コミカライズ決定!】ルミナの聖剣~タイトル的にこいつが主人公だな!~【書籍化】 作:サニキ リオ
事件はあまりにも呆気ない幕引きとなった。
帝国軍諜報司令官シリウル・ハズナー殺害の真犯人とされる人物が服毒自殺を図ったためだ。
犯人の名前はオーツ・ボネン。被害者の秘書をしていた人物だった。
彼女の遺書には今回の事件について記載されていた。
彼女は諜報部で手に入れた情報を外部に売り捌いて金銭を儲けていたことを、ハズナー司令官に知られてしまった。
咄嗟に口封じのために殺して逃げたところに、レグルス大公の侍女であるクレアが遭遇してしまった。
都合良くクレアが投獄されたことで、自分は罪を逃れられると思っていた。
しかし、偶然レグルス大公の元を訪れたロアナ姫が、その鋭い観察眼と聡明な頭脳で自分が真犯人であることに気付きかけていた。
もう逃げられない。
そう感じたオーツは、ハズナー司令官の執務室で毒による自害という選択を取ったのであった。
「どうにもモヤっとするんだよなぁ」
「ソルド氏に同じでござる」
これから真犯人を追い詰めようと意気込んでいた矢先の出来事に、ソルドもロアナも消化不良といった様子だった。
「クレアが助かったのだから良いではないか」
「いやいや、人間に化けた獣人が紛れ込んでるのはかなりやばいだろ」
「そうでござるよ、父上。今回の件、絶対あとになって厄介事の種になるでござる!」
二人に詰め寄られてレグルス大公は困ったように笑うしかなかった。
彼は獣人が人間に紛れて帝国城にいることをはぐらかしたかったのだ。
「オーツ氏は自身の罪を悔い、自身の命を持って償った。彼女が獣人であることが公表されなかった以上、そこには触れるべきではないだろう」
自分が信頼しているメイドのクレアは血の薄まった獣人である。そのことにレグルス大公が気付かないはずもなかった。何か事情があって獣人であることを隠している彼女の身分を暴くことに繋がる行為はレグルス大公の本意ではなかった。
もちろん、彼女から敵意は感じない。今回のこともあるため、彼女はスパイなどとは無縁の者である。
レグルス大公はそう結論づけた。
「そういえば、事件があって聞きそびれていた」
安堵の溜息をついたあと、レグルス大公は思い出したようにロアナへと問いかける。
「母さんは元気にしているか?」
「うーん、相変わらず部屋に引き籠もって仕事ばかりしているでござる。一秒でも獣人の顔は見たいくないみたいでござるよ」
「そ、そうか……」
レグルス大公は代々女性の獣人しか生まれない獅子の家系だ。
そのため、レグルス家は毎回雌獅子の獣人が生まれて婿養子を取るという形式を取っていた。
しかし、レグルス大公は初めて雄獅子の獣人として生まれてきてしまい、皇族の血を色濃く引く女性が必要になってしまったのだ。
そこで選ばれたのが、レグルスの妻であり、ロアナの母に当たる人物だった。
直系皇族の血を引く彼女は、無口で内向的な性格だった。
他の貴族との縁談もうまくいかなかったこともあり、彼女はレグルス大公へと当てが割れることになったのであった。
「ソルドにも心を開いてくれないのか?」
「それ以前に全然会ってくれないんだよ。あの感じだとマジで仕事が忙しいってのもあるだろ」
ソルドは肩を竦めると、忠告するように告げた。
「おっちゃんもたまには帰省しろよな」
「うむぅ……仕事が、な」
「案外、父上と母上って似ているのでござるなぁ」
こうして僅かに抱いた疑念は泡沫の如く消え去り、事件の幕は下ろされることとなったのであった。