もしもキュアプリズムがプリズムシャインを会得できなかったら?   作:ayano27

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第三話『紫のアネモネ』

-----side ソラ

 

 部屋を出て、リビングにいるヨヨさんを見つけては早速、ましろさんに頼まれていた方の手紙を渡す。手紙を丁寧に取り出して、中身を確認するヨヨさんを私は見つめていた。

 手紙を読みながら、ヨヨさんは一筋の涙を流す。それが私を激しく動揺させた。

 この一連の騒動を受けて、それでも希望を捨てず気丈に振る舞ってたヨヨさんが、今まで涙どころか泣き言一つ言わず私たちを導いてくれていたヨヨさんが、一筋ではあるが、涙を流していた。

 

「それ、私も見ちゃダメですか?」

 

 自然と口が開いていた。知らなくちゃいけないと思った。ましろさんがヨヨさんに、両親に残した言葉。図々しいと分かってはいても、今更気づいたくせにと分かってはいても、私たちは互いに好き合った中だから……。見る権利が、そして知る義務があると思った。

 

「貴女は見ない方がいいわ」

 

 そう言ってヨヨさんは元の状態へと手紙を折り、手の中に収める。

 

「私たちは……」

「好き合ってたのでしょう?」

 

 諦めきれず、食い下がろうとした直後、思っていたことをずばりと言い当てられ、私は吃った。

 

「なんで、知って……」

 

 ヨヨさんは動揺する私を前に悪戯っ子のように微笑む。

 

「何となく、ね……。この1年間、同じ屋根の下で貴女たちのことをずっと見てたもの」

 

 あぁ、敵わないな。そう素直に思った。

 私が気づかない私の気持ちもを、この人は察していたんだ。なら、もう言い繕う必要もない。

 

「手紙、見せてください。私にはきっと、その権利と義務があります」

 

 真っ直ぐと前を見据える。ヨヨさんは少し困ったふうに眼鏡を触り、答える。

 

「なら、交換しましょう。そちらの手紙とこちらの手紙。肉親と恋と、少し違うけれど同じくあの子を愛する者として、お互いにその権利と義務がある。そう思うわ」

 

 そう言って、ヨヨさんは自らの持つ手紙を差し出してくる。私も自身が持っている自分への手紙を懐から取り出し、差し出した。そして、ヨヨさんが手を持つ方の手紙を受け取ろうと反対側の手を伸ばす。

 

「でもね、これを読んだらきっと、辛い気持ちになる。だから、先に言っておくわ。貴女は悪くない。あの子がいなくなったのは、貴女のせいじゃない。それだけは分かっておいて」

 

 ヨヨさんの言葉を聞いて、一瞬伸ばした手が止まってしまったが、すぐに手紙を取った。そして、私が差し出した手紙をヨヨさんが手に取り。私たちはお互い手紙を読み始めた。

 

〈パパ、ママ、おばあちゃんへ。先立つ不幸を許してほしい。親不孝者でごめんなさい。でも私は私のするべきことを全うした。後悔はない。未練もない。最後まで幸せだった。こんな私でいられたのはパパ、ママ、おばあちゃん、家族のおかげ。産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。虹ヶ丘家で生まれたことを誇りに思う。世界を救えることを誇りに思う。どんな結果になるかは分からないけど、世界も家族も、最高の友達も、きっと守れたと自信をって言いたい。最後のお願い。私の仲間たちを、友達を恨むことはやめてください。そうなってしまうと、後悔も未練もないという言葉が嘘になってしまうから。最後にわがままをごめんなさい。ありがとう。愛してる。きっと空の上のどこかで、見守っています。健やかに、いつまでも長生きしてください。虹ヶ丘ましろ〉

 

 私は手紙を読んだことをすぐに後悔した。権利だの義務だのと宣って、結局私はましろさんが遺したものに少しでも触れたかっただけで、ましろさんの言葉に触れたかっただけで、現実と向き合う覚悟ができていたわけではなかった。

 いったい何を期待していたのだろう。そう自分を呪った。

 私はあの時、何もできなかった。まんまと策略に嵌りアンダーグエナジーをその身に宿し、簡単に飲み込まれ我を失って。でも、友達が、愛する人が身体を張って受け止めてくれた。痛みを、苦しみを全て肩代わりし、全ての苦しみを一手に受けて、去っていった。自分たちのために人柱となった。

 その結果がこれ。

 私はましろさんと想いが繋がったと浮かれていた。舞い上がっていたんだ。

 でも現実は、私が残した結果は、私はましろさんを、ましろさんの家族から奪ったという事実だけで。とどのつまりは私がましろさんの人生を壊したのだと。それを嫌というほど実感させられてしまった。

 

「私……私……」

 

 その場にへたり込み、嗚咽する私。

 とてもじゃないけど耐えられない。心がもたない。愛する人の言葉を全て受け止めるだなんて考えてたというのに、なんて弱い。

 思わず自分を呪ってしまいたくなるほどの激情に駆られる。

 

「ごめんなさい。やはり止めるべきだったわね……」

 

 ヨヨさんの言葉一つ一つに罪悪感を感じてしまうほど、今の私は脆かった。

 

「去るべきなのは私でした! 誰かが人柱になる必要があるなら、その役は私だった! 私は、ましろさんに全てを背負わせてしまって……! それなのに、のうのうとこうやって生きている。私……私……」

 

 ――死にたい。

 そう言葉が出るところだった。

 出るところだったのに、遮られた。

 頬に痛みが走る。手で抑える。

 何が起きたのか、前を見ればすぐに状況が理解できた。

 ヨヨさんに平手で頬を叩かれていた。

 

「ふざけないで」

 

 この時のヨヨさんの雰囲気は印象的で、こんなヨヨさんは初めて見た。怒ってる。顔に出すことはないが、怒ってる。

 

「貴女の想いは理解しているわ。だからこそ、あの子の想いも、行動も、貴女に否定することだけはしてほしくない。それじゃああまりにも……報われない」

 

 でも、次の瞬間には普段の優しいヨヨさんの顔で、それだけで私は心が大きく揺れた。

 

「……ヨヨさん」

 

 どうしたらいいか分からない。私は私を許せない。でも、この人を裏切ってしまったら、それはつまり、ましろさんを裏切ることになってしまう。だから、分からない。進むも戻るもできないような感情に、苦しんでしまう。

 

「それにあの子はまだどこかにいるのでしょう?」

 

 ヨヨさんは決して茶化すでもない雰囲気で、明るく笑う。

 

「きっと大丈夫。みんなで見つけて、連れて帰りましょう」

 

 ああ、やはりこの人には敵いそうもない。

 私は涙を拭いながら立ち上がった。

 

「その花があの子からの?」

 

 ふとヨヨさんが私の持っている花を指差し問うた。

 

「はい。ましろさんからの、贈り物です。この花、なんていう花かご存知ですか?」

 

 大事に握りしめている紫の花を、私は握りしめすぎないようにと、両の手で優しく持ち直した。

 ヨヨさんは、少しだけ複雑そうな顔でこの花を見つめると、意を結したように口を開く。

 

「花の名前はアネモネ」

 

 アネモネ。素敵な名前。

 改めて見ると、スカイランドでよく見かけるネモネアの花にそっくりだと感じた。

 きっと、ヤーキターイと鯛焼き、ドールボーナツとボールドーナツのように、源流を同じくする近似種なのだろうか。

 

「この世界にはね、花言葉という文化があるの」

 

「花言葉、ですか?」

 

 初めて聞く言葉。

 

「それぞれ象徴的な意味や想いを込める風習からできた文化なの。スカイランドと同じようにいろんな種類の花が存在しているけれど、こちらの世界ではほとんどの花に花言葉が存在するわ」

 

 つまりは一種のメッセージのようなものか。そう思い、自身の持つアネモネをチラリと見やった。

 

「では、このアネモネという花にも?」

 

 この花にも、ましろさんからのメッセージが、想いが込められているのだと察し、私は興味本位な気持ちと、どんな意味があるのかと恐れてしまう気持ちの両方に駆られる。

 

「もちろん。アネモネの花言葉はね、"儚い恋"、"恋の苦しみ"、"見捨てられた"、"見放された"」

 

 心臓がどくんとはねる。

 

「女の子同士の恋、禁断の恋、許されるものではないとずっと悩んでいたのでしょうね。そして、その想いが貴女の夢の邪魔にならないようにと秘め隠していた彼女の優しさが、それでもと諦めきれない彼女の苦しみが、その花には込められているのだと思うわ」

 

 またも罪悪感を覚える。そんな彼女の苦しみを、私は癒すどころか気づくことすらできなかったとは。

 

「許されないのだとしても、それでも求めて欲しかった。私はきっとその手を取っていました。大好きな人を蔑ろにして、みんなのヒーローを名乗れるほど、私は人間できていません」

 

 思わず言葉が走る。それは私の本音だ。少し前ならどう思ったかは分からない。でも今の私はきっと、自分の夢とましろさんを天秤にかけられたら、後者を選んでいただろう。こんな感情を、想いを胸に秘めたまま、それでも自分の夢を見据え追いかけるだなんて、私はそんなに器用な人間ではない。

 

「もっと早くに気づけばよかった。そうすれば、見捨てられたと、見放されたとましろさんが去っていくこともなかったのに。心が一つになれたかもしれないのに……」

 

 それは紛れもない私の想い。

 

「もう、私にはましろさんに合わせる顔がありません。好きだと言ってくれた。愛してると言ってくれた。でも、きっと、こんな私にましろさんは失望すると思います。また会えるとしても、もう私に会う資格はない……」

 

 私にはましろさんの隣に立つ資格がない。そんな価値もない。勢いだけで自虐的な言葉を並べてしまっているようにも見えるが、それらは紛れもない事実だ。こんなにも鈍感な無神経で不器用な私を彼女が受け入れてくれるのかと考えると、背筋が凍るような思いがする。

 ヨヨさんは私の言葉をただ聞くだけで何も返さず、今夜はゆっくりしていけと言ってくれた。

 みんな気持ちの整理と心の休息が必要だと、今夜はこの虹ヶ丘邸にプリキュアの仲間たち全員を集合させるから、みんなで夕食を食べようと笑いかけてくれた。

 ヨヨさんはこんなにも気遣ってくれている。だというのに、私は浮かない顔をそのままに一礼するだけで、自分に当てがわれていた部屋へと逃げるように去ってしまった。

 

 

-----

 

 

 みんなで夕食を食べる。いつも見ている光景なのに、違和感が拭えなかった。そこにいるはずの人間がいない。私の心にぽっかり穴が開いているように、いつもその先に座っているはずの人がおらず、その様は私の心の風景そのものだった。みんな明るく振る舞ってはいても、どうにも顔には影がさしていた。もちろん私もみんなの前で泣いたらなんかしない。お互いがお互いを心配させないようにと、笑っていた。笑えていたと思う。いや、自信はない。私はきちんと笑えていただろうか。

 夕食を終えたら、私はまた逃げるように自分の部屋に引きこもっていた。せっかくみんなが集まっているというのに、私は気持ちの整理を優先してしまった。

 そうやって塞ぎ込んで少しの時間が経って後に、ノック音が鳴る。誰だと思いつつ、返事をして、扉を開ける。

 

「ソラちゃん、少しいいかな?」

 

 あげはさんだった。私はもちろんと応えて、あげはさんを部屋に迎える。

 

「ソラちゃんさ、あんまりに元気なかったもんだから、心配でね。見に来ちゃった」

 

 そう切り出すあげはさん。

 

「そんなに露骨でしたか? 私、ずっと笑ってお話していたと思うのですが」

「そりゃあもう。だってソラちゃん顔は笑ってても、目が笑ってなかったよ。ずっと辛い目をしてた」

 

 なんて未熟。そう思った。

 

「ヨヨさんは当然として、エルちゃんも不安がってたよ。少年ですら気づいてたんじゃないかな。でもさ、場の空気とかもあるし、そもそもお互い様だから、誰も口には出せなかったんだけどね」

 

 そういうあげはさんの目尻には相変わらず泣き跡がある。きっと、家を車で往復する時にも泣いていたのだろう。そこまで考えると、思い悩んでいるのは私ばかりではないと思い知らされる。心配をかけるわけにはいかないと改めて思った。

 

「私なら大丈夫です」

 

 思わず言葉が出た。それが虚勢だということは誰の目にも明らかだと、言った自分でも感じてしまうほど、私の声は弱々しかった。

 

「そんなこと言って、聞いたのが少年だったらまた怒っちゃうよ?」

 

 ツバサくんならそうだろうなと思い、頬が緩む。仲間なんだから頼ってくれと、水臭いと、彼であれば憤慨するだろう。

 

「そうですね。でも、それもお互い様です。みんな辛いんです。みんな後悔してるんです。私が一番なんてことはなくて……」

 

 そうかもしれないけど、とあげはさんは返してくる。

 心配して訪ねてくれた彼女を突っぱねるような態度をしてしまってることに罪悪感を感じつつも、それでもシンプルに嬉しいという思いもあり、私の心は少しだけ救われる感じがした。

 

「手紙、貰ったんだって?」

 

 また、心臓が跳ね上がるような感覚に襲われる。

 泣きそうな顔でふとあげはさんを見つめた。

 

「ああいや、ヨヨさんから聞いてね。あ、内容とかは聞いてないよ。ヨヨさんはそこまで話す気はなかったし、私もそこまで聞くつもりはなかったから。無粋だもんね」

 

 そう言ってあげはさんは笑う。

 

「あげはさんなら、何が書いてあったか、分かるんじゃないですか?」

 

 試すように私は問うた。意地悪な質問だったも知れない。でも、この人は、プリキュアメンバーの年長者としていつも私たちを見守り導いてくれたこの人には、隠し事も通じないという確信のようなものがあったのかもしれない。

 

「うーん、買い被りすぎだと言いたいけど、そうだなぁ。あるとすれば、最近の悩みについて打ち明けてあったりとか」

 

 それはバッタモンダーの一件についての話。ずばりその通りだと私は驚き、目を見開く。

 

「それと、ソラちゃんの今後について、応援と激励の言葉があったりとか」

 

 私は何度驚けばいいのだろう。目を見開いた後は口がぽっかりと開いていた。まさかヨヨさんに本当に手紙の内容を教えてもらったのではないか、などと一瞬邪推したが、もちろんそんなことはないだろうとすぐに思い直す。

 

「あとは、…………恋文かな」

 

 一瞬、言葉にするのを戸惑うような仕草をみせながらも、小さな声であげはさんはそう溢した。

 ああ、この人はなんでもお見通しなんだ。と、素直に感嘆する。

 顔が熱い。真っ赤になってはいないかと心配になる。

 

「なんとなく、だよ? 同じ屋根の下、二人のことをずっと見てきたからね。お互いのお互いに対する態度。自覚がある方と、自覚のない方と、ね」

 

 前者がましろさん、後者がわたしであるとは口にしなかったが、説明されなくてもそれは自分が一番よく理解していた。

 

「ヨヨさんも気づいていました」

「あはは、だろうね〜。私たちにとっては、分かりやすかったよ。少年は何にも察してないと思うけど、もしかしたらエルちゃんも勘づいてるかも」

 

 なんてことだろう。素直にそう思う。

 自分でも気づかなかった想いだというのに、他人に対してはこんなにも隙だらけだったんだ。いや、自分で気づかなかったからこそか。なんて未熟。何が未熟なのかも分からないけれど、未熟だと思った。頭が沸騰するとはこういう感覚を言うのだろうか。まるで茹蛸のようになりそうだった。

 

 そこでふとあげはさんが、机の上に置いてある花の方を見て、口を開く。

 

「あれ……アネモネ? なんでこんなところに……」

 

 アネモネの花だとすぐに気づくあげはさんに流石だと思いながら、私は答えた。

 

「ましろさんからの贈り物です。手紙と一緒に置いてあったものです」

 

 あげはさんはふと私の持つ手紙と、机の上にあるアネモネの花を交互に見つめるように視線を移動させると、口を押さえて涙を流した。

 唐突のことに私は驚いたが、あげはさんのことだ、きっと花言葉のことにすぐに気がついたのだろう。そう私は解釈した。

 

「ヨヨさんから聞きました。アネモネの花言葉」

 

 儚い恋、恋の苦しみ、見捨てられた、見放された。そこに込められた意味を再度噛み締めるように私は語り始める。

 

「ましろさんも自分も許されない恋の最後、失恋をしたんです」

 

 この想いをきっと忘れてはいけない。そう言って机の上のアネモネの花を手に取り、見つめる。

 そんな私の仕草に何を感じたのか、あげはさんは流れる涙を止められずにいた。

 

「あげはさん、泣かないでください。私たちは――」

 

「もう我慢できない……!」

 

「――えっ?」

 

 遮るように言葉をぶつけられた。

 何が? という問いが出る前に、あげはさんが口を開いた。

 

「アネモネの花言葉はね、色によって追加で意味を持つんだ」

 

 私はその言葉を聞きながら、アネモネを見つめる。美しい紫色、これに意味がある……?

 もう涙は枯れたと思っていたのに、目頭が熱くなった。

 あげはさんは涙を堪えるように声を振るわせながらも、その意味を伝えてくれた。

 

「紫のアネモネの花言葉は……"貴女を信じて待つ"」

 

「っ……!!」

 

 今日何度目が分からない涙が頬を伝う。それは今までで一番あったかくて、心地よくて。

 流れる涙が止められない。震える顎が止められない。

 前を見やると、あげはさんは変わらず泣いていた。

 私は思わずあげはさんに抱きついた。衝動的に、感情的に、誰かの温もりを求めたのだと思う。

 あげはさんの胸の中で泣きじゃくった。嗚咽する私を、あげはさんはそっと抱きしめてくれた。

 そして、あげはさんは私の頭を撫でながら、言葉を紡ぐ。

 

「迎えに行こう。きっと、どれだけの時間がかかったとしても、必ず……」

 

「はい……! はい……!!」

 

 泣きじゃくりながら、嗚咽しながら、私はそれしか声に出せなくて。

 しばらくそのままでいたと思う。私が落ち着くまであげはさんは、まるで赤子を抱く母のような包容力で私を包み込んでくれていた。最強の保育士の何たるかが、心で理解できた気がする。

 ああ、私は相変わらず甘えてばかりだ。

 

 ましろさん、ましろさん……。

 私を待ってくれている。

 暗い闇の中へと去っていった彼女は、幸せになってほしいと私の背中を押して去っていった彼女は……。

 心の奥底では、救いを求めている、私のことを求めてくれている。

 やっと聞けた。やっと届いた。やっと理解できた。彼女の本音。

 

 頭がぼうっとする。

 抱きしめる手を緩め、あげはさんから離れる。私は再度、紫のアネモネを見つめた。

 

「あげはさん、私……恋してます」

 

 言葉が溢れる。

 あげはさんは流した涙を拭うこともせず、私を見て微笑んでくれていた。

 

「女の子相手にです。……変でしょうか?」

 

 恐る恐る尋ねる。

 許されない恋だと散々思い知ったはずなのに、今はそれが些細なことに思えた。

 

「全然変じゃない。むしろ、妬けちゃうよ」

 

 そう言ってあげはさんは涙を拭いながらも変わらず笑いかけてくれた。

 

「誰にも渡しません。もちろん、貴女にも」

 

 頑然した態度で、それでいて柔らかい口調で私はそう言い放つ。

 

「敵わないね」

 

 そう言い合い、私たちは笑い合った。

 涙はもう流れることはなかった。

 

 

To Be Continued…




Q,ヨヨさんは何で紫のアネモネの花言葉は教えてくれなかったの?
A,いずれ教えるつもりでしたが、今は心の整理が先だと自重しています。だってこれ教えたら一人で突っ走るの目に見えていますからね。
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