キヴォトスの連邦公用語とか分からんし   作:十文字マトン

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ちょっとIF~Aを章として独立した
なお次回で終わります


IF~A-4 ※容疑者

「言葉が通じないって!?」

 

「はい、話してくれないではなく、なんて言ってるのかまったくわかりません」

 

「なんかデタラメを言ってるとかではなく?」

 

「何度か同じ単語を繰り返していましたので、適当な捏造にしては逆に難しいので、別の言語と思いますが......その、私たちは全く知らない言語です」

 

「なによそれ......もういい、私が直接尋問する」

 

 銀鏡イオリ、風紀委員会所属の二年生。狙撃の威力は、単発だけならヒナにすら上回ると言われるほどの実力者。しかしスナイパーライフルを持ちながら突撃癖を持ってるせいでよく罠にはまる。

 

 例の殺人事件容疑者が現れたと聞いて、イオリが急いで現場に駆け付けた。

 

 見た目は小柄で服がボロボロだが、ヒナ委員長という前例がある以上、幼く見えても実力者という可能性があり。しかも殺人容疑ということで、イオリが珍しく突撃ではなくしっかり狙撃戦で挑んた。

 

 結果は呆気ないものだった。

 

 頭部に直撃二回で相手を無力化できた、普通の不良と同じ程度。普通の生徒の戦い方と違って、身体能力は大したことないのになぜか当てづらかったが、そこまで強くはなかった。

 

 気絶してるふりじゃないかを確認するために追加で撃ち、本当に動かなくなったのを確認し、他の風紀委員を呼んで風紀委員会の地下へ移送した。

 

 ヒナには確保成功した連絡を入れたが、エデン条約に関してちょっとだけトラブルが発生したらしくて今は手が離せないため、尋問のことは他の風紀委員に任された。

 

「容疑者はここか!」

 

「~~~」

 

 イオリが地下への扉を勢いよく開けると、他の風紀委員だけでなく、容疑者まで頭を下げてきた。

 

「あ、よろしくお願いします.....ではなく、何言ってたこの子?」

 

 イオリも反射的に挨拶をしたが、その言葉が何もわからない。

 

「だから言ってましたよ、しらない言葉です」

 

「そういえば言ってた......な、名前は?」

 

「......」

 

 容疑者は頭を横に振った。質問の意味が分からないのか、名前がわからないのか。

 

「これ、どうするの?」

 

 抵抗する気はなさそうだけど、事情聴取すらできない。

 

 なので、イオリは──ヒナやアコに丸投げすることにした。

 


 

「この子が例の容疑者ね」

 

 ようやく用事を片付けたヒナは、容疑者が拘留された場所に来た。

 

 ライフリング――銃身内部の溝は、キヴォトスの技術でも銃ごとに微妙に異なる。発砲する時、銃弾がそれに少し削られて、独自の痕跡が残る。その痕跡から銃弾がどの銃から撃たれたのがわかる。

 

 かなり昔に確立された技術だが、そもそもキヴォトスでそれを使う必要のある重犯罪は極めて稀なので、ヒナですら初めて本格的に運用した。

 

 結果は明確だった。

 

 現場から回収した銃弾の旋条痕は、容疑者がスケバンから奪ったアサルトライフルのライフリングと完全に一致しており、容疑者がスケバンから奪った銃を使ったのを確定できた。

 

 が、その銃を調査したが、やはりごく普通の銃であった。

 

 2回の事件、どっちもスケバンから奪った銃によるもの。それ以外に、容疑者も被害者の市民から銃を奪った事から、おそらく容疑者は銃に対してに特にこだわりがない模様。

 

 また、所持品を確認したら、市民とスケバンから奪えた銃と鞄、それと現金を除いたら何も持っていない。鞄を占有するのはシンプルに物入りが欲しいと推測した。

 

 身分証明できるものがないのはある程度予測したが、風紀委員会と万魔殿が協力しても容疑者の所属学校が分からなかった。卒業生にも確認し始めたが、おそらくそっちもヒットしないだろうと、ヒナは何となく勘づいた。

 

 なにせ、言葉が通じない生徒は聞いたこともない。

 

 ヒナは、用意した被害者3人の写真を容疑者に見せた。

 

 ──言葉が通じなくても、聞き出せるものがある。

 

 相手の動機は分からないが、殺人という大事件を起こした本人に被害者を見せたら、誇りや罪悪感くらいは感じるだろう。その反応するのを観察したら、容疑者はどういう人間かはある程度考察出来るはず。

 

 そう思ったヒナだが、容疑者はただ静かに頷いただけだった。

 

 次に凶器の確認。アサルトライフルを被害者の写真の上に置き、指差す。容疑者はまた素直に頷いた。

 

 あの態度は、まるで悪いことをした子供が叱られる時。どう見ても殺人事件に関して尋問される人の反応。

 

 ヒナは二つの可能性を頭に浮かべた。

 

 解離性同一性障害──俗にいう多重人格。本当に人格の切り替えで、体を制御してない人格が今起こっていることに対して認知すらできてないのは極めて稀だが、それでも普段と全く違うことをすることは医学上あり得る。

 

 その場合、自分がやったことにはしっかり認識しているが、あくまで他人事として見ている例は一応あるらしい。

 

 次は、反社会性パーソナリティ障害。具体的な症状はさすがにヒナも詳しくは知らないが、他人の殺傷の重大性を心の底から理解できないと聞いたことある。

 

「ちょっといいか?」と、詳しいのは後でセナと相談したほうがいいとして、もっと確認したいことがある。

 

「はい! なんでしょう!」

 

「これで私を撃って」

 

「かしこまりました。これでヒナ委員長を......えぇぇええ??」

 

 凶器であるアサルトライフルを受け取った風紀委員だが、ヒナの要望を聞いたら流石にびっくりしたらしい。

 

「これは検証にとって大事よ。大丈夫、こう見えても私強いから」

 

「いえ、ヒナ委員長が強いことはみんな知っていますが......わ、分かりました。アサルトライフルくらいなら......えい!」

 

 風紀委員が引き金を引いたら、銃弾がヒナの腕に当たって、いつも通りに弾かれた。

 

「......」

 

「こ、これでいいですね?」

 

「もう少し撃って」

 

「か、かしこまりました......」

 

 絶対怪我をしないのを知っていても、やはり上司であると同時に、あと50人くらい自分が増えても勝てない相手を撃つのは怖いようだ。でも、風紀委員はしっかり命令に従ってもう10発くらい撃ち込んだ。

 

 そしてやはりいつも通りに無傷、ヒナになるとアサルトライフル程度の武器は直近距離で頭に全弾倉を撃ち込まれても大したダメージにならない*1

 

 であれば、やはり問題は撃つ人にある。とヒナは考えた。特別なオーパーツを持ってないのは確認済だから、オーパーツでの影響という線は低い。前例が全く存在しないが......容疑者から撃ち出す銃弾だけが、人を殺せる力を持っているかもしれない。

 

 なら、次は実証するだけ──直接容疑者に撃たれ、怪我をしたならばその推測が証明できる。

 

 最初のスケバンは肩が貫通するだけで、二件目の事件は胸を貫通しなかったから、「あたると即死する」というオカルトのようなものではない。なら、今撃たせてもちょっとだけの怪我ですむ、自分ならすぐ治ると思ってヒナは、アサルトライフルを檻の中の容疑者に渡そうとした。

 

「い、委員長!? 何をしているのですか!?」

 

「ちょっと本当に彼女からの攻撃が異常なのかを確認したくて」

 

「ダメダメ、絶対ダメです!!! 委員長が怪我したらアコさんに何されるの分かりませんよ! 私たちが!」

 

「アコの方は私から説明するから、大丈夫」

 

「全然大丈夫じゃないです! とにかくダメです!」

 

 ここまで強く反対されるとはヒナも思ってなかった。それなら最初から人払いをすればよかったと反省した。目的がバレた以上今から人払いしても通らないだろうと、ヒナは諦めた。

 


 

「セナ、キヴォトス外から来た人間は、銃の一発で命の危険があるのは知ってるけど、実際はどう?」

 

「突然どうしたのですか......と言いたいですが、例の事件と関係してますね」

 

 セナの推測は正しいと、ヒナは頷いた。

 

「実例はかなり少ないですが、資料によると、どうやらキヴォトス外の人間は銃に撃たれると、体の材質と同じような反応しかしません。今回の事件とかなり似てます」

 

「もうその可能性を考えてるのね」

 

「はい、ヒナ委員長の反応からして、同じ結論に至ったと見ます」

 

 そう、ヒナはある可能性に辿り着いた。キヴォトスの人なら言葉が通じないことはあり得ない。なら、相手の体の特徴は生徒のそれでも、実はキヴォトス外から来た人かも知れない、と。

 

 イオリによる狙撃は怪我させてないから、容疑者はやはり生徒と同じ性質を持ってる。が、彼女からの攻撃だけが、キヴォトスの人間特有の性質を無視する可能性があったら?

 

 まず、その事を知った前提で攻撃したら、それは殺人であることは変わらない。

 

 では、その能力もしくは性質はコントロールできない場合は?

 

 傷害と殺人の二件は、どっちも被害者の方も武装している。キヴォトスで撃たれたら撃ち返すのは常識だから、その謎の能力は制御できないなら、反撃するつもりで死に至ったら過失致死になる可能性もある。

 

 いずれにせよ、情報が圧倒的に足りない。

 

「キヴォトス外に詳しい人がいればいいのに......」

 


 

()()、ちょっといい?」

 

「"ヒナ? どうした?"」

 

「キヴォトス外のことについて聞きたいことがあるわ」

 

 あれから数週間後、容疑者を拘束状態でその続きはずっと止まったまま。雷帝との関係性はおそらく薄いと判明したが、命が関わっているという事でマコトも珍しく真面目に調査してる。が、やはり情報が足りない。

 

 そこで、キヴォトス外から来た大人である先生が突然現れた。

 

 あまりにもタイミングが良すぎると思うが、チナツからは「信頼できる」と言われたので、この前の事件の突破口を求めて、ヒナが内容を先生に説明をした。

 

「"ヒナ、一ついい?"」

 

「何か気になるところがあるの?」

 

 そして、事件の全貌を聞いたら、先生は何か引っかかった顔をした。

 

「"『被害者』って、ロボットのこと?"」

 

「ええ、三人とも裏社会の者だけど」

 

「"そうじゃなくて、その......ロボットが被害『者』なの?"」

 

「......? どういうこと?」

*1
前線メンバーじゃないから、被弾にはあんまり慣れてないナギサはそれで数時間の気絶「のみ」




先生はプロローグ~アビドスの間。
実はプロローグでは敵を含めてロボ市民とケモ市民が登場してないので、そこらへんもまた分かってないという設定。
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