3/9 ちょっとだけ銃の描写を修正。
意識がぼんやりしてる、なんか夢を見た気がする。
瞼をゆっくり開けると、最初に目に入ったのは、見覚えのない車の天井だった。
車で寝ちゃったのか私。昨日何をしたっけ?
喉が渇いたのと、お腹も空いた。水はどこだ? 今は何時? 今日は何曜日?
まだ覚醒しきってない脳がまずスマホやペットボトルを探すために手を回りに探ってみたが、それらしい物が一切なく、逆になぜかエアガンが隣に置いてあった。
何となくそれに手をかけようとしたら、なぜか視界の中には、白くて小さい手がその銃に触った。
......? 子供? 誰?
試しに手を動かしてその手を確認してみようとしたら、動いたのは私の手ではなくその小さな手。
その瞬間、昨日の出来事が一気に蘇った。
「ッ!」
心臓がどくんと大きく跳ねた。
──撃ってしまった、子供を。それも殺す覚悟で。
「向こうが先に銃を向けてきた」、「その後も容赦なく撃ってきたから、やっぱり私が先に撃たないとすでに殺されてたかもしれない」と、何度も自分を説得してるが、それが分かったとしても罪悪感が消えない。
そもそも、私がその場に近づかなかったらこんな事は起きなかった。
結果的に、私は子供を撃って、銃を強奪して逃げた。
この国の価値観はいまいちわからないが、間違いなく私の方が犯罪者になるだろう。
悪夢だったらよかったのに、どうやらこれは現実だった。
昨日までは何処か現実感がないから平然と対処したが、この全てが現実であることを受け止めた途端、まるで世界が壊れた感じがした。
なんでだよ......なんで私なんだよ。
完璧とは言えないが、安定した安全な人生を過ごしてたのに、なんでこんなことになるの?
財産は正直そんなに大したもの持ってないから、若返りの代償として手放すのはいい。
家族と友人との関係も良好ではあるが、結局そのうち別れる運命。もう二度と彼らと会えないことは悲しいが、涙を流しながらも前に進める、みんながそうしてるように。
だが、こんな見知らぬ場所に放り込まれて、子供と殺し合いをするのはいくら何でも狂ってる。
色々な感情が一気に湧き出して、突然重力が逆転したようなめまいをした。
......だめだな、こんなところで水分の浪費をするなんて。
壁...正確に言うとミニバンの内装を殴った手は普通に痛い。
暴れても、呪っても事態は好転しないので、私はゆっくりと上体を起こした。
ここは、橋の下の排水口付近に放置されたミニバンのトランク部分。
前半部分は激しく損傷し、エンジン部分から黒焦げの跡からして、おそらく何らかの原因で炎上したのが分かる。後半部は奇跡的にほぼ無事とはいえ、回収する価値がないと判断されたのかそのまま放置されていた。
あれは、銃を奪った後の事。
あの三人は武装してる以上、必ずどこかの組織に属してるはず──裏社会なのか政府に所属してるのは分からないが。
全員の口を封じてなかった以上、子供とはいえ、正体不明の人物が銃を強奪して発砲した事実は組織に報告されるだろう。あの三人が責任を逃れるために報告しないという可能性もあるが、銃が紛失したという重大なミスを犯した以上、むしろ黙った方が横領などを疑われるので、すぐじゃなくても。
という隠したくても隠せない事実がある以上、追われるのも時間の問題。
組織的な捜査が始まる前に、その場からできる限り離れることしか頭になかった。
大通りを避けようとしたが、路地裏に入れば別の勢力と出くわす危険性がある。結局、道を選んでいる余裕などなく、ただ息が上がるまで走った。
途中何
アドレナリンが切れた途端、強烈な疲労感が全身を襲った。どこへ向かえばいいのかもわからないから、これ以上走っても意味がないと察した。
そこで、橋の下の排水路近くにこの廃車を見つけた。空も暗くなってきたから、ここに隠れたらまずバレることはないと判断し、一時的に中に隠れることにした。
幸い、バックドアはロックされておらず、簡単に入ることができた。
この体の身長は低いから、トランクで横になってもあんまり苦はないし。
強烈な睡眠欲に瞼が重くなる中、簡単に脚部の確認したが、なぜか特に外傷はなかった。理由を考える暇もなく、安心感でそのまま眠りに落ちた。
......それで一夜に無防備に寝ちゃった。
今、改めて靴と靴下を脱ぎ、スカートを少し捲って窓から差し込む薄い朝の光で自分の足を照らしてみる。
......やっぱり外傷はない、あざすら残してない。
あの時は確かに衝撃を受けたはずだが、何もないのはおかしい。
いきなり変な世界に飛ばされたから、もしかしてよくある展開で、私が弾丸を弾ける程の体を手に入れた? と、ちょっとだけ期待して、自分の足を爪で強く引っ掻いてみた。
──普通に痛い。そして、じわりと血が滲んだ。
爪でも怪我する体が弾丸を弾くわけがない。
やっぱり突然力を手に入れるとか、そんな都合のいい展開はフィクションでしかないと再認識た。
少しでも期待した私はバカだった。ハハ。
どうやらあの衝撃は、弾丸が直接当たったのではなく、跳ね返った石か何かが当たっただけだったんだろう。まあ怪我してないのは何より。
靴下と靴を履きなおして、昨日鹵獲した銃を手に取った......拳銃は気付いたらなくなってたから、おそらくアサルトライフルを奪った時自然と手放したのだろう。今考えたら逃げるときに拾いなおすべきだったが、過ぎたことは仕方ない。
手元に残ったライフルは、初見でのイメージ通りに、アメリカ系のM16系列によく似ているが、細部が異なる。私のような体型でも扱えるほどに短く、軽い仕様となってる。長さ的にどちらというとカービンかもしれないが。
流石に子供向けのためにわざわざ設計したとは思えないので、あの二足歩行犬たちの身長も低いから、それ向けの型式を転用してるかもしれない......子供のために銃を作るよりは健全かもしれないが、それはそれとして二足歩行犬が銃を撃つ光景も結構やばいかも。
私は慎重に銃を点検し始めた。
まずは
できれば正確な数字を知りたいが、唯一の弾倉を壊すわけにはいかないので、これ以上は分解せず、弾倉を慎重に隣に置いた。
次は
...どうやら装填状態の銃と一晩寝ていたらしい。怖すぎる。
最後は
全部で三つあるから、おそらくセーフティ、セミオートもしくはバースト、フルオートの三つ。必死に私が知ってるM16の配置を思い出そうとしたが流石にそこまで覚えてないし、この銃のは位置が同じなのも分からない。
今、矢印は右側を向いている。あの子供が戦闘状態だったことを考えると、セーフティではないはずだが......試し撃ちして確かめたらわかるけど、流石にここで銃声がしたらやばいのでやめた。
確かセーフティならこの状態で引き金を引いても動かないらしいけど、それはそれとして空撃ちは銃にダメージあるとかないとか。
でも暴発や、戦闘時弾が出ないよりマシのはず。
もう一度銃の中に確認して、弾が入ってないのを確認してから、銃口を外に向けて引き金を引いてみた。
ガッ、とした金属音で、ボルトが前に進んだ。とりあえず右は撃てる状態だと分かった。
もう一度ハンドルを引いて、今度は矢印を上にした状態で引き金を引いた。先ほどとぼぼ同じ反応、上でも撃てるモードらしい。
なんかの音でセミオートなのかフルオートが分かると記憶あるけど、さすがにそこまで覚えてない。
まあこれでセーフティの位置を確認できたと思って、紋章を左にして状態でもう一度ハンドルを引いて、引き金を引いた。
ヨシ、今回は反応なかった。
安心して先ほど弾き出された弾を弾倉に入れて、弾倉を銃に差し込んだ。
ひとまず武装は手に入れた。銃弾ワンマガジンしかないとはいえ、外ではその事が分からない。武装してるなら子供とはいえある程度の威嚇にはなるはず。
逆に、これで襲ってきたらアサルトライフルで武装した敵を圧倒できる前提の相手なので、すぐ逃げる一択となる。
さて、これからどうしよう。
空腹はまだ我慢できるか、流石に水分を取らないと体に支障が出る。
すぐ隣に川はあるが、排水口から廃水が直接流れ込んでいて、どう考えても飲める物ではない。なんかペットボトルに炭や砂を入れたら濾過できると記憶にあるけど、うろ覚えでやるのは危険なので、一旦それは考慮しないとした。
どのみち、まずはこのミニバンから離れないと始まらない。と覚悟を決めて、私は外に出た。
今日の勘違いポイント
銃の紛失
軍隊でもマフィアでもそれが結構大問題になるけど、キヴォトスならまぁ...
自傷
フウカが包丁で自分の手を切って怪我するのと、山海経の演劇では刃物で自●する描写があるため、少なくとも自分を攻撃するのは多少効くらしい(銃で自分を撃つシーンはないため銃も効くかは分からない)。
とはいえミサキはこの年まで生き残ってるため、やっぱり死に至るのはかなり難しいらしい。
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