魔弓のイェーガー 作:大根魔法使い
昨晩、イェーガーは手に入れた獲物の解体を行っていた。
先ず、血抜きの為に服を脱がせ、近くの木に足が上にして丁度良く首の無い頭を下にして吊し上げ、血を垂らさせる。
ある程度、血を抜き取り終えれば腹をかっ捌き、内臓や腸等の臓器を抜き取る。
臓器もやり様によっては食べられるので取っておく。
次に肉付きの良い身体の皮を剥がしていく。
慣れた手つきで毛や皮をナイフで削ぎ落とし、皮が無くなれば肉を削ぐ。
こうした手順をイェーガーは何度も繰り返した。
例え吐き気を覚えようが心が拒否しようが本能に負けて従い、狩り、そして喰らう。
イェーガーの人としての心はまだあるが殆ど死んでいた。
肉を剥ぎ終え、今日食べる分と干し肉にする分に分けた。
干し肉にするのは出来るだけ人を殺す行為を避ける為であり、残して捨てるのも勿体無いと言う考えからだ。
イェーガーは昼までには全ての工程を終え、ようやく朝食もとい昼食にありつく為に剥ぎたての肉を焼く為に薪を用意して民間魔法の火を点ける魔法で焚き火の火を点ける。
バチバチと燃える焚き火の火に当たりながら肉を細かく切り分け、枝に刺して焚き火の近くに肉の付いた枝を刺していく。
暫くの間、焼き上がるまで待つ事になったイェーガーは焚き火を眺めていた時、殺気を感じ取り、その場から飛び退くとイェーガーのいた位置全てを燃え盛る炎が包み込んだ。
「外したか……勘の良い魔族だ」
そう言いながら現れたのは老齢の男で、大きな杖を片手にイェーガーと対峙した。
「誰?」
「ワシはフラム。貴様を討伐しに来た」
「討伐ね……まぁ、自覚が無い訳じゃないけど……」
イェーガーはそう言って焚き火の方をチラ見するとフラムによって焼き払われ、焚き火はおろか、肉の面影すら無くなっていた。
「勿体無い事をして……貴方は食材を無駄にする様な人なの?」
「人間を食材呼ばわりとはやはり、魔族か。野蛮な獣めが……一対、何人喰らったのだ?」
「人が食事するのに一々その回数を数えたりする?それにしても人間と言うのは本当に傲慢だね」
「傲慢だと?」
イェーガーの挑発染みたその言葉にフラムは杖を構えつつ疑問を抱いた。
「何で人間は特別喰われないと思ってるの?この世の中は生きとし生けるもの達が互いに殺し合い、その肉を喰らう。別に全ての生き物がそうじゃないけど……貴方達、人間はそこから抜け出してるなんて考えてる。自分達は特別だ。喰われるなんて野蛮だ。私の様に人を喰らう魔族は絶対悪だ……なんて言うのが人間や他の種族だけ。傲慢なのよ。自分達は神か何かだと思ってるの?」
「人間は他の生き物には無い物を沢山持っている。知識や感情をな」
「それだけじゃない。知識を持っていたら偉いの?他より優れれば何やっても良いの?感情があるから人は争うのにどうして矛盾した事を考えるの?……簡単だよね。人は愚かで、傲慢だからだよ」
イェーガーのその言葉の終わりと同時にフラムは炎の魔法でイェーガーを襲うもイェーガーは易々と避け、飛行魔法で空中を飛ぶと弓を構え、魔法で生み出した矢をつがえた。
「(追跡する矢の魔法)」
イェーガーは心の中で魔法を唱え、矢を放った。
フラムは勢いよく飛んでくる矢を避けて横に飛んだ時、矢があらぬ方向に曲がり、フラムの肩に深々と刺さった。
「どう?私の魔法わね……弓矢に関するものなんだよ。追跡も破壊力も手数も増やせるの。こんな風にね……矢の雨の魔法」
イェーガーはそう唱え、空に向かって矢を一本放った時、無数の夥しい数の矢が降り注ぐ光景がフラムに見えた。
「くッ!!」
フラムは咄嗟に防御魔法を全体を覆って守りにつくと多くの矢がフラムを襲ってきた。
防御魔法を展開し続け、何とか持ちこたえられると考えたフラムの胸に防御魔法ごと貫く矢が刺さった。
「突き破る豪矢の魔法……何だ……相手にもならないね……」
イェーガーのその言葉を最後にフラムは地面に倒れ、そのまま死んでしまった。
イェーガーはその様子を見届けた後、十字を切ってフラムの為に祈りを捧げた後。
「お腹空いた……もう無理……」
本能のままにフラムの死体に喰らいつく。
その姿は人ではなく餓えた獣そのもので、恐ろしい姿だった。