魔弓のイェーガー   作:大根魔法使い

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弓使い

勇者ヒンメルが僧侶のハイター、戦士のアイゼンそして魔法使いのフリーレンの四人でパーティーを組んで魔王討伐に旅立ってから月日が流れた頃。

 

南の勇者に敗れ、一時の旅の仲間として行動していたイェーガーは北の大陸を旅していた。

 

「はぁ……疲れるね……」

 

イェーガーは南の勇者との旅で食人性は落ち着きを持つ様になっており、滅多な事では人を口にする事は無かった。

 

それでも欲求に任せて喰らうも、盗賊の類いに止めており、何時しかイェーガーの魔族としての存在は忘れられつつあった。

 

本当に気紛れに受けた賭けに負け、南の勇者に殺される事を覚悟した。

 

しかし、南の勇者はイェーガーの予想だにしなかった事を言った。

 

「私の旅に同行して欲しい」

 

「……は?」

 

その言葉にイェーガーは戸惑いしか生まれなかった。

 

結局の所、イェーガーは此処から離れなければならず、約束は約束だと律儀に要求に答え、南の勇者の仲間として旅に出た。

 

最初の頃から魔族としての価値観のせいで意見が割れたりし、近くを通った人間を襲おうとした所を南の勇者に止められたりもした。

 

約束とは言え、どうして制約多めの旅を一緒にしなければならないのだと不満を抱えていたがそれでも南の勇者から離れなかった。

 

塗装もされていない不便な道を進み、暴れまわっていた魔物を討伐し、勇者とその仲間てして人々を助ける。

 

必要なら同族である魔族も葬った事もあった。

 

イェーガーにとって、何れも新鮮な体験だった。

 

人を喰らうのではなく助け、良い気分ではないが同胞たる魔族を殺し、見た事も無い場所を南の勇者と旅をする。

 

何時しかイェーガーは弓使いと呼ばれ、南の勇者と共に行く人の英雄として扱われていた。

 

「弓使い様!」

 

「遊ぼう!」  

 

そんなある日、イェーガーは子供達との遊びに付き合っていると南の勇者が笑っているのに気付き、首を傾げると。

 

「笑う様になってきたと思ってね。私も釣られてしまった」

 

「え?」

 

その言葉にイェーガーは自分でも笑っていたと言う事に驚くと子供達からも綺麗だと言われた。

 

一人になってから数十年……イェーガーは家族と呼べる存在を失ってから一度も笑わなくなっていた。

 

一人、孤独の中で迷い込んできた人間を狩り、喰らう……魔族寄りの生活になっていた。

 

イェーガーは笑ったと言う事実を自覚した時、涙を流しながら笑った。

 

それに対して周りがイェーガーが泣いた事に驚き、オロオロし始めたのは言うまでもない。

 

南の勇者との旅はイェーガーの闇を払っていった。

 

魔族として振る舞っていたイェーガーを人間として光の中へと引っ張り上げてくれた南の勇者にイェーガーは何時しか恋心を抱く様になった。

 

「貴方の事を……愛してます……」

 

その思いを南の勇者に告げたが南の勇者は何も答える事は無かった。

 

半年が経ったある日、南の勇者から別れを切り出された。

 

「此処からは私一人で行くつもりだ。すまないが君とは此処でお別れだ」

 

「何で……?何でなの……?」

 

イェーガーは南の勇者を問い質しても何も答えなかった……最終的に喧嘩別れの形で別れる事になり、イェーガーはまた一人になった。

 

南の勇者と別れてから元気を失くし、各地を彷徨っていた時に一つの話を聞く事となる。

 

南の勇者が七崩賢三人を討ち取り、全知のシュラハトと相討ちとなって亡くなったと。

 

「嘘……!?」

 

その噂を聞いたイェーガーは絶対に信じなかった……信じたくなかった。

 

南の勇者の強さは最も近くにいて尚且つ共に旅をしていたイェーガーがよく知っている。

 

その南の勇者が死んだ……イェーガーは信じたくない気持ちと絶望の両方を受け、その日は泣き叫んだ。

 

死んでしまうならもっと互いに笑って別れる様に穏便に話し合えば良かった。

 

喧嘩なんてしなければ良かった。

 

イェーガーは後悔と悲しみに明け暮れる事になった。

 

その後、イェーガーは悲しみと後悔を抱えながら空虚になりつつある心を埋めようと旅を続けた。

 

人を助け、人を喰らう……人と魔族の境界に生きる存在として。

 

「君が魔弓のイェーガーかい?」

 

何とも懐かしい台詞に似た言葉を吐く、青年とその仲間達に出会うまでわ。

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