俺は、目覚めたら女の子になっていた。 それは、エミリアと名乗る吸血鬼に血を吸われたせいだという。 そして俺はなし崩しに彼女の屋敷でメイドとして働くことになる……

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吸血鬼に女の子にされた俺、メイドとして働くことになる

 俺は、目覚めたら女の子になっていた。

 

「えええええ!?」

 

 驚いている間もなく、扉から一人の女性が入ってくる。

 

「あら、お目覚めのようね」

「あなたは――?」

「私は、エミリアというの、よろしくね」

 

 彼女はゆっくり近づいて来たかというと、俺の顎をくいっと寄せてくる。

 心臓が、どきりとはねた。

 

「そして――吸血鬼よ」

「……吸血鬼?!」

 

 俺は思わずベッドの上で後ずさる。

 

「ふふっ、怖がらないでいいわよ。何もしないからーーもうした、といってもいいかもしれないけれども」

 

 そう言って微笑む彼女。

 しかし、吸血鬼というワードに反応したのか、私の身体に変化が訪れる。

 ドクンッ、そう心臓が跳ねる。

 

「あら、体が私に反応したのね……まだ、出来立ての体だからかしら」

「どういう……?」

「私が血を吸ったから――あなたの体は女の子になったのよ」

「……えぇ!!」

 

 吸血鬼というのは百歩譲っていい。だが何だその謎の特殊能力は……!

 

「今すぐ元の姿に戻してください!!お願いします!!!」

「それは無理な話だわ……」

「なんでですか!元に戻してくださいよ!!」

「だって、せっかく可愛くなったんだもの。そのままにしておいた方がいいでしょう?」そういって笑みを浮かべる彼女。

「嫌です!絶対に嫌です!!」

 

 こんな姿のまま生きていくなんて考えられない。

 

「まあまあ、そんなに怒らずに……とりあえず落ち着いて。はい、これでも飲んでリラックスしてちょうだい」

 

 彼女はそういうと、どこから取りだしたカップを私に渡す。

 

「また、変なものでも入ってるんじゃ――」

「失礼ねぇ、これは普通のハーブティーよ。ほら、香りも全然違うでしょう?」

 

 確かに、渡してくれたカップからは良い匂いがする。

 それに、さっきまで騒いでいたせいか喉が渇いている。

 

「……分かりました。飲みます」

 

 俺は恐る恐るそれをのむ。……おいしい。

 

「どう?落ち着いた?」

「はい、落ち着きましたけど……どうして、いきなり女の子にするんですか!」

「そりゃあ、可愛い子が好きだからよ」

「えーっと、それだけですか?」

「うん、そうだけれど?」

「はぁ……そうですか」

 

 理由を聞いて私はため息をつく。

 

「だって、これからあなたはこの屋敷で働いてもらうんですもの。私のそばにいるんだから?そりゃあメイドになってもらわなきゃいけないわよね?」

「はぁ?何言ってるんですか!元の男に戻して下さい!!」

「だ・め♪」

 

 そう言ってウィンクをする彼女。

 なんだこいつ……?

 

「まあ、諦めなさい。それに、悪いことばかりじゃないと思うわよ?」

「どういう意味で……」

「だって、あなた――もう身寄りがないんでしょう?」

「っ!?」

「それどころか、住んでいた場所もないんじゃないかしら?」

 

 彼女は不敵な笑みを浮かべながら俺を見る。

 

「どうしてそのことを……」

 

 その通り、俺の両親は死んだ。その流れで村から追放され、どこにも行けず流浪のみになった。

 

「言ったでしょう?吸血鬼だって。人間のことは何でも知っているのよ。例えば、あなたのこともね……」

「理由になってない……」

「なってるわよ。私が知りたいと思ったから、それで十分」

 

 そう言い切る彼女に少し恐怖を覚える。

 

「それに、この屋敷には女の子しかいないのよ。男の子がいる方がおかしいでしょう?」

「そうなんですか……」

「だから、私があなたを拾ってきたの。身寄りのないあなたを新しいメイドにするために、ね」

 

 そう言って、優しく微笑む彼女。……その表情を見てると、吸血鬼らしく、人間離れしてとても綺麗だった――

 

「――!」

 

 また、心臓が跳ねる。

 

 そして、体が熱くなっていく感覚に襲われる。

 

「どうかしたの?顔が赤いみたいだけど……」

 

 彼女が近づいてくる。

 すると、余計に鼓動が激しくなる。

 

「うぅ……」

 

 俺は耐えきれなくなり、布団にもぐる。

 

「あらあら、恥ずかしがり屋さんね」

 

 そう言って笑う声だけが聞こえる。

 きっと、今の自分の姿を想像しているのだろう……。

 

「大丈夫よ、安心しなさい。ちゃんとあなたを立派な女の子にしてあげるから」

 

 そう言って、彼女の手が俺に触れる。

 

「んっ……」

 

 触れられた瞬間、ビクッとなる。

 

「ふふっ、敏感な子なのね。可愛いわ……」

「やめてくださぃ……」

「あら、ごめんなさい。つい触っちゃったわ」

 

 そう言って、彼女は手を離す。

 

「今日はゆっくり休んでいいわよ。起きたばっかりなんだからね」

 

 そうして、彼女は扉から出ていく。

 俺は一人になった――

 母さん、父さん俺――女の子になって、メイドとして働くことになりました。

 

 ***

 

 翌日。俺はメイド服を着て立たされていた。

 

「うう……」

 

 スカートをはかされて、足元がスース―する。恥ずかしい。

 

「あら、よく似合ってるわよ」

「嬉しくありません……」

「まあまあ、そんなこと言わずに。せっかく可愛くなったんだもの。もう少し楽しみましょう?」

「もう嫌です……」

「まあまあ、そういわずに……」

 

 彼女はそう言うと、鏡を取り出してくる。

 

「ほら見て、これがあなたよ」

 

 そこには、可愛らしい女の子がいた。

 

「なにこれぇ……」

「ふふっ、とっても可愛いでしょう?」

「こんな姿じゃ外歩けない……」

「それは困るわねぇ……」

「だから、ここにずっといましょう? ね?」

 

 そう言って、彼女は俺の頭を撫でる。

 

「でも、今のままじゃあ、無理でしょうから……まずは言葉遣いから直さないとねぇ……」

「え……?」

「だって、そんな乱暴な話し方だと、すぐにボロが出ちゃうわよ?」

「いや、あの……」

「というわけで、早速特訓を始めましょう!」

「え、ちょっ!?」

 

 こうして始まった、俺の女の子としての日々が始まった。……それから、1週間が過ぎた。

 

 ***

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「あら、ただいま」

 

 ご主人様であるエミリア様が帰ってくる。

 

「それでは、私はこれで……」

「ちょっと待って頂戴」

「はい……?」

「あなた、本当に可愛いわよね」

「いえ、そんなことは……」

「謙遜しないでもいいのよ。あなたは私にとって大切な人なんだから」

「あ、ありがとうございます……」

「だからね……?私のお願いを聞いてくれるかしら?」

 

 そう言って微笑む彼女。その笑顔はとても美しくて――怖いと感じてしまった。

 

「わ、わかりました……。どうすれば……」

「そうねぇ……」

 

 顎に手を当て考える仕草をする彼女。

 

「ねえ、あなたこれから私のつけた名前で名乗ってくれない?」

「え……?」

 

 それは、とても意外なお願いであった。

 

「そうね、あなたの名前は……エリー。これから、エリーと名乗るのよ」

「エ、エリーですか?」

「そうよ。可愛いでしょう?」

「そ、そうですね……」

「それじゃあ、よろしく頼むわね」

 

 そう言って部屋を出ようとするエミリア様。

 

「あっ、最後に一つだけ……」

「はい?」

 

「あなたのこと、もっと知りたいの。だからね?私とお話しましょ」

 そう言って、手を差し伸べる彼女。その瞳に吸い込まれそうになる。……そして、俺は彼女の誘いに乗ったのだ――

 

 ***

 

 それからというもの、毎日のように彼女と話す時間が増えた。

 

「それでね、その時に彼が言ったのよ。『お前のことなんて好きじゃない』って!ひどいと思わない?!」

「はい、酷いと思います……」

「でしょう?彼はね、照れ隠しだったのよ。本当は私のことが好きなのにね……」

 

 そう言って、頬を膨らませるエミリア様。

 

「あら、いけない。もうこんな時間だわ」

「本当ですね」

「今日も楽しかったわ。また明日ね」

「はい、失礼します……」……そして、俺は自室に戻る。

「ふぅー……」

 

 ベッドの上に寝転がる。すると、体が熱くなるのを感じる。

 

(熱いなぁ……)

 

 この体になってから、よくこうなる。きっと、女の子の体にまだ慣れていないからだと思う。

 もう、一週間以上たつというのに。

 

「んっ……」

 

 体を触ると、柔らかい。自分の胸なのに、触り心地が良い。

 

(なんでこんなことになったんだろう……?)

 

 最初は戸惑ったが、今は落ち着いている。

 ……そう、俺は女の子になってしまった。それも、メイドとして働かされている。

 

「うう……恥ずかしい……」

 

 鏡を見るたびに、自分が女であることを突きつけられる。

 

「それにしても……」

 

 どうして、彼女は俺を女性化させたのか……。わからないことだらけだ。

 

「あー……もう!」

 

 考えていても仕方がない。とにかく、彼女が満足するまで付き合うしかないだろう。……そう思って、俺は眠りについた。

 

 ***

 

 翌日。

 

「おはよう、エリー」

「おはようございます……」

「今日も可愛いわね」

 

 そう言って、頭を撫でる彼女。

 

「さあ、行きましょうか」

「はい……」

 

 彼女に手を引かれ、食堂に向かう。

 

「そういえば……」

「なんです?」

「最近、変わったことはない?」

「いえ、特には……」

「ふーん……」

 

 彼女は何かを探るようにこちらを見つめてくる。

 

「な、何でしょうか?」

「いや、何でもないわ」

「はあ……」

 

……それから、食事を終えた俺たちは再び部屋に戻ってきた。

 

「ねえ、エリー……」

 

「はい……?」

 

 彼女は椅子に座る。俺も隣にある椅子へと腰かける。

 すると、突然抱きしめられた。

 

「えっ!?ちょっ……!」

 

 抵抗しようとするが、力が入らない。

 

「あなたは私だけのものよ……」

 

 耳元で囁かれる声。ゾクッとする感覚に襲われる。

 

「やめて……ください……」

「嫌なら、振り払えばいいじゃない?」

「それは……」

 

 できない。何故か、それができない。体が動かないのだ。まるで金縛りにあったかのように。

 

「ほら、無理でしょう?」

「くっ……」

「大丈夫よ。あなたが素直になるまで待つわ」

 

 そう言うと、エミリア様はキスをした。……長い時間が経つ。

 

「ぷはぁ……」

 

 ようやく解放された時には、頭がボーっとしていた。

 

「ごちそうさま」

「お、お粗末様です……」

「それじゃあ、私は仕事に行くから。あなたはゆっくり休んでいて頂戴」

 

 そう言って、部屋を出る彼女。俺はそのままベッドに倒れこんだ。

 

「はぁ……」

 

 体の火照りは収まらない。むしろ悪化しているような気さえする。

(ダメだ……。このままだとおかしくなりそうだ……)

 そう思い、部屋を出た。

 

 ***

 

 屋敷の中を歩いていると、ある場所に着いた。そこは、図書室である。

 

「ここに来れば落ち着くかも……」

 

 中に入ると、そこには本がたくさんあった。俺は適当な本を手に取り読むことにした――

 

 ***

 どれくらいの時間が経っただろうか?俺は夢中で読んでいた。しかし、不意に肩を叩かれたことで現実に引き戻される。

 

「エリー?」

 

 振り返ると、そこにはエミリア様がいた。

 

「あっ、すみません……」

 

 慌てて本を棚に戻す。

 

「ねえエリー……」

 

 彼女は言う。彼女は言う。

 魅惑的なその声で、どこか悩ましげに言う。

 

「あなたは私が化け物になっても……ずっとここにいてくれる?」

「えっ……」

 

 突然のその言葉に俺は驚かざるを得なかった。

 

「それは一体どういう……」

「ううん、何でもないわ」

 

 そういって、去ってしまった。

 ……なんだったのだろう、一体。

 

 ***

 

 その日の、晩であった。

 

 屋敷のドアが、ぎぃっと音を立てて開かれる。

 

「? 来客でしょうか。それなら――」

 

 と、話しかけようとした瞬間。

 

 ドン。

 大きな音がする。

 

 それは――銃声。

 

 扉を開いた男が持っていたのは――猟銃であった。

 

「え」

 

 私は、胸を抑える。

 手を見るとそこには――血が、ついていた。

 

「――」

 

「殺してやる――殺してやるぞ、エミリアああああああああ!!!!」

 

 男は、そう叫びだした――

 

 その時だった。

 

「あああああああああああ!! エリーいいいいいいいいいい!!!」

 

 エミリア様の声であった。

 その瞬間。

 男の体は、

 ばらばらに引き裂かれ、

 粉みじんに、

 なった。

 

「――」

 

 血が、舞い踊る。

 エミリア様の手は、爪概要に長く伸び、赤い赤い血が垂れていた。

 そして、背中からは黒い羽が生えている――

 

「あ」

 

 

 私は、膝をついて、倒れた。

 

「エリー! エリー!」

 

 エミリア様が、駆け寄ってくる。

 私は、だんだん意識が遠くなっていく。

 

「エミリア、様……」

「エリー……どうしてこんなことに……。私のせいね……」

 

 彼女は泣きながら言った。

 

「いいんです……」

「でも!」

「あなたの、せいでは……」

 

 そこで、私の視界は暗転し、闇に落ちていった。

 

 ***

 目を覚ますと、目の前にはエミリア様の顔があった。

 胸には、包帯が巻かれている。

 

「あら……目が覚めた?」

「一体、どうなって……」

「彼はね、私に告白してきてくれた子なの」

 

 彼女は、言う。彼女は、言う。

 

「それでね、断って実は私は吸血鬼なんだって言ったら、怒っちゃって。逃げて来たんだけど、まさか、ここまで追ってくるなんて……」

 

 彼女は続ける。

 

「ごめんなさい……あなたを巻き込んでしまったわ……」

「いえ……そんなことはありません……」

「ありがとう……あなたは優しいのね……」

「ただ……」

「?」

「あなたと一緒に居たいだけです……」

 

 彼女は、にっこりと笑う。

 

「……私もよ、エリー……」

「エミリア様……愛しています」

 

 私は、言った。

 言ってしまった。

 いつの間にか、私と彼女は――

 

「ふふっ、嬉しいわ……」

 

 そう言い、キスをする。

 舌と唾液が絡み合う。……しばらくすると、彼女が口を離した。

 

「そろそろいいかしら……」

 

 そう言うと、彼女の瞳が赤く光る。

 

「あっ……」

 

 体が熱くなる。……また、だ。

 

「ねえ、エリー。私の血を吸わない?」

「血を吸うって、どうして……」

「あなたは、私が血を吸ったから、半分吸血鬼になっているの。……それでね、私の血を吸ったら、完全な吸血鬼になれるの」

 

 そして、彼女は涙を流す。

 

「そして、そうしないとあなたは、あなたの銃で撃たれた傷は……」

 

 胸を見る。包帯が巻かれたその先には、深い深い傷がついているのだろう。

 少し、胸がチクリと痛んだ気がする。

 

「それにね、そうすれば、私とあなたはずっと一緒に――」

「……なるほど。分かりました」

 

 にっこりと、彼女は笑う。

 そして、首筋をさらけ出す――

 私は、それにガブリとかみついた――

 

 ***

 

 どこかの森の奥。屋敷の中には二人の吸血鬼が住んでいるという。

 片方は、ドレスをまとった美しい女性。もう一人はメイド服をまとっているという。

 そして、二人は普段は外に出ず屋敷の中でじっとしているって――


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