隠れてラブコメ小説を書いている俺、なぜか自分の高校生活がラブコメになっていました   作:濃霧/Nolm

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第4話 身バレ

「先輩。あなたがあの小説家、如月ツキの正体で間違いないですね?」

俺の目の前にいる後輩の可愛い女の子が、満面の笑みを俺に向けている。

男子高校生なら一度は夢見る構図だろう。

しかし、実際に俺がこの状況になって最初に溢れ出したのは……

冷や汗だった。

なぜこの子が、俺がひた隠しにしてきた秘密を知っているのか……

それは数分前に遡る。

 

───────────────────────

 

俺は放課後、誰もいないだろうと、そう油断して眠った。

秘密を思いっきり晒しながら、眠ってしまった。

そうして、何分経っただろうか。

俺はなんとなく、自分の近くに気配を感じて、目が覚めた。

すると、俺の正面の席の椅子を俺の席のほうに向けながら、一人の女の子が俺のネタノートを読んでいた。

俺は一瞬陽菜かと思ったが……目の前の少女の髪は艶やかな黒色。しかも肩にかかるぐらいまで。

さらにもう一人、この学校にいる従姉かとも考えた。

しかし、その子の制服のリボンは緑色。それにあの人はどちらかといえば大人な美人系だが、この子はあどけなさが残る童顔。

俺はその事実を確認した瞬間、自分の人生が終わったかのように錯覚した。

自分が如月ツキである、という事実は絶対に誰かにバレたくなかった。もしバレてしまったら、きっと毎日のようにサインを求められたり、小説の続きを催促されたりするに違いないだろうから。

走馬灯すら見えかけたその時、俺の耳に鈴を転がすような可愛らしい声が入ってきた。

 

「……あ、やっと起きましたか。水無月先輩」

「…あ、あぁ、おは、よう……?」

 

もうほとんど回っていない頭ではそう応えるのが精一杯だった。

 

「寝ぼけてるんですか?今は朝じゃなくて夕方ですよ」

「そう、だったな……」

 

少女と話しているうちにだんだんと頭が回るようになってきた。

 

「ところで水無月先ぱ───」

「……ちょっと待ってくれ。なんで俺の名前を知っているんだ?それと君は?」

「え」

 

その子はすごく意外そうな顔をする。

 

「先輩、もしかして昨日のこと覚えてないんですか?ほら、無理やり傘を貸してきた……」

「……あぁ、あの時の…………ん、ということは君は……」

 

確か、今朝蒼汰が言っていたな。えーと、俺の傘を持って俺を探してたっていうのは、古田芽衣さん、だったか?

…………あれ?

古田さんって……確か……

 

人気ランキング、3位……じゃなかった、か?

 

 

…………

 

 

…………

 

 

…………

 

 

嘘、だろ………?

 

「え…っと……古田、芽衣さん…?」

「はい、そうですよ」

正直認めてほしくないというか、直視したくない事実をあっさりと認められてしまった。

「それで、話を戻しますが……」

 

────────────────────────

 

そして冒頭に至る。

 

なんと答えるか熟考するが、全くと言っていいほど言い訳が思いつかない。

「…………あぁ、そうだ。俺が如月ツキの、中の人だ」

そして、俺は開き直ることにした。

結局、ここまで証拠を見られているのだ。何を言っても彼女──芽衣さんが信じるはずがない。

「やはり、そう、ですか……」

芽衣さんはうっすらと目を細める。

幻滅させてしまっただろうか。

そう思ったとき、芽衣さんが口を開いた。

「実は、私、如月先生の作品が好きなんです」

正直なところ、意外だった。

芽衣さんはどちらかといえば陽キャと呼ばれる類の人。

小説とかよりも漫画のほうを好んでいそうだという偏見を持っていた。

 

「えっと……それは、ありがとうございます……?」

「ふふっ、なんで疑問形なんですか、先輩」

 

芽衣さんが軽く微笑む。

とても可愛らしく、他の男子が見たら天使のようだと言うだろう。実際、俺もこんな状況じゃなければそう思っていた。

しかし、今の俺には、悪魔の笑顔に見えていた。

 

俺の平穏を破壊する、恐ろしい悪魔………

 

正直に言えば、俺には芽衣さんのことがそう見えていた。

 

「ねぇ、先輩。もしかして……私が誰かにこのことを言いふらすと思いましたか?」

「……っ」

 

俺は気持ちを見透かされ、気まずくなって目を逸らした。

 

「……図星みたいですね」

「……すまん」

「謝らなくてもいいんですよ。私が勝手に先輩の秘密を知ってしまったわけですし……」

 

その言葉を聞いたとき、俺はさっきまで持っていたイメージを吹き飛ばした。

きっとこの子は、人の秘密を誰かにばらすような子ではないはずだ。

 

「まあ、それは俺が油断して寝ちゃったのが悪いわけで……」

「でもそれを見たのは……って、これ終わりませんね。五分五分、ということにしましょうか」

「ああ、そう、だな」

「それで……先輩。嫌じゃなければなんですが……お願いを聞いてもらってもいいですか?」

「お願い?……俺にできることなら大丈夫だけど……」

「えっと……それじゃあ、私と、仲良くしてもらってもいいですかっ!」

 

恥じらいながら、上目遣いで聞いてくる。それを美少女が自分に向けている。

そんな状況、断れる男子高校生はいるのだろうか。

 

「いいよ。これからよろしく……でいいのかな?」

「はい!これからよろしくお願いします……」

 

満面の笑みを浮かべる芽衣さん。一瞬ドキッとしてしまった。

 

「あ、そういえば先輩、読みましたか?アオギリ先生の最新作」

「あ、ああ、もちろん。彼は仕事仲間だしね」

 

 

そんな感じで数分雑談したあと、さすがに長居しすぎたため、見回りの教師に見つかり、追い出されてしまった。

そして、校門前。

空は茜色に染まり、橙色の夕日が地平線へとゆっくり沈んでいる。

 

「そろそろ帰ろうか。……それと、信じてはいるけど…今日のことは他言無用で頼むよ」

「…分かってますよ。……あ、そうだ。先輩ってどっかの部活に入っているんですか?」

「部活か……一応文芸部に入っている。まあ、ほとんど部員はいないんだけど」

「そうなんですね。見学とかやってます?」

「見学……ん-……特にやってはない、かな。活動がほぼないしね……」

「部室とかってあるんですか?」

「あるにはあるよ。そこまで使ってないけど」

「使ってないってことは誰も入らないってことですか?」

「まあ、そうだね」

 

そう答えると、芽衣さんはいたずらっぽい笑顔を浮かべた。

 

 

「じゃあ、明日の放課後、その部室を紹介してください。もちろん、私たち二人だけで、ですよ?」

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