名探偵大垣∞~雪国サウナの観測者~   作:ドラ麦茶

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5・推理下手さんと捜査会議SEASON2

「――まず、食事が終わったのが七時三十分。それから、アキ・ウチ・恵那ちゃん・荻原さん・萩原さん・渡邊さん・山田さんの七人はロビーでゲームを、他の客は各自の部屋に戻り、従業員の南奥原田さんは食堂で後片付けをした後奥の休憩室で休憩をしていた。アキが寝たのは七時四十五分ごろや」

 

「うむ」

 

「アキが寝てもうたからゲームはそこで終了し、荻原さんと萩原さんは一旦102号の自分らの部屋に戻った。残りの五人はしばらくロビーでおしゃべりしてた。で、八時頃に、荻原さんが102号室から出てきてお風呂へ入った。これは、ロビーにいたみんなで確認してる」

 

「荻原さんってどっちだ?」

 

「は?」

 

「荻原さんというのは荻原さんなのか萩原さんなのかハッキリしろ」

 

「荻原さんは荻原さんやろ。萩原さんじゃないほうや。じゃない方って言うのも失礼な話やけど」

 

「じゃあ、そのとき荻原さんは自分の部屋にいたんだな?」

 

「荻原さんはお風呂や言うてるやろ。部屋にいたのは萩原さんや」

 

「だあぁもう! ややこしいからカタカナで言え!」

 

「カタカナで言えっていうのも意味わからんけど、まあそうするわ」

 

 ということで、これからはオギワラさん・ハギワラさんと呼ぶことになった。

 

「……ていうか、このやりとりからやり直す必要あるか?」

 あおいはめんどくさそうな目で千明を見る。

 

「あたしは、何事も正確にしなければ気が済まない性格なのだよ」

 千明は胸を張って答える。

 

「アキの性格なんか知らんわ。正確に再現するとキリが無いから、多少省くで」

 

「性格だの正確だの、これ以上話をややこしくするな」

 

「アキが言い出したんやろ。話続けるで」

 

「うむ」

 

「えーっと、八時頃にオギワラさんが102号室から出てきてお風呂に入った」

 

「ふむ」

 

「その一〇分後の八時一〇分に山田さんがロビーからお風呂に入った。山田さんの証言によると、この時オギワラさんはサウナにいて、山田さんは内風呂に入ったそうや」

 

「ふむふむ」

 

「んで、その二十分後の八時三十分、ワタナベさんが部屋から出てきてロビーを通ってお風呂に入った。ワタナベさんの部屋は何号105号室や」

 

「OK。これからもカタカナで頼む」

 

「はいよ。で、次はさらに二十分後の八時五十分。山田さんがお風呂から出てきて部屋へ戻った。山田さんの部屋は106室や」

 

「ふむ」

 

「ほんで次は九時頃。恵那ちゃんがもう一回温泉につかるいうてお風呂に入った。このとき、オギワラさんはサウナにいた。でも、恵那ちゃんはタオルを持って来てなかったことに気づき、すぐにお風呂から出てきて、101号室のウチらの部屋に戻った。で、恵那ちゃんが部屋に戻った直後に、ワタベさんもロビーから部屋に戻ってる。そういやさっきは言い忘れたけど、ワタベさんの部屋は104号や」

 

「それを言ってくれていれば、間違った推理をすることはなかったんだがな」

 

「ウチのせいみたいに言うな。ほんでもって十五分後の九時十五分。恵那ちゃんとハギワラさんが部屋から出てきてお風呂に入り、サウナで死んでるオギワラさんを発見した。以上やな」

 

「よし」

と言って、それらの情報をホワイトボードにまとめる千明。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「フ……これを見れば犯人は明確だな」

 千明は今度こそという表情で頷く。

 

「さっきも同じこと言うて、全然明確やなかったけどな」

 やはりあおいは疑わしそうだ。

 

「今度こそ明確の明確だ。九時に恵那がお風呂に入り、オギワラさんが生きていたことは確認している。その直後に恵那は部屋に戻り、ワタベさんも部屋に戻った。この時お風呂でオギワラさんと一緒にいたのはワタナベさん。つまり、犯人はワタナベさんだ!!」

 

「ちゃうでー」

 やっぱりな、という顔のあおい。

 

「は? なんでだ?」

 

「ワタナベさんはオギワラさんとお風呂に入ってへんわ」

 

「なに言ってんだ。『八時三十分、ワタナベさんが部屋から出てきてロビーを通ってお風呂に入った』って、言っただろ」

 

「確かにそう言うたけど、ワタナベさんがオギワラさんと一緒にお風呂に入れるわけないやろ混浴やないんやから。もしワタナベさんが女湯に入ろうとしてたら、ウチらが止めるか、中でオギワラさんが大騒ぎするわ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ひょっとして、ワタナベさんって男なのか?」

 

「当たり前や、見たらわかるやろ。最初に()うたときも、男湯から出てきたやないか」

 

 そう言われ、千明はワタナベと初めて会った時のことを思い出す。

 ペンションにチェックインし、101号室の部屋に荷物を置いて着替えた後、温泉に入る前にお菓子を食べようとロビーに戻った時だった。

 千明たちがソファーに座ろうとしたら、右手側のお風呂から浴衣姿のワタナベが出てきて、会釈で通り過ぎたのだ。

 

「ていうか、なんでイヌ子はあの時ワタナベさんの名前が判ったんだ? 自己紹介してないだろ?」

 

「ああ。それはちょっとした推理やな。ウチがロビーで受付した時、名簿には荻原(オギワラ)さんと萩原(ハギワラ)さんの他に、渡邉って名前があったんや」

 

「ああ、それは、あたしも見たな」

 

「最初はワタベさんかと思たけど、ワタベさんはウチらの後に受付してたから、渡邉さんとワタベさんは別人やと気付いた。ほんで、その後ロビーで男湯から人が出て来た時、他に宿泊客はおらんから、この人がワタナベさんやろ、と思たんや」

 

「なるほど」

 

 納得し、千明はさらに記憶を探る。

 あの時、ワタナベは右手側のお風呂から出て来た。

 客室側から見て右手側なので、確かに男湯から出てきている。

 ちなみにワタベの方は、最初に会った時から女性客という認識だった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「ということで、この案件はもう一度検証し直すことにする」

 

「ホンマにめんどいな」

 

 

 

 

 

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