スタンドをスべて持つ者は悪魔のいる高校へ   作:衝動書きする人

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プロローグ

 

 ワイワイと放課後の教室の中で女子がにぎやかに談笑している。共学になったばかりの元女子高であっただけに男子は数が少なく、それでも若さゆえの気の大きさで何事もなく女子と話したり男子同士で会話をしている。なんでもないごく普通の日常の中、俺は顔に本を乗せて天井を仰ぎ見るように椅子に座ったまま眠っていた。

 

「…………」

 

 正確には微睡みの中にいるため、周りのこともうっすらと把握できているのだが、眠さに身を任せてアイマスク代わりに愛読している小説を顔にかぶせて入眠と覚醒を繰り返す。この入眠と覚醒を繰り返す何とも言えない感覚が好きで眠気が来てはあえて寝難い体勢でいることが多い。

 今日も今日とて微睡みを楽しんでいると、にぎやかだった教室がやかましくなった。正確には教室の外から絶叫するかのような男子の声が3人分と大勢の女子の怒りに満ちた声、そしてドタバタと走り回っている音だが、それを聞いた俺はまたかと覚醒した頭を持ち上げるように本を手に落として廊下を見る。

 

「待てこのケダモノどもぉ!今日こそそのエロ根性叩きなおしてやる!」

 

 はっきりと聞こえる女子の声にそうだそうだと同調しながら怒りの声を上げる女子たち。それに対して男子3人は何とも情けない声を上げていた。

 

「うおおおおおおお!死ぬ!さすがに木刀は死ぬ!」

 

「テメェらマジでふざけんな!お前らしか見てねぇのに俺まで巻き込まれるとか理不尽だろ!」

 

「うるせぇ!一緒に来た時点でお前も同罪だ!」

 

 またか。毎日ではないがいつもの騒ぎに軽くため息が出る。性に正直なのは別にいい。世界には口にできないような性癖を持つ存在は多数存在している。それ自体が悪いとは言わない。だが他人に迷惑をかけるようなことをしていることはいただけない。異常な性癖は内に秘める、あるいは人に出さないから認められるのであってそれを出したらただの犯罪だ。それで割を食うのはそいつらだけでなく、似たような癖を持つ常識人だ。

 

「「「うぉ!?」」」

 

 ツルンッと()()()()()3人は廊下で足を滑らせて倒れる。()()()()好機と見たのか女子たちはそのまま走って3人に近づき、思い思いに手に持った木刀で3人をしばく。3人の汚い悲鳴が学校中に響いているのを聞きながら、それを見ながら年度をこねくり回すように尻尾に音を戻す。

 

「聞くに堪えないヤローの響き(エコーズ)だな」

 

 やれやれだ、と再びため息を吐きながら本を片手に3人の元へ向かう。女子たちが心行くまでしばき終わるまでその様子をみて、女子が解散したのならボロボロになった体を()()してやるとしよう。これでもあの3人には久々の日本での生活で世話になっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっで~~~!折れてる!ぜってぇ骨折れてるって!」

 

「あいつらマジで容赦ねぇな!俺らを殺す気か!?」

 

「くっそ!あいつらマジで覚えとけ!」

 

「お前ら自業自得って言葉知っているか?」

 

 女子たちにしばかれて痛みで動けない3人を引っ張って保健室に向かい、治療と称して包帯を巻いていく。治療している間、治って痛みが引いてきたのか思い思いに愚痴っているがそれを呆れながら一蹴する。

 

「だがよ!そこにエデンの覗き穴があったら覗く!これこそ男のロマン!男の甲斐性ってもんだろ!」

 

「女へのリビドーは否定しないが、お前らのそれはもはや病気だぞ。医者いけ医者」

 

 あれだけしばかれてもなお、今まででも数えるのも面倒になるほどしばかれているにも関わらず何度も覗きを繰り返すその様は諦めが悪いなんてものじゃない。本当に依存症と同じレベルでの病気だぞというレベルだ。なんでこいつらこの学校以外で捕まってないんだろうか。

 

「いやぁ、でもお前ホントすごいよな。包帯を巻くだけで痛みが引いてるし、楽になってる。怪我の扱い方うまくねぇか?」

 

 パシン、と怪我をしているはずの包帯をしている箇所に手を打つ。それでもさっきしばかれた痛みがないことに関心と称賛を言葉にする3人に、そらどーも、と何でもないように返答して最後の部分に包帯を巻き終わると3人の頭を全力ではたく。

 

「「「いでぇ!」」」

 

「おら、包帯巻いて動けるようになったんだ。キリキリ動け馬鹿共」

 

 俺の言葉に文句を言いつつも俺の後を追うように歩く3人。これから教師に言われた補修作業を行いに行くのだ。これもこの馬鹿3人がいろいろとやった埋め合わせに行うことなのだが、この3人は意外なことに拒否をすることなく行ってきた。面倒くさいだのなんだのと文句は言うが、仕事はちゃんと行っている上に生徒が行った範囲内という但し書きがつくもののちゃんと完遂しているのだ。

 それでいて学校の外ではお年寄りには優しくしており、理不尽には立ち向かい、困った人を助けるなどということもしているのだから学校側でも扱いに困っている3人だろう。だからこそこれだけで済んでいるのだ。女子たちもそれをわかっているから覗き被害を受けている女子からの制裁だけで済んでいるのだ。それをこいつらは理解できていないうえでやっているのだから俺も見捨てる気になれない。

 

「今日は体育館裏の草むしりだ。道具は近くに置いてくれているとのことだからキリキリ働け馬鹿共」

 

「うぃーっす。んじゃやるかぁ」

 

「おう。俺こっちからするからお前そっちよろしく」

 

「了解」

 

 文句は言うがたらたらとはしない。真面目にやっているわけではないが投げだすことはしない。こういう誠実なところを見せていれば、こいつらが日ごろ吐き出している彼女が欲しいと言う怨嗟もなくなるだろうに、世の中よくできてるなと陰でため息を吐く。

 

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