スタンドをスべて持つ者は悪魔のいる高校へ   作:衝動書きする人

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悪魔と堕天使と 1

 

 今日も今日とて登校日。煩わしいわけではないが、勉強をすればよかったと思っていたのに面倒だと感じるのは、前世の記憶が記憶であって経験ではなくなっていることが原因なのだろうか。そんなことを思いながら気だるい体を動かして教室へと入る。いつも通り馬鹿3人組が興奮して騒いでいたのだが、今日はその方向性が違う。

 

「はっはっはっ!どうだ!羨ましかろうて!」

 

 イッセーが2人をバカにするような言動をとり、それに文句を言ってイッセーを攻撃している。いつも通りではあるが今日はやけに興奮度合いがおかしいと思った俺は3人に声をかけた。

 

「何騒いでんだお前ら」

 

「伊央!聞いてくれ!こいつ、俺たちに黙って彼女を作りやがった!」

 

 眼鏡をかけたほうのバカ、元浜は血涙を流さんばかりに憤怒の表情を浮かべてイッセーに指を指す。イッセーは鼻高々としながらその通り!と腕を組んで自慢をして松田はそれを骨が折れるんじゃないのかと思うほどの勢いで床に拳を何度も振り下ろしている。

 こいつらの反応からして、本当なんだろうことはわかったがまさかイッセーに彼女ができるとは思っていなかった。

 

「どんな子と付き合ったんだ?」

 

 驚きはあるが、同時に納得もあった。変態が全力疾走して前に出ているド変態だが、それでも根は好青年だ。そこを見て惚れたのかと思い写真でもないのかを聞いてみるとイッセーは待ってましたと言わんばかりに携帯を取り出した。

 

「どうだ!すごくかわいいだろ!」

 

 そう言いながら写メを見せてくる。画像を見ても、確かにすごくかわいい。黒い髪は画像越しでもわかるぐらいにきれいで、顔立ちはそこらのアイドルも顔負けなほどだ。プロポーションも整っている。まさに人を堕落させる存在であるかのように感じるほどあまりにもすべてが()()()()()()()

 

「……イッセー。この子の名前は?」

 

「天野夕麻ちゃんって名前だ!名前からしてかわいいもんなぁ!」

 

 デレデレと画像を眺めては顔をだらしなく崩すイッセー。それを血涙を流してハンカチをかみしめる馬鹿2人。

 

「ふぅん?出会いは?」

 

「学校の帰り道で告白してくれたんだ!一目ぼれです!付き合ってください!ってな!」

 

 がっはっはっ!と2人に勝ち誇るように高笑いをするイッセー。話を聞くにどうも初めて見て一目ぼれした、とのことだが、どこまで本当なのか気になる。確かに学校の外では好青年だから惚れられることもおかしくはないと思うが、その行動を見ての告白にはどうも感じられない。何か意図を感じる。

 あまりにも幸せな雰囲気からして忠告することも躊躇しそうになるが、一応言っておくべきかもしれないな。

 

「イッセー、美人局の可能性もあるから気を付けておけよ」

 

「ひでぇなお前!?」

 

 俺の忠告を大げさなほどの反応で返すイッセーだが、それぐらいしてもらわないと困る。同時にデートに行く前に俺の家によって一服していけと言うと、俺の料理の効能を知っているイッセーは頼むぞ!と笑顔で高笑いをしていた。

 さて。俺の予想が外れてくれればそれでいいんだが、準備はしておいた方がいいだろう。人並外れた存在は嫌と言うほど知っているからな。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。さすがに、緊張するなぁ……」

 

 時刻は午前8時30分。デートの集合時間は9時だが、遅刻をするわけにはいかないと張り切った結果、昨夜は全然眠れず半分徹夜の状態で今ここにいる。正直伊央に頼んで紅茶を用意してもらってなかったらフラフラしていたかもしれない。

 中城出(なかじょうで)伊央(いお)。イタリアからの帰国子女で、出会ったのは高校に入ってからだ。出会った当初はピリピリとした雰囲気を隠そうともせずに誰も話しかけようとしなかったのを覚えている。そんなやつが隣の席だったのが嫌で何度も話しかけていた。最初は警戒するように口数も少なかったけど、だんだんとしゃべるようになってからはそいつが愉快な性格をしていると言うことが分かった。

 だいぶ仲良くなってからはよく家に招いてくれて、そのたびにイタリアで培った料理をごちそうしてくれた。これがよく漫画であるような反応をするほどではないけどめちゃくちゃうまいのだ。素材にこだわっているのか、体の調子を整えてくれると言って食べさせてくれた料理は、実際食べてからめちゃくちゃ調子が良くなるんだ。今だって伊央が淹れてくれた紅茶を飲んで、眠気はあるものの身体はすこぶる調子がいい。まるで()()()()()()()()かのように体が動いてくれる。

 

 そわそわと時計を何度も確認しながら待っていると、遠くから見とれるほどの黒髪が風になびいているのが見えた。目的の彼女が来たことがわかり、急いで身だしなみを整える。

 

「お待たせ。待った?」

 

「夕麻ちゃん!全然待ってないって!」

 

 ふんわりとした笑みを浮かべて少し速足で駆けよってくる夕麻ちゃん。所作1つ1つがきれいな女性が俺の彼女だと言うことが、言葉を重ねていくにつれて徐々に自覚できていく。

 

「それじゃ、行こうか!」

 

「えぇ。楽しみね」

 

 夕麻ちゃんの柔らかい手を握り、その柔らかさと夕麻ちゃんの方から感じる甘い匂いに興奮しながらも紳士的な行動を心がけてデートに出かける。デパート、ゲーセン、動物園。この街にあるレジャー施設を回り、こんなかわいい子とデートをしていることのうれしさで日中興奮が冷めることはなかった。

 

「楽しかったね」

 

 デートも終わりが近づき、夕麻ちゃんの希望で人気のない公園に来た。夕日が公園内を照らし、夕麻ちゃんはステップを踏むように公園の真ん中まで移動して俺もそのあとを追うように歩いていた。

 

「ねぇ、イッセーくん。お願いがあるんだけど、いいかな?」

 

 夕日に照らされた夕麻ちゃんは幻想的でとてもきれいだった。まるで天使が降りてきたのかと思うほどに現実離れした光景に半分思考が停止した状態でいいよ、と続きを促し、それを聞いた夕麻ちゃんはにっこりと見とれる笑みを浮かべた。

 

「それじゃ、死んでくれる?」

 

 夕麻ちゃんが何を言ったのか、わからなかった。なんて、と聞き返す前にはばたく音と共に背中から黒い翼が生え、光で出来たような槍がいつの間にか手にあった。突然のことに思考が止まった俺に、光っている槍を俺の方へ突き出してきた。

 

「うぉ!?」

 

 突然、自分の意志に背いて体が勝手に動いた。光で出来ている槍を転がるように、体に砂がつくのも構わないで避けた。風を切る音が俺のいた場所から聞こえた。光で出来た槍は見た目は幻想的なものだったが、その光は昏いものだとその時の俺は感じた。

 

「避けた?」

 

 避けられることが予想外だと言わんばかりに目を丸くして俺を見る夕麻ちゃん。その目はさっきまで一緒にいたときとは違い、俺のことなんて何とも思っていない、しいて言うのなら養豚場の豚を見るかのような何の感情のない目で見ていたことは、俺でもわかった。

 

「……生意気ね」

 

 面倒だ、と言わんばかりにため息を吐いた夕麻ちゃんは、今度こそ外さないとさっきよりも素早く槍を突き刺してきた。あまりの速さに避けられない、と思ったのだがまた体が勝手に槍を避ける。

 

「うお、た、あぁ!?」

 

 避けきれずにほほに掠めて血が出る。時々無茶な体勢で避けたから筋肉や関節が悲鳴を上げているのがわかる。でも、まだ混乱しているし、状況が全く分からず、馬鹿だと言われている俺でもわかる。これは映画でもなんでもなく、本当に夕麻ちゃんは俺を殺しにかかっている。

 

「神器が目覚め始めている?これは、余計に処分しなくてはならないようね!」

 

 槍が近くを通り、体は意志に反して無理やり動かされている。夕麻ちゃんが何を言っているのか理解できないまま生と死の狭間を行き来していることの恐怖と、まだ現実を受け入れられない混乱が頭を回っていた。

 死から逃れようと身体が動いている最中、苛立ちを隠そうともしない夕麻ちゃんが憤怒の形相を浮かべていると、地面を蹴ろうとした俺の脚が砂利で滑った。ただでさえ不安定だった体勢が崩れ、このままだと槍が俺を貫いてしまう。俺の体の中から何かが込み上がってきた中、その声が聞こえた。

 

「何をしているの?」

 

 ピタリ、と夕麻ちゃんの動きが止まった。貫こうとしていた槍が止まり、動いた勢いを殺せない俺は地面に顔がぶつかって口の中に砂利が入るのも構うことなく声のしたほうを見る。そこには、夕日を浴びてもなお奇麗に紅さが輝いている、俺の通う学校の有名人だった。

 

「その紅い髪……。まさか、グレモリー!?」

 

 しまった、と言わんばかりに苦々しい顔をする夕麻ちゃん。それを警戒するように睨みつけながら静かにこちらに近づいている女性、リアス・グレモリーは口を開く。

 

「もう一度だけ聞いてあげる。あなた、何をしていたの?」

 

 ゾッとする声音だった。俺に向かって言われているわけではないとわかっているのに、こんなにも冷たい言葉を出せるのかとさっきまでとは別で背筋が凍り付く感覚がした。

 

「チッ!」

 

「待ちなさい!」

 

 夕麻ちゃんは背中の翼を動かし、空を飛んだ。逃がすまいとグレモリー先輩は手を夕麻ちゃんへ向けるが、夕麻ちゃんは手に持っていた槍を俺の方に投げつけてきた。

 

「うわっ!」

 

 飛んでくる槍に思わず顔を背ける。また体が勝手に動き、ゴロゴロと地面を転がっていると金属の棒が折れたような甲高い音が響いて同時に舌打ちが聞こえた。

 

「……逃したか」

 

 恐る恐ると顔を上げるとグレモリー先輩は苦々しい表情を浮かべて夕麻ちゃんが飛んで行った方向を睨みつけている。俺も同じ方向を見るけど、夕麻ちゃんの姿は見ることができなかった。

 

「大丈夫だった?」

 

 終わったことのかすらわからず、何が起きていたのかも理解できずに呆然と空を見ているとグレモリー先輩が声をかけてくれた。夕日の逆光で表情はよく見えなかったけど、わずかに見えた顔は、一生忘れることがないだろうと断言できるほどにきれいだった。

 

 これが、俺の日常が非日常へと変わった瞬間だった。何が起きていたのか、これから何が起こるのか、何も知らなかった俺の、奇妙な運命の分岐点だ。

 

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