太陽が照らす海よりも碧く   作:heavy weather

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書きたくなったので、書いてみました。
青春っぽい感じにしたいです。


第1話

渡辺曜と出会ったのは、小学生の時だった。

そのころの俺は泣き虫で、よくいじめられていた。

唯一の友人だった隆は親の都合で転校してしまった。

俺は独りぼっちだった。

 

「おぉい、飛び込んでみろよ」

 

いじめっ子どもの声が聞こえる。

 

「その高さから飛び込む勇気もないんだろ」

 

それは事実だ。

俺は泣き虫で、その上、勇気もなかった。

ちょっとした高さの防波堤から海に飛び込む勇気もない。

地元の子供たちはみんな、平気で飛び込んでいるというのに。

 

「意気地なし」

 

なじる言葉が浴びせかけられる。

ぐ泣きそうになりながら、ぐっとこらえていたその時だ。

 

「やめなよ」

 

女の声が響いた。

みんなが一斉に俺の後ろを見る。

そこにいたのは、下級生の女子だった。

確か、渡辺だっけ。

過疎化が進んだ田舎町だから、下級生で学年が違ってもなんとなく苗字は知っていた。

 

「なんだよ、ガキは引っ込んでろよ」

 

いじめっこの主犯格の少年が怒鳴る。

 

「お前、まだ2年だろ。6年にたてついてんじゃねーぞ」

 

その言葉にムッとしたのか、女の子が勝気な目で少年をにらんだ。

 

「なによ、学年は関係ないでしょ」

「おおありだよ。お前の歳だと、まだここから飛び込めねーだろ!」

「できるよ」

 

え?

と思ったのもつかの間。

その小さな女の子は、防波堤から海に飛び込んだ。

それも、恐れ知らずなほどにまっすぐな、きれいなフォームで。

ざばんっと、海面が揺れる。

やばい、溺れたか?と思いきや。

 

「ぷはっ」

 

女の子が、元気に海中から顔を出した。

 

「ほら、できた」

「だ、だからなんだってんだよ!」

 

悔しまぎれのセリフを残して、いじめっ子たちがその場を去っていく。

2年生の女の子に、男気みたいなのを見せられて、立場がなかったのだろう。

俺は、その場に呆然と立ち尽くし、それから、お礼を言わなくちゃ、と思った。

 

「あ、その、あ、ありがとう」

「別に? 大したことしてないよ」

 

女の子は、平然と答える。

それから、俺のほうに手を伸ばしてきた。

引っ張り上げてほしいのだろうか?

俺が手を伸ばそうとすると、首を振った。

 

「違うよ。ほら、早く」

「え?」

 

意味が分からない。

 

「早く、お兄さんも飛び込んで」

 

女の子が、あっけらかんと言った。

 

「飛び込む?」

「そうだよ」

「なんで?」

「なんでって?」

「だって、君は俺を助けてくれたんだろう?」

「うん」

「じゃぁなんで」

 

なんで、いじめっ子と同じことを言うのさ。

 

「だって、そのままだと、ずっと繰り返しだよ?」

 

女の子が、言った。

 

「その高さ、小2の私だって、勇気を出せば飛べる。それは今、証明したよ。だから、お兄さんも飛ばなきゃ。ずっといじめられ続けるよ?」

「…………っ!」

 

正論だった。

悔しいほどに正論だ。

俺は、唇をかんだ。

ただ単に俺を助けてくれるだけの優しさじゃない。

この状況を切り抜けるすべを教えてくれている、優しさ。

そうだとわかっていても、どこか腹立たしい。

でも……。

俺は、女の子を見る。

その瞳には、曇りがない。

 

「くそっ!」

 

俺は覚悟を決めた。

目をつむり、目の前の海へとジャンプした。

 

 

 

 

飛んでみると、一瞬だった。

体重に従い落下した体が、海に着地する。

水面に体が当たる衝撃があったかと思うのもつかの間、体は海中に沈みこむ。

慌てて手をかいで、海面に顔を出した。

視界に、太陽がさんさんと差し込む空が広がった。

 

「で、できたっ!」

 

思わず叫ぶ。

 

「やったね」

 

青い空に、女の子の顔がかぶさった。

俺をのぞき込んでいた。

 

「あ、あぁ」

 

俺は少し照れくさくなった。

俺はこの時、小6。

相手は小2だ。

俺は何を子供相手に焦ってるんだ。

 

「ね、やってみたら、怖くなかったでしょ?」

 

それは事実だった。

 

「そ、そうだな」

 

俺がぎこちなく答えると、女の子が笑った。

 

「えへへっ」

 

俺も、思わず笑う。

 

「私、曜。渡辺曜」

「俺は洋(ひろし)。斎藤洋」

 

なんとなく、ハイタッチする。

 

「ひろしってどんな字を書くの?」

「サンズイヘンに羊」

「あっ、それって、太平洋のヨウだ」

 

女の子……曜が目を輝かせる。

海にまつわるものが好きなのだろうか。

 

「いい名前だね!」

 

輝くような瞳で俺を見つめた。

 

「あ、ありがと」

 

俺は思わず、目をそらした。

 

 

これが、俺と曜との出会い。

その日の夜は、急に高熱が出た。

珍しく、海に入ってしまったからかもしれない。

 

 

 

 

(つづく)

 




いかがでしたでしょうか。
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