「集合写真撮ります。みんな集まって!」
部長の掛け声で部員達はわらわらと噴水の前に整列する。皆の顔からは達成感と安堵感の笑顔がこぼれていた。撮ります、というカメラマンに満面の笑みを向ける部長は、先ほど受け取った賞状を大事に掲げている。
[金賞 京都府立北宇治高等学校 京都府代表]
昨年、全国大会へ駒を進めた重圧を物ともせず、吉川優子部長率いる北宇治高校吹奏楽部は府大会金賞、更には二年連続の関西大会出場の快挙を成し遂げた。北宇治の名前が告げられると地鳴りのような歓声が隆翔を包んだ。隣に座っていた秀一が抱き締めてきたことで、隆翔は関西大会行きの朗報を確信した。
前方の席で拳をぎゅっと握ってフルートの後輩たちと喜びを分かち合う希美の姿が目に焼き付いている。彼女もまた、高校生活において最初で最後のコンクールに賭けていた。表情は見えなかった。きっと、その表情は万感の思いに溢れているであろう。彼女にとっても、念願の金賞であった。
バスへ戻る道中、みぞれが隆翔のシャツの裾を引っ張った。みぞれの顔は達成感溢れる会心の表情をしており、隆翔はその姿に高揚した。
「先輩、おめでとうございます」
「ううん、良い演奏ができたのは樟葉くんのおかげ。希美を支えてくれてありがとう」
みぞれから掲げられた拳を突き合わせる。そして心底嬉しそうな表情を見せた。
学校に到着し、コンクールで使用した楽器を元に戻す作業が終わる頃には夕方になっていた。この日はそのまま解散となった。
今年のコンクールで京都府代表校を勝ち取った学校は北宇治の他に、源ちゃん先生こと月永源一郎が特別顧問として赴任した龍聖高校、そして梓の通う立華高校であった。両校とも素晴らしい演奏だった。そして三校ともクオリティー面では互角であると隆翔は分析した。強いて言えば北宇治や立華にない強み、それは龍聖が男子校であり男子特有の大きな身体を使った力強い音の圧力である。音の強さは定められた人数を下支えし、演奏の説得力に繋がる。無論金賞を獲得するまでの過程があって、努力なくして成し遂げられないことではある。それこそが、赴任した求の祖父である月永源一郎のカリスマ性なのかもしれない。
なんとなく、彼が自分の苗字を嫌い、龍聖から飛び出してきたのかが理解できた。
翌日の練習は学校が工事で使えない関係で休養日となった。久しぶりの朝寝を堪能していると、来客を知らせるインターホンが隆翔の目を覚まさせた。仕方なく重い腰をあげて受話器をあげた。
「……はい、どちら様」
「あ、隆翔? 梓だよ!」
「え、ちょ、ちょっと待ってくれ」
突如とした梓の来訪に思わず嘘だろ、という呟きが無人の部屋に響く。側頭部から天に伸びた寝癖に手をあてて潰しながら、最低限人前に出られる服を着て梓を出迎える。
「……お待たせ」
「あはははは! 寝癖やば」
扉を開けると、昨日と同じくポニーテールを結んだ小柄な少女が立っていた。そして隆翔を見るなり寝癖を指して大笑いをした。手櫛で寝癖を直そうと試みるが、その根は想像以上にしぶとかった。
「もしかして今まで寝てた? 起こしちゃってごめんね」
「いや、大丈夫。まさかアポなしで突然やってくるとは思わなかった」
「連絡ならしたよ。既読ついてないし多分見てないんだろうけど」
スマホを起動すると、確かに梓からの連絡は受信していた。夜中の一時に。
「一時って、がっつり寝てる時間だわ。立華だって昨日早かったろ、眠くないの?」
「いやね、昨日はコンクールの余韻で興奮してなかなか眠れんかったのよ」
ああ、そういえばと隆翔は思った。立華も北宇治と同じく関西大会へと駒を進めたのだ。
「金賞おめでとう、梓」
「ありがとう。でも隆翔もでしょ? おめでとう!」
隆翔は少しだけ照れつつありがと、と応えた。
中学生の頃までは、梓の母が帰るまで彼女をよく預かっていた。それまでは当たり前のように自宅に梓がいたが、高校が別々になるとそういったことも無くなっていた。梓は時折なつかしい、と感傷に浸っていた。
「で、何の用で来たんだ」
気の利いた物がないため冷蔵庫の麦茶を出す。梓は思い出したように肩掛けのポーチからとあるチラシを見せた。そのチラシには『ウィンド・ブラスバンドコンテスト』と大きく中央に書かれている。下には今日の日付が記されていた。
「なにこれ」
「このあと予定ある?」
梓が首を傾げて尋ねる。不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
「ないけど、これ見に行くつもり?」
「そう! 行ってみない?」
イベント内容に目を通した。京都市内の私設楽団や有志のブラスバンドが小編成で演奏するアンサンブルコンテストだった。こんなところにも食指を伸ばして音楽漬けな梓に慄いた。
久しぶりの再会となる梓の誘いを無碍にするほど、隆翔は薄情ではなかった。
「分かった、シャワー浴びてくるからリビングでちょっと待ってて」
「……え、ちょっと」
「ん、なに?」
さも当たり前のようにシャツを脱いでしまった隆翔に、梓は赤面した。隆翔はなぜ梓が固まっているのか分からなかったが、上半身裸の自分の姿を見て日頃の習慣に後悔した。
「ごめん、さすがにデリカシーがなかった!」
「い、いいよいいよ! 隆翔の家なんだし! あはは、じゃあ準備が終わるまで一旦家に帰ってるよ。近いし」
梓はそそくさとチラシを仕舞って玄関へと向かった。連絡してね、と断りを入れて、ドアはバタンと閉まった。静けさが訪れた部屋で隆翔はやってしまったと頭を抱えた。梓が出て行った玄関のドアに頭をコツンと打ち付けた。
「シャワー浴びよ……」
夏真っ盛りとなった京都は連日猛暑日を記録し、短い命の蝉がじわじわと大合唱を叫んでいる。お気に入りのバンドのシャツに通気性の良いカーキのジョガーパンツというラフな格好で外へ出たのは正解だった。
梓は既に駅で待っていた。オーバーサイズのシャツにショートのデニムパンツと夏らしい爽やかな装いに、いつものポニーテールがよく似合っている。
京阪電車の中は空調がよく効いていた。数分歩くだけで汗が滴り落ちるような気温の中では、電車やバスの空調は救いであった。
「ウチらの音楽、聴いてくれた?」
「うん」
「……どうだった?」
「上手いなって思った。いや、去年も関西に行ったって聞いてたから上手いのは勿論なんだけど、龍聖とも違う音の説得力というか。上手く言葉に出来ないんだけど」
「ううん。褒められた気がして嬉しい」
「褒めてるよ」
「分かってる!」
この調子で話し合えるのも久しぶりだ。いつしか忘れてしまった感覚だった。
最寄りの黄檗駅から京阪電車に揺られ、中書島から出町柳方面へ乗ること二十分。三条駅で降りた二人はバスに乗り換え、会場であるイベントホールへ辿り着いた。各ホール案内のディスプレイには、梓の持ってきたチラシと同じ名前のイベントが開催されている。
「よかった、間に合った」
安堵した梓が胸をなで下ろす。彼女の聴きたい目当てのグループの時間にはまだなっていなかった。広いイベントホールであり、府大会が開催されたホールほどではなかったが、三十人程度の中編成くらいは問題なく演奏可能な規模であった。
客席に梓と並んで座る。隆翔は梓に尋ねたいことがあった。
「なあ、梓はいつもこういうイベントに足を運ぶのか?」
「ううん、休みの時はいつもトロンボーン吹いたりしてるから、こういうイベントは久しぶりかも」
唐突に思い出した。隆翔が中学三年の北中吹奏楽部は府大会金賞であった。大会が終われば高校受験モードに突入するので引退する事が普通であるが、梓は毎日部活に顔を出すか、空き教室でトロンボーンを吹いていた。放課後の校舎に轟く梓のトロンボーンに、吹奏楽部の後輩からは畏敬の念を込めて「練習の鬼」と呼ばれていた。
「じゃあ、どうして——」
「しっ、始まるよ」
開演のブザーが鳴る。ホールは暗転しスポットライトが舞台中央を照らす。舞台には五脚の椅子と譜面台が置かれていた。
やがて、拍手と共に奏者が入場する。制服を着た男女、それぞれクラリネット、ファゴット、ホルン、オーボエ、フルートと指揮者の六名が席に着いた。
木管五重奏の奏でる楽曲はアストル・ピアゾラ作曲の『リベルタンゴ』。タンゴらしい形式に囚われない自由な曲調、リフとメロディーが盛り込まれ指揮者は跳ねるように吹けと指示を送る。演奏しているメンバーも終始楽しそうであった。
三分間の短い演奏が終わる。会場のオーディエンスは彼らに割れんばかりの拍手を贈る。隆翔と梓も惜しみない拍手を贈った。
『ただいまの演奏は陽明学園高等学校吹奏楽部の皆さんでした。出演者は——』
アナウンスが学校名と演奏者を淡々と告げる。その時、アンサンブルを素直に楽しんだ隆翔は完全に油断していた。
「———フルート、内藤秀」
拍手を鳴らす手が止まった。視線の先には、フルートを大切に抱えてお辞儀する生徒。居直った姿は、隆翔のよく知る旧友であった。
梓に笑顔はない。ただ、そこにある事実を見よと訴えかけていた。
「行こう。秀ちゃんが会いたがってる」
梓は隆翔の手を取ると席を立った。
内藤秀が控え室から出てくるまで、二人はロビーで待った。イベントの奏者が往来するロビーは終始賑やかだった。
二人の間に流れる重い空気を吐き出すように、梓が会話の口火を切った。
「このイベント、秀ちゃんが誘ってきたの。この前久しぶりに連絡があって、イベントに出るから来てほしいって」
「うん」
隆翔の表情は暗かった。内藤を発端とした苦く重い記憶。重油のように黒ずんだ北中での出来事。念願のコンクールメンバーを奪われ、彼女はそのまま退部してしまったこと。切磋琢磨してきた同級生だからこそ、彼女への想いは一段と強かった。
「隆翔に出会ってなくても今日は来てた。でも、昨日隆翔に会えて、音楽やってたのが嬉しくて。嫌だったら謝るから、秀ちゃんには当たらないで……」
今にも泣き出しそうなか細い声で隆翔に訴えかける。宇治川のベンチで退部を伝えてから、梓の涙を見るのはもうごめんだった。
「まあ中学のでは嫌なこともあったけど、梓と毎晩練習したことも、コンクールメンバーになったことも、日々上手くなっていく内藤に焦った日も、俺にとっては必要なことだったと思ってる。だから、今日は誘ってくれて嬉しかった」
いま、自分はどんな表情で梓に語っているだろうか。自分のことなのに、自分の感情が分からなかった。
「よかった。秀ちゃんに隆翔に会ったって伝えたら、あの時のこと、会ってちゃんと謝りたいって」
謝られるようなことなんか何もない、とは梓には言えなかった。それは内藤の懇意と梓の善意に叛いているような気がした。
やがて控え室から伸びる通路の扉が開き、制服姿の女子生徒が出てきた。
「……秀ちゃん!」
梓が女子生徒に向けて手を振る。
「梓ちゃん!」
ああ、内藤だ、と隆翔は思った。顔を上げるのが怖かった。どんな顔をしたらいいのか分からなかった。
伏せた視線の先に、内藤が立っている。
「……樟葉、くん?」
内藤の呼ぶ声に隆翔の肩がビクッと動く。
彼女の顔を見るために、隆翔はようやく顔を上げた。
「久しぶり、内藤」
全然出来ていない作った笑み。引きつった頬の感触が伝わってくる。
三年ぶりに会う内藤は、目を真っ赤にして涙を湛えている。
「樟葉くん、ごめんね。三年前、私を庇って先輩に言ってくれたのに、私は何もできなかったから……。部活も辞めたって聞いて、なんて声を掛けたらいいか分からなくて、樟葉くんだけが傷ついて、すごく申し訳なくて……」
ハンカチで目元を覆いながら泣いている。内藤はずっと戦っていた。なよっとした印象の彼女だったが、誰よりもストイックで、誰よりもフルートを好きでいようとした。その姿は誰よりも隆翔が知っていた。
「……樟葉くん、もう音楽は辞めちゃった? フルート、樟葉くんに負けたくなくて、いっぱい頑張ったよ。聴いてくれた?」
「聴いたよ……」
内藤が奏でた音が隆翔の琴線に響いた。足元にぽろぽろと水滴が落ちる。止めようと必死の涙腺は、隆翔の意志に逆らう一方だった。
「綺麗な音だったよ……。内藤がフルート続けてくれて、今はそれだけで……」
涙が頬を伝う。切磋琢磨した中学二年の夏、音楽室で一喜一憂した思い出が濁流のように襲った。
「ありがとう、樟葉くん。フルート続けてよかった」
涙を拭いて、内藤秀は満面の笑みを隆翔に向けた。
落ち着きを取り戻した内藤は、事件の顛末をゆっくり話した。オーディション発表の翌日、内藤は先輩の藤波にメンバーを譲ってほしいと頭を下げられた。彼女は困惑した。しかし中学に入学してから面倒を見てくれた藤波に対して恩も感じていた。情に負けて、内藤は渋々承諾してしまった。その後、自責の念に駆られ、どんなことがあってもメンバーを譲るべきではなかったと後悔した。でも承諾した手前、それを藤波に伝える度胸がなかった。
数日後、隆翔が藤波がメンバーとなった不満を漏らし部内で孤立した。全て裏目に出た結果となり、隆翔に対しても北中吹奏楽部に対しても申し訳が立たなかった。泥を被る必要は全くなかったのに、数々の陰湿な目に遭ったと聞いてショックだった。そしてコンクールの後、隆翔は退部した。
「ずっと謝りたかった。樟葉くんもすごく上手に吹けるようになってたのに、私の所為で退部までする羽目になっちゃって」
「もういいんだよ。俺も頭に血が昇りやすい性格だから失敗したんだし。なんだかんだ、今の北宇治も楽しいよ」
隆翔の言葉を聞いて内藤は安堵した表情を見せた。
「梓ちゃんもありがとう。今日は久しぶりに会えて嬉しかったよ」
「こちらこそ。フルート、頑張ってね」
梓は内藤の手を取ってエールを送った。
「ありがとう。二人とも次は関西なんだよね。頑張って、応援してるから!」
内藤は二人に指でピースサインを送って控え室の扉へ入っていった。
「……言わなくて良かったの?」
「良いんだよ。アイツは前に進み続けてるんだから、余計な心配はかけたくない」
「……そっか」
隆翔が奏者でないことは、内藤に伝えなかった。伝える必要もなかった。
陽明学園吹奏楽部は洛北に開設したカトリック系の学校だった。生徒数は少なく、吹奏楽部も小規模であり昨日のコンクールへは参加していない。それ故に今日のようなイベントにアンサンブルとして出ているのだろう。兎にも角にも、内藤がのびのびと吹ける環境であるのは違いない。実際、今日の演奏も彼女の性質に合致していた。
冷房の効いた会場を出るとすっかり夕方になっていた。じっとりとした熱が二人を襲うが、昼間ほど嫌な気分ではなかった。
「このあとどうする?」
「何も考えてない」
「じゃあさ、ちょっと散歩しない?」
高野川と賀茂川が合流し鴨川として悠々と流れる三角州。かねてよりここは地元住民から鴨川デルタと呼ばれ親しまれている。橋の袂では初老の男がサックスを奏でていたり、三角州の先端では大学生がレジャーシートを広げ賑やかに過ごす光景が広がっている。思い思いの休日を過ごす住民の空間に分け入るように、隆翔と梓は三角州のベンチに座った。しばしの沈黙ののち、唐突に梓が尋ねた。
「隆翔は、なんでフルートを吹かないの?」
「まったく吹いてない訳じゃないよ。今は練習しながら昔の感覚を取り戻してるところ。まあ、中二の頃に比べたら下手くそだけどな」
「……そうなんだ」
「それに、マネージャーも案外楽しくてさ。俺たちが夢中で音楽やってる裏では、先生たちの大変な尽力があったんだって気付けたし、段々と、もう一度みんなで音楽やりたくなっては来てるんだ」
隆翔の心変わりは当然であった。楽しくない記憶と環境からの脱却を経て、希美との出会いがあって、北宇治では納得の戦力を擁して全国を目指している。
「なんか不思議な感覚」
隆翔の言葉を逡巡した梓がポツリと呟く。
「昔は私が隆翔の家に当たり前のように行ってて、当たり前のように繋がれていた。中学に入っても音楽で繋がれてた。だから、今こうやって隆翔の知らない話を聞いているのは、少し寂しい」
梓は言葉を区切りながら、言い終わる頃には俯いた。
明るく社交的な性格の梓だが、他の友人たちが知らなくて隆翔だけが知っていることがある。それは、梓の本性が寂しがり屋であることだ。
母子家庭の家に育った梓は、仕事で多忙な母と共に過ごす時間が少なかった。さらに、父親の愛情を知らないからこそ、人一倍自立心が強かったように思える。出張で家を空けた梓の母に代わって、隆翔の母が面倒を見る機会もあった。樟葉家に預かっている間でも、彼女から母親の話題が上がる度に、その寂しさを紛らわせていたのだろう。
「そうそう、去年からペット飼ってるんだ。流石にマンションじゃ飼えなかったけど、引っ越した時におばあちゃん家から預かってるの」
ほら、と向けてきたスマートフォンの画像には、梓のスウェットに這いつくばる白い小型犬が映っていた。
「なんか、懐っこそうだな」
「そう! 甘えん坊なんだよねえ。名前はウナギっていうの」
「え、ウナギ?」
どこが、と聞こうとする前に梓から解説が入った。
「名前はおばあちゃんの好物なんだけどね。結構歳いってるけど家の中を走り回ってるよ」
嬉々として話す梓の表情は、先程見せた暗さが嘘のように晴れ渡っていた。
ちりちりと肌を刺す夕日が建物の影に隠れた頃、二人は帰路についた。
黄檗駅に着く頃にはすっかり暗くなっていた。
「今日はありがとね」
「送っていかなくていいのか?」
「うん、大丈夫。今度うちに遊びに来てよ」
「分かった」
梓と隆翔の視線が交わる。彼女の頬は踏切の警報灯に照らされて朱に染まっていた。次の言葉を探ろうとしたとき、梓が何かを口ずさんだ。しかし、踏切の音にかき消されて隆翔に届くことはなかった。
「何か言った?」
「ううん。なんでもない」
そう言うと、梓は踵を返して踏切を渡っていった。
思わぬ形での再会となった梓と内藤。
隆翔は、必然的にこれまで背け続けていた過去の傷と向き合わなければならなくなった。しかし、不思議と嫌な気持ちはしなかった。希美の告白がどういった航跡を辿るか不透明であるが、もしこの恋が成就するならば希美と二人三脚で進んでいける。
彼女の存在が、今は心強かった。
【つづく】
−追記−
2025.6.13 内容を大幅加筆修正しました。