このチョコボ頭に……誰がチョコボ頭だ 作:一般魔晄中毒者
アクセルの街。
門前にて、異様な雰囲気を漂わせる1人の冒険者が居た。
その冒険者が押す荷車には、山積みとなったジャイアントトードと、その更に後ろにある荷台に山積みされたブルーアリゲーターがいた。
門番がその数に怯むも、大繁殖してた依頼があったのを思い出したのか、荷車を押す冒険者に労いの声をかける。
その冒険者も返答し、そのまま冒険者ギルドの方に向かっていく。
道行く人々は、その光景を見て感謝の言葉を冒険者に述べ、口々に持て囃す。
"アクセルが誇る英雄"と唄う。
過去に龍の頭を持ち帰って以来、この冒険者の短くも過酷な冒険譚が酒場で謳われる。
その冒険者がギルドに着き、荷車を止める。
誰もこの冒険者に苦情を言う者はいない。この冒険者のおかげで、アクセルの街は守られているのだから。
中に入る冒険者。中には彼の帰還を喜び、無事を祝福する人々で溢れかえっていた。
ギルド前に置いてある魔物の討伐数を、冒険者カードを受付嬢に渡し、少し待つ。
圧倒的な数だった事を本部に連絡すると同時に、この数のジャイアントトードを狩った冒険者に大量の金が入った袋を渡す。
その内のいくつかを受付嬢に渡す。
受け取れませんと返そうとするが、冒険者は言った。
「食糧が入ったという体で良い。俺の奢りと思ってくれ」
その言葉にギルドにいた人々が湧き、宴会となった。
受付嬢も仕方ないと肩を竦め、アリゲーターの処理も並行しながらジャイアントトードの唐揚げに舌鼓を打つ事にしたのだった。
夜も深けこむ時間。
誰もいないが灯りが着いているエリス教会に、件の冒険者がいた。
宴の後片付けは明日の朝になってから、起きた冒険者達にでもやらせて欲しいと頼んで来たようだ。
祈りを捧げる。すると、銀髪の女神──エリスがそこに現れた。
「此度の遠征、お疲れ様です」
「……いえ、余裕でした」
「それでも、ですよ」
「ありがとうございます」
礼を受け取り、冒険者はある物を袋から取り出す。
遺物と呼ばれる物を、エリスに渡した。
この冒険者は、女神エリスからの啓示によって遠征し、その帰り道にジャイアントトードとブルーアリゲーターを狩ったのである。
その啓示こそが、遺物の回収であった。
「では、お礼に願いをお1つ叶えてあげましょう!」
「正直、これ以上願うものは……」
「何を言ってるんですか!これで20回目のやり取りですよ?そろそろ女神からのお礼を受け取って欲しいんですが!」
「何せもう叶えて貰ってる訳ですし」
「確かのそうですけども!それとは別の願いですよ」
半ギレでキレる女神。受け取れと迫る様は押しかけセールスのよう。
冒険者は謙虚なのか無欲なのかは兎も角、仕方ない表情で1つ要求したのだった。
「では、1つ良いです?」
「どうぞ!なんでも良いですよ?」
その冒険者が願った物は──
「オレ──クラウドだけしか使えない魔法、リミット技を解禁して欲しいです。オリジナルで再現しただけでは、どうしても見劣りしてしまうので」
リミット技の解禁を願った金髪の男──クラウド・ストライフの姿を得た転生者なのだから。
俺、クラウドがこの世界に転生してから2年経った。
初めのうちは困惑したが、FF7のクラウドになりたいと願い、それが死後に女神によって叶えられたのだ。
日本人であった事は覚えているが、名前が思い出せない。己がクラウドになった事を認識できたが、元の存在の人生が思い出せなくなってしまったらしい。
女神エリスのミスによって起きてしまったらしいが、元より元の世界に良い思い出があった訳では無いのは確かであり、気にする事はしなかった。
女神からの謝罪の時に言うと、ものすごい勢いで頭を下げられた。
そこで、追加で願いは叶えてもらうにはどうしたら良いかと聞くと、渋られてしまったのだ。
代替案を聞くと、遺物──転生者が持ち込んだ或いは作り上げた、影響力が強い物の回収を依頼された。
これを達成すれば、叶えてあげます──と。
すぐ様、アクセルの街の外に居た大きいカエルの様なモンスターを素手でしばく。ソルジャーの肉体ってすげー。巨大カエルの手足や舌を紙の様に引きちぎれるんだから。
数匹仕留め、門番の人にギルドに売りにいけと言われギルドに顔を出し、売り払って冒険者登録を済まし、カードを手に入れた。
初期ステータスと素質でジョブがわかるらしく、ジョブチェンジができるようならした方が良いと受付嬢に言われた。
カードのジョブ候補の欄の中には、ソルジャーの文字があった。
受付嬢曰く、見た事無いとの事。俺は迷いなく選び、カードを確認する。
初期ジョブであった冒険者より、あらゆるステータスが大幅にアップしていた。受付嬢が泡吹いて倒れた、解せない。
復帰した受付嬢からの説明によると、ここまでステータスが上がった人は見た事が無いそうだ。
特化職以外だと前例が無い、と言う。魔法使いなら魔力が伸びるとか、そんな感じだろう。
余った金で安い剣を買い、それでサクサクとアリゲーターやカエル、巨大なトカゲに空飛ぶキャベツ等を狩り、生計を立てて経験値を貯めて行く。
ある時、遺物の回収から帰還時に、ドラゴンに襲われている行商人と冒険者がいた。
そのドラゴンをオーダーメイドしたバスターソードの不意打ちで首をはね飛ばし、救出する。
そのドラゴンの首を持ち帰った事が、アクセルの街で流行した英雄として持て囃されるキッカケとなった。
今日も今日とて、付近の森に現れた初心者殺しを狩りまくり経験値を貯めていく。
先日、女神エリスによってリミット技を解禁された事によって、バスターソードを振り回す戦い方から凶斬りを始め、リミットゲージを戦いながら蓄積し、相手が少しでも怯んだらリミット技を使い、一気に仕留める戦い方へとシフトした。
更に魔法を交えて戦う事によって、効率良く初心者殺しの集団を狩る。
一際巨大な初心者殺しを、クライムハザードの切り上げで顔を縦に両断し、狩りを終える。
親玉が倒された初心者殺し達は散り散りに逃げだし、バスターソードを背に戻す。
親玉の両断された首を袋に詰め、肩に背負ってアクセルの街に戻る。
ギルドの受付に初心者殺しの両断された顔がカウンターに転がった事によって、受付嬢が泡を吹いて気絶した。仕方ないね。
復帰した受付嬢に叱られながらも大金を受け取り、アクセルの街にある拠点に戻る。
大体がこんな感じの1日で終わる。フリーの日には街で買い食いしたり、紅魔の里にまで遠出して観光したり、クエストで稼いだ金でワープしてもらい、温泉の街ドリスで1泊してから戻ったりして、充実した休日を過ごしたりした。
「戻ってきました!!」
「……何かあったのか?」
戻って早々、受付嬢から心配の声が上がっていた。
どうやら、俺が戻る直前にアクセルの街にキャベツがやってくる勧告が来たそうだ。
他の冒険者に任せれば良いじゃないかと思ったが、死亡被害も案外あるようで、キャベツにボコボコとぶつかられて昇天、という冒険者が出る事がある。
助けられる範囲で良いから、ボコられてる冒険者を見かけたら助けて欲しいと依頼された。
ため息を付きながらも依頼を承諾し、ギルドの上階にある部屋を借りて過ごし、キャベツが飛来してくるまで待機する。
「みなさーん!!キャベツが飛来してきましたァーー!!」
受付嬢の声を聞き、ギルドの屋根の上で待機する。
外には冒険者が犇めき合い、キャベツの飛来を待ち──走り出した。
この世界のキャベツは空を飛ぶ。いや、吹っ飛んで来る。
前の世界と全く同じ外見をしているのに、生態もほぼ同じなのに、何故か飛んでくるのだ。しかもレタスも同じ様に飛んでくる。
だが、キャベツは料理的価値はかなり高くて美味しい。故に高く売れる訳で、冒険者達が挙ってキャベツの捕獲に繰り出て来る。
中にはレタスが混じっており、所謂ハズレという奴だ。ほぼ外見が変わらないからタチが悪い。
値段は勿論落ちるが、みずみずしい為自作料理の実験によく使われるようだ。安価で手に入るのもあってか、飛来してくるレタスは相手にされない。
が、問題は殺傷力がキャベツと変わらないのが困り所だ。真の意味でハズレという言い得て妙な扱いになる訳である。
屋根を飛び移りながら、キャベツに体当たりされて倒れている冒険者をエリス教会の近くに連れていき、回復を掛けているシスターの元に送り届けたり、油断した冒険者の顔に当たりそうなキャベツを両断したりして、忙しなく動いた1日となった。
死者0人と確認され、ギルドから謝礼と報酬をもらう。俺が切り落としたキャベツやレタスはギルドの食堂に寄付する。
繁殖期で増殖したジャイアントトードも寄付したりしているので、ほぼタダでギルドの食堂を利用できる権利を貰っている。あくまで寄付している食材限定ではあるが。
ミルクとパン、トードの唐揚げにキャベツとレタスが混ざったサラダ。充分贅沢な食事である。
一日中動き回っていた事もあり難なく平らげて、ギルドの上階で待機していた部屋を借りて身体を休める事にした。
翌日、ギルドで朝食を摂っていた時だ。
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません……」
紅魔族の少女──ゆんゆんがぶつかった事によって、ウェイターが運んでいたシュワシュワを頭からぶっかけられたのだった。
間違いなく最悪でムードの欠片も無い出会いであったが、これが切っ掛けで奇妙な縁を結ぶ羽目となったのだった。
「……」
「ヒィぃぃィィ!?」
頭に乗った木製ジョッキ。騒然とするギルド内。
濡れた一張羅。土下座する紅魔族の少女。なんだこのカオスな状況は。
とりあえず、声を掛けた。
「とりあえず腰掛けてくれ」
「わわわわわわかかかかかかかかりました」
「落ち着け、怒っちゃいない」
宥める事から始まった出会いが、この素晴らしい世界を大きく動かす出来事に繋がる。
そんな予感が、俺の中で過ぎったのだった。