このチョコボ頭に……誰がチョコボ頭だ 作:一般魔晄中毒者
「すまないクラウド……手間を掛ける」
「乗りかかった船だ。泥舟や穴あきじゃなければ、乗り心地は変わらないだろう」
明朝、ダティネス荘からララティーナ嬢──ダクネスを連れて、ギルドに入る。
内容が内容な為、ギルドであれば冒険者としての立場的保護が効くのを利用する。依頼で家に居ないだとか、王都に行く為居ないだとか、そう言ってアルダープを足止めし続ける方針で動くとの事。
幸い、ギルド所か酒を飲んでる他冒険者達も口裏合わせてくれるようで、直ぐに身バレする事はないだろう。
「紹介する、こちらはゆんゆん。紅魔族のアークウィザードだ」
「よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく頼む。どれぐらい世話になるかは分からないが……」
心底嫌そうな顔で、アルダープの顔を想起させているのだろう。吐き捨てる様な言葉が、仮にも貴族の立場を捨ててまで口にする。
「あの汚物をどうやって消そうか」
「すんごい事言ってますよこの護衛対象」
「彼女の言い分に頷く事しか出来ないな……俺も被害にあったし」
お淑やかさどこ行った。まぁ分かるけど。
兎にも角にも、受付嬢に事情と長期依頼として離れる事を伝える。気をつけてと返され、酒場にいる奴らに帰ってきたら宴だと言いながらギルドから出る。
「それで、行く宛てはあるのか?正直王都以外殆ど無いと思うが」
「先ずはドリスに向かう。1番安全な場所は紅魔族の里だが、追手がいるかどうかの確認がし易い場所がドリスだ。撒くにせよ、1度落ち着ける場所に行くのが良い」
「わかった。さっさとアクセルから離れようか」
ギルドが用意してくれた馬車に全員乗り込み、業者に走るように言い動き出す。
「まずドリスで2日程過ごす。その後、ドリスから紅魔族の里に向かい、数日様子を見る感じになる。ダスティネス伯から軍資金を貰ってはいるが、里にある空き家の1つを報酬代わりに貰った事がある。そこを拠点にして、アルダープの動きをギルドを通して探る」
馬車内で地図を広げ、移動ルートを指でなぞる様に動かす。
「そして、アルカンレティアに向かい、王都に向かう形にする。ダスティネス伯がアルダープの不正や悪政の証拠をかき集めるので、それまでは王都で過ごす事になる。一通り集め切る頃には俺たちが王都入りするぐらいと見て良いだろう」
「直接アレと会う事無く処断できるかもしれない、という事か。……間違いなく何かやってくるだろうな」
アルダープだからこその証拠で溢れている事だろう。ダスティネス荘の門番にやっかみをかけている姿や、脅迫文に恐喝を本人が出向いてるのだから、寧ろ証拠が歩いてきているだけだ。
王の盾であるダスティネスを敵に回すという事は、王国そのものと敵対するという事に等しい。道中何もしてこなければ逃げる準備でもしてるかもしれない。逃げれるのであれば、な。
ドリス
ゆんゆんとパーティを組む前に何回か来たことがある、温泉街と言える街だ。
街に入り、ギルドに直行。許可証を見せて2階の宿部屋に入る。
温泉街なだけあって、1部屋なのに寝室が2つもある広い宿部屋となっている。おかげで女性陣と一緒の部屋で寝るという、常識外れな事をする男と思われる所だった。
その場合は隣の部屋を借りれば良いだけの話だが、護衛である以上は離れるのは避けるべきである。その場合は……女神エリスから使用許可が降りている遺物を使う必要があるがな。と言っても、あくまで中身が俺であるのわかりやすいし、デメリットしかない事が問題だが。
使わないに越したことは無いだろう。
「で、2日はここに滞在。自由に過ごしても良いが、ダクネスは必ずゆんゆんと一緒に動いてくれ。俺は付近を見回りしながら着いていく事にする」
「助かる。あの性格だと部下を使って誘拐までしてくる恐れがあるからな」
「そこまでやるんですか?」
ゆんゆんの疑問は最もだ。アルダープと直接会話した訳でも会った訳でもないし、そこまでのクズだとは思わなかったのだろう。
「やるぞ、アイツなら。なんならクラウドとゆんゆんを揃って誘拐犯扱いで告発してくるだろうな。だからギルドに依頼で来た事を最速で伝える必要がある」
ダクネスがあまりに真剣な顔で語る為、ゆんゆんは固唾を飲んで聞き耳を立てている。
そう、アルダープはギルドと警備兵、裁判所に話を通した上で冤罪をふっかけて来る。だが、最初に話を通すべき場所であるギルドは俺達の事を把握している為、話は聞くが依頼にはならない。
向こうもそれを把握した上で、金を握らせてやらせるだろう。
だが、既にギルド全体に、である。如何にアルダープであろうとも不可能な冤罪ふっかけになる。俺とゆんゆんが受けた依頼は、勅命と言える内容に格上げされるのが約束されているからだ。
国王から直々の依頼に変化する。ギルドを通じて国王の耳に入れる様にしたからである。流石王の盾だ、伝達速度が段違いに速い。
優先度が高い案件は最速で話が通るようになっている。しかも王族から直接依頼が来る俺に、そしてダスティネス家からの言葉だ。ただの一町の長程度の言葉なんて聞く訳が無い。
なので、俺達が警戒すべきなのは誘拐だけとなった。それ以上に俺達の所在が分からないように動く為に不規則日数、ドリスに滞在をする。2日とは言ったが、実際は1日と半分だ。
聞こえても良い情報を口に出す。何故なら、馬車の業者がアルダープの手の者の可能性を考えているからだ。金で釣られている可能性もあるが、あからさまに遠目でこちらを見ている奴らがいるのがわかったからだ。
向こうに情報が回るのが速すぎる。ギルド以外を疑うなら、馬車業者を疑う以外無いからだ。
「……あの距離なら俺達の会話は聞けないだろう」
「……え?」
「監視されているぞ。アルダープの部下で間違いないだろう」
「ヒ……!?」
ゆんゆんが小さく悲鳴をあげた。クズだとは聞いたが、そこまでやるとは思ってなかったか。
王の盾に対して追い出す発言をする奴がまともな訳がない。……信用出来る馬車の業者を雇うか、ダスティネス御用達の業者を使うのが無難だったか。
「はぁ……街中を行くのは後回しだな。早めに出ても良いんだろう?」
「ああ。夜中でも良いとは思うが、どうする?」
「そうしよう。早めの夕食にしようか」
予定より半日以上早く出る計画を立てる。向こうに伝わっている情報を滅茶苦茶にする。
では、ここでドリスから紅魔の里に行くにはどうすれば良いか。
簡単だ。テレポートサービスを2連続で使う事だ。
ドリスには隠れた魔法店がある。そこで、秘密裏にギルドが使うテレポートサービスがある。勿論、そこにはゆんゆんの同族である紅魔族が居て、ギルド用の裏口がある。そこから入るのだ。
ギルドからの許可が無ければ店に入る事も出来ない上に見つけにくい場所にある。儲かってるかは分からないが、ギルドと専属契約しているなら契約金と定期使用料ぐらいは受け取ってるだろうし、魔道具売るより儲けが出るのだろう。態々見つけにくい所に店を構えるのであれば、相応のメリットがあるからだろう。
どうやらゆんゆんとダクネスはこの事を初めて知ったようで、ゆんゆんに至っては同族が専属でテレポートサービスしているだなんて予想もしなかったのだろう。
下に降り、ギルドに予め話していた内容に付け加えて、テレポートを使う事を伝える。ギルド側も気づいたようで、そそくさと動き出す。
残っていた職員に食事を頼み、宿部屋に戻る。
「暇かもしれないが、食事を頼んどいた。部屋から出なければ自由にして良い」
「クラウドはどうする?」
「このまま居よう。監視してるならこっちは気づいていないフリでもしてようか」
各々過ごし、頼んだポテトやサラダを摘んだり食事をし、夜も耽っていった。
夜明け
ギルドをそそくさに出て、魔法店へと向かう。
夜明けだからか監視の目も無く、夜間管理しているギルドの職員に説明してから出てきた。怪しむ奴はいないだろう。
路地裏に入り、魔法店の扉を叩く。……勝手に開いた。扉も魔道具だろうか?
3人して顔を合わせ、俺が最後に入る。入る直前に周囲を見渡し、誰もいないし観てる者もいないのを確認している。アルダープの子飼いにバレる事は無さそうだ。
中に入る。中は至って普通の占いの館のテーブルが商品棚になっただけの店のようだ。見た目はそのままな為、違和感があるが『らしさ』は確りあり、拘りがあるのだろう。
「……失礼する、予約していたクラウドだ。テレポートを使いたい」
「いらっしゃい。待ってたよ、クラウド」
奥から紅魔族の女性が出てきた。そのまま奥に案内され、地下へと降りていく。
降りた先に小部屋があり、中央に魔法陣がある。その魔法陣の上に3人揃って乗る。
「じゃ、送るよ」
「頼む。報酬は前払いしてあるはずだ」
「確り貰ってるから安心してくれ。仕事はする」
そう言い、すぐにテレポートが行われた。
「最近来たばかりだが、来るまでに時間がかかるから来る度に新鮮な感じがするな」
「久々の故郷です……でも自慢できます!何せクラウドさんですので!」
「そこそこの頻度で来てるのだろう?先に家に案内してくれ。その後に村長に行こう」
「ああ、そうしよう」
紅魔の里。ゆんゆんの故郷であり、数多のアークウィザードを排出する名門一族だ。
当然ゆんゆんもである。……コミュ障はこれから直せば良い。
「可哀想なものを見る目で見ないでください!!」
「すまん」
依頼で貰った空き家の鍵を開け、中に入る。
時折紅魔の里に来るのは、長期遠征の中継にしたり依頼でそこそこの頻度で来るからだ。おかげで掃除を定期的にやってるの小綺麗になっている。
「「おお〜……」」
中が思ったよりも広い事に驚いてる2人を置いて、荷物を大きめの箱に入れていく。
「買い出しや料理の材料を入れる用の箱だ。ちょっとした魔道具を入れてるから、長期保存に向いている」
通称:冷蔵庫だ。箱に入ってる物を箱ごと冷やす魔道具だが、これの価値を知るのは転生者か酒好きぐらいだろう。
ギルドでも重宝されているが、一介の冒険者が使うなんて発想は浮かばないだろう。
大きさは横に1m縦に40cm、高さ50cmだ。厚いし底があるバイオリンケースと見ればわかりやすいだろう。
見た目はただの長い木の箱だ。盗まれる心配も少ない便利な代物である。
「便利な物だな。ウチにも欲しいが……似たようなのがあるな」
「あくまで個人で使う程度の大きさだからな。ダスティネスにある地下倉庫レベルになると、そういう効果の魔物を檻に捕まえて監禁していた方が安く済む事になるな」
「ええ……でも、倉庫規模になると材料も何もかも高く付きますね」
ゆんゆんの言う事が正しい。なので酒場は専用の地下貯蔵庫を作るし、食事処は地下倉庫や別小屋を作る。その方が安いし、そもそも魔道具やそう言った方法での保存の仕方を知らないってのもある。間違いなく転生者から齎された知恵だろう。
「後は好きに見て回って構わない。ベッドがある部屋が4つぐらいある筈だ。好きに荷物置いて使って構わない」
リビングの中央にあるテーブルに地図を広げて置く。これからどう動くかはギルドの職員の連絡次第だ。
ダスティネス伯、確り証拠を掴んだ上で連絡が来れば良いが……。
俺らの消息が分からなくなった事をダシにして突いてるだろうか。それとも、出ているのを利用して誘拐した方が楽だから血眼になってまで探しているのか──それは、まだわからない。
ゆんゆんと何処行こうかと笑顔で話し合ってるダクネスの姿は、ダスティネス荘にいる時より穏やかな顔である。
こういう笑顔で溢れている街にする為には、アルダープを排他しなければならない。
……奴の息子を知っているのだが、ああいう親からあれだけ立派な息子が産まれるのがわからない。頓痴気な世界であるのが影響してるのだろうか?
クラウドメモ3
空き家は、紅魔族でも手を焼いていた魔物の討伐報酬で貰ったら物だ。小道具や魔道具はアクセルで揃えた物だ。あの魔道具店は赤字らしい。便利な物を売っているのになぜ赤字なんだ……?
ウケが悪いのかもしれない。潰れたら悲しいが、商売はある意味戦争してる様なものだから、致し方ないと言えばそうではあるが……
店主はかなり実力があるとの事だから、冒険者でもやって行けるとは思う。
ただ、少しだけ嫌な雰囲気を纏ってる気はする。あんな陽気な店主からだとは思わないが、そんな感じはするな。