「それはどうかな?」って言いたくなるよね 作:アウグスティン
1話 パチモン大地に立つ
「いい決闘だったがこれで終わりだ!」
褐色に焼けた肌のマッチョが腕を振り上げる。
それに合わせるようにして彼の操る灰色の大鬼が斧を振りかざした。
「『剛鬼ザ・グレート・オーガ』でブラック・マジシャンを攻撃! オレの勝ちだ! ユウギ!!」
剛鬼ザ・グレート・オーガ
リンク3 ATK2600
ブラック・マジシャン
レベル7 ATK400
永続効果により攻撃力が下がったブラック・マジシャン目掛けて吶喊してくるグレート・オーガ。
この攻撃が通れば俺は負ける。だが。
「それはどうかな?」
「なにっ!?」
──カンコーン☆
デュエルディスクからSEを鳴らす。
「なんだ今の音」
「俺は二体の魔術師の力を使い、罠モンスター『ディメンション・リフレクター』を召喚!」
魔術師の師弟をゲームより除外し、伏せていたカードを発動する。
杖を交差させた魔術師達は巨大な鏡へと変化した。
そしてグレート・オーガから放たれた光を鏡は吸い込んでいく。
「こいつの攻撃力はお前のモンスターと同じになる! 更にその攻撃力分のダメージを──お前に与えるぜ!」
「馬鹿な、オレが──ぐあぁぁぁっ!」
鏡は一層輝きを強めると、吸収したエネルギーを解き放った。
光線が着弾し、対戦相手のGo鬼塚が爆煙に包まれる。
煙が晴れるまで油断は出来ない。そう、なぜならこの世界ではカードの発動は宣言さえしていれば相手に聞こえていなくても問題ないからだ。
果たして煙が晴れた時、空中に投影された鬼塚のライフは0になっていた。
く、う、おぉおおおお! やったぁああああ! 勝ったぁああああ!
いやぁ面白半分で入れてたリフレクターがまさかこんな活躍するとは。抜かなくってよかったよ。
『つ、ついに決着──っ! なんという番狂わせでしょう! 勝ったのは今回が初参加。一般参加枠よりユウ……え〜、失礼しました。ユウギ(仮)だぁぁ!』
いやぁ、今俺めっちゃカッコイイわ。
『魔法の筒』でいいだろ、こんなカードって思ってたけど絵面がカッコイイってだけで価値があるね。
しかもそれをGo鬼塚相手にばっちり決め切るとか最高すぎる! うぉおおおお! バサッと肩にかけた学ランを翻す。
……興奮しすぎて頭クラクラしてきた。
おっと。そうそう。
「楽しかったぜ、鬼塚。また闘ってくれ!」
フォロー入れておかないとすぐ闇落ちするからな。このマッチョは。
まあフォローしてても闇落ちするんだろうけどな!
「ああ。今度はオレが勝つ!」
「フッ、いいぜ。いつでもかかってきな! このコスプレに懸けて何時でも受けて立つぜ!」
「それを自分で言うのか……」
■◆■
遊戯王VRAINS
YPには言わずと知れたアクセスコード・トーカーが登場したOCGアニメの最新作だ。
リンクモンスターが登場したアニメとも言える。
リンクヴレインズというVRゲームを舞台として、いつもの遊戯王らしく世界の命運を賭けたストーリーが展開される作品なのだが、そんな世界へと転生してしまった。
あらゆる場面で決闘が行われているのを見て、ここが遊戯王アニメの世界だと気づいた幼少期はそりゃあもう『っべーわ、まじべーわ』となっていたものの、流石に十六年もそんなノリは続けていられない。
むしろ時を経るごとにそこまで気にしなくてもいいんじゃね、と思うようになっていった。
まあ理由は色々あるんだが……じゃなくってその理由は三つある!
一つ! 遊戯王VRAINSのストーリーは主にリンクヴレインズの中で進む。
つまるところヤバそうだなって思ったら最悪ログアウトして、事件が解決されるまでイントゥしないという選択肢があるのだ。
二つ! 遊戯王では基本、途中何があったとしても大体主人公がラスボスを倒せばチャラになる。
VRAINSでもその例に漏れることなく、作中で度々登場人物がデータ化されて死ぬのだが、最終的には全員戻って来る。
人間以外は被害が出ているが……まあ俺は人間なので。
三つ! 今作の主人公は作中無敗の男Playmakerだ。
決闘に邪魔が入って中断されただけで実質負けだった、みたいなこともなく、数回の引き分けこそあれど明確に敗北したことはない。
つまりこう、バタフライエフェクトが起きたとしても無敵のPlaymaker様なら勝てるだろう、というわけだ!
完璧すぎる理論武装の下、誰にはばかることもなくデンシティを訪れ、リンクヴレインズに接続して大会に出場していたわけである。
いやぁ、楽しい大会だった。そんなんOCGにあったっけ? みたいな推定アニメオリジナルテーマとも会えたし、原作キャラとも戦えたし、カッコよく逆転勝ちできたし。
これには文句の付けようもないだろうと、リンクヴレインズからログアウトした俺は大会出場のもう一つの目的のため、端末を起動した。
「もしもーし、父さーん母さーん。ちゃんと見てた? これで一人暮らし認めてくれるよな」
と、親に連絡する。
『あ、あぁ……見てたが』
『あれ本当にあなた?』
「替え玉疑われてる!? ちゃんと本人だって! アカウントの履歴見せようか?」
まったく。自分の子供を疑うだなんて。
きちんと事前にすべて話し合ったというのに。
そう。VRAINSの世界に転生したと言うのにデンシティの生まれではなかった俺は、親にデンシティでの一人暮らしを希望した。
しかし当然のように却下。だが諦めることなく交渉を続け、デュエリストとしての実力を証明することを条件に一人暮らしを認められたのだ。
俺が今回こうして大会に出場したのもそれが理由だったりする。
『だって、ねぇ』
「くっ。そんなに俺の力に信用がなかったのか」
『いやそこじゃなくってだな』
『本当にあの格好で行ってきたの?』
「それは最初に言ったじゃん」
まったく。今更どこにツッコミを入れてくるのかと思いきや。
「武藤遊戯なりきりアバターで、ユウギ(仮)って名前で、ブラマジ使って大会出てくるって言ったでしょうに」
『いや……うんまあ、憧れるのはいいけどね』
ともあれこうして俺は原作の舞台、デンシティに立つ権利を手に入れたのであった。