「それはどうかな?」って言いたくなるよね 作:アウグスティン
うぅん、どうすっかなぁ。手札を眺めながら首を捻る。
とりあえず。
「アバター変えたいんだけど、一回ログアウトしていい?」
「いいわけないだろ」
「だよねー」
しゃあない。このまんまやるか。
んんっ、と喉を鳴らして調整する。
よーし行くぞー!
「俺の先攻! 手札、デッキから一枚ずつカードを墓地に送り『EN-エンゲージ・ネオスペース』を発動! この効果で『E・HERO スピリット・オブ・ネオス』を特殊召喚し『融合』のカードを手札に加える」
「それは違う決闘王のカードだろ!」
「ネオスの特殊効果で『インスタント・コンタクト』を手札に、墓地に送られた『E・HERO シャドー・ミスト』の特殊効果で『E・HERO リキッドマン』を手札に加える」
だからアバター変えさせてって言ったのに。
『ふ。完璧なドローだ!』
あっちはあっちで楽しそうなことやってんなぁ。
こっちも頑張るか。
とりあえずスピリット・オブ・ネオスの効果で、自身をデッキに戻し、本家本元のバニラネオスを呼び出す。
「来いネオス! そして『インスタント・コンタクト』を発動! ライフを1000ポイント支払ってコンタクト融合。来い『
時に、この世界のデュエルモンスターズは前世のOCGとは全く別物である。
それはアニメオリジナルカードが存在するとか、効果が微妙に違うとか、ライフの値が違うとか、そんなレベルの話ではない。
OCGはカードゲームだが、デュエルモンスターズはオカルトだ。ファンタジー要素が多分に含まれている。
俺はかつて前世の感覚のままデュエルの世界に踏み入り、痛い目を見たことがある。
手札誘発をいっぱい入れて、先攻を取ったら制圧盤面を築く。そんな現代遊戯王をやろうとした。した、のだが。
それはもう酷かった。
確率を無視して事故るデッキ、絶対普段入ってない手札誘発や捲り札で返される盤面、かといってそれで俺のライフが取り切られるわけでもない。
運命力やドロー力がまじで存在するんだ、この世界。
という最も重要な気づきを得た俺は、アニメを参考にオカルトパワーを磨いた。
いつか来たるリンクヴレインズ観光のために力を手に入れようとした。
半ば悪ふざけで始めた鍛錬だったが、成果が出たのである。
垂直に数メートルジャンプできるようになったし、ドローの要領で車を牽引できるようになったし、カードの引きもよくなった。
まあその磨いたドロー力で何してるのかっていうと、闇鍋遊戯風デッキで遊んでるんだけど……。
「マリン・ドルフィンの特殊効果を発動!」
ともあれこれはいい試金石になるだろう。
先攻制圧、後攻ワンキル。
かつてはできなかったこれらも、今の成長した俺であればあるいは。
無理そうなら打点モンスター召喚しよっと。
「俺の手札を一枚捨て、お前の手札を確認する」
「く。面倒な効果を……ほら」
ほうほう。なるほどなるほど。
手札誘発も墓地効果もなし、と。
Playmaker相手にこれをやったAIデュエリストは、盛大に墓地効果を踏み抜いて負けていったというのに。
まあいいか。実力者以外が相手なら通るってことがわかっただけ収穫だろう。
さーて、ハンデスするぞー、ハンデス。
「そして俺の場のモンスター以下の攻撃力を持つモンスターカード一枚を破壊して500のダメージだ。そいつはもらっていくぜ」
「なにっ!」
マリン・ドルフィンの水に手札が押し流されていく。
おら、ワクワクしろ!
「『スペーシア・ギフト』を発動。この効果は場のNモンスターの種類の数、カードをドローできる。マリン・ドルフィンはアクア・ドルフィンとしても扱うカード。よって二枚ドロー! そしてマリン・ドルフィンとネオスをデッキに戻してコンタクト融合! 現れよ『E・HERO マリン・ネオス』!」
イルカみたいな青い衣装に身を包んだネオスが現れる。
いやー、カッコいい!
さて。
「マリン・ネオスの特殊効果。お前の手札を更にもう一枚もらっていくぜ」
「待てお前」
「永続魔法『亜空間物質回送装置』を発動し、その効果。マリン・ネオスを除外して場に戻す。これで特殊効果が復活! いっけーマリン・ネオス!」
ランダムで手札を一枚破壊する効果を再び発動。これで三枚目、と。
そして融合魔法を唱える。
「究極コンタクト融合! 来い『E・HERO ゴッド・ネオス』! ゴッド・ネオスの特殊効果、墓地のマリン・ネオスを除外して、自身の攻撃力を500アップしてその効果をコピーする!」
「お前まさか!」
「手札を破壊!」
はい、これで四枚目。
「カードを伏せてターンエンド」
番を返す。墓地に行ったカードを見るに動けないと思うが何をドローするかだな。
「お、俺のターン……ターンエンド」
ドローして、そのまま番が返ってくる。
特になんにもできなかったらしい。
「ゴッド・ネオスの効果を発動してもう一回攻撃力をちょっぴりアップしてから攻撃。レジェンダリーストライク!」
謎バーンでライフがちょこっと減っていたハノイの騎士を吹き飛ばす。
「ガッチャ、俺は楽しいデュエルだったぜ!」
指を揃えて突き出す例のポーズを取りながら言う。
そんな俺に横から震え声で、デュエルを終えていた島君が話しかけてきた。
「お、お前……学校でやってた時はそんなデッキじゃなかったよな」
「デッキは一緒。学校ではハンデスしなかっただけで」
学校でこんなことやってたらヤベー奴じゃん。
周りに居た一般プレイヤー達からも若干引かれ気味だ。
まあ仕方ない。久々にこの一方的な感じ、楽しかったわ。
■◆■
「おつかれ〜。初のリンクヴレインズどうだった?」
ログアウトして島君に声を掛ける。
「マジ大変だったよ。でも、くぅ〜、これでオレも一躍有名デュエリストに!」
「なったらいいな」
「おう。お前も有名になれたらいいな。残虐HERO使いとして」
「誰が覇王だ!」
「言ってねーけど!?」
まったく。ネオスペーシアンは十代の使用する正統なカード達だと言うのに。
冗談はさておき、この後のストーリーは確かハノイの最後の騎士に島君が拐われて、Playmakerが助けに行くんだよな。
じゃあ俺は事が終わるまで島君と離れていたほうがいいだろうな。