「それはどうかな?」って言いたくなるよね   作:アウグスティン

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第20話

「オレはもっと強くならなきゃいけねぇ!」

 

 と、部活終わりに島君が主張する。

 

「とうとう向上心が芽生えたか」

「ああ。オレは諸事情あって強くなり、リンクヴレインズでまた何かあった時には闘わなくてはいけないからな」

「いい心がけだな。でなんだ、デッキ構築でも手伝えばいいのか?」

 

 ちょこちょこ部内でアドバイスという名のお喋りをしたりして、入学したばかりの頃よりかはだいぶまともなデッキになりつつはある島君のバブーンデッキ。

 もう一声助言が欲しいというのであれば、全然やるけれども。

 

「いやちょっと持ってるカードでやりくりするのもアレになってきたからさ、カドショ行こうぜ」

 

■◆■

 

 というわけでみんなでやって来たカードショップ。

 みんなというのはつまり、俺と島君、それからPlaymakerとブルーエンジェル。

 うぅん、相変わらずメンツが濃い。

 その濃ゆい面々に囲まれていても、別に強くならないのが島君という男なのだが。

 

 この世界のカドショは、近未来感が入ってはいるものの、基本的には前世のそれと大差ない。

 ショーケースに値札付きのカードが並べられていたり、値のつかないカードが大量にストレージに置かれていたり。

 そして当然のように、全部デュエルモンスターズのカードだ。

 他のカードゲームは無い。独占状態だ。

 

「おー、やっぱいつ来てもワクワクするよな」

 

 そう言って早速島君がケースに飛びつく。

 俺も倣ってケースの中身を眺める。

 前世基準で見るとびっくりするような品がちょこちょこあるのが結構面白いんだよな。

 ここには無いけどサンボルとかが幻の究極のレア魔法カード扱いだったり、なんでこんなところにあるんだってカードに値がついていたり。

 それに。

 

「こ、これはウォークライのリンクモンスター!馬鹿な、ウォークライにEXだなんて……なんて贅沢な」

 

 前世には存在しない謎のカードも存在していたりする。

 カードの種類自体が一万種類どころじゃないほど刷られているし、勝手に作って使われている物もあるからな。

 ……サイバースのカードとか……。

 島君のバブーンもそうだけど、特にリンクモンスターがやたらいっぱいいるんだよな。

 

 ともあれ見てるだけでもやっぱ楽しいわ。

 

「それで何を買いに来たんだ?」

 

 と、Playmakerが尋ねる。

 特に決めてない、と島君が返して、いつものように淡々と詰められていた。

 楽しそうだなぁ。

 

「無駄遣いにはならないようにな」

「オカンかよ……」

「そうだぞー。島君、ついつい買いすぎちゃうからなぁ」

「そうね。ところで工藤君、それは何を持っているの?」

「レッドアイズだけど」

 

 ひらひらと見つけた真紅眼の黒竜を見せびらかす。

 ドヤる俺にPlaymakerが言った。

 

「使うのか?」

「あったら無限回収したくならない?」

「戻してこい」

「あー!僕のレッドアイズ!」

 

 仕方なくカードをストレージに戻す。

 残念。

 

「にしてもレッドアイズはそんな高くないんだな」

 

 透明のスリーブに入って、百円の値札が貼られたレッドアイズを眺める。

 

「なにがだよ」

 

 島君が不思議そうにする。

 

「ん?いやほら、ブラマジとか青眼とセットで御三家みたいなもんなのにさ。レッドアイズだけあんまりだなぁって」

「なんでレッドアイズ?」

「あー……城之内君の知名度が足りないのか……ダイナソー竜崎の魂のカードだし」

 

 兄上院とどっちが有名だろう?

 

「誰だよダイナソー竜崎」

「武藤遊戯世代の全日本二位の人」

「おお!それは凄そうだな!」

「ちなみに一位はインセクター羽蛾。遊戯とか海馬とか出てない大会だったから」

「誰だよインセクター羽蛾」

  

 武藤遊戯の時代はビデオテープが使われていたような時代。そしてVRAINSはフルダイブ型のVRゲームが舞台になるような未来である。

 こんだけ時代が進んでてこの程度のインフレで済んでるのすげぇな。

 

「毎度毎度どこから仕入れてくるんだ、その知識は」

 

 誰が分かる案件の小話にPlaymakerが呆れたようにため息を吐く。

 伝わらないの悲しいなぁ。ピピピ宇宙のエネルギーを感じる、とかやっても誰にも分からないんだろ。悲しい。

 

「……サイコ・ショッカーは謎にいいお値段してたんだけどなぁ……」

「あれは強いじゃん」

 

 そうかなぁ。そうかも。

 デュエルモンスターズって難しいな。

 ともあれカードの物色に戻る。

 あ、なんか知らないサイコ・ショッカー新規だ。

 モンスターを永続罠扱いで魔罠ゾーンに埋める効果……強いけど……なんか、他で見たことあるような。

 

「なあ工藤って色んなデッキ使ってるよな。あれってどうやって組んでるんだ?参考にさせてくれよ」

「うーん。カードの声に耳を傾けて、かな」

「そういう抽象的なのじゃなくって、もっと具体的なのをくれよ」

「めっちゃ具体的なつもりだったんだけど!?」

 

 島君もバブーンの精霊と話し合いながらデッキ弄ればいいのに、ってそうか。島君はついてなかったり、見えなかったりするかもしれない。

 

「随分とファンシーなことを言うのね」

「そう?自分のカードとは仲良いほうがよくない?だからって何でも言うこと聞くわけじゃないからな、おい。どっから連れてきたんだ、そのメルフィー。お家に返してやれ。悪いね、ずっとうるさくって」

「(引……)」

「ごめん、そんなに気に障った?ほら謝っとけって」

 

 手を振ってやかましいうちの子達に促す。

 

「何と話してるの?」

「何って……あれ。まさか財前さんも見えてない?」

「なになに、怖い話?」

「怖……くはあるかもしれないけど、この子らは別にそんな」

 

 リボルバーに見えてないらしいのは、一応敵だったからで納得していたけれど、ブルーエンジェルにも見えてないというのか。

 ふと気になってPlaymakerの方にも声をかける。あからさまにこっちに振るな、みたいな顔をしている彼に。

 

「藤木君、見える?」

「……何がだ」

「デュエルモンスターズの精霊」

「……」

 

 やめて。そんな精神疾患患者を見るみたいな悲しい目をしないで。

 普段俺がその辺で精霊と話してる時もこんな目で見られていたのだろうか。

 というかPlaymakerも精霊見えてないわけ?

 

「ほら、昔の有名デュエリストとかさ、精霊がどうこうみたいなの聞いたことない?」

「いやまあ、迷信だろう」

 

 テーブルすら挟んでないのに届かないこの思い。

 

 オカルト無しであのデュエルしてたのか、Playmaker。

 いやまて。まだだ。まだあのやたらイキイキ動くリンクリボーが残っている。

 あれにはワンチャン精霊がついている可能性!

 つまりまだPlaymaker達は自分のカードの精霊と出会えていないだけという可能性が残されている。

 

■◆■

 

 そんなこんなで俺が精神的にメッタメタにされながらも島君のデッキは改良され、そしてショップ内のデュエルスペースで試運転が始まった。

 

「『未界域のビッグフット』の効果を発動!えーと、手札のこのカードを相手に見せて発動できる、だからまずは公開して〜」

 

 ちゃんと強いゴリラを追加し、バブーンで殴る以外の戦術を手に入れた島君。

 簡単に出てくる高打点に楽しそうにしていた。

 

 しかしみんな精霊ついてないのかぁ。

 まあ俺も昔はいなかったし、そんなもんなのかね。

 

 俺になんかついてるブラマジ師弟とかクリボーとか、こいつらが周りをうろちょろし始めたのはいつからだったっけ。

 確か……そう、デュエルマッスル鍛えて運命力上がったなーって実感した頃だ。

 もっというと、それで闇鍋デッキで遊ぼうとかやり始めた後。遊戯ゴッコやろうかな、とか考えて準備を始めた辺りだ。

 

 ちょうどその辺りから、なんかこの若干カラーリングの違う師弟やクリボーの精霊が現れ始めた。

 

 うん。

 パンドラ版のブラマジとかいるからさ、精霊って一種類につき一個体ではないわけで。

 まあ、あの。

 

 俺が憧れの武藤遊戯ゴッコして遊んでるみたいに、こいつらは憧れの武藤遊戯と一緒に闘った同族ゴッコしに来ているという神秘性の欠片もないお調子者達だ。

 

 改めてなんも誇れるとこねぇな、これ。

 

■◆■

 

【リンクヴレインズ】海馬VS遊戯【BGM練習】

 

「待っていたぞ、遊戯。今日こそ貴様との決着をつける」

「ふん。お前にこのオレが倒せるのか、海馬!」

「勝者のままいずこともなく姿をくらませた貴様をオレの前に呼び出すのは容易なことではなかった。だがとうとう貴様を!その執念の結晶こそが、この新たなデュエルディスクなのだ!」

 

「いくぞ!遊戯!」

「お前のデュエリストとしての魂を全て賭け、このオレに挑んできな!」

『デュエルッ!!』

 

■◆■

 

『かっこよ』『いつぞやGo鬼塚倒した謎の罠モンスターじゃん』『なんでライフ8000でやってるんだ』『鳥肌立ったわ』

『これ遊戯と海馬が同時に動いてないんだけど、一人二役で撮影してる?』『頭おかしいのでは』

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