「それはどうかな?」って言いたくなるよね 作:アウグスティン
使用デッキは光と闇の儀式
やはりと言うべきかテーマ内の妨害が少なくて気になりますね
対戦していただいた方、ありがとうございました
ふぅ、と息を吐く。うまくいってよかった、色々と。
「私の負けか」
ボーマンは静かに言う。その声には、驚きよりもむしろ納得があるように感じた。
俺はデュエルディスクを解除しながら、ゆっくりと歩み寄る。
「約束だ、ボーマン。みんなを返してもらうぜ。人もイグニスもだ」
ボーマンはわずかに目を伏せ、静かに頷いた。
「ああ、約束は守る」
彼が右手を軽く振ると、いくつもの光の球が浮かび上がる。
捕らわれていた人間たちのデータが、次々と元の場所へと還っていく。
同時に、ニューロン・リンクの球体がゆっくりと輝きを失っていった。
「よし……これでようやく一段落だ。ボーマン、ハル。お前らも一緒にログアウトしよう。もうここにいる必要はない」
ハルが少し驚いた顔で俺を見る。
ボーマンは静かに首を横に振った。
「いや私は……残らねばならない。まだ私にはやらなくてはならないことがある」
「兄さん……!?」
ハルが慌ててボーマンの袖を掴むが、ボーマンは優しくその手をほどいた。
「ハル。お前はユウギと一緒に行け。なに、悪いようにはなるまい」
ボーマンはハルの頭を一度だけ優しく撫で、俺に向き直った。
「また会おうユウギ」
その言葉を最後に、ボーマンは静かに微笑んだ。
──瞬間、周囲の空間が激しく軋み始めた。
セントラルステーションの壁に亀裂が入り、天井が崩れ落ちる。
リンクヴレインズ全体が、巨大なデータ崩壊の波に飲み込まれていく。
何故だ。アニメと違ってリンクヴレインズのデータをデータストームに変換とかはしていないはず……あ、短時間に何度も神を暴れさせたからか。
「くっ……! ハル、ボーマン!」
ボーマンの姿が、崩れゆく光の粒子の中にゆっくりと溶けていく。
視界が白く染まり、リンクヴレインズが崩壊する轟音が遠ざかっていく。
■◆■
目を開けると俺は自室にいた。
強制的にログアウトさせられたことで若干痛む頭を押さえて立ち上がる。
「ハル。そこに入ってるのか?」
とんとんとデュエルディスクを突いてみる。
「……ああ、ここにいるよ」
「そうか」
普段はBGMくらいしか鳴らないディスクが喋りだす。
「お前だけか?」
「うん」
それきりハルは黙ってしまう。しばらくそうしていたが、ずっとこのままでいるわけにもいかない。
ディスクを腕から取り外して、神のカードを額縁に戻す。
額縁のカバーをつけ直す頃には、それはカードから金属の板へと戻っていた。
「……晩飯作るか」
外はすでに暗くなっていた。
はぁ、まったく。
闘ったことに意味はあった。間違いなく多くの命を救うことには成功した。
でもそれはそれ。いい気はしない。
もともと凝った料理を作る方でもないし、今日は疲れた。適当になんか、腹に入れるだけしよう。
適当に温めた冷凍パスタを掻っ込んで、そのまま倒れるようにベッドに横になる。
「はいはい、お母さんかよ。明日やるって。今日はもう寝る」
「誰に言ってるんだ?」
明かりを消して、目を閉じた。
■◆■
「……ん」
なんだよ、朝からうるせぇな。
俺以外には聞こえないからって好き放題しやがって──
「私を罰してください、ボーマン」
「どうしたというのだライトニング」
……。バンッ!
「あ、実体無いのか」
「私をハエ扱いするのはやめろ!」
なんで生きてんだこいつ。死んどけよ。
効かなかったので仕方なくハエ叩きを元あった場所に戻し、そのままの勢いでデュエルディスクを装着する。
神は抜いてしまっているが、なんとかなるだろう。入れないほうが強いまであるし(不敬罪)。
「ここで何してんだ、お前ら」
「言っただろう。まだやることがあるとな」
「あん? ……ああ、ミラーリンクヴレインズが崩壊する前に、そういえばそんなことを」
「これがそのやることだ」
と、ボーマンがライトニングを指さす。
それはどういう。
「君も見ただろう。私のキメラ・ハイドライブ・ドラグリッドには光属性の力は含まれていなかった」
「それは俺が消滅させたからだと思っていたが」
「無論。一度消滅はしていたとも。だが私は、ライトニングがもう一つ、バックアップを用意していることを知っていた」
つまりボーマンの言うやること、ってのは、消えた振りして隠れ潜んでたライトニングを見つけ出すことってわけだ。
「なるほどな。それで土下座してボーマンに謝ってたわけだ」
「いや、それは……」
「そうではない。そうではないが」
ボーマンが口ごもったところで、ライトニングが切り出す。
「君に話すのは憚られるな」
「もっかいやるか、おい」
「彼は私の敗北後、ニューロンリンクのデータを吸い上げていた」
「ボーマン!?」
言い渋っていたところを、さらりと暴露されたライトニングが抗議する。
「吸い上げ……? ああ、なんだ。結局やったのか。てっきり出来ないものだと」
「どういうことだ?」とボーマン。
「おっと。なんでも」と返す。
「説明しろ、ライトニング」
「……、私の天装騎兵の強化案は、ハッキングして盗み見たユウギの分析データから来ています」
「そうだな。今ある天装騎兵から、Playmakerを始め、他のデュエリスト達のカードをコピーした場合の想定、それらの使い方まで用意されていた」
「それはユウギが私を誘導するために、わざと見せた情報だったのです。つまりコレもユウギによる誘導でして」
「私が知らない辺り、それは隠していたな。何が書かれていた」
「……、私の目的に対する分析です。複数のイグニスの製造、ミラーリンクヴレインズによるデータの収集、そして草薙仁の誘拐。ここから私の目的を、自己改造だと推定する、というような内容ですね」
確か、過度に周囲を見下す態度から、何かしらコンプレックスがある。
何かは不明だが、プライドの高さからその解消が目的。
手段は自己改造だろう。
オリジナルである草薙仁の誘拐は、コンプレックスの理由を調べるため。ボーマン達の製造は、イグニスに手を加える技術のテスト。ミラーリンクヴレインズは、改造のためのデータ収集。
的なことを書いておいた。上手く乗ってくれれば闘う前に終わるかもと期待していたのだが、とうとう決戦が始まってしまったので失敗したものだと思っていたのだが。
「既にボーマンがミラーリンクヴレインズとの接続準備を始めていただけだ」
ということらしかった。
ミラーリンクヴレインズとの接続を始めているとなると、その時点でボーマンはライトニングよりも上位のAIになっていたことだろうし、中断させることもできなかったか。
「それで? なんだ。ボーマンに黙ってたことを土下座して謝ってたのか?」
「いいや違う。私は……反省したのだ」
「反省」
「その、自らの所業を振り返り」
「うん」
「擁護のしようがないなと」
「そうだな」
「よくもまあ、Aiもユウギも私を死なせないように気を配ることができたな。立場が逆なら容赦なく攻撃しているぞ」
「Aiの優しさに感涙しとけ」
うわぁ。ライトニングが他責せずにしっかり自責してる。
「それで罰か」
「そういうことだ」
なるほどなぁ。
「ボーマン。俺は、まあいいんだけど、Aiが悲しむから消さない方向でなんかやってやりな。それで気も済むだろう」
「そうだな。そうするとしよう。ではライトニング」
「はい」
「共にお詫び行脚と行こうか」
「それは……いえ、わかりました」
「おう、頑張れお前ら」
と、彼らに対して手を振る。
こっから先は俺が出来るようなこともないだろうし、ボーマン達が自分でなんとかするしかない。……まあ、こう、擁護を頼まれたらやってやらなくもないが、基本的には自力でやるべきだろう。
「僕も……僕も行くよ、兄さん」
「ハル。だがお前は」
「無関係じゃない。僕だって当事者だ。ていうか、兄さんよりも前から当事者なんだからな!」
「そうだな……では、共に行こうか」
そうして彼らは旅立った。
これで本当に万事解決だ。
みんな生き残ることができた。誰も死ななかったし、誰も殺さなかった。
ああ。これで心スッキリだ。
部屋の中に静けさが戻る。いやはや、騒がしい連中だった。
さて。
俺も俺のやることをするとしよう。
とりあえず──朝飯にするか。
■◆■
オマケ
ソ「それにここにはな、俺なんかよりもっと格好良い奴がいるんだよ」
綺久(尊の幼馴染の女の子)「へぇ……見てみたい!」
ソ「それが……今はちょっと旅に出てるんだ」
ユ「イントゥ・ザ・ヴレインズ!」
プ「どこで何してたんだ?」
ソ「一ヶ月近くも行方不明だなんて」
ユ「(目逸らし)その……親に怒られて、謹慎させられておりました」
オマケ
Ai「てか、あんだけいろいろあったのに、思ったより騒ぎになってないよな」
ユ「ああ! それはボーマン達のおかげだぜ」
プ「どういうことだ?」
ユ「ちょいと情報操作を手伝ってもらったんだ」
ソ「情報操作?」
ユ「ああ! SNSに大量のBOTアカウントで嘘をばら撒いたりな。ファクトチェックもAIがやってるんだから、真実ってことにするのも容易だ」
ソ「? へえ、すごいな!」
プ「……恐ろしいことを考えるな」
ユ「……。そだね」←発案
最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ(本編外の話が)続くんじゃ