「それはどうかな?」って言いたくなるよね 作:アウグスティン
また黒の魔導陣が使えなかった
「デッキの改造手伝ってくれよ」
と、島君に言われた。
「いいけど……この後用事があるからちょっとだけな」
「おう。助かるぜ」
「じゃあまず、デッキって見ていい?」
デッキを預かり、パラパラと捲ってみる。
興味あったんだよねぇ。この世界の一般人デッキ。
どんな内容してるんだろうか。ざっと目を通してみる。
う〜ん。なんというか、予想通り。
手札事故起こしてたからわかってたけど、運命力があんまり高くないとこうなるんだな。
獣族でまとまってはいるものの、そもそも中心になるバブーンの種類がなく、テーマとして形になっていないし、グッドスタッフやるには全体としてカードパワーが。
「グリーン・バブーン並べてビート、がやりたいことでいいんだよな。ならとりあえずそこだけ考えようか」
「というと?」
「墓地からも蘇生できるから『おろかな埋葬』とか、効果破壊に強いから戦闘で倒されないよう攻撃力あげるとか……あ、『ブラック・ホール』とか『激流葬』とか『つり天井』とかどう?」
「前から思ってたけど、出てくるカードがずっと古いんだよなぁ」
「グリーン・バブーン(2006)も大概だろ」
後はまあ趣旨変わってくるけれど、アニオリでリンクのバブーンとかいたわけだし、運命力で新規を創造するとかになるな。
レッド・バブーンとかいいんじゃないか。なんかこう、ガジェットみたいで。
デュエリストなんだから決闘中に無から生えてきた新規がデッキに入ってることもあるだろう。
「んなわけあるかい」
「え? ないの? 俺しょっちゅうデッキに入れてないカードをドローするんだけど」
「管理が甘いんじゃねーの?」
「そうかな? そうかも」
とかなんとかやっている内にいい感じの時間になったため、俺は席を立つ。
「じゃいってきまーす」
■◆■
「持たせたなブルーエンジェル」
屋上で鉢合わせてしまわないように校舎裏で座り込んでログインしたリンクヴレインズ。
『ユウギ(仮)にリベンジしま〜す☆』みたいなショート動画で日時を指定されてデュエルを挑まれたのである。
「やっと来たわねユウギ!」
「動画の件知ったのが今日の昼だったからな。危うく見逃すところだったぜ」
もっと確実な手段で挑戦状を叩きつけてほしかったところだ。ビデオテープ送りつけてくるとか。
「だって『いつでも挑んできな』って言ってたクセに連絡手段ないじゃない」
「あー……後でSNS開設しておくぜ」
言われてみりゃそれはそうだ。
連絡取れなきゃそうするしかないか。
デュエルが終わったらブルーエンジェルに何使えば良いか聞きながら始めよっと。
「んんっ、よし。かかってきなブルーエンジェル」
「ええもちろん! 借りはここで返させてもらうわ」
ディスクを構える。リンクヴレインズのシステムが俺の後攻スタートを告げる。
なんかアイドル優遇してないか。俺ずっと後攻な気がするんだけど……。
「今日は頭からぶっ飛ばすわよー! 手札からフィールド魔法『トリックスター・ライトステージ』発動! このカードが発動したことでわたしはデッキからトリックスターモンスター一体を手札に加えるぅ」
カシャ、とディスクからカードが吐き出される。
そして手札に加えたカードをそのままフィールドにプレイした。
「ドロー以外の方法で手札に加わったことで、わたしは『トリックスター・リリーベル』を特殊召喚! さらにさらに『トリックスター・キャンディナ』を召喚。キャンディナのモンスター効果で罠カード『トリックスター・リンカーネーション』を手札に」
前闘った時も思ってたけど、やっぱり画が映えるな。トリックスター。
次々と現れる可愛らしい天使族のモンスターに微笑ましい気持ちになる。効果は可愛くないが。
「『トリックスター・マンジュシカ』の効果発動! キャンディナを手札に戻して特殊召喚〜。そして魔法カード『トリックスター・ハルシネイション』発動。手札のマンジュシカを効果を無効にし、攻撃力を半分にして特殊召喚。カムバーック、マンジュシカ! その後お互いにカードを一枚ドローする」
俺の手札にカードが加わる。
これによりトリックスターの真骨頂。すなわち小刻みなバーンダメージの連鎖が始まった。
まずはマンジュシカの効果。手札に加わったカード一枚につき200のダメージ。
愛らしい黒髪の天使はレイピアを手元に召喚すると、それからビームを撃ってくる。
天使の一発に呼応するようにステージからも光が放たれ、追加で200のダメージを受けた。
ユウギ(仮)
LP4000→3600
「出てきて! 夢と希望のサーキット! リリーベルとキャンディナの二体でリンク召喚。リンク2『トリックスター・ホーリーエンジェル』! カードを一枚セットしてターンエンド。さあ、あなたの番よ。今日こそトリックスターの魅力で虜にしてあげるわ」
トリックスター・ホーリーエンジェル
リンク2 ATK2000
「やれるもんならな。俺のターン! ドロー!」
「この瞬間。マンジュシカの効果、200のダメージ!」
ライトステージも合わせてガンガン削られていく俺のライフポイント。
ユウギ(仮)
LP3600→3200
『悪夢の拷問部屋』が無くて助かったぜ。
コンセプト的に抜いてくれてるお陰でまだ生きていられる。
「俺も俺でトリックスターへの対抗策は用意してきていてね。そいつを今から見せてやるぜ」
「なんですって」
「いくぜ。『融合派兵』を発動!」
ヴェールは置いてきた。あいつはこの戦いにはついていけない。
ライフ削ってブラマジ出してたらしゅんころされるんだよ!
「融合デッキのモンスターを公開することで素材となるモンスターを特殊召喚できる。俺は『超魔導竜騎──間違えた。超魔導剣士-ブラック・パラディン』を見せ、デッキより『ブラック・マジシャン』を呼び出す!」
「早速来たわね、あなたのエースモンスター!」
「ふっ。知っているかブルーエンジェル。最上級黒魔術師の昇進した姿を」
「……知るわけないけど」
「ブラック・マジシャンを生贄に捧げ、『
黒魔導の執行官
レベル7 ATK2500
カッコいいポーズを取って佇んでいたブラマジが、バネみたいなエフェクトに包まれ、より強大な魔力を秘めた姿へキャリアアップする。
「『光の護封剣』を発動。この瞬間、執行官の効果! 通常魔法が発動する度──お前に1000のダメージを与えるぜ!」
「きゃぁあああーっ。……く、対抗策ってのはまさか、わたしに効果ダメージで張り合うつもりだったとはね」
ブルーエンジェル
LP4000→3000
黒魔導の執行官はトリックスターモンスターと同じく条件を満たす度にダメージを与える永続効果を持つ。
そしてトリックスターとは異なり、通常魔法を発動するのは俺でなくても構わない。どちらかが魔法を発動する度にブルーエンジェルへと1000のダメージが入る。
「ああ。ブルーエンジェル、お前の命はあと魔法三回だ。カードを一枚……二枚伏せてターンエンド。その伏せカードは使わなくてよかったのか?」
「余計なお世話よ。わたしのターン! ──これは」
まあこっちがカードを伏せ始めたら使えないだろうな。
手札から使えるカードがまだあります、と装えるし、バトル中に伏せを破壊するカードも存在する。
だからプレイングとしてはいろいろあるだろうけども、カードを伏せるのはターン終了前が一般的だ。
つまりブルーエンジェル視点、もう俺に通常魔法はない。
リンカーネーションで俺の手札を交換させると状況が悪化する可能性が高いってわけだ。
そんな訳でブルーエンジェルのターン。
なにを引いたのかは不明だが、表情が変わった。
「ならわたしも効果ダメージだけであなたを焼き尽くしてあげる!」
キャンディナを召喚。マンジュシカを手札に加え、キャンディナを戻して特殊召喚。伏せカードを一枚追加してターンを終える。
ホーリーエンジェルはリンク先のトリックスターに、戦闘効果破壊への耐性を与える。二体のマンジュシカは当然リンク先にいるため、破壊は不可能。
今伏せたのは……なんだろうな。
俺に番が回ってきたのでカードを引く。
「その瞬間、二体のマンジュシカの効果! それぞれ200のダメージ! もちろんライトステージの効果も二回分受けてもらうわ!」
「ぐあっ!」
ユウギ(仮)
LP3200→2400
チクチクダメージがそろそろ痛い。
でもやらないと負けちゃうからなぁ。
「『強欲で貪欲な壺』発動。デッキから10枚を裏側で除外し、カードを二枚、ドロー! そして黒魔導の執行官の効果! 1000ポイントのダメージ!」
「マンジュシカとライトステージの効果!」
ブルーエンジェル
LP3000→2000
ユウギ(仮)
LP2400→1200
「リバースカードオープン! 『トリックスター・リンカーネーション』! あなたの手札をすべて除外し、その枚数分だけあなたはカードをドローする。手札は三枚、マンジュシカの効果でピッタリ0よ!」
「罠発動『神の宣告』! 俺のライフを半分にし、そのカードは無効だ!」
ユウギ(仮)
LP1200→600
危ない危ない。でもこれ負けたな。
俺の手札ではこのターン中にライフを取り切れない。手札に通常魔法は一枚だけ。
だが遊戯も言っていた。『どんな不利な状況でも余裕を見せろ』と。遊戯、めっちゃ顔に出るけど。
手札には二枚、通常魔法がある。
そう装えるように、これで勝てるみたいな顔をして考える様子を見せないようにカードをディスクへと叩きつけた。
「魔法カード『死者蘇生』! 蘇れ『ブラック・マジシャン』! さらに1000のダメージ!」
ブルーエンジェル
LP2000→1000
「残念だけどその『死者蘇生』によってあなたの敗北は決まったわ。リバースカードオープン! 速攻魔法、発っ動〜!」
くるんと捲れて公開される最後のカード。
眩い光を纏った矢が描かれたその一枚は、俺がこの間あげたカードだった。
「『魔法効果の矢』! このカードはあなたのフィールドに表側表示で存在する魔法カードをすべて破壊し、その枚数掛ける500のダメージを与えるわ! 今、あなたの場には『光の護封剣』そして発動中の『死者蘇生』の二枚がある。よってその二枚を破壊して1000のダメージよ!」
初代遊戯王で幾度も武藤遊戯の勝利に貢献してきた魔法の矢が、俺に向けて引き絞られる。
「遊戯のコスプレイヤーとしてそのカードにやられるなら悔いはない……、と言いたいところだが残念だったな」
──カンコーン☆
久々に鳴らす逆転のSE。
「手札を一枚捨てカウンター罠『マジック・ジャマー』を発動! これでカードの発動は無効だ」
「くっ。その最後の手札は……」
「いいや。こいつは魔法カードじゃない。だがこいつがお前のライフを吹き飛ばす最後の切り札!」
大仰な身振り手振りを加えつつ、俺はその竜を呼び出した。
「出よ。『冥王竜ヴァンダルギオン』!」
冥王竜に名に相応しい威容。
漆黒の体躯に赤いラインが刻まれた竜が吼える。
「カウンター罠で相手カードの発動を無効にした時、こいつは特殊召喚できる。そしてヴァンダルギオンのモンスター効果!」
──バン☆
BGMが用意できないのが残念でならないぜ。
「魔法を無効にして特殊召喚した時、お前に1500のダメージだ!」
「そんな……わたしがまた──きゃああああっ!」
冥王竜がブレスを吐き、ブルーエンジェルのライフを消し飛ばす。
ふぅ。また今回もギリギリの勝負だった。
■◆■
「SNSってどれやればいいすか、先生」
「わたしが使ってるのは〜」
「あのIDみたいなやつってどこで変えるんですか」
「ユーザーIDね。それなら設定のアカウントから〜」
「おお〜。これでついにユウギ(仮)の公式アカウントが……どう使おう……今日のデッキレシピでも投稿するか」
「いいの? それ見せちゃって」
「別に知られたところで」
──実際後で投稿したら『なんで回るんだ』ってメッセージがいっぱい来た。
ユウギ(仮)のブラマジデッキ解説講座〜
ブラマジデッキの基本コンボについては解説したから、そのために必要なカードを揃えるサポートについて解説するぜ
『マジシャンズ・ロッド』
こいつは召喚するとデッキからブラマジの魂が刻まれた魔罠を手札に加えられるモンスターだ。
前回は省略したが黒の魔導陣にはランダムだがサーチ効果も付いているからな、どちらかと言えば魔導陣を優先して持ってこよう。
あと墓地のこいつは相手ターンに魔罠を使うことで、場の魔法使いを生贄に手札に回収することができる。
前回のコンボに存在する欠点の一つ。
毎ターン特殊召喚するためのブラマジが手札か墓地に必要、という点をブラマジを生贄に捧げることで解消しつつ、次のターンのリソース確保もできるぜ。
『マジシャンズ・ソウルズ』
デッキから上級魔法使いを墓地に送りつつ、ブラマジ師弟の蘇生。または自身を特殊召喚できるモンスターだ。
初心者には勘違いされがちだが、コストでブラマジを墓地に送り、効果で墓地から特殊召喚できるから墓地に師弟がいない状態から効果を発動して師弟を特殊召喚できるぜ。
意味不明かもだが、要はデッキから(なんか墓地に寄り道して)ブラマジ師弟を出せるカードだ。
場で使える効果もあって、場と手札から魔罠を二枚まで墓地へ送り、その枚数分だけドローできる手札交換効果を持っている。
要らない魔罠や、墓地効果のあるカードをドローに変換しよう。
ルールを守って楽しくデュエル!