炎駒枸の新作ホロライブ二次創作です。
まずご忠告しますが、当作品ではオリキャラがおらずメンバーが結構死にます。精神的にキツイ(かもしれない)展開もあります。
序盤はヌルいですが、読む際はある程度覚悟しておいてください。
覚悟ができた方は、どうぞ本編へ――。
この世界には、如何なる理由があろうとも、決して破ってはならない掟が存在する。
1つ、神の意向に背くな。
2つ、神の御告げに随え。
3つ、神への畏敬の念を忘れず、崇拝せよ。
たったコレだけの掟。
僅か3つのルールは、世界中周知の掟として、誰もが認知している。
禁を破れば、神の裁きが下るとされる。
そんな世界で、人々は生きている。
そしてある日――世界の運命を変える事態が発生した。
*****
とある一国の、とある一神社に、2人の少女は暮らしていた。
生まれて間も無く神社の神主に引き取られ、育てられた少女たち。
黒髪の狼が、大神ミオ。
白髪の狐が、白上フブキ。
毎日寝食を共にしていた為、非常に仲が良い。
神事などにも参加して、神社での働き方も幼いながらに覚えていた。
とは言え2人も普通の女の子。
普段は周囲の女子と何ら変わらぬ生活を送っていた。
そんなある日の事。
「ねえフブキ……」
「ん? どしたの、ミオ?」
ミオが右腕を服の上から摩って、もじもじしていた。
恥じらうような態度――かと思って目を合わせれば、そうは見えない。
僅かに瞳を潤ませて、痛みを堪えるよう。
「腕が痛いの……」
「え、大丈夫? どこかで打った?」
触るよ、と前置きして軽く右腕に触れた。
「どう、痛い?」
少しだけ押してみた。
「んーん、そうじゃないの」
「え? えっと……」
「何かこう……腕の中に、何かいるみたいな……」
「え、何だろう……」
寄生虫か何かだろうか?
でも、腕に入り込むか?
「取り敢えず、お医者さんに診てもらおう」
「う、うん……」
その提案に、ミオは乗り気ではなかった。
でも例え病院が嫌いだろうと我儘は言っていられない。フブキは構わず神主に報告した。
「みこさん、ミオがね、腕が痛いって」
「腕が? 見せてみなー」
神主、さくらみこ。
実に神社の者らしい服装だが、古風なこの神社にはまるでミスマッチな色合い。
ミオの腕をそっと手に取り、服の袖を捲った。
薄黒い痣が現れる。
「――ァ」
小さく溢れた音を、フブキもミオも聴いていなかった。
フブキが不安そうに眉を寄せている。
「治るかな?」
みこはソッと袖を戻した。
「うん、大丈夫」
「ほんとに⁉︎」
「勿論。みこに任せて」
みこがミオの腕を引いて神社の奥の方へ。
「フブキちゃんはここで待ってて」
「え、でも私も――」
「ダメ」
「うぅ……」
ミオに同行したいフブキ。
みこは語気を強めて拒否する。
「フブキ、ウチはへーきだから、ちょっと待ってて」
「……う、うん」
2人が神社の最奥まで向かって行った。
「……」
「みこさん……」
「ミオちゃん。それは『呪』だよ」
「…………」
神社最奥の一室で2人が話していた。
ミオもみこも分かりきったように。
ミオの行く末を見限ったように。
「神の御告げに随い、『呪』を持つ者は――」
「分かってます……」
「――」
「フブキには……感染りませんよね?」
「そうだにぇ……長居しなければ」
不穏な空気。
ミオは恐怖に怯えながらも、早々に決意を固める。
「なら、死にます! うち、今すぐ」
「――ん。『呪』を持つ者は、供養しなければならない」
供養とは聞こえがいい。
結局は火炙りにして殺す事。
『呪い』は稀に人の身体に刻印を残す。
その『呪い』は人から人へ感染り次第に身体を蝕んでゆく。
『呪い』の蔓延を防ぐため、『呪い』を発症した者は即刻火炙りにしなければならない。
これらが『呪い』についての一般常識である。
「祭祀場へ行こうか」
「……うん」
2人は儀式の為に場所を移す。
その途中、フブキと出会った。
「……あ、ミオ」
「フブキ」
「大丈夫そ?」
「……う、うん! 大丈夫」
「そっか、よかった」
フブキの安堵を見て、ミオは感情が込み上げてきた。
面を下げて、隠す。
その姿にフブキは疑問を覚えた。
「これから『病院』に行ってくるから、ここで待っててにぇ」
「え、でも病院くらい」
「待ってて」
「う……」
2人はフブキを置いて、どこかへ歩いて行った。
――――――――――
そして祭祀場。
ミオは生贄の祭壇へ上がる。
周囲には、多くの人がいた。
ほとんどが神父など。
経典を広げてブツブツと唱えたり、神に赦しを乞うたりと、目障りだった。
儀式の合図とともに、火が灯される。
「う……っ」
熱い。
熱いよ、フブキ……。
でも、大丈夫。フブキに害は、及ばさないから。
「ミオ……?」
「――」
「ミオ!」
神父やシスターの間を縫って、1人の少女がミオの視界に現れた。
フブキが、当惑している。
「ミオ! ミオなんで⁉︎」
「――――」
フブキが柵を越えてミオの下へ飛び出しかけた。
「フブキちゃん!」
「なんで! みこさん! 離して!」
「あれは『呪』なの! ここで儀式を破壊すれば、掟に逆らう事になる。神様に逆らうことになる!」
「――――‼︎」
この世界に於いて、神は何よりも崇高な者。
神の作った掟は絶対である。
それに逆らえば――天罰が降る。
「ミオちゃんはフブキちゃんのために、この道を選んだの! ここにいて!」
「――――‼︎」
フブキの思考回路は、そこまで冷静でない。
親友の死を目前に、理性は保っていない。
それでも、みこの忠告に耳を貸したのは、生存本能かもしれない。
禁を破れば、自分が死ぬ。そんな予感が根拠もなくあった。
だから、一瞬――身体が動かなかった。
「――――‼︎」
ミオを見る。
下から迫り上がる炎で足が焼け始めた。
焼身自殺は、最も苦しいと聞く。
「――――‼︎」
――――――――――
フブキは人生で一度も、神を疑ったことはない。
神事を直向きに行ったのも、神に疑念を抱くことがなかったから。
神はそれだけ偉いのだろうし、掟があるから守られる体裁がある。
神様は必要だと思っていた。
神様が我々人の為に、その掟を作っていると感じたから。
――――――――――
でもこれは違う!
『呪い』が蔓延るから供養する?
人の命は――ミオの命は、そんなに安い物じゃない!
神だから、簡単に人を殺していいのか?
そんなの理由にならない!
例えどんな審判が下ろうと。
ミオを助けない理由にはならない!
自分勝手でもいい!
ミオを見捨てて自分が生き残るくらいなら、ミオと共に「呪い」を受けて死んでやる!
「ミオ!」
みこの手を払って、祭祀場の中央へ。
祭壇で生贄にされるミオの縄を解いて、抱き抱えた。
「フブキちゃん!」
「何だ……あの子は!」
みこの声を掻き消して、1人の神父が叫ぶ。
ガヤガヤと喧騒は一瞬で広まった。
神父もシスターも、どいつもコイツも叫んでやがる。
神の裁きが来るぞ‼︎
ミオが何をしたって言うんだ。
『呪い』を解くのではなく、人を殺して『呪い』の蔓延を抑えると言うのなら。
フブキはもう、そんな神を信じない。
ミオを殺す神なんて――。
「神がそんなに偉いのかぁー‼︎」
これが、白上フブキの叛逆だ‼︎
「フブキ――」
「ミオ! 大丈夫! 私はミオの側にいる! 死ぬまで‼︎」
雑音まみれの祭祀場を飛び出して、街を外れて、国を出た。
途中で豪雨に見舞われた。暴風に、落雷。
激しい嵐の中、びしょびしょになっても、走って、走って……。
逃げている間、ミオはわんわんと泣いていた。
後から聞けば、やっぱり死ぬのは怖いって。
そう言って貰えて、フブキは自分の行いの正しさを痛感できた。
たった数分間――。
国を出て、嵐の中、フブキはミオを抱えて草原を進んだ。
他国との通路だけが整備された、普通の草原。
街を出て、草原を歩いて――たった1分。
ピガッ――ズドン。
激しい閃光と轟音、更に震える大地。
耳と目が潰された気分。
雨に体力を奪われていたフブキは、地響きで転倒した。
「あ! ごめんミオ」
「――ぅ、うぅ」
「は、ミオ⁉︎」
フブキは今頃になって、ミオの体調の変化に気付く。
雨か、呪いか。
ミオは高熱に魘されていた。
そんな、どうにもならない窮地に、神は現れる。
「…………」
「――――!」
「…………」
落雷跡地に、人影が見える。
「神とは羨望。神とは恐怖。神とは未知」
薄暗い視界、天候の中、時折発する稲光。
フブキはまず、不可思議を覚える。
「貴様は神を――信仰するか?」
揺らめく紫髪の――ツインテール。
「あ……あ、ぁ……」
「雷霆」
――――。
「常闇トワ、だ」
*****
豪雨の中、1人の女性が2人の前に佇む。
――――。
雷霆。
聞き覚えの無い単語だ。
でもその前の口上には、覚えがある。
幼くして学校で習う、神に関する座学。
神は羨望、神は恐怖、神は未知。
それぞれに纏わる「何か」を司る「遣い」が存在すると。
今フブキが覚えた不可思議こそ、その証明。
この、常闇トワは未知の支配者。
神の遣い――雷霆。
「――お前が、神に逆らった女か」
「ぁ……ぁ、あぁ…………」
「声も出せねェか。大した事ねェ叛逆者だなァ」
担当が恐怖で無いにも関わらず、その放たれる気魄は人の意識を削ぐほど。
畏怖に染まるフブキの顔を見飽きたのか、背後の病人を一瞥する。
「あァ、『呪』はこいつか」
トワが右腕を天に翳した。
手の平から、バチバチと放電が起きる。
ゴロゴロと、天も唸る。
ピ――――。
閃光を見たと思えばもう、2人は意識を失っていた。
薄白い電撃が、一直線に2人へ落下した模様。
措置が遅れれば、2人は死ぬだろう。
「こんなのばっかじゃねェかよ。つまんねェなァ」
雑魚狩りなんて飽き飽きだ。
『呪い』が出た。そいつが逃げた、叛逆した。
そう聞いて天罰を降しに赴けば、腰抜け連中ばかり。
結局――本当に賢い奴は、『呪い』の発症さえ隠し切る。
神の遣いは、大抵がただのゴミ処理。
就く職を間違えたな。
「あのぉ〜」
「――――⁉︎」
トワは咄嗟に飛び退いた。
その時、首元にぶら下げていた青いハートリングのネックレスがキラリと光った。
「うひゃぁ! お、驚かさないでくださいよぉ〜」
金髪の少女が、怯えた風に瞬いた。
「何だ、おめェは」
「あのぉ〜、道に迷っちゃって、困ってるんです〜」
「――――ァ?」
少女は平然と言うのだ。
「悪いがトワはこの辺の『人間』じゃねェ。道は知らねェぞ」
「あ、そぅなんですかぁ〜?」
なら仕方ないや、と背負ったリュックを担ぎ直す。
傘もなく、服も荷物も雨でぐっしょりだ。
「……あぁ〜、それと、その人たち、奏が引き取りますよぉ」
「待て。そいつらはこのままでいい」
「へぇ? でも、死んじゃいますよ、このままじゃぁ」
「いィんだよ。それ以上首突っ込むと、お前も死ぬぞ」
「え⁉︎ 奏もですか⁉︎」
「あァ――」
脅迫するように少女の行動に対して、忠告をした。
漸く少女もトワに対する恐怖を体感する。
「……でも連れて行きますよ〜。放置すると死んじゃうんで」
「そうか」
少女の捨て身の決断にも、トワは非情な対応を取る。
再び右腕を天に翳した。
先刻同様の放電現象が発生。
金髪少女にも、雷を落とす。
「――――‼︎」
激痛を感じる間も無く意識が途絶する。
実に無慈悲である。
勿体無い命だ。
下手に首を突っ込まなければ……。
「――――」
嵐吹き荒ぶ草原で、トワは独り、3人の死を見届ける。
このまま場を離れ、その一瞬で3人が治癒される万が一に備えてだ。
「――――」
黙って嵐の矛を収めた。
「ほんッとにつまんねェ」
呆気なく死んだ3人を見届け、トワはさぞ不満そうに吐き捨てる。
次の瞬間――バチッ、と放電が起き、トワへと落雷が発生。
落雷跡地にもう、人影は無かった。
――――――――。
「行ったかな?」
土の中から声がした。
がたがた……。
大地が揺れ、1人の女性が地中から跳ね出た。
漆黒に染まりかけた左翼と頭上に浮かぶ天使の輪(手裏剣)。
右翼は……異様。
「まだ魂が近い」
ばさ、ばさ、ぎぎぎ……と、羽ばたく。
中空に散り行く3つの魂を捕まえた。
「秩序の禁を破れ。世の理の超越。生老病死の淘汰」
呪文を唱えるように詠唱する。
3人の目立たぬ外傷と、電撃により負傷した内臓などの器官、全てが瞬く間に修復される。
「魂魄憑依」
3つの魂が、一度離れた肉体に戻った。
「――――?」
少女は小首を傾げる。
違和感を覚えたようだが……早々に思考放棄した。
「にしても全く……2人は兎も角として、この子はどんな心境で……」
金髪少女の愚行に嘆息する。
あの状況。いくら人助けが好きでも、退散するのが妥当――否、賢明だ。
それを正面から堂々と、助けるなんて言って、みすみす命を落とすなんて。
「――一先ず場所を移さないと」
トワが去り、大嵐は止んだが、環境が悪く見晴らしは良い。
この光景を一般人ましてや神の遣い、神に目撃されると厄介だ。
たんたん、と右脚で2度大地を踏み鳴らす。
ごごごごご……。
大地が割れた。
その地割れの底へ、3人は転落し、救世主も飛び降りる。
そして再び、歪んだ大地は更地を形成した。
――――――――――
ぼんやりとした意識の先で、声が聞こえた。
2人か……3人。
多くない数で、女性が会話していると分かった。
その声が次第に明確になり、己の覚醒を自覚した。
「――――」
視界には見知らぬ天井が広がっていた。
薄暗くて茶色く見えるのか、元々茶色なのか。
ゆっくりと視線を動かし、室内を見渡すと全体的に薄暗く、小汚く見える色だった。
最後に目線は足下まで落ちたが、自分の足は見えない。
代わりに少し崩れた毛布が、覆っていた。
「――わたし」
死んだ、のか?
「――ど、こ?」
自分が死んだのならここは、冥界かどこか。
だが、死者から声は聞こえない。
自分は今確実に肉体を持ち、その喉から声を発した。
白上フブキは生きている。
「――?」
フブキは奇妙な感覚を得た。
過去に一度も感じた事のない違和感。
小さく喉を摩った。
「あ……服」
毛布をばさっと捲ると、普段着用しない衣装が身を纏っていた。
何者かが着替えさせたと思われる。女性だといいが。
大きくないベッドから身体を降ろし、立ち上がった。
「――???」
やはり、いつもと何か違う。
正確に何が違うとは言えないが……。
「……は、って、ぁ、……」
「――――! っ……ぇぉ……」
扉の奥から声が反響している。
覚醒に至った経緯はコイツらか。
ボロい扉を引けば、その先に廊下が続いていた。
土の廊下だ。
履いていた靴のまま土を踏み締めて、更に声へと距離を詰める。
もう一枚、扉を開いた――
「あっはははは――あ、起きた?」
「おー、おはよーございますー」
2人の少女に迎えられた。
この部屋は、しっかりと照明が点灯しており、明るい。
だから2人の容姿もよく見える。1人の愛くるしい容姿と、1人の異形が。
「おはよ」
「お、おはよう?ございます」
今の時間帯も分からず流れで挨拶したが、今は何時なのだろう?
窓も無いので陽光も月光も差さず、外気も大して流れ入らない。
「座りなよ」
「え、ええ、では……」
食器の並ばない食卓の席に着き、3人でテーブルを囲んだ。
沸かしたてのお茶を湯呑みに注ぎ、差し出してくれた。
そっと口に運ぶと少々熱い。
「あの……」
「落ち着いて。もう1人の子は別の部屋で寝てるよ」
「は、よ、よかった……」
安堵に胸を撫で下ろし――。
「あぇ……?」
「ん? どうしたの?」
「いや……私って、こんなに……」
胸部の膨らみが心なしか大きい気がした。
とんとん、と全身をくまなく触れ、顔にもぽんぽんと手を当てた。
「鏡とか、あります?」
「え、あるけど……待ってて」
天使のような少女が席を立った。
「――どうかしたの?」
金髪の愛くるしい少女が心地よい声音で尋ねる。
赤々とした瞳にも恐ろしさ1つ見えない。
「いや、私……」
かちゃっ、と扉が開いた。
かなたが戻った――訳ではなかった。
もう1人が目を覚まして、入室してきたのだが……。
お互いにその姿を見つめ合い――数秒間硬直した。
「え……あれ? う、うち……?」
「私……だ」
白上フブキと大神ミオは、入れ替わっていた。
前書きで記すべきですが、この度は本作品を見に来て下さりありがとうございます。
投稿ペースは早くないと思いますが、もし興味を持たれた方はこの先もよろしくお願いします。
感想等大歓迎です。
疑問、気付き、矛盾の指摘、作品・作者への批判など基本何でも受け付けますが、ホロライブやメンバーを直接批判するコメントはお控えください。
感想、評価、お待ちしております。
それではまた次回!