わための力を使用して聖域の地中へと身を隠した叛逆者一行。
ランタンと何故か有るわずかな照明で室内を照らし、集会を開く。
快適だったノエルの家を離れ、再び小汚い環境に身を置くとその雲泥の差に落胆する。
だがノエルの家からは天界に直行出来ないので仕方のない事。
莉々華を輪の中央に置いて作戦会議が始まる。
「皆さん、まずは最初に謝罪させてください」
会議早々から莉々華は額のサングラスを外し、輪の中央で深く頭を下げた。
一同静かに見守る。
「ここへ来る前、私は呪いが消えようが消えまいがどうでもいいと言いました。ですがあれは感情と勢いに任せて出た言葉です。あの失言を今、撤回させてください」
誰が頭を上げろと言うべきか様子を伺っていると、莉々華が言葉を続けたので先送りとなる。
「私はらでんの思いを継いで叛逆を成功させ呪いを消滅させたいと思っています。その為に作戦を練ってきました。ですが私1人では到底叶えられない願い。今一度お願いします。どうか皆さんの力を貸してください」
懇請し、許しが出るまでは頑なに顔を上げる素振りを見せない。
「くどい。しつこいやつはモテねぇぞ」
「――――」
マリンは莉々華の謙虚な態度も言葉も一蹴した。
「……モテるモテないの話は……してないですけど」
返答に悩んだ挙句莉々華は揚げ足をとった。
モテない自覚はあるが話題とは全く関係がない。
捻りの無い答えにマリンは鼻を鳴らした。
眼帯をそっと撫でる。
「それより莉々華。らでんさんの目的は呪いを消滅させる事だったんか? 記憶見た限りじゃ、そうは見えんかったけど」
「らでんの目的は叛逆を成功させる事でした。ですがある日、叛逆の先に呪い消滅の可能性を見出したんです」
「……? じゃあ、呪い消滅の可能性を見つけたのって、相当最近じゃない?」
記憶と今の発言を照合させシオンは首を傾げつつ問う。
らでんが叛逆を決意したのはあくあの反抗がきっかけだ。
つまり、呪い消滅作戦が立てられたのはそれ以降になる。
「はい。らでんの思い描いた筋書きこそ、世界から呪いを消滅させる唯一無二の策なんです」
「ぽっと出の策略が唯一無二か……俄には信じられんけど……」
「「…………」」
「……いや、いい。無駄な思考はやめやめ」
信頼云々の話になれば延々と黒渦に飲み込まれてゆく。
マリンはかぶりを振って邪念を振り払った。
そもそも必要な事なら莉々華から勝手に話すのだから不必要な事を深掘りして頭を悩ませる必要はない。
「そんな事よりも――聞かせろよ莉々華。叛逆のプランを」
凄まじい眼力で莉々華を凝視した。
莉々華が胸を張ると皆が一斉に背筋を伸ばす。
すぅ、と息を吸うと土の香りがした。
「まず我々が狙うべきはインターン生宿舎です」
第一のターゲットを上げると皆一様に頷いた。
聞き覚えのある単語だったから。
「以前ちらっと話しましたが、トロイアから約3キロ離れた位置に立つ施設で、トロイア崩壊以降は神の一団の拠点となっています」
「つまり本拠点の襲撃か」
極めて単純で分かり易い狙いだ。
理由を口にするまでもない。
「インターン生宿舎の出入り口は全部で2つあります。1つは正面玄関。もう1つはリビングと通路を抜けた先にある稽古場」
「見取り図とかはないんですか?」
「無いです。が、現場に行けば一目で分かります。入り組んだ作りでは無いので」
イメージだけでは作戦をインプットし辛いと嘆く面々。
莉々華は軽く頭を下げつつも割り切ってくれと話を進めた。
「それに、作戦自体は施設の作りに何ら影響しません」
「今回は前回と異なり、完全な奇襲になります」
莉々華は重要と言わんばかりに指を立てる。
獣人の視線が指先に集まる。
「我々は2班に分かれてそれぞれの入り口から突入し、施設に放火します」
「「――――」」
突如として飛び出す不穏な単語に数名が顔を顰めた。
「放火さえすれば施設は勝手に崩壊していきます」
「あのっ……」
「はい、ミオさん」
「入り口で放火しちゃったらうちたち……逃げられなくなるんじゃ……?」
「はい。下手を打つと自らの退路も断つことになります」
自分の首を絞める可能性を否定せず、莉々華はそれでもこの策で行くと答えた。
だが、叛逆に繰り出す時点で常に死とは隣り合わせ。
代案も論破する術も無い一同は黙って首肯し、作戦に乗る意向を暗に示した。
「いいですか。この時点での目標は敵を倒すことではなく、本拠地を破壊する事。敵は幾らでも逃がして良いんです」
要は逃げ道を作りながら放火しろ、と言う事。
各段階の目標を明確にする事で一手一手を慎重に行える。
この第一段階は失敗のしようがない。
「放火すれば敵は当然、交戦と逃亡の2択を迫られる。交戦の場合は上手く戦って勝ってください」
「簡単に言いますね……」
「そこは誰にも計算できない事です。皆さんを信じるほかないでしょう」
雷霆、奮迅獅子だけでも相当な手練。
そこへ能力が未知数のインターン生がいる。
全面抗争となれば叛逆者の犠牲は避けられない。
「もし逃げた場合は一度無視してください」
深追いは禁物――と言うわけではない。
ここに次なる作戦がある。
莉々華は両手を広げてフブキとミオに語りかけた。
「お二人は奏の所有していたビー玉を覚えていますか?」
「ビー玉? 確かにいっぱい持ってたけど――」
「その中で取り分け、価値を見出された物がありませんでしたか?」
不意に出てきた奏の名に肩がぴくりと跳ねた。だから違和感に気づけない。
緩やかに込み上げる切なさを嚥下して過去を想起する。
らでんとの初対面の日、交渉の際に選ばれたビー玉を。
「ああ〜ありました。なんか凄く高く買ってくれて……」
「あれはさくらみこの命のカケラです」
「……? 何ですか命のカケラって」
誰もが意味深な比喩をされたと認識するが、莉々華は今一度正確に言い直す。
「そのままの意味です。あれは彼女が万が一に備えている、残機のような物です」
「残機……?」
「じゃあつまり、殺しても復活するって事?」
「平たく言えばその通りです」
「「――――」」
しんと静寂が広がった。
フブキとミオは重要なピースを敵に売り渡してしまったと、今更ながら後悔して顔を見合わす。
「さくらみこが生み出した命のカケラは全部で6つ」
「6つ⁉︎ 本体と合わせて7機もあんの⁉︎」
驚愕の数に度肝を抜かれる。
敗北の兆しが再燃し揺らぐ意思。
「ですが、うち2つは既に破壊されています」
「――そうなの?」
「1つはあくあさんが死の直前に託されていた宝石を破壊」
「――あくあ……」
「もう1つはクロヱさんといろはさんがトロイアリビングにて発見し、同じく死の直前に破壊しています」
死後に明かされる功績。
小さくも大きい成果を上げていた。
あくあもそうだが本当にあの2人はただの日雇いで良く戦ってくれた。
「で、ここでその話が出るとはつまり……」
「皆さんお察しの通り、カケラの1つがインターン生宿舎にある――と思われます」
「――? 分からないの?」
最後に言葉を濁され眉間に皺ができる。
「はい。宝石の場所はさくらみこの魔術によって情報が保護されているので、現在の正確な在処は不明なんです」
「はい質問。じゃあ何でそれが宿舎にあると?」
速攻でマリンが手を高く挙げて問い詰めるように言葉を放つ。
「あくあさんからの情報です。宝石は全部で6つ。さくらみこ、星街すいせい、常闇トワ、湊あくあが1つずつ持ち、残りの2つがトロイアと宿舎にあると」
「……そうでしたか」
機密事項です、の一点張りと予測していただけにマリンは無駄口を叩けず素直に頷いた。
そんなマリンを見てころねがにけっと笑う。連鎖するようにおかゆも口角を上げた。
トロイア戦争までの各々の成果を振り返ると、らでんとあくあが如何に有能であったかが分かる。
シオンは覚悟を強め、握り拳を作った。
「今は別の場所に移動してるかもなんだよね? 無い物探してたら時間の無駄じゃない? 無い事の証明は不可能な訳だし」
「はい。なので各々状況を見て離脱してください。宝石奪取よりも自分と仲間の命を優先してください」
「りょーかい」
任務よりも命を優先させる当然の指示に場が和んだ。
「ふぁ〜〜〜……」
前触れなくわためが大きな欠伸をした。
冷たい視線が刺さるがお構いなしに地べたに座り込み――寝転び――目を閉じた。
「……わためさんも参加するんですよね?」
「するよ〜」
呑気に返すとまた欠伸をして夢に没頭し始めた。
幾ら何でも自由気儘すぎる。
莉々華は苦笑を浮かべて見逃した。
「因みに、宝石を見つけても破壊はせずに私の下まで持って来てください」
「それも理由聞いていいですか?」
「さくらみことの決戦の際、隙を作る武器として使いたいんです」
「――? 壊せば本人に響くの?」
「恐らく」
ここは莉々華の推測でしかないが試す価値はある。
それで戦況が優位に傾くのであれば損はない。
ここまでずっと疑心暗鬼でいたが、今は無性に莉々華を信頼できてしまう。
「さて――それでは次に突入の際の班分けをします」
「班分け……」
「二手に分かれて襲撃って言ってたでしょ」
「あ、そうか」
班分けの意味を考え出すミオにフブキがこっそり耳打ちした。
みんなに丸聞こえだが。
「とは言っても、もう組み分けは終わってます」
「――」
「1班はフブキさんとミオさん」
「はい!」「はっ、はいっ!」
「もう1班はおかゆさん、ころねさん、マリンさん、ロボ子さん、シオンさん」
「「「――――」」」
フブキとミオ程の返事は――と言うか、そもそも返事がなかった。
ツッコミどころが満載すぎて絶句していた。
「えぇっと……まず何から聞けばいいですかね……」
「待ってください! わかってますよ⁉︎ 人数比率に文句があるんですよね⁉︎」
「「「「「はい」」」」」
物凄い団結力で答えた。
反響する2文字の合唱に驚いてわためがぎっ、と目を開けた。
「人数の偏りには理由があるんです。インターン生宿舎を3区画に分けると、リビング、稽古場、そして2階です。稽古場とリビングはやや長い一本の連絡通路で結ばれていて、2階への階段は正面玄関にあるんです」
「じゃあ突入時は2班で、そこからの宝石捜索は3班に分かれるって事?」
「そうです」
「メンバーの振り分けは……まあ察せますね」
フブキとミオ、おかゆところねのセットは確定。
このペアの戦闘能力を鑑みればおかころ側に他3人を付けたい気持ちもよく分かる。
なのでその点に関しての疑問は無かった。
次いで不思議なのは名前が存在しない2人。
「莉々華ちゃんとわためさんは? 来ないの?」
「はい。私たちは別行動を取ります」
「分かりやすく」
2人が別行動を取る理由を簡潔に。
マリンは腕を組んで胸を抱えた。
「幾ら奇襲とは言えさくらみこ本人が出張って来れば、到底勝ち目はありません。なので私は明日、彼女との面会を取り付けました」
「「「――⁉︎⁉︎」」」「「面会⁉︎」」
「この1週間、私はただ作戦を練ってただけじゃないんですよ」
莉々華はぐっと拳を握って不敵に笑った。
自信と不安が伺える身震いだ。
「面会ったって、どうやってアポ取ったん?」
「うんうん! それに殺されちゃうんじゃ――!」
マリンの疑心とフブキの憂いに相槌を返して莉々華は解説モードに表情を戻した。
「アポはスマホから非通知でかけました。らでんが何度か連絡を取っていたので番号は分かるんです」
至って単純な方法でのアポ。
「そしてフブキさんの殺されないか、と言う憂慮ですが恐らく心配ないかと。何せ私は『叡智の書』を受け継ぐ者として接しました。呪いの継承がある以上、下手に殺してまたその行方を眩まされては困るはずです」
「……でもらでんさんは殺されたんですよ?」
「らでんを殺したのは星街すいせいであって、さくらみこではありません。少なくとも軽々と殺しはしないでしょう」
莉々華の見解もフブキの心配も皆半々に理解できる。
だからこれは一種の賭け。
莉々華の知識の力で言葉巧みにみこを拘束できれば、叛逆者に優位に働く。
失敗すれば莉々華は死に、叛逆の希望の光は潰える。
「……ん? でも結局、それとわためさんは関係無くない?」
再度目を閉じて吐息を漏らすわためを一瞥し、ミオが首を傾げた。
確かに、と周囲の同調もある。
「誘き出すのに宿舎の近くで会合しても意味が無い。だから私は『神の間』での面会を希望しました」
「『神の間』?」
「天界には全部で3つの施設があります。トロイアとインターン生宿舎、そしてトロイアの側にあるハナレ。そのハナレには『神の間』へと繋がるゲートがあるんですが、この『神の間』は天界ではなく地界――この聖域内にあります」
「……ん、それで?」
「わためさんの呪いは大地を操ります。大地の無い天界へ行けばただのお荷物。だから非常事態に備えて私に同行して欲しいんです」
莉々華の思考は中々に見事。
作戦自体に隙は無く、各呪いの把握やシチュエーションを理解しているからこそ生み出せる策だ。
わための活用についても、唯一無二と言える弱点に皆はっとした。
「そっか……わためさんは天界では役立たず」
「トロイア戦争に来なかったのもそれが理由なんだ……」
納得が広がると共に莉々華への信頼度も上がる。
作戦についてはもはや十分と言える。
莉々華無しでは得られない情報や手法ばかりで、既に成果は上がった。
だが莉々華の天敵の存在を忘れては行けない。
「作戦はよく分かりました。一先ずそれでいいと思います。戦闘に関しても別個頑張るしか無いんでなんとかします……けど、らでんさんの言ってた『計略家』ってのは大丈夫なんですか?」
そう。
知識の力ですら俯瞰できない存在、『計略家』博衣こより。
計略と伝令の力を駆使して瞬間の状況を打破してくる。
上手く見えた作戦も彼女の前では忽ち拙策へと変貌してしまう。
「…………」
莉々華が苦い顔をした。
やはり、彼女が最大の弊害である事は間違いないようだ。
「彼女が脅威である事は確かです。が、神の一団には私たちの情報が一切無い。知識の力も無く、こちらにスパイもいない。持ち得た情報で最適を導く彼女に取ってこれだけ不利な状況はないんです」
「……まあ、それは分かるけど」
「しかもさくらみこは明日、私と接触する予定です。となれば間違いなく側に『計略家』を置きたがる」
「……」
「伝令は一方的な送信しか行えない。つまり情報を繋ぐ手段はスマホ等での通話のみとなります」
「じゃあ、それをさせなければ――」
「きっと上手くいきます」
ここへ来て少々無茶な気がするが、『計略家』については端から計算に入れていない。
彼女の事は割り切る以外にないのだから、とフブキやマリンもぎこちなく頷いてくれた。
「他に何か聞いておきたい事はありますか?」
莉々華は中央でぐるりと視線を一周させる。
冷たい視線はひとつもなく心持ちは軽い。
「じゃあひとつだけ」
「はい」
フブキが尻尾をゆらりと揺らして手を上げた。
「天界へはどうやって行くんですか? 私たち、ゲートの開け方知りませんけど」
「ご心配無く。ゲートは作戦時間には開いています」
「……勝手に?」
「いえ。ですが詳しくは言えません。そこには目を瞑ってください」
莉々華は秘密と言い切り多少の疑問は無視しろと言う。
天界ゲートの開門については大した問題では無いので余り気にしない事にした。
もし門が閉じていても死には直結しないだろう。
「分かりました」
「ありがとうございます」
フブキは一歩引いてミオと並ぶ。
莉々華が再度質問は無いか確認を取るが、それ以上の質問は無かった。
「――では、明日の昼前になったらここを出ます。それまでは皆さん薄汚い所ですがご自由に過ごしててください」
こうして作戦伝達は締め括られたのであった。
――――――――――
作戦開始時刻――宿舎突入組は天界ゲート前に集った。
「……ほんとに開いてる」
「莉々華さんずっと地下にいたのにね」
前回の開門からずっと開きっぱなし、ではないはず。
とすれば……敵側にスパイが紛れ込んでいるのか?
そんなあくあのような人材がまだ居るとは信じ難いが……。
「最早一々悩む事じゃないですよ」
「そうだね」
マリンが懐や腰の装備を確認しかちゃかちゃと音を鳴らす。
ロボ子が異次元空間から武具を取り出しながら頷いた。
「はいみんな、これ焼夷弾。1人2つだよ」
「ど、どうも……」
手際良く皆に配って行く。
異次元空間とそこから生えるように取り出す武器。
やはりロボ子も呪い持ち。
「ボクは鍛治の呪い。異次元空間にボクだけの鍛治工房を持ってるんだ」
「……なんだかあの獅子みたい」
「奮迅獅子?」
「うん。あの人も武器を自由に生み出してたから」
異次元空間をぼたんが持つのかは知らないが、自由自在に武器を生成して戦っていた。
ロボ子の呪いはその力と酷似している。
「莉々華ちゃんに聞いたよ。物のついでに話しとこうか」
「――?」
焼夷弾の配布を終えるとゲートを潜り、階段を登りながらロボ子は続けた。
「奮迅獅子の戦の呪いは武器と防具を自在に生み出すことができる。本人がそれを武器や防具と見做せば何でも生み出せるんだって」
「何でも? じゃあ極論水が武器になると思い込めばそれを生み出せるって事?」
「理屈はあってるけど多分それは無理なんじゃないかな。形を伴ってないから」
「ほうほう……」
水攻めも火攻めも戦では常套として使われがち。
それを武器と見做せるなら脅威的だが、無形物は扱えないらしい。
「使えたら多分誰も勝てないよ」
フブミオ奏の奇跡的な勝利や、アキロゼとらでんの引き分けを考慮すればとロボ子は付け加える。
「それから戦の呪いで生み出した武具は本人しか使えない。対してボクの呪いは武器や防具の生成に素材を必要とする変わりに生成すれば誰だって使えるしその場に残り続ける」
2つの呪いの決定的な違いを明示した。
武具の作成条件と作成後の扱いについて。
「なるほど。奮迅獅子はその場のアドリブで自在に攻撃手段が変えれるけど単身が基本、ロボ子さんは事前準備と集団戦がメイン、って感じね」
「そう言う事。あ、そうだマリンちゃん、銃弾足りてる?」
「――? 拳銃3丁で装弾数12発。予備マガジンは6つ」
「数は足りそうだけど必要ならあげようか?」
「――いや遠慮しときます。久々の戦闘ですしこれでフル装備なんですよ、私は」
「そっか」
ロボ子の親切心を丁重に断り拳銃やマガジンの装備をちらりと見せる。
人にはそれぞれ動きやすい重量や装備の配置と言うものがある。
戦場に立つのも久しいマリンはこれ以上装備を足しても扱えない。
「私なんかより皆さんはいいんですか。シオンたんとかもっと武器あったほうがいいんじゃない?」
「……シオンはナイフだけあればいい」
銃や刀などの鍛錬が必要な武器は扱えない。
シオンは基本格闘でナイフを振り回す程度。
自分が最弱だと自覚した上でシオンは宝石探しをメインに行うつもりだ。
「防具は?」
「動きにくそう」
「…………」
その意見はマリンも納得だがシオンには装備させるべきに思う。
本人が嫌がるのなら無理強いはしないが。
「そっちの2人は素手でいいんですか」
マリンはフブキとミオに視線をずらした。
「はい。私たちは腕力が自慢なので」
きりりと耳を立てて拳を突き出した。
フブキとミオでその拳をぶつけてへへっと笑う。
マリンは今になって2人がカップルであることに気が付いた。
が、護衛対象はおかころのみ。
マリンのセキュリティ範囲は極めて狭いのだ。
「ロボ子さんはどんな武器をご使用で?」
「状況見て決める。それよりみんな、もう上に出るよ」
「「――――」」
話しを進めるうちに歩みも進んで現在かなり上空。
聖域の木々がブロッコリーに見える。
もう数歩先へと足を踏み込むと眩い閃光に目を焼かれそうになった。
反射的に瞼を閉じつつ雲の上へ突入。
叛逆者一行――天界へと再来。
その後は雲地を無言で歩きトロイア前まで一気に登る。
崩壊したトロイアを前に一同は小さく輪になった。
「それじゃあ作戦通り行くよ」
「「はい」」「ん」「ええ」「「うん」」
インターン生宿舎へと踏み出した。
これより再び、叛逆の狼煙が上がる。
――――――――――
一条莉々華はわための呪いを使用して地中から神の間の前の通路へと侵入した。
通路は一本道で一方は神の間、もう一方はトロイアハナレに繋がるポータルがある。
莉々華はわために地中待機を指示し1人で神の間の扉をノックした。
こんこんこん、と。
「開いてるだろ」
「失礼します」
入れの意と取れる返答に勝手な解釈をして莉々華は扉を恐る恐る開いた。
開いた扉の先――「数日前」と何ら変わらない光景が広がっていた。
室内には予測通り、みことそらがいる。
そらが優しく微笑んで迎えるがみこは鋭い顔付きで莉々華を一瞥した。
「あれからまだ2日だぞ」
「……ええ」
莉々華は萎縮した。
静かに後ろ手で扉を閉めてみこと向き合う。
「今日は何の用だよ」
「前回の話の続きを、と思いまして」
「続きも何もみこの意思は伝えただろうが。ならそれ以上話す事はにぇェはずだ。帰れ」
「ですが――」
「オメェも殺すぞ」
「…………」
みこの威圧に一瞬怯んだ。
しかし引き下がれない。
莉々華は息を呑んで言葉と思考を整理した。
「なら私が一方的に喋ります。気に入らなければ呪いで殺しても構いません。でも私が喋っている間はスマホの電源は切ってください。2人以外には話せない事なので」
「「――――」」
みこはソファに座って明後日の方を向いた。
そらは莉々華に優しく微笑んでみこの隣に座ると、みこの手を握る。
沈黙は承諾。
莉々華は小さく息を吸って、とある情報を2人に開示していくのだった。