叛逆の刻印〜刻まれし天命〜   作:炎駒枸

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天命の乱⑦

 

「うおぁあああああああ、らぁっ‼︎‼︎」

 

 ラプラスの咆哮が荒野に響き渡る。

 ミオの身体から抜き出されたみこの魂が淡い光を荒野全体に放つ。

 そして一時的に意識を失ったミオが地面に倒れ込む。

 

「ミオ‼︎」

 

 真っ先に駆け出したのはフブキだった。

 他の誰もが戦いの手を止め、みこの魂に視線を奪われる中、フブキだけが何者にも縛られずミオの元へと駆け寄った。

 

「ミオ! ミオ‼︎ ミオ‼︎‼︎」

 

 静まり返った荒野にフブキの叫びが広がる。

 目覚めを促す声にミオは「う〜ん」と弱々しい呻き声を鳴らした。

 

 ミオは未だ目覚めず、呪いも消えない。

 

「――。みこち」

「――っ‼︎」

 

 一同の束縛が解け始める。

 フブキの声に当てられ、ちょこが我に帰ると目の前のはじめを押し飛ばしてラプラスの元へと飛び出した。

 はじめはちょこに弾かれて自我を取り戻し、それを目撃した青、そして周囲の者たちも順々に戦場へと戻る。

 

「ん゛っ、ぐっ――」

 

 突然に荒野へと撃墜されるすいせい。

 フレアが荒野の上空から俯瞰している。

 ラプラスとフレアの視線が交差した。

 しかしフレアは仕掛けない。

 2人が睨み合う間にちょこがラプラスへと肉薄する。

 

「ちょこ先‼︎」

「ッ――まつり!」

 

 まつりがちょこの身体に小さな身でしがみ付いた。

 数度振り払う素振りを見せるも、ちょこを見上げる瞳と視線が交わってしまい全身から脱力してしまった。

 

 再び荒野に静寂が訪れる。

 

「ぅ……うぅ……」

「ミオ」

 

 ミオがうっすらと瞼を上げた。

 フブキが過敏に反応して身体をゆすった。

 

「ミオ。ミオ!」

「ん……フブキ……ちゃん……」

「ミオ‼︎」

「あ、れ……みこ……」

「ミオ‼︎ ミオ‼︎」

「ん……あれ……?」

 

 虚なミオの瞳に映るフブキの姿。

 懸命に名前を呼ぶフブキに対し、ミオはどこか自我の覚束ない様相で意識を取り戻していく。

 しかし、次第にミオの瞳に琥珀の輝きが戻り、意識を――自我を取り戻していく。

 

「ミオ。私の事分かる?」

 

 フブキの問いがミオの脳内で反芻され意識の中で自問自答を繰り返した。

 

「ぁ……」

 

 刹那、ミオの脳内にあらゆる記憶が想起される。

 自分自身の記憶、自分自身の物だった記憶。

 ありとあらゆる感情に身を、心を、全身を苛まれ――

 

「ウチが……ウチが……」

 

 はらはらと涙を流し嗚咽を溢す。

 

「ミオ。ごめんね……私はもう、どこにも行かないから」

 

 もらい泣きしてフブキもまた異なる涙を流す。そっとミオを抱き締めて。

 

「ウチの……ウチのせいでっ……ウチのせいでみごさんがっ……みんながっ……」

「ミオ……?」

 

 ミオが嗚咽交じりに呟き、フブキは漸く2人の涙の理由がすれ違っていることに気付いた。

 

「ウチのせいだ……!」

「違う! 違うよ! ミオのせいじゃない!」

「ウチがっ――望んだから……」

 

 記憶を見て、追体験して、ミオは呪の真実を知ってしまった。

 

 表面上では呪の発症を煙たがりながらも、内心では呪が発症してよかったと思っていた。

 だって、生まれて初めて自分は特別なんだと思えたから。みんなが命を賭してくれるのが嬉しかったから。誰かの為に何かをするのが心地よかったから。特異な力を実感して心が躍ったから。

 何より、呪が発症したあの日、フブキが命を賭して助けてくれた事がこの上なく嬉しかったから。

 

 その本性をミオは客観的に突きつけられた。

 

 大切な人の死を前にして呪を憎んだ。

 それ以外の死を前にして仕方が無いと思った。

 

 何かを憎む事はお門違いだった。

 何も仕方なくなんて無かった。

 全部ミオのせいだった。

 

 恩人であるみこは傷つけたくない。

 独りよがりな思いの末、ミオが誰よりもみこを傷付けていた。

 みこにあの人生を強いたのは他でもないミオだった。

 

「ごめんなさい……」

 

「みこさっ……ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 滲む視界の中でミオは淡い輝きを見つめて何度も何度も謝った。

 フブキが根拠もなく罪を否定してくれた。それでも謝り続けた。声が掠れるまで何度も。

 

 何度目かも分からない「ごめんなさい」の後、ミオはずっと鼻水を啜り顔を上げた。

 

「けさなきゃ」

「ミオ?」

 

 赤く腫らした瞳でもう一度淡い光の球を見つめて呟いた。

 己の罪と呪を知り、ミオは決心する。

 これがせめてもの贖罪。

 みこへの償いの第一歩。

 

 ミオがよろけながら立ち上がり、フブキがそれを支える。

 

 ミオが天に、神に祈る様に手を合わせて静かに目を瞑った。

 

「ミ――」

 

 様子を遠目に見ていたおかゆが慌てて駆け寄ろうとしたが、シオンが腕を引いて引き止めた。

 瞠目し懇願する様な瞳でおかゆはシオンを見つめる。

 そして遠くで斃れたマリンを見つめる。

 

「今を逃すとどうなるか分かんない」

「でもAZKiさんに――」

「それにマリンちゃんは……」

 

 2人はマリンの姿を遠目に見つめ、目頭を熱くする。

 

「もう休ませてあげないと」

 

 その一言に涙ぐんで顔を伏せるおかゆ。

 シオンは懸命に顔を上げ、涙を堪える。

 まだ呪は消えていない。

 

 2人は涙を必死に瞳の奥に堰き止めながら、今一度荒野の中央に向き直った。

 

 ぺこらは静かに影となって2人を見守り、同様にフブキたちを見やる。

 

 

 ラプラスが淡い光を手にはあとの下まで歩み寄ると、みこの魂をはあとに差し出した。

 

「間も無く呪が消える。せめてアンタの手で送ってやってくれ」

「――――」

 

 はあとはマジマジと魂を見つめ、コクリと頷くと黙って魂を両掌で救う様に受け取った。

 淡い光の球が乗ると掌に冷たい温もりが伝播した。

 

 夜間でも衰える事なく存在する翠の魂。

 その光を見つめているとはあとはみこと見つめ合っている気分になった。

 否。

 

「――」

 

 魂が笑った。

 誰がどう見ても魂の形は変わらない。

 でも確かに、その翠の瞳がはあとに笑いかけたのだ。

 

 

 荒野に静寂が舞い戻る。

 

 

 視線がミオに集中し、大半が固唾を飲んで見守る中、ミオはただ静かに瞳を閉じ、天に、神に、運命に、自らの呪に祈った。

 

 

 

         (呪よ消えろ)

 

 

 

 瞬間は誰も何も感じ取れなかった。

 しかし。

 

「……みこち」

 

 はあとの手中から翠の魂がふわふわと浮き上がって散り散りになりながら天へと昇りはじめた。

 

「おつかれ」

 

 はあとは朗らかに微笑んで掌を、淡い光の粒たちを、天へと押し上げた。

 

「すぐ、会いに行くからね」

 

 翠の光の粒たちは目に見えない塵となってこの世を去っていった。

 

「――っ…………っ!」

 

 瞬間、はあとの感情は決壊して微笑みの面影もないほどその場で嗚咽を漏らして頽れた。

 

 そこから認知が連鎖する。

 

「――‼︎」

 

 おかゆが自身の呪の消滅を感知した。刹那、おかゆは振り返って駆け出す。

 

「マリンさん‼︎」

 

 シオンが後に続くが、ぺこらは自分の手を見つめて硬直していた。

 

「マリンさん‼︎ マリンさぁん‼︎ ぅぁぁああああ゛っっ‼︎」

 

 マリンの亡骸を抱き締めて腹の底から叫び声を上げた。

 そんなおかゆを背後から抱きしめてシオンは涙と思いを共にする。

 

 

「ぁえ――」

「ぅぁ」

 

 天でエンジン吹かせて滞空していたフレアが突如ガス欠を起こして転落する。

 同時にフレアを睨み上げていたすいせいが気絶して盛大に倒れる。

 

 戦況を観察していたアキロゼは脳内に溢れていた思考が不意に消滅して数秒間呆然とした。

 そして遅れて事態を把握すると安堵した様に天を仰いで倒れる。

 

「呪が……」

 

 まつりに纏わりつかれたちょこは胸元を見て刻印の消滅を目の当たりにする。

 そして漸く、みこの真意を悟った。

 

 奏、はじめ、青も各々呪の消滅を実感するとその場にへたり込んで大きな息をついた後、ぱちん、とタッチを交わした。

 

 ロボ子を膝に寝かせたノエルは転落したフレアが起き上がる様子を見て胸を撫で下ろし、穏やかな笑みを溢した。

 それを見ていたロボ子が「へへっ」と掠れた微笑をノエルに返す。

 

 ポルカの炎上を消火したルーナは服を脱いでポルカの露出した火傷部分を覆い、震えながら処置を進めていた。

 

 そしてミオは祈り終えると途端に脱力してフブキに寄りかかった。

 

「わっ、大丈夫⁉︎」

「うん……でも、ごめん……ちょっと動けない……」

 

 フブキはミオに肩を貸し歩こうとしたが、脇腹の痛みを今になって思い出す。

 

「ぅいっ」

「フブキ! フブキこそ大丈夫じゃないじゃん」

「ぇへへ……ごめん」

 

 2人は肩を預け合ってその場に腰を下ろした。

 そこへ1人の鬼が歩み寄る。

 

「呪は消えたの?」

「うん」

 

 フブキに問うあやめ。

 フブキはミオを見つめる。

 そしてミオがあやめに答えた。

 

 するとフブキが視線を落とした。

 

「じゃあ……みこさんはもう……」

 

 呪の消滅はみこの死を意味する。

 明確にはそこに因果関係は無いが、フブキは詳細を知らない。

 

「……うん……死んだ――いや。ウチが殺した」

「んーん。私たちが殺したんだよ……」

 

 責任を奪い合う2人。

 

「余と、あんたら2人、それとここにいる皆が殺したんだよ。みこちと、みこちの心を」

「「…………」」

 

 真っ直ぐな瞳を見つめ返すフブキと、困惑気味にあやめとフブキとで視線を彷徨わせるミオ。

 

「これで本当に良かったのかな……」

「良いとは言えない。でも他に方法が無かったんだから仕方が……ん……。他に方法が無かった」

 

 言いかけたあやめは一度言い淀み、言葉を訂正した。

 意思を持って殺す決断をしたくせに、それを「仕方が無いから殺した」なんて無責任だ。

 

「ただ、みこちがこの結末を望んでたのなら……それだけは、良かったんじゃないかと思う」

 

 あやめの答えを聞いてフブキはまた俯いた。

 

「みこさんはずっと誰かに裁いて欲しかったんだよ」

 

「ずっと――『善人』になりたかったんだよ」

 

 ふと、ミオが立て続けに呟いた。

 地面を見ているのに遥か彼方を見ている様相。

 その横顔をフブキとあやめは疑問符を浮かべながら数秒凝視し、

 

「「みこさん(みこち)は善人だよ」」

 

 と口を揃えて言った。

 

「――」

 

 ミオは瞠目した。

 フブキに視線を返す。

 あやめに視線を返す。

 ――過去の自分に視線を返す。

 

「そう、だね。うん……そうだよね」

 

 ミオは2人を否定しなかった。

 みこの感情を得たミオだけが知るみこの奥底の苦悩。

 きっとそれを語っても2人はみこが善人であるとの意見を崩さない。

 

 ミオだけがみこの真意を完全に理解できる人間だ。

 また自分が特別になった。

 嬉しくはなかった。

 でも拒絶はしなかった。

 

 フブキとあやめとは違った罪を抱えてミオはこの先を生きていく事だろう。

 

 3人が談義する中、不意にミオの肩がとんとんと小さな手に叩かれた。

 振り返ると暗闇の中でも微かに眩い金髪が目に映り、視線を上げると紅い瞳がミオとフブキを交互に見つめて微笑んでいた。

 

「奏ちゃん」

 

 フブキが奏の和やかな表情を目にして肩の力を抜きながら呟いた。

 2人が小さく微笑み合う横でミオだけは表情を陰らせていた。

 

「えっと……ありがとね」

 

 伝えたい事、話したい事が山ほどある。

 だがフブキは何より先にお礼を伝えた。

 奏がにっこりと笑って首肯するとフブキも満足げに頷いた。

 

「奏ちゃん……」

 

 覇気のないミオの呼びかけにも奏は満面の笑みで目線を返した。

 一瞬目が合ったが、ミオは直ぐに目を泳がせてしまう。

 ミオの態度に違和感を覚え、フブキが首を傾げる。あやめも同様だった。

 

(大丈夫ですよ)

 

 ミオの背に手を添えて奏が優しく寄り添う。

 暗闇の中でも皆至近距離。奏の不自然な口パクにフブキとあやめは更なる違和感を覚えた。

 

 ミオが縮こまってぎゅっと口を結んだ。ぎゅっと瞼を結んだ。

 ミオが――あのミオが奏よりも幼い子供の様に見える。

 

「ごめんっ……ごぇんね……」

「み、みお……? 奏ちゃ……」

 

 事態が飲み込めず困惑するフブキ。

 奏はミオの背に手を添えたまま、また暖かく微笑む。

 その背後に人影が差した。

 奏と同じほどのサイズ。

 姿を見せたのははじめだった。

 

「奏はもう、声が出つぇないんでつ」

「――ぅ――ぇ」

 

 前置きも無く唐突に知らされる現実に言葉が詰まった。

 静かに瞠目するあやめ。

 はじめを、奏を、ミオを二度見三度見するフブキ。

 

「まじゅちゅを受けて声を永遠に奪われたんでつ」

「まじゅ、つ……」

 

 フブキは単語の一つ一つを反芻して理解に徹する。

 

「ただ今は生きてる事を喜びまちょう」

 

 みこの魔術なら死んでいてもおかしくなかった。奏が生きているだけマシだ、とはじめは説いた。

 あやめはその言葉を素直に飲み込む。しかしフブキとミオはそうもいかない。

 

(みこさんの魔術……みこさんのせい……? ちがう)

 

(身体を乗っ取られたミオのせい……? ちがう)

 

(魔法を食らった奏ちゃんのせい……? ちがう)

 

(何もかもを見て見ぬフリしていた……)

 

「私のせい……」

 

(みんなにそれを強いたのは……私だ)

 

 フブキの頭に、心に、罪が蔓延する。

 

「それは傲慢でつよ」

 

 はじめが力強い一言を放った。

 瞬間的に場が凍りつく。

 

「奏はたちかに二人の事を思って行動してまつ。でも二人に言われたからじゃない。奏がそうしたかったから」

 

 はじめの目配せに奏が大きく首を縦に振る。

 

「この戦いで()んだ人たちは二人のために()んだんじゃない」

 

「誰かの為に。聞こえはいいでつけど、結局つぉれは誰かの為に何かをしたい自己満足でちかないんでつ」

 

「奏は二人が生きてて満足してまつ。はじめもこの結末で自分なりに納得できてまつ」

 

「罪悪感を持つのは、分かりまつ。はじめもつぉでちた」

 

「でもつぉれで奏や……クロヱさんやいろはさんの本懐を無視(むち)つるのはむちろ想いを無碍にちてると思うんでつ」

 

 フブキとミオへ、或いは永遠に後悔の絶えない自分自身へ、はじめはこの様に語った。

 

「はじめたちは誰にも咎められていない。誰かに対して償う事は無い。あとはもう……自分が自分を許せるかどうかでつ」

 

 はじめは目を細め天を見上げた。

 美しい満月がぼんやりと漂っており、それを際立たせるかの如く数多の星々が背景で弱々しく煌めいている。

 

 ちゃんと罪と向き合って。

 ちゃんと人と向き合って。

 

「っ――」

 

 ぎゅっ。

 と不意にフブキを抱きしめる小さな身体。

 5秒ほどの長い抱擁。

 ぎゅっ。

 とフブキの次はミオに抱き付いた。

 5秒ほどの長い抱擁。

 

 抱擁が終わると奏はいつまでも変わらない満面の笑みで二人を見つめた。

 

 奏がこの場の誰よりも大人びて見えた。

 本当は歳を誤魔化しているんじゃないかと思えるくらいに。

 

(奏に生きようと思わせてくれて、本当にありがとうございました。生きて二人と再会できた事、奏は最高に幸せに思ってます)

 

 奏はそう叫んだ。

 心の底から。

 

 空気は冷たく、荒野には幾つかの泣き声だけが響いている。

 でもフブキとミオは確かに言葉を胸に刻んだ。

 奏の想いが胸に刻まれた。はじめの言葉と共に胸の奥底に。

 

 

 

 後悔はある。数えきれないほど。

 罪もある。償いきれないほど。

 

 それでも――否、だからこそ二人はこの先も生きていく。

 心の内に残された呪を無くす為に、これからも少しずつ少しずつ――。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 天命の乱の終結、呪の消滅から5年。

 とある国のとある神社。

 

 

 

「ねえねえ! さっき奏ちゃんから連絡があって、今度みんなで飲み会に行かないかって」

「みんな? みんなって?」

「奏ちゃん家のみんなと私たち3人と、あとシオンちゃんとかぺこらさんとか、あの時のメンバーを呼ぶんだって!」

「大所帯だねぇ」

 

 興奮気味に息巻いて星型の刻印のある尻尾を揺らす白髪のキツネ女性。

 嬉しげなキツネ女性に暖かい視線と相槌を返しながら、幾つかの子ども用食器を洗う黒髪のオオカミ女性。

 そこへキツネ女性の声を聞きつけた鬼が1人の幼女の手を引いて顔を出す。

 

「騒がしいけどどしたん?」

「奏ちゃんから飲み会の誘い」

「え〜……夜に3人出払うの?」

「いいんじゃない? 新しく雇った人は優秀だし、子どもはみんないい子だし」

 

 偶の息抜きは必要だと言って鬼の女性を宥めつつ、飲み会の出席に賛成の意を示すオオカミ女性。

 鬼の女性は手を繋いだ幼女をちらと見た。

 3人の話が分からず……と言うか何も聞いてなさそうな顔でつぶらな瞳をぱちぱちさせている。

 

「それにみんながどうしてるか、気になってたし」

「…………」

 

 キツネ女性が微かに表情を曇らせた。

 

「フブキ」

「あっ、ごめんごめん」

 

 オオカミ女性に指摘されてパッと明るさを取り戻す。

 

「どこかいくの?」

 

 薄赤い髪をサイドテールにした幼女が首を傾げてオオカミ女性の背中に問う。

 キツネ女性が勢いよくしゃがんで幼女と目線を合わせた。

 

「うん、今度ここのみんなでどっか遊びに行こうって話してたんだ」

「じゃあお花見行きたい!」

「お花見かぁ……う〜ん」

「いいよ。料理なら心配しないで」

「ほんと‼︎ やったぁ‼︎」

 

 幼女は繋いでいた手を離して盛大に喜び跳ね回る。

 料理の負担を考え逡巡したものの、幼女の嬉々とした表情を目にし3人は目を細めて嘆息した。

 

 間も無くサクラは見頃を迎える。

 一月もしないうちに目一杯咲き誇るだろう。

 

「でも、お花見は1ヶ月後だよ。分かった?」

「うん‼︎」

 

 幼女は尚も跳ね回る。

 薄赤い髪がばっさばっさと跳ねて、天辺のアホ毛がぴこぴこ揺れる。

 

「飲みの件は後で返信しよう。ここはうちが片付けとくから、2人でみんなの相手をお願い」

「うん」

「分かった」

 

 2本角の鬼の女性が跳ね回る幼女の手を捕まえた。

 もう一方の手をキツネの女性が握る。

 

 

「じゃああっちで遊ぼっか――みこちゃん」

「うん‼︎」

 

 

 その神社には今日も子どもたちの声が響く。

 

 

 〜完〜






 あとがき




 作者です。
 叛逆の刻印、これにて本編完結となります。
 長い間お付き合いありがとうございました。

 ホロ悪と並行しての投稿でぐだぐだしながらもここまでこれました。全ては読者の皆様がいるからです。本当にありがとうございます。
 ホロ悪の方もこのまま完結まで走っていきますのでもう少々お付き合いください。
 そして、叛逆の刻印が本編完結、と言われて本編?となった方もいるでしょう。はい。疑問の通り、完結後ストーリーをこの先幾つか出そうと考えてます。
 主にラストの5年後の世界でみんながどの様に生きているのか、を描こうと思っています。
 ただ、今以上にゆったりとしたペースで描くと思われるので、更新はかなり遅くなると思いますが、投稿した際には読んでいただけると嬉しいです。

 最後に改めて、ご愛読ありがとうございました。
 面白い作品を提供できる様、この先も執筆活動頑張っていきますのでどうぞ応援よろしくお願いします。
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