怒れるシンジ──嵐の鯖裂き包丁大作戦 作:サーマート・ジュウバンガイムエタイジム
「なんだよコソコソしないで出てくればいいじゃないか」
「おうおう余裕じゃのう?さすがはNERV司令の御曹司じゃ」
「僕をシメようってんだろ?黒服に手だしはさせない。殴りたきゃ殴りなよ」
「て、てめぇのその態度が気に入らないんじゃ!」
「ぶつくさ言ってねぇで腹くくらねぇか!」
碇シンジの怒号が巷に響き渡る。
シンジは上機嫌で下校するはずだった。ラミエル戦を終えて心身共に疲労した彼が久しぶりに登校した教室、そこではトウジやケンスケ達の計らいで祝勝会が開かれていた。シンジは大いに喜んだ。自分が守り抜いた人々からの祝福は戦士として、思春期の少年として途方もないほどの幸福だったのだ。しかし全ての生徒がシンジに好感を持っている訳では無かった。エヴァンゲリオンの戦いで被災し家や家族、友人を失った生徒たちは不満を募らせ遂にパイロットへ怒りを爆発させリンチという凶行で碇を憤怒させたのである。
「君たちのキレる理由もわかんだよ。ビビってねえでどついてこいよ」
「だから俺たちはテメェの泣き叫んで情けなくキレ散らかす姿を見てんだよ」
「そこでよ。いつもスカしてる碇シンジ君が憤死する方法を考えたの。…こっち来なさいよ」
オラつく生徒達が連れてきたのはシンジと同じクラスの女子2人。彼女達はシンジが転入したばかりの頃エヴァのパイロットかどうか尋ねてきた子達で、祝勝会でもどんちゃん騒ぎをしていた。その少女達は肌に生傷を作り服も乱れて下着が脱げかかっている。
碇シンジの逆鱗が弾け飛んだ。
「お前死にたいんだな?殺してやる…」
初弾は正面にいた男の顎を撃ち抜き、脳をゆらされおぼつかない足で後退る彼を張り倒すように左右のフックが打ち放たれ、男の背中が地に着く音が響く頃には2人目、3人目の生徒が怒りの風車のような打撃の渦に巻き込まれた。スケバン風の女はボディ一発で悶絶して突っ伏したところにサッカーボールキックを打たれ気絶し、ガブりや首相撲でコントロールされ盾のよう扱われて仲間の方へ突き飛ばされた者もいた。シンジが前へ踏み込む度に敗者の肉体が積み上がり、彼らが吐き出した血や反吐がぴちゃぴちゃと音を立ててスニーカーを濡らした。
「やめて碇君!!あなたが想像してるようなことされてないから…!」
「引っ込んでろ!こういう奴はくたばるよりも怖い目に合わせなきゃ行けないんだ!」
我を忘れたシンジは止まらない。
惨劇を引き起こす彼を止めようと2人は縋り付くけれど、脳から染み渡るアドレナリンで狂った少年は暴れ回り駆けつけた黒服たちが麻酔銃で彼をねむらせた頃には道路はめくれ上がり民家の壁が陥没していた。
シンジの襲撃者たちはいい気味だと思った。ネルフのパイロットは尊敬される仕事だが相応の責任を伴う。きっと責任者からこってり絞られるぞとほくそ笑んだ。が、その笑みはすぐに凍った。負傷した襲撃者たちを数十人の影が取り囲んだ。
「おめーら厨坊一人に手こずってんじゃねえぞ。ヤキ入れてやるよ。存分に感謝せーよ」
暗い夜道に幾つもの悲鳴がこだました。
シンジに課された処罰は自宅謹慎と軽いものであった。
「はぁ〜謹慎、謹慎」
「そんなこと言ってダラダラしてるだけじゃない!宿題ちゃんとやらないとダメよ!」
「NERVもアコギなことするの〜。センセは女の子助けたのに処分されるなんて可哀想やで。あ、このクッキーウマいで!」
「鈴原!一人で食べちゃダメじゃない!あ、コラ!食べカスこんなにこぼして…」
「はぁ〜熱いなぁ。見せつけてくれるなぁ」
「い、碇君!」
シンジが自宅でじっとしてるのも束の間、放課後の時間になるとプリントを届けに来た鈴原トウジと洞木ヒカリがミサト宅で騒いでいる。もともとトウジは遊びに行くのが目的できており、ヒカリも彼と一緒だとつい口煩くなってしまう。静かだった部屋はたちまち騒がしくなってしまったわけだ。だがシンジにはこのうるさい空間が心地よかった。前の学校で孤立しがちだった彼にとって自分が絶対手に入れられないと思った優しい青春は尊い。
「ミサトさんのツマミとかあるけど食べる?なんならビール飲んじゃおっか?」
「ちょっと碇君何言ってんのよ。冗談でも未成年飲酒はダメよ」
「えへへ…あっ、おツマミ切らしてる。簡単なもので良ければ作るよ」
シンジがキッチンに行くと「私も手伝う!」と委員長も同行した。好きな男の子に女子力アピールするチャンスだと息巻いている彼女をシンジは微笑ましく思った。それに彼女は家事が上手い。包丁の扱いも上手で家で炊事するのも慣れているのだろう。
「全部任せちゃってもいい?トウジも委員長の手料理の方が嬉しいでしょ」
「またからかって…」
「トウジも満更じゃないはずさ。一緒にここに来たんだし」
「そ、そうかな…」
まな板に向かう委員長の横顔が紅潮する。心做しか手さばきのテンポが上がった気がした。そんな彼女の気も知らずテレビを見てバカ笑いするトウジにシンジはため息をついた。お皿に盛り付けているとインターホンがなってシンジが玄関に向かうとケンスケがいた。わざわざ用もないのに会いに来てくれたと思ってシンジはメガネの少年を愉快な気分で招く。しかしケンスケの顔には憂いがあった。席に着くとケンスケがトウジにポツリと話した。
「あいつら今頃こっぴどくやられてるよ。メンツ保つための制裁だよな」
「…さよか」
「見ただろ今朝のアイツらの顔。下校の頃に校舎裏に呼ばれてたからもっと酷いことになってるよ」
「なんの事?」
冷蔵庫からお茶を持ってきたシンジが聞いた。何気ない質問、しかし彼の声色には見透かすような威厳があった。話ずらそうにするケンスケの横から、委員長がテーブルにツマミを置いたあと重いため息を吐くように2人に言った。
「碇君にも話すべきじゃない?もしかしたら彼も狙われるかもしれないし」
「でもそしたら…」
「昨日のヤンキーの事でしょ。話してよ」
ケンスケは成り行きを説明した。
シンジとの乱闘の後、襲撃者たちは彼らが所属する愚連隊の先輩達に喧嘩に負けた制裁を加えられた。1人のガキ相手に集団で負けたためチームが舐められる危険性もあると判断した彼らは見せしめにわざと跡が残るような傷を沢山つけて登校させた。自分のチームの残酷さをアピールするために…
それを聞いたシンジはエプロンを脱いで洗面台の下の棚から何やら先の尖った包みを取り出し始めた。
「今もそいつらは後輩いじめてんのか」
そう言いながら学生鞄の中身を入れ替える彼をケンスケが制止しようとする。彼が愚連隊をシメに行くのは目に見えていた。
「行くなよシンジ!構成員は50人もいるんだぜ?そんな数相手に戦かったら…」
「大丈夫、大丈夫。五体満足で帰ってくるよ」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
「心配症だなケンスケは」
聞く耳を持たないシンジに委員長が加勢する。
「相田君は碇君が暴力事件を起こすことでNERVから処罰を受けることを恐れてるのよ!もしかしたら碇君が退学になるかもしれないの!そしたら…私達今みたいに遊べなくなるのよ!」
この言葉に流石のシンジも躊躇した。今の生活を失うのは彼にも辛い。億劫な訓練に通い続けるのも、次いつ使徒が現れるか恐怖する日々を耐えられるのも友情の存在があったからだ。俯いてソファーに座り込むシンジにトウジは肩に手を置いて励ますように押した。
「なあシンジ?わざわざお前が助けに行かんでもええんやないか?アイツらの自業自得やん?碇が気に病むことないで」
しかしその言葉が碇シンジという男を奮い立たせる。エヴァのパイロットとして使命感を持つ彼は助けられる命を捨てるなど出来ない。それがたとえ軋轢のある相手だとしてもだ。
「やっぱり俺行くよ。同級生を、第3東京市の人間を見殺しには出来ない」
聞いた3人は押し黙ってしまった。
「NERVには上手く話をつけるよ。絶対退学にならないようにゴマするよ。ミサトさんとか結構庇ってくれるんだ」
そう言って学生鞄だけを持った男は自宅を去った。彼のいなくなったマンションの廊下で友人たちはいつまでも彼の後ろ姿を追っていた。
「変わんないよな碇、ムチの使徒が出た時も揉めてた俺たちを助けてくれただろ」
「ああ」
少年たちの脳裏に碇シンジの戦う姿が昨日の事のように蘇った。
場所は使徒後の瓦礫の上だった。ラミエルの粒子砲の余波で砕け散った鉄筋コンクリート製の建物は骨組みだけが残り十字になって地面に突き刺さっていた。襲撃者たちは愚連隊の構成員達に磔にされ鎖で手足を縛られ殴る蹴るの暴行を加えられていた。抵抗出来ぬように先の尖った鉄柱を咽に押し当てられている。
「おいおい何泣き叫んでんだよ!優等生かお前?隣に女がいるってのにみっともねえな」
総長の男はそう言うと腹の腫れた男子生徒の前を後にし、女子生徒の前に来た。彼女のブロンドのロングヘアは出血で痛々しく赤く染っている。
「女だからって容赦はしねえぜ。へへへっ、俺紳士だから…」
男の拳が女子生徒の腹を突く。荒っぽい大振りのパンチはレバーを抉り、彼女は揺れる内蔵から登ってくる嘔吐を耐えるのに精一杯だった。が、突如総長が放ったミドルキックが彼女の我慢のメーターを壊した。
「う、うぐ!お、おえええええ…!!」
「ぎゃはは、コイツは吐いてるぜ!スカートまでゲロまみれだ!ふへへっ!」
女性との嘔吐の姿を見て総長が爆笑し、それにつられてほかの構成員もゲラゲラ笑い出した。笑うこと自体が愉快になったのだろう。いつしか自分たちの奇声を互いに真似てお猿のように輪唱し、競い合うように大声を大声で上書きした。
少女は酷く屈辱を感じた。隣に同級生がいる前で縛り上げられ、服を破かれ、ついに吐瀉物をダラダラと垂らしてしまった。不良たちの笑い声よりも同級生から向けられる憐れみの視線が辛くて、泣いてしまった。先日の戦いで入院している親の事が思い浮かんだ。震災の不安から愚連隊に入ったことが悔いても悔やみきれない。
きっとお父さんたちは私の事を娘だと思わないだろう。
青タンが出来た頬に涙が染みていたかった。
「何泣いとんじゃボケえ!」
総長の拳が女子生徒の腹を再び突く。今の一撃で体が痙攣し始め彼女は己の死を悟った。
──さよならお父さん、お母さん。
拳が少女にトドメを指した。
少女に黒い一撃が横切った。拳が、総長の攻撃が何かの拍子で空ぶったのだと彼女は思った。しかし鉄骨に刺さっているそれは切っ先と総長の首を赤い弧で結び、彼女の右手を縛り付ける鎖を打ち砕いていた。正体は鏢であった。
動脈を切られ血を流す総長はのたうち回る。
「アヘアヘアヘッ」
「誰だテメェは!?ま、まさか!!」
「僕の事もよしたってよ」
男がいた。ゴツゴツした鍛え上げられた身体は白い学校指定のシャツをピチピチに押し出して、素肌は浮き出た筋肉とそれをコーティングする脂肪の鎧が逞しい。骨格の太さを表すように30センチはあろう手首が学生鞄の方へ伸びる様は
「い、碇じゃあ!アイツが碇じゃああ!血も涙もない畜生がワテらを殺しに来たんじゃあ!…!!ぎゃあああああああ」
弱腰の男の臀部に錆びたナイフが飛んだ。おしりの肉に阻まれ致命傷には至らなかったが、彼は痛みで戦闘不能だ。シンジの腕が学生鞄から抜けると同時の出来事だった。
戦闘態勢に入る愚連隊を前に立ち止まったシンジはカバンの錠前を展開した。太く無骨な指が銀色の金具を横切ると顕になったカバンには赤茶けた錆まみれの刃物が所狭しと詰まっていた。まるで今まで刀のサビにしてきた人数を物語るように。実際は致命傷を避けるためにあえて酸化させているのだが、敵にはその気遣いが余計に恐ろしく感じられたであろう。シンジは手持ちの武器の中でも最も刃渡りの長い──されど錆と経年劣化で刃は潰されているナタを手にすると上段に構えた。
「なんやそんなチンケでワシらを倒せると思っとるんけ?」
「これが僕のドスなんだ。全身脱毛するくらいおちゃのこさいさいだよ。テメェらの皮も八つ裂きにするけどな」
「い、いちびってんじゃねえぞ!成金が!」
「このボンクラゴリラが!掛かれ!!」
戦闘は愚連隊の掛け声と共にはじまった。集団で取り囲むようにポジショニングする不良たちの策略から逃れるようにシンジは山中に逃走を開始する。道無き道を駆け上がり、1番幹の太い木の影に隠れたシンジは大声を上げながら駆け上がってくる男に包丁を投擲した。銀色の凶弾は森林の闇に溶け混んで人体に吸い込まれていく。包丁が再び姿を現したのは悲鳴とともに柄が血で染まったその時である。息を切らして登ってくる不良たちは夜の森を反射して見えない刃物に足をとられ続々と坂を転がり落ちていく。その間シンジは枯れ木や拳より大きい石ころを集め始めていた。
30回目の悲鳴が鳴り響いた時ついに学生鞄から包丁の在庫がなくなった。森林には奇声が未だに鳴り響いている。シンジは鉈を構えると背の高い雑草の中に入り込んで伏せながら下山した。物音で構成員がすぐ近くを横切ると察すると木の影から飛び起きて出会い頭に上段から敵の脳天を叩き割った。その音を聞き付け構成員達は集まり逃げるシンジを追う。しかしシンジは円を描くように動き回り、近づこうものならドスでの打突と組討ちで投げ飛ばし必ず囲まれぬように立ち回っている。
「ダメだ!近づけな…ぎゃあああ!」
「今度はなんだ!?碇は何をしたんだ!??もう殺してくれえええ!!!!」
真っ暗闇で響く悲鳴、為す術なく倒れていく仲間たち。敵は音も無く命を奪う文字通りの暗殺者。愚連隊達の精神と指揮は崩壊していた。コロコロと関知ブロックの上を転がり下る構成員達と共に碇は戻ってきた。制裁場には止血した組長だけが残っていて他のメンバーは逃げてしまったらしい。
「これ以上僕の友達に危害を加えないなら許してあげるよ?」
シンジは震える相手に優しく慰めるような言葉で、同時に断罪するような冷たい口調で総長を問いただした。だが総長が応じるはずがなかった。自分のチームを一人のガキに潰されたケジメを付けるつもりだ。松明片手に未だに縛られたままの少女に炎を近づけた。殴りつけようとするシンジの手が止まる。地面が酷く油臭いのだ。
「碇君逃げて!ここにはガソリンが巻かれてるわ!総長はあなたと刺し違えるつもりよ!」
「なにっ!」
「くっくっく、碇!貴様が誠意を持って謝罪するならこの子に火は付けないぞ」
「どう謝ればいい?」
「裸になれ!俺が感じた以上の辱めを受けよ!!」
「碇君そんな事しないでいいよ!」
「貴様は黙っていろ!」
総長と少女の問答の最中、シンジは靴を脱ぎ始めた。次にスボンのベルトに手をかけるまで時間を要しなかった。この男に躊躇いなどない。
「やめてよ碇君…私達碇君を襲ったんだよ。それなのに恥ずかしい思いをする必要ないよ…」
「勘違いするな!僕はエヴァのパイロット碇シンジとして使命を真っ当しているのだ!」
「碇君…」
風が吹き荒れた。ずっと向こうの低木が揺れるほどの突風だった。
「見上げた根性だ!ならば貴様の身体隅々までまろび出さんかい!」
シンジの指が下腹部のチャックを下ろす。金色のファスナーを辿ってボタンを開き、両手が腰の布地にかかった。彼の著しく発達した大臀筋と大腿筋に阻まれてボンタンは下がりきらず二、三度突っかかる。膝まできてようやくスムーズにボンタンが足から抜けた時、様子を見ていた一同は「ああっー!」っと感嘆の声をあげた。
その腰からつま先に掛けての美しさ並ぶものおらず。碇の太ももははち切れんばかりに筋肉が隆起し、オイルを塗ってもいないのに筋がハッキリと現れ、雄々しいハムストリングスは色白の肌と相まって今は無き雪のベールに包まれた南アルプスの連峰を思わせる。脹脛も負けることなく日々の訓練と豊富な食事量からくる引き締まったフォルムは戦国の世で多くの勇士を薙ぎ倒した太郎太刀の有様か。
その場にいたものは皆、シンジの足に釘付けだった。鎖に繋がれた少年達は目撃した瞬間一様に口笛を吹いた。少女に至っては何度か目をしばしばさせて膨らんだ瞼をゴシゴシして見間違いでないことを確認すると顔を赤らめながら手で目を覆い、それでも我慢出来ず指の隙間から白い生体山脈をじっと見つめて「…くぅぅ」と声を上げて照れてしまった。総長は畏怖し空いた口が塞がらなかった。
碇シンジという男はあまりにセクシー過ぎたのだ。
その隙をある者共は見逃さなかった。
総長の背後の茂みにいた何者かが彼に水をひっかけ松明を消してしまった。シンジはそのもの達に微笑みを浮かべた。
「来てくれたんだね!皆!」
「たっくセンセは危なっかしくてしゃーないわ!」
「リベンジポルノはおそろしいのよ!」
「そんな碇の裸のおかげでピンチは脱出できたんだけどね。さあ碇思う存分暴れな!」
そう言いながら3人は囚われた人々の拘束具をどでかいペンチで破壊していく。なんと鈴原達は碇の跡を追い助ける算段をしてくれたのだ。
「やっぱ仲間って最高だ!行くぞ先輩!本物の地獄ってやつを味あわせてやる!!」
「ぎゃあっ」
シンジの咆哮と同時に彼の服がはじけ飛んだ。大胸筋と広背筋の強さに学校指定のシャツごときの強度では耐えられなかったのだ。いつの間にかシャツと肌の間に入れていた木片や石が飛び散って総長にぶち当たり怯ませる。仰け反る相手にすかさずシンジはタックルを繰り出し顎に掌底を打ち込みながらはっ倒し、テイクダウンした瞬間パスガードしてサイドポジションをとるとパウンドパンチの嵐を仕掛け、敵のバタつく足を押しのけながらハーフマウントの状態になると先程以上にパウンドパンチを連打する。負けじと総長も腕を振り回して防御しながらシンジの目を突いた。任侠もんにルールは無いのだ。
しかしシンジはその手刀に噛みつき指を食らった!すぐに赤黒くなった指が痛々しくシンジの口から吐き出される。
「壊されるのは怖いだろ!大事な身体を壊されるのは怖いだろ!大切な物を奪われればおかしくもなる…でもアンタは違う!」
うつ伏せになって這いながら逃げようとする彼の首にシンジは腕を掛けてクリンチし、固定した敵の体をハンマー投げのようにブンブン回し始めた。さらにシンジは跳躍し身体をひねりながら総長の頭を真っ逆さまに落下させる…重力の影響で墜落する胴体と巻き付いたシンジの腕が首を締め付け意識を堕とす!
『
地面に頭をめり込ませた総長は神経を抜かれた魚のようにビクビクと震えたあと痙攣する手で地面を幾度となくタップした。そんな彼を見下ろし最後まで立っていたのは碇シンジその人である!
「碇君!」
「碇!」
襲撃者だった生徒達が駆け寄ってくる。今度は刺客ではなく友人として疲労でフラフラしたシンジを支えてくれた。シンジに見とれていた女の子が自分の使っていたタオルを彼に被せる。ブリーフ姿のシンジの肉体美が眩し過ぎるのだ。返り血を拭く彼に一同は謝罪した。でもシンジは気にする事はない。エヴァに頼らないで人々を守れたことにシンジは嬉しさと誇らしさでいっぱいだったのだ。
後日NERVに呼び出されたシンジは前科もあったためバカ程怒られ数日懲罰房に叩き込まれた。それでも彼には罰が軽く感じた。今回の一見は副司令も小言を言ったがあまり追求しなかったし、ミサトも咎めることはなく「バッチグー」と賞賛してくれた。
それからまもなくして久しぶりに学校に来たシンジはトウジとケンスケに連れられて教室へ急ぐ。何となくデジャブを感じる彼を待っていたのはまたしても祝勝会。もちろん喧嘩の分である。黒板には「市立第壱中学校ナンバーワンのセクシーボーイ」の文字がデカデカと書かれていて、その前にたっている包帯を巻いた少年少女が照れくさそうに拍手していた。
意外にもこの場にいた綾波から特大クラッカーの砲撃を浴びせられて、シンジは「セクシー過ぎるのも困ったもんだな」と紐まみれの頭を撫でるのだった。