神様系チート転生者くん   作:邪骨

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プロローグ

『神様系チート転生者』

 

 僕が自らを端的に言い表すのならば、そうなる。

 詳細にいうなれば、『神様が如きチート能力を持った転生者』となる。それに付け加えて、僕は決して『神様に転生させられたチート能力持ち』ではない。あくまでも僕は『神様系チート転生者』であって、『神様転生系チート能力者』ではないのである。

 

 つまり僕は神になど出会っていない。

 僕は神に転生させられていない。

 

 気が付けばここで、異世界で、神様的な力を持って顕現していた。

 

 なので強いて言うなれば僕が神だ。アイ・アム・ゴッドだった。

 

 

 前述の通り僕は神的であるが、しかしだからといって前世であるところの、人間であるところの僕が消えたわけではなかった。

 僕は依然として俗人的で凡庸な思考の持ち主であった。

 そしてあくまでも僕は未だに人間であった。

 

 なので自らの能力を人間的欲求に従って振るうことに、何の躊躇もなかった。

 

 僕が転生したこの異世界には、残念ながら人間しかいなかった。エルフとか、ドワーフとか、獣人だとか小人とか巨人とか人間ベースの非人間種族が全くもって存在しなかった。

 その事実にがっかりした僕は、そういうものを創造してみることにした。まずは手始めにエルフからとかどうだろうか。

 

 

 エルフを作ってから1000年が経過した。僕については語ることもないが、しかしエルフという種族の顛末は語ろう。

 

 まず結論から言うと、エルフは絶滅した。

 人間に尊厳と願望と命を玩弄され凌辱され破壊され、種としてのエルフはあっけなく滅んでしまった。

 

 人間はエルフという異種族と相対した時、どうしようもなくタガが外れたのだ。人間同士では働いていたタガが、エルフ相手には全くと言っていいほど機能せず、エルフを犯し殺し奴隷とし、絶滅させた。ネアンデルタール人の血がホモサピエンスに少なからず混ざったからといって、ネアンデルタール人が絶滅した事実が変わらないように、人間の中にエルフの血が多少混ざっていたところで、エルフの絶滅が覆るわけがなかった。

 だから僕はもうアレをエルフだとは思えなかった。悍ましい、汚らわしい、あんな人間の血が混ざったエルフなど、もうエルフとは呼べない。名付けるならば、アレはハーフエルフだ。エルフは、もういなかった。

 

 

 すべてのエルフがハーフエルフになって、人間はようやくエルフを嬲るのを辞めた。人間はハーフエルフのことをたいそう気味悪がったが、エルフとは違って滅ぼそうとはしなかった。どうも、血が混じってようやく共生できる存在として見れるようになったらしい。

 

 だけど僕は許さない。

 

 だから人間に罰を与えた。

 

 まず文明を滅ぼした。

 そして魔物を野に放った。

 

 ドラゴンを、ゴブリンを、コボルトを、スライムを、ゾンビを、悪魔を、ありとあらゆる化け物を野に放った。当然、僕の力で作った化け物たちだ。人間を憎み、恨み、殺す僕のかわいい分身たちだ。

 

 そうやって放たれた化け物たちによって人類は衰退し、世界に暗黒の時代が訪れた。

 

 人間はこれを神話だなんて言うけれど、僕にとってはただの八つ当たりに過ぎなかった。

 

 

 エルフを新生させた。

 滅んだ種を、黄泉から引きずり出した。

 

 何故なら僕はエルフが滅んでしまったことに対して、全く納得していなかったからだ。とはいえそのまま蘇らせるだけではすぐに人間に滅ぼされてしまうので、僕はエルフを僕に近い存在として仕立て直した。絶対に死なず、絶対に老いず、ある程度万能で善良で美しい存在として。だからまぁ、新生エルフはハイエルフだと思うことにした。エルフを作ったつもりではあるが、しかしエルフと呼ぶには僕に近すぎるのだから、しかたない。

 

 そうやって僕が手ずから蘇らせた15人のハイエルフたちを目一杯の愛情を注いで育て上げて、人間の滅んだとある大陸に独り立ちさせた。地上は化け物で満ち満ちているけれど、かわいい僕のハイエルフは絶対に化け物には襲われない。というか、むしろハイエルフたちは化け物に庇護される存在なので問題はない。何故ってそれはハイエルフが僕の最高位の眷属だからで、下級な眷属である化け物がハイエルフを襲うとなったらそれはもう僕に対する反逆だからだ。そうなれば僕は容赦なくその化け物を種族ごと滅ぼすし、それがわかっているから化け物たちは絶対にハイエルフを守護するのである。

 

 では化け物……魔物たちは一体何からハイエルフを守護するのだろうか。

 

 当然、人間からである。

 

 

 僕は僕自身がこの世界にとっては外来種で、侵略者であることは理解している。この世界の正当な住人は人間たちであって、魔物やハイエルフ、ましてや僕などでは決してないことくらい理解している。してはいるが、ここに来て、ここに存在して、そして生きてしまっている限りどうしようもないではないか。僕は人間の神様ではないけれど、魔物とハイエルフ、或いはこの先僕が作ってしまうであろう遍く全てにとっての神様ではあるのだ。未だに僕は人であるつもりだけど、残念なことに被造物である彼ら彼女らからしてみれば僕は既にまごう事なき神なのだ。僕が求めた彼女たちに、神として求められてしまったらもうどうしようもないじゃないか。

 

 燃やされたエルフたちの村で、幼い少女が僕に縋って事切れた。

 あの縋る目が、手が、口が、言葉が、僕を絶対に許さないから。僕を求めてやまないから。だから僕は未練がましくもエルフを新生させ、ハイエルフの神様になったのだ。

 

 きっとハイエルフたちに寂しい思いも、苦しい思いも、辛い思いもさせないから。

 

 だからどうか身勝手な僕を許してほしい。

 

 人間を許さないから、僕を許してほしい。

 

 

 僕は人間のことが憎いが、決して滅ぼしたいわけではなかった。だから人間を大陸……今は魔物とハイエルフの楽園と化したこの大陸より追い出し、辺境の地に追いやっただけにした。少なくない魔物が逃げ行く人間の中に紛れたが、それでも人間が滅ぶほどの脅威にはならないだろうと思う。

 

 そうして人間のいなくなったこの大陸は、魔物とエルフが繁栄してなお余りある広大さを有していた。逃げ遅れ、ハイエルフを自らの上位者として認識し、付き従うようになったハーフエルフを含めてもなお、この大陸には未開の地が腐るほどあった。

 

 なので新しい種を作ることにした。

 

 新しき命で、未開の地を切り開こうと思った。

 

 ファンタジーにおける逞しい開拓者のイメージといえば、ドワーフだろうか。どんな悪所でも掘り抜き進む、逞しき者。ファンタジー作品においてはエルフと仲が悪かったりすることがままあるが、僕の作るドワーフにはハイエルフたちと仲良くやってほしいから、そういう設定はつけないことにした。またハイエルフを僕に近づけすぎた反省から、ドワーフに関しては人間の範疇を逸脱しない程度の性能に抑え、かつ僕自らがドワーフを育てることは辞めにした。あまり神が下々に手を焼きすぎると、ハイエルフたちがやきもちを焼いてしまうからね。

 でもだからと言って生まれたばかりのドワーフをそのまま野に放るわけにもいかないので、ハイエルフたちに世話させてみることにした。どうにもハイエルフたちは僕が甘やかして育ててしまったからか、大人になっても甘ったれで親離れ出来ない子ばかりになってしまった。なのでちゃんと独り立ちしてくれるように、15人のハイエルフたちに一人ずつドワーフの赤子を授けて、責任をもって育てて貰うことにした。子育てをすることによって大人になってくれることを期待してね。

 

 

 果たしてハイエルフたちは反抗期に突入した。

 

 ドワーフを育て切って大人になってくれるかと思いきや、だ。

 

 どうやらドワーフを育てているうちに、同種の子供が欲しくなってしまったらしい。だからハイエルフたちは仲の良いもの同士で番って子供をつくろうとしたようだったが、残念ながらその試みは失敗した。

 

 だって僕はハイエルフに生殖機能を付けていなかったから、それは当然の話だった。

 

 僕がそのことをハイエルフに言うと、彼ら彼女らは泣き出してしまった。泣くどころか、怒って僕の頬を平手打ちした。どうしてそんな風に作ったのと泣かれて叩かれ、僕はまた失敗してしまったらしいことをようやく悟った。しかし一度作った生物の有り様を変えることは神である僕をもってしても出来ないことだ。だから彼ら彼女らの願いを叶えてあげることはできないし、出来るのは謝って慰めるくらいのことだった。

 

 謝ったところで、慰めたところで、ハイエルフたちが納得するなんてことはなかった。

 

 ハイエルフたちは僕のいるこの大陸にいるのが嫌になってしまったのか、皆して世界中に散っていってしまった。唯一ハイエルフたちの末っ子だけが僕の元に残ったが、しかし何やら僕を見る目つきが怪しいのでやはりまだ僕を恨んでいるのだろう。

 

 奇しくもその残ったハイエルフの末っ子とは、かつて焼け焦げたエルフの村にいた、僕に助けを求めて死んでいったあの子に似せて作った子であったのだが、それは特に関係のない話だろう。




主人公・・・神様っぽいことが出来る。すごい。
エルフ・・・主人公が愚かだから滅んだ。
ハーフエルフ・・・エルフと人間の混血種。主人公とハイエルフのことが大好き。でも主人公からは嫌われている。
ハイエルフ・・・滅んだエルフの代わりに主人公が用意したお人形さん。でも反抗期になっちゃった。
ドワーフ・・・親代りであるハイエルフたちから一人立ちしたあとは何かそのへんで増えてる。
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