神様系チート転生者くん   作:邪骨

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ブヘペの魔王


 私はハイエルフ15姉弟の末っ子、エルレッツァと申します。私達ハイエルフは神様の子供として作られました。それはそれは大変誇らしいことで、神様に必要とされてこの世に生を受けたことは幸せなことなのだと思います。けれどもお姉様やお兄様はその幸せを享受して、神様から無償の愛を甘受して、それでもなお心が満ち足りないのだと言います。

 

 あぁ、お姉様たちはなんて可哀想なのでしょうか。

 

 私はこうして神様のお側に居られるだけでこんなにも満ち足りて、幸せだというのに。それで足りないなんて辛いだけでしょうに。

 

 満たされない思いを抱えて互いを求め合い、抱き合って、子を欲して、それが叶わぬと知って絶望したお姉様。怒り狂ったお兄様。みんながみんな神様を責め立てて、嫌いだなんて言うんです。

 

 あぁ、可哀想なお姉様。

 

 あぁ、可哀想な神様。

 

 私以外の皆が可哀想でした。辛そうでした。泣きそうでした。

 私はみんなのことが大好きなのに、どうしてこうなってしまったのでしょうか。神様が悪かったのでしょうか、お姉様たちが悪かったのでしょうか。

 

 いいえ、悪い子は私です。

 

 神様は私の願いに縛られているのです。遠い遠い昔に、あの火の海で、泣きそうな顔の神様に願った言葉が、未だに神様を縛り付けているのです。だからハイエルフは生まれて、こうなってしまいました。

 

 だから私が悪いのです。

 

 でも嬉しかったんです。私の願いを叶えてくれて、愛してくれて、本当に嬉しかったんです。幸せだったんです。こんな結末になるなんて思いもしなかったんです。

 

 結局私を残して、お姉様たちは何処かへ行ってしまわれました。そして、神様は心を閉ざされ、石になってしまったのでした。

 

 私は今日も神様のお体を拭いてあげます。

 

 石になってしまった神様は、もう自分で動くことも、喋ることも、考えることもありません。ただただ永遠に在り続けるだけの石なのです。なので私に出来ることは、苔を払い、身に纏われた穢れを祓ってあげる事くらいなのでした。

 

 神様。私はずっと待ってます。

 またみんなと一緒に笑い会える日が来ることを、ずっとずっと待ってます。

 

 いつかみんなで許しあえたら、そのときは帰ってきてくれますか?

 

 

 何年経ったでしょうか。

 7人いる兄様のうちの一人が、空から帰ってきました。どうやら怒りも静まって、神様の顔が見たくなったようです。

 

 そのお兄様……ヒルレンツ兄様は、すっかり石になってしまわれた神様を見て、自分のしてしまった事の大きさに気付いたようでした。

 

「…エルレッツァ、俺は、父さんにそこまでの事をしてしまったのか」

 

 その呟きは、私に言っているようで実のところは自問自答だったのでしょう。私が答える間もなく、ヒルレンツ兄様は言いました。

 

「俺、みんなを探してくるよ。みんなで集まって、父さんに謝るんだ」

 

 答えを得た兄様は、また空へ昇っていきました。

 

 私はその様子を、微笑んで見つめることくらいしか出来ませんでした。ほんとうはその役割は、一番悪い私が背負うべきものだったと思うのです。でも私は神様のお側から離れるのが怖くて、神様のお世話をすると言い訳しながら今までを過ごしてきてしまいました。そのことに、今更ながら気付かされたのです。

 

 ヒルレンツ兄様は姉弟の中でも一番大人だったのでした。姉弟の中でも実は一番長生きな私なんかよりも、ずっとずっと。

 

 私は、このまま待っているだけで良いのでしょうか?ヒルレンツ兄様のように、動くべきなのではないでしょうか?

 

 どうすればいいんでしょうか、神様…私は…。

 

 神様は何も答えません。石が物を言うなんて、そんなことはありえませんから、当然の話でした。私は自分で答えを出さなければなりません。

 

 私もそろそろ大人にならなければいけないようでした。

 

 私は可愛いハーフエルフのチーミィに神様のお世話を頼むと、ふわりと魔法で浮き上がって大陸の外へ向かいます。

 

 そういえば、こうして地上を眺めるのもずいぶんと久しぶりのように思います。私がリルリーを育てていたときは、よくせがまれて空を飛んだものですが……まぁ、随分と昔の話です。地上ではいつの間に増えたのやら、ドワーフの集落がいくつも確認できました。独り立ちしてから会っていないリルリーも、もしかしたら子供を作って家族を持つまているのでしょうか。だとしたら嬉しいです。あの子には幸せになって欲しいですからね。

 

 そう思っていたからでしょうか。私は地上にリルリーを見つけてしまいました。相変わらずのちまっとした愛らしい体躯と、ふわふわの赤毛を持ったドワーフの少女、リルリーをです。

 

「お久しぶりですね、リルリー」

 

 見つけてしまったからには、声をかけずにはいられませんでした。だってリルリーは、私の大切な家族なのですから。

 

 リルリー、あなたは私の下より巣立ってから、何を見て、何を感じ、誰と出会ってきましたか?誰かを愛したりしましたか?

 

 

 結論から言うとリルリーに恋人とか子供とか、そういうものはいませんでした。地上にはこんなにもドワーフがありふれているのに、その中の誰もリルリーの子供ではないというのです。

 好きな子とかいなかったのですか?あなた達の一生は、永久を生きる私達からすれば瞬きの間なのですよ。そんなにのんびりしていては、いつの間にか死んでしまいますよ。そんな小言をリルリーに言うと、彼女は少し困った顔をして言いました。

 

「そういうの、アタシわかんなくて」

 

 まぁ、そういうこともあります。有限の命ではありますが、人間よりはずっと長生きですからね、ドワーフは。多少はゆっくりしていても良いのでしょう。

 

「それよりも母さんが神様の元を離れるなんて、どうしたのさ」

 

 えぇ、まぁ、娘同然である貴女にこんな話をするのは恥ずかしいのですが……私もそろそろ大人にならなければいけないな、と思いまして。

 

「要領を得ないぞ」

 

 …神様が石になられたのは知っていますか?

 

「知らないな」

 

 ええと、まずはそこからですね。かくかくしかじかなんですけど。

 

「ふーん」

 

 反応が冷たいですね。一応あなた達の生みの親なのですけれども。

 

「いや、道理で最近ハーフエルフの連中を見ないなと思って。ハイエルフ達が舎弟として全部連れてっちまったんだなと納得していたんだ」

 

 そうですね。確かにお姉様たちは子飼いのハーフエルフたちを各々連れて行ってしまいましたよ。とはいえ、私の唯一の眷属であるチーミィだけはまだこの大陸にいるのですが。

 

「まぁチーミィのことは心配していなかったが……アタシはてっきりハーフエルフ連中がいよいよ魔物の餌食になっちまったのかと心配していたのさ」

 

 それは、はい、ご心配をおかけしました。

 

「で、母さんは叔母さんたちに神様と仲直りしてほしいから、なんとか探し出して説得しようってんだな?」

 

 それで間違ってないですよ、えぇ。

 

「ならアタシもその旅に連れて行ってくれよ」

 

 いやいや、子供を私の問題に巻き込めませんよ。それに、外の世界は、人間は危険な生き物なのですよ。連れてなんて行けません!

 

「母さんよ、アタシは母さんが心配なんだよ。母さんちょっと子供っぽくておっちょこちょいな所があるし、魔法はともかく肉体的な強さはアタシより弱っちいんだぜ?」

 

 それは!私はどれだけ肉体が損壊しても死にませんから大丈夫なんです!それよりも多少私より力強くたって、貴女はちょっと槍で突かれたら死んでしまうんですよ!私はこんなことであなたを失いたくないんです。

 それに……

 

「母に子供っぽいとはなんですか!」

 

「そうやって癇癪を起こすところだよ」

 

「ぐぅッ」

 

 何も言い返せません!

 

「母さん、アタシは母さんが絶対に死なないことくらいわかってるんだよ。でももし人間に捕まっちまったら?死にはしないけど、きっとすごく辛くてひどい目に合うに決まってるんだ。アタシはソレが嫌なんだ!」

 

 まったく、あなたって子は。いつの間にか私なんかよりもずっと大人になってしまったのですね。

 

「いいでしよう、分かりました。ならば私と一緒に、みんなを迎えに行きましょう」

 

 ついてきてくれますか?

 

「当然だとも!」




エルレッツァ・・・ハイエルフの末っ子。家族のことが大好き。ハーフエルフのことも大好き。ドワーフも大好き。人間のことは大嫌い。自分のことを悪い子だと思っている。
ヒルレンツ・・・ハイエルフの長兄。昔妹とまぐわったが、子供が出来ずに破局した。神様のことは好きだけど嫌い。世界中に散った姉弟達を探す旅に出た。
チーミィ・・・ハーフエルフ。エルレッツァの唯一の眷属。エルレッツァのことが大好き。エルレッツァのために死にたいと思っている。リルリーの幼馴染でもある。今はエルレッツァから神様の世話を任されて張り切っている。
リルリー・・・始まりのドワーフの1人にして、エルレッツァの娘。エルレッツァのことが大好き。普通に処女。神様のことは生みの親だけど雲の上のような存在としてしか思っていない。
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