神様系チート転生者くん   作:邪骨

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 神様とは一体何者だったのだろうか。我はこの巨大な石を見るたびにそう思う。

 我が敬愛すべき主、エルレッツァ様の父であるとは伺っていたが、それ以外のことは曖昧で要領を得ない。嘘か本当かわからぬ神話が流れるばかりで、エルレッツァ様の愛した父としての神様像は全く持って知れない。

 

 曰く神は生まれて3日にしてエルフをお作りになられた。しかしエルフを認めぬ人間たちによってエルフは滅ぼされ、神は怒り狂った。狂った神は世に魔物を呼び込み、人間に罰を与えた。しかして神は怒りを沈め、エルフを自らの似姿として新生されたのであった。

 

 その程度の神話しか、我は知らなかった。

 我が生まれた頃にはとっくに神話は終わっていて、エルレッツァ様も神様より独り立ちされていたからだ。だから我は神様に会ったことがなかった。エルレッツァ様は頻繁に神様に会いに行ってらっしゃったが、決して我やリルリーを連れては行こうとしなかったのも一因ではある。どうにもエルレッツァ様はファザコンの気があるらしいのだ。つまり神様を独占したかった節がある……本人は認めはしなかったが。

 

 特にリルリーが巣立っていってからは酷かったな。眷属である我を放って神様のところに行ってしまったのだからもうどうしようもない。その時ばかりは少し神様に嫉妬してしまったが、まぁ、今のこの姿を見ればそんなものよりも哀れさが勝つ。

 

 呆然と膝をついてそこにある人型。

 顔を覆い、耳を塞ぎ、天を仰いで、石としてそこにある人型。

 

 それをエルレッツァ様は神様だと言った。

 

 あの日、久しぶりに我が家に帰ってらっしゃったエルレッツァ様は、泣き腫らした顔で言ったのだ。

 

「神様が石になってしまいました」

 

 一体全体何事なのか全く持ってわからなかったが、ともかく好くないことが起きたらしいことだけは理解した。

 

「どうすればいいのかわからないのです。チーミィ、チーミィ、私は一体どうすれば」

 

 久しぶりに名を呼んでもらって、抱きつかれて、いい匂いがして、不謹慎だがほんの少し嬉しかったのは内緒の話だ。こんなことを思ったなんて知れたら、我はエルレッツァ様に嫌われてしまう。全く眷属失格だな。

 

 しかして我はエルレッツァ様に頼られて、手を引かれて、初めて神様にお目通り叶ったのであった。

 

 なるほど確かに石であった。

 始めはそれが神様であるとは到底思えなかったが、縋り付いて泣き叫ぶエルレッツァ様の姿を見て、ようやくそれが神様であったのだと理解できた。

 まぁ、理解できたからといって、エルレッツァ様にどうこうできない事象を、我ごときハーフエルフが何とか出来るはずもなく。我にできたのはせいぜいエルレッツァ様を抱きしめ慰め、神様を掃除してあげようと提案するくらいだった。

 

 エルレッツァ様は私の提案を泣きながら受け入れて、それからは每日のようにこの巨石を掃除するようになった。我はそんなエルレッツァ様のお助けをするまでのことだった。

 

 それから転機が訪れたのは、本当につい最近のことだ。

 

 これもまたある日唐突に、エルレッツァ様は姉弟方を迎えに行ってくると決意した顔で告げられた。我にはその間、自分の代わりに神様のお世話をしてあげてほしいとも。まぁ、エルレッツァ様の願いは我が願い。快く承ったとも。

 

 しかしなエルレッツァ様。

 我は神様が未だに何故こうなってしまったのか理由を聞かされていないのだが、帰ってきたら教えてもらえるのだろうか?我が従順なる眷属だからこそ文句は言わないものの、理由も話さず他人に頼み事をするというのは褒められたことではないぞ。ぜひとも我以外にそんな態度を取ってくれるなよと願う。全くあのお方はまだまだ子供っぽいというかなんというか……そんなところも大好きなのだけれどもな。

 

 はぁ、やれやれ、そろそろまた神様を掃除してやるとするかね。

 

 

 誰か私の噂をしていますね?チーミィでしょうか?ふむ、何でしょう、「こんな面倒事を押し付けやがって」とかでしょうか。そんな事を言っているのだとしたら私は泣いてしまうかもしれません。もうチーミィの前でわんわん泣いて困らせてしまうかもしれません。いえいえ、チーミィがそんな子ではないと私は分かっていますよ?少しばかり口が悪いですが、チーミィは心優しくて可愛い良い子です。私のことが大好きなんだなってことが簡単に態度に現れてしまうところとか、とっても可愛いのです。愛してますよ、チーミィ。少しばかり待っていてくださいね。

 

 それはともかく、私とリルリーの旅路は現在海上にありました。

 私達ハイエルフはそれぞれが魔力パスによって繋がっていて、なんとなく誰が何処にいるのかなぁ〜というのが分かってしまうのです。一人でも寂しくないようにそうしたのだと神様からは聞いています。

 なので私たちはその何となくこっちに姉弟がいるぞ!という感覚を頼りに海越えをしている真っ最中なのでした。向かう先はブヘペ大陸と呼ばれるところです。人間たちの住む場所でもあります。

 

「ブヘペという言葉には『人間の』という意味があるのですよ」

 

 とリルリーに教えてあげますが、彼女は船上で釣りに勤しんでいてそれどころではないようでした。

 

「母さん!今日の晩飯がかかってるんだから、少しは手伝ってくれぇ!」

 

 なんかすげぇ大物なんだよ!と叫ぶ彼女を手伝うために、私はマストの先からふわりと飛び降ります。当然魔法を使ってです。魔法とは便利なものなのですよ。一つ念じれば風も火も水も重力だって自由自在なんです。これも神様が作った理なのでしょうかと尋ねたことがあったのですが、どうやらこの世界がもともと持っていた法則のようです。面白いですよね。

 

「こんなときに何の講釈を垂れてるんだよ!」

 

 はいはい、手伝いますって。

 

 ひょひょいのひょいっと。

 

 私が念じれば(正確にはもう少し複雑なプロセスがあるのだけれど)、リルリーの掴んでいた釣り竿がグンと勢いよく浮かび上がります。そう、私が使ったのは重力魔法なのでした。

 

「スッゲー!ハーフの連中も結構な魔法を使うけど、やっぱ母さんの魔法は格別すげぇや」

 

 ふふん、娘に褒められるのはこそばゆいですが悪くありませんね。昔を思い出します。そう、あれはリルリーがまだ2歳の頃……とと、そんな無駄話をしている場合ではありませんでしたね、さてさて何が釣れたのでしょう…か…。

 

「あー!釣り針がない!」

 

 …よくよく見れば、釣り竿の糸が途中で千切れているではありませんか。これはショックです。大ショックです。リルリーに対して大見得を張ってこの始末です。あまりにも恥ずかしい!

 

「いやー、こりゃ勢いよく引き上げすぎたな母さん」

 

 まあ初心者なんだし仕方ないって!と励ましてくれるリルリーには悪いのですが、私はもう寝ます。本当にショックだったんです。

 

「ちょっと母さん、今日の晩飯は〜?」

 

「いらない」

 

 私は完全に拗ねてしまっていたのでした。

 

 

「さて、そろそろブヘペ大陸に着きますよ!」

 

 私は船酔いで寝込んでいるリルリーの肩を揺さぶります。いやはや、長い航海でした。具体的には三ヶ月ほどの旅でした。その間には聞くも涙語るも涙な波乱万丈劇がありましたが、その話はいずれするとして。

 

「聞いていますかリルリー?起きて下さい」

 

「うぉんォ゙、気持ち悪いよぉ……」

 

「もう、私のことが心配なのではなかったのですか」

 

 この有り様では私が守られるより、私がリルリーを守ることになりそうです。

 

「ごめん母さん、マジごめん」

 

「仕方がないですねぇ」

 

 私は魔法でひょひょいと船を砂浜に接舷すると、リルリーをおんぶして軽やかに砂浜へ降り立ちます。当然これも魔法で、です。

 

 かくして私達はブヘペ大陸に上陸する事が出来たのでした。

 

 うーん、人間には良い思い出が何一つとしてないのですが、不思議と気分上々です。冒険気分でしょうか。なにはともあれ、姉弟探しはまだまだ始まったばっかり!気合を引き締めていきましょう!

 

「えいえいおー!」

 

「おーッ゙!?ヴォエッ」

 

「のわーっ!?大丈夫ですかリルリーッ!?」




チーミィ・・・エルレッツァ様好き好き好き好き好き好き好き好き好き大好き
エルレッツァ・・・かわいいね、チーミィ。大好き。
リルリー・・・吐きそう
ブヘペ大陸・・・人間の唯一の生存圏。けど普通に魔物がいるし人間はパクパクされてる。可哀想。
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