神様系チート転生者くん   作:邪骨

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 ブヘペの大地は過酷だよ。

 ずっとずっと昔に神様を怒らせちゃった私達は、この過酷な大地に追いやられてしまったの。大地は枯れて作物は育たず、水もなかなか手に入らない。

 ブヘペの大地は過酷だよ。

 でもでも私は元気だよ!お母さんとお父さんと、それからたくさんの兄弟が魔物にむしゃむしゃされているけど、それでも私は元気だよ!

 

 誰かに助けてほしいけれど、助けがないのはわかってる。だけど私は元気だよ!

 

 皆が大好きだったルルンは元気いっぱいだったから、私は元気だよ!

 

 最後の最後までルルンは元気だよ!

 

 元気だよ!元気だよ!元気だよ!元気だよ!元気だよ!元気だよ!死にたくないよ。

 

 

 ブヘペに上陸してから二十日ほど歩き続けましたが、なかなか人里がありません。いえ、人間に出会わないという意味では大変安心安全ではあるのですが。とはいえ何処かで食料を補給したいのもまた事実ではあるのですよ。私は良いのです。別に飲まず食わずでも死にはしないのですから、ちょっと辛い程度ですから。でもリルリーは違いますから。飲まず食わずでは死んでしまいますから。そんなことになったら悔やんでも悔やみきれません。

 最近は魔物を狩ってその肉を食らって腹の足しにしていますが、それでも水はなかなか補給できませんので。早く人里を見つけたいところでした。

 

「しかし、ブヘペは暑いですね~」

 

 ブヘペは神様に聞いていたよりもずっと過酷な土地でした。よく砂漠は枯れた大地なんて言いますが、ここはそれ以上に過酷です。土は赤茶けてひび割れ、乾いているのがよくわかります。そんな土地に植物など根付くはずもなく、一面荒野が広がるばかり。稀に植物らしきものが目につきますが、そのどれもが干乾びて見えます。そして空に燦々と輝く太陽が、過酷なブヘペの大地をより過酷なものにしていました。このような耐え難い熱波に曝されては、生物はまともに生きてなど行けないでしょう。

 

 ですから、人間というのはとっくに滅んでしまったのかもしれません。

 

 人間が私たちの大陸からブヘペに移り住んでから1000年以上。その間神様も私達も人間が今何をして生きているのかなんて知ろうともしてきませんでしたから、人間の現状などさっぱりです。なので滅んでいても不思議ではありませんし、実は普通に生きているのかもしれませんでした。

 

「寝物語の人間が、そう簡単に滅ぶもんかね」

 

 リルリーはそう言いますが、しかし実際の人間を知っている私からしてみれば滅んでいてもおかしくないと思うのです。アレらは神様に作られた私達なんかよりもちっぽけで、下等で、貧弱な生き物なのですから。弱弱しくて儚くて邪悪。吹けば飛んでしまう程に脆弱なる種族が、この過酷な大地で1000年の時を生き長らえれるものでしょうか?

 

 しかし奇跡というのはあるものです。

 

 前方に煙が上がっているのを、リルリーが見つけたのです。

 

 火は文明の証。人間の証。そこに何かしらが居ることの証です。それは人間かもしれませんし、知性をもった魔物かもしれません。しかし知性を持った魔物は人間の中に溶け潜むもの。であればやはりあの煙は、あの火は、人間のモノなのでしょう。

 

 私達はその煙の元まで行ってみることにしました。当然、無用な争いを避けるために幻惑魔法でちょちょいと人間に変装して、ですが。

 

 いるといいですねぇ、人間。彼らがこの千年余りでどのように変化したのか、少しばかり気になります。

 

 

 火元に人里はありました。ありましたが……

 

 辿り着いた人里は、やはりというべきか滅んでいました。運が悪いことに、ちょうど数分前に滅んだようです。

 

「うわ、こりゃ酷えや」

 

 リルリーの言うように、確かに村は酷い有り様でした。もう一面血溜まりで人間の死体がごろごろ転がっていますし、その死体のすべてが魔物によって内蔵を貪られていました。なかなかショッキングな光景です。これが人間ではなくハーフエルフやドワーフたちであったなら、私は嘔吐して泣き叫んでいたかもしれません。でもまぁ、人間ならそこまでです。

 

「母さ~ん、まだ生きてるのがいた~」

 

 死体漁りをしていたリルリーがそんな事を言いました。見に行ってみれば、確かに幼気な人間の少女が1人、まだ生きていたではありませんか。

 

 ただし、もう虫の息でしたが。

 

 一目でこれはもう長くないな、という容態で、口からゴボゴボと血を吐いていて喋る事もままならない様子でした。

 私は苦しそうに天を仰ぐその手を優しく握りしめてあげます。すると少女は最後の最後に、死に抗ってみせました。

 

「死にたくないよッ……ごぽっ、たくな、死にたくな゙ゥ」

 

 あのときの私のような縋る目で、少女は呟いて死にました。ビクンと仰け反って死にました。魂がふよふよと少女の胸から抜け出ていっていますから、まぁ死んだのでしょう。

 

 私はその抜け出た少女の魂を、ぐわしと鷲掴んで手頃なガラス瓶に閉じ込めてしまいました。

 

 食いちぎられた乳房が痛々しい、胸骨の剥き出しになった骸を見ます。あぁ、あんなに憎たらしい人間でも、こうまで酷く死んでいると同情心というものが湧いてくるものですね。大事に育てられてきたことがわかる丸顔が、恐怖と絶望に歪んだまま固まっているのを見ると流石の私でも心が痛みます。きっとこの子の人生は、素晴らしいものになったはずです。周囲を漂う魂たちの言葉が、彼女の死を悼むものばかりでしたから、相当愛されていたのでしょうね。だから生きていれば、過酷だけれども愛に満ち足りた良い人生を送れたはずなのです。

 

 なんて哀れなのでしょうか。

 

 哀れで哀れで、可哀想なので蘇らせてあげることにしました。丁度土地勘のある人物を探していたところなのです。それがこの哀れな少女であったとしても構わないでしょう。

 

 そこら中に散らばった死体の中から、少女に近い年頃の物を選びます。そして選んだ死体から少女に足りない部分を拝借して、ちょちょいと魔法でくっつけてあげます。

 

 うーん、少し物足りないですね。

 

 リルリー、背負い袋を持ってきてください。えぇ、えぇ、その袋ですよ。魔物の食べられないところをたくさん詰めたその袋です。

 

「趣味が悪いなぁ、母さんは。普通に蘇らせてやればいいのに」

 

 いえいえ、蘇らせてあげるからには、以前よりも強く、以前よりも美しく、以前よりも素晴らしく仕上げてあげるべきなのです。神様は私にそうしてくれましたよ?きっとこの子もその方が喜ぶ筈です。間違いありません。

 

「そうかなぁ」

 

 リルリーの疑う声を無視して、私は背負い袋から魔物の残骸を出し広げます。うん、壮観ですね。マッドバニーの耳やらビッグバンドの大爪だとかもう盛り沢山です。リルリーの鍛冶用素材として収集していた残骸たちですが、ここはパーッと少女の強化パーツとして使わせてもらいましょう。そうですね、何が良いとかありますか?私はガラス瓶に問いかけます。え?何?このままみんなと一緒に死んでいたい?それはいけませんよ、えぇいけません。せっかく復活のチャンスがあるというのにそれを掴まないなんて愚か者のすることですよ?

 

「何と話してるんだ?母さんは……」

 

 ふんふん、なら可愛くてかっこよくして欲しい?いやいや、この素材の中から選んでみて下さいよ。そんなふわっとした願い事はやめておいたほうが良いですよ。経験者である私が言うのですから間違いありません。

 

――なになに?腰にバッドウィングの翼をつけてスカートみたいにしたい?成る程良い趣味をしていますね。

――魔法を使ってみたい?では魔力を溜め込むドラゴンの角を生やしましょう。

――遠くを見たい?では手慰みに作った私製魔道具『見通す瞳』を埋め込んであげます。なかなか便利なんですよ?それ。

――魔物を殴り飛ばせる腕?いいでしょう、カオスフッドの逞しい腕にしてあげます。そこら辺の魔物ならばそれでイチコロです。

――必殺技も欲しいですって?欲張りさんですねぇ。では伽藍洞な貴女の胎に、びっくりなものを仕込んであげます。

 

 あとは何を望みますか?え?もういい?ではこれで完成ということで。

 

 瓶詰めにした少女の魂を、作り変えた新たなる肉へ戻します。そして最後に私が口づけしてあげれば、心臓がドクドクと脈打ちはじめます。

 

 新生です。

 再誕です。

 

 古い血を口から吐き出してビクビクと痙攣する体を、私とリルリーとで支えて起こしてあげます。

 

 さあ、目を開けなさい。

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