Twitter(現X)でも触れましたが、UA10万突破感謝です。皆さんのお陰でここまで頑張ってこれました。
これからも頑張りますね。
あと、今更ながらですが。今章は章題にエデン条約と入ってますが、エデン条約に直接的に絡むアレコレは基本出てきません。そもそも調印式自体しばらく先ですし。
とはいえ全く関係ないのかと言われたら首を傾げる部分があるので、章題はこんな感じになりました。
エデン条約編読みたい人はもうちょっと待っててね……! 雑ながらプロットはある程度組めてるし、色々と書きたいシーンもあるから私も早く書きたかったりするけど、もうちょっとだけ待って……!
場所は移り、ゲヘナ学園風紀委員会の本部付近にて。
「これは……ちょーっとヤバい感じかな?」
適当な二階建ての建物屋上に陣取って周囲を見渡していた少女が、そんな風に小さく呟いた。
そんな彼女の視線の先────つまりは地上では、風紀委員会に拘束された仲間を奪還しようと襲撃をかけた数十人のスケバンたちと、取り押さえた生徒を脱獄させないよう防衛戦を行う風紀委員たちとの熾烈な戦いが繰り広げられていた。
圧倒的な人数差に物を言わせた吶喊を繰り返す襲撃者に対して規則立った動きで防衛を行う風紀委員だが、しかしその戦況は芳しくない。
要因は様々である。
例えば、暴動を起こす生徒が多すぎるせいで本部に残っていた人員の絶対数が少なかった事。また、その数少ない生徒たちも疲労が蓄積していることでパフォーマンスが落ちていた事。
他にも、拘束した生徒たちの数が多すぎるせいで監房がキャパオーバーを起こしており、本部内に臨時の留置所まで作らさせられているせいで防衛箇所が広くなっている事などもある。
しかし、何よりも大きいのは────
風紀委員会の筆頭である委員長、空崎ヒナの不在であった。
キヴォトスでも最上位と謳われるその圧倒的なまでの武力で畏怖を集める彼女であるが、現在は校舎から離れた市街地付近で起きた暴動の鎮圧に出向いているのだ。
既に襲撃の報告は受けているため急いで帰還しているようだが、しかし到着までにはまだ10分以上かかるようで。
風紀委員会における心理的支柱であり、暴れ回る生徒にとっての抑止力でもある委員長が不在の状況。
加えて、風紀委員会全体が疲弊しているとなっては、たとえ不良による烏合の衆であっても押し込まれてしまうのも無理のない話であろう。
そういった裏事情を────全てを完璧にとはいかないが────読み取った彼女は、さてどうしようかと思考を回す。
駅で別れた先生からの指示は『風紀委員会の本部へ向かい、委員長とコンタクトを取って現状を把握する事。そして、状況が掴めるまで戦闘は避ける事』であった。
今の自分はシャーレの部員として出向して来ているため、連邦捜査部の超法規的権限の保護下にある。しかし先生の指示は、強硬な手段は取らずなるべく穏便に話を進めるようにしたいという意図があった。
おそらく、ゲヘナ全域がゴタゴタしている現状で余計な騒動の火種を作らないための配慮であろう。もちろん、先生自身の人柄もあるのだろうが。
さて、そんなわけで彼女────小鳥遊ホシノはどう動くのが正解か悩んでいるのである。
ひとまず、このまま見ているだけ……つまりは一切の助力をしないというのは論外。何のために来たんだという話になるし、そもそも自分には風紀委員会に恩がある。
向こうとしてはアビドスで勝手な行動をした借りを返したという事なのだろうが、それでも自分は助けてもらったのだ。何か力になってあげたいと思うのはそうおかしな事ではないだろう。
さて、その上で先生の指示にも背かないようにするとなると────
「できる限り無傷での拘束、あるいは無力化……かな? うへ、ちょっとめんどくさそうだな~」
口ぶりとは裏腹に軽く口角を上げると、やることを決めた彼女は身を翻す。
すなわち。
「や。ちょっとおじさんも混ぜてよ」
上方向という完全に想定していないであろう方角からの奇襲である。
────────
「アコちゃんッ!? 委員長の到着までどれくらい!?」
『まだ10分以上かかるそうです! ……持たせられませんか?』
「ちょっと厳し────痛ったいなもう! ちょっと厳しいと思う!!」
突如襲来した暴徒と化した生徒の集団から風紀委員会の本部を防衛する銀鏡イオリは、同じく防衛線の指揮を行う天羽アコからの返答に顔を歪めていた。
今のところはどうにか均衡が成り立っているが、まるで際限がないかのように吶喊してくる相手に対して味方の士気はかなり下げられているのだ。
どこか一個所でも崩れれば、すぐに戦線は崩壊してしまうだろう。
それは通信越しに会話するアコも分かっているようで、歯噛みしながらも打開策を探そうとしているのが声の様子から伝わってくる。
しかし。そもそも度重なる暴動のせいでパンク寸前にまで追い込まれている今の風紀委員会に、余力など残っているはずもなく。ジワジワ、ジワジワと縮小する防衛線が残り時間を告げていた。
そんな時の事である。
空から何か、桃色の塊────否、桃色の髪をした誰かが襲撃者の中心へと降り立った。
着地の衝撃を前転で分散させながら前方向への運動エネルギーに変換すると、その生徒は勢いのままに肩に下げていた折り畳んだ盾を振り回すことで近くのスケバンを纏めて吹き飛ばす。
もちろんだが、その程度の衝撃でヘイローの保護がある生徒を戦闘不能にまで追い込むことはできない。痛みやめまいで数秒足止めできればいい方だろう。
しかし、この行動の狙いは攻撃ではなく吹き飛ばしの方にあった。つまりは動き回るためのスペースを確保したかったのだ。
そして、次の瞬間。
グンッ、と小柄な体が沈みこむように踏み込まれたかと思えば、その桃色の姿は掻き消えていた。
一体どこに、と探すイオリがその姿を捉えられたのは、不良の一人が「ぐぁっ」と声を出したからであった。
まるで手品のように、いつの間にか彼女は中列付近にいたMGを抱えたスケバンの懐にまで潜り込んでおり、そしてほぼ零距離で右手に構えたSGを撃ち放っていたのだ。
「早っ!?」
距離のある自分たちでこれだったのだから、不良たちには瞬間移動でもしたように感じられているのではないか。混乱から立ち直っていない思考が、そんなどこか場違いな感想をイオリの脳裏に浮かべた。
しかし、彼女の攻撃はまだ終わらない。
至近距離で散弾をモロに受け一瞬意識が途切れたスケバンの足元で再度踏み込むと、今度は掬い上げるような形で盾が振るわれる。
当然ながら、衝撃から立ち直る前のスケバンがそれを躱せるはずもなく。鈍い音と共に彼女は打ち上げられ、そのまま風紀委員が組んだ防御陣の手前辺りに堕落した。
それを確認もせずに再び踏み込むと、彼女はまた別のMGを装備したスケバンへと襲い掛かる。そんな焼き直しのような光景が繰り返される事6度、ようやく襲撃者たちが再起動を果たした。
「なんっだコイt────」
「よっと」
「囲め! 囲んで撃t────」
「ほいさっと」
しかし、声を出した生徒から優先的に狙われるせいで襲撃者たちの混乱が治まることは無い。
烏合の衆と呼んでも差し支えの無い不良たちから意思疎通の手段を奪っているのだから、それも当然のことだろう。
さらには、これまで殴打の武器として使われていた盾が展開されることでその真価を発揮し始める。
小柄な体躯を覆い隠せるサイズの盾、その防御力は考えるまでも無いだろう。
さらにはそれを即席の目くらましとして利用し、彼女は奇襲を繰り返す。
SG相手に懐にまで潜り込まれればどうなるか。キヴォトスで生活する上で方程式を習うよりも早く覚えるソレが、響く銃声と共に何度も繰り広げられた。
どうにか距離を取ろうにも、SRによる遠距離攻撃はまるで未来でも読んでいるかのように射線上に置かれた盾によって防がれ。
SMGは照準を定める間もなく接近され、振るわれるSGの銃身によってあらぬ方向へ銃口が逸らされたかと思えば、次の瞬間には相手の得物だけが照準を合わせており。
弾幕によって足を止めようと思っても、頼みの綱であるMG持ちの生徒は序盤に優先的に狙われていたのもあって大した効果を発揮しない。
まさしく殲滅、あるいは蹂躙と呼べる惨状である。
猫のようにしなやかに、然れど鋭さを兼ね備えた彼女の動きはまさしく“ゲリラ戦”を体現したかのよう。理性を削られ冷静さを欠いたスケバンたちでは彼女の動きに付いていけず、その被害を大きくするばかりであったのだった。
さらには、アコが彼女を小鳥遊ホシノだと……つまりは本日到着予定だったシャーレからの増援であると確認した事で、風紀委員会も機能を取り戻し。
暗雲が立ち込めつつあった戦況はどこへ行ったのやら。瞬く間に襲撃を仕掛けた生徒たちは拘束されたのだった。
────────
時はしばらく経過し、風紀委員会本部の応接間にて。
「まずはあなたの助力に感謝を、小鳥遊ホシノ。風紀委員会の代表としてお礼を言わせてもらうわ」
「うへ、おじさんとしてはそんなに畏まらないでもらえる方がありがたいかな~。そのためにここに来たわけだし、別に大した手間でもなかったしね」
市街地で発生した暴動の鎮圧から帰還した空崎ヒナと、彼女の斜め後ろに補佐として控える天羽アコ。その二名が、対面に座る桃色の少女へと礼を述べていた。
もちろんと言うべきか、この生徒はシャーレからの助っ人としてゲヘナに出向いてきた小鳥遊ホシノである。
さて、そんな彼女であったが。
紫を基調として上品に整えられた室内と一目で高いと分かる座り心地の良いチェアという、普段生活しているアビドスでは滅多に見られない空間に絶妙な居心地の悪さを感じているのが今の状態であった。
そんな状態でのヒナからの格式張った礼というわけで辞退しようとするホシノだが、しかし今回はシャーレと風紀委員会という組織が絡む話でもある。
責任感が強く、そしてホシノに憧れであったりを向ける風紀委員長が譲るわけも無く。その頑なな姿勢に渋々といった形で彼女はその礼を受け取ったのだった。
とはいえ、
「とりあえずお礼は受け取るけどさ……このままずっと堅苦しいままだったらおじさん息が詰まっちゃいそうだよ。もうちょっと崩せない?」
なんてちゃっかり要求する辺り、彼女も抜け目が無いのだが。
なお、その返事は“善処する”であったそうな。若干ワーカホリックのきらいがある風紀委員長には、ほとんど初対面・まだ仕事での関係しか築けていない・相手がホシノである、というほぼ役満の状態でその要望を叶えるのは難しかったのだろう。
閑話休題。
「それじゃ、そろそろ本題に入る?」
「そうさせてもらえればありがた…………そうさせてもらいたいわ。アコ、資料はできてる?」
「本日分の更新はデータベース上でも完了してませんが、昨夜までのデータをまとめたものなら。よろしいでしょうか」
「それで構わないわ」
そうしてアコから手渡された資料を基に、ヒナがここまでの詳しい
「不良生徒たちによる暴動が増加し始めたのはおおよそ一月ほど前から。とはいっても初期の頃は少し違和感を感じる程度で、一日の事件量が1・2件増えた程度だった」
「たしかに、“一日当たりの事件数”のグラフも最初の一週間ぐらいは落ち着いてるね」
合いの手を入れる事で理解を示すホシノ。
しかし、その内心は元々の事件量が多すぎるせいで「この自治区…………何か変?」という疑念で埋め尽くされつつあった。
どうやら先生とリオだけでなく、ホシノもゲヘナの洗礼を────軽くではあるが────浴びたようである。
「話が変わり始めたのが、その翌週。まず前週に比べて事件数が1.3倍にまで増加した。そして何よりも、小競り合い程度の規模の小さな事件が減少し、代わりに不良たちが徒党を組んでどこかへ襲撃を仕掛けるといった大規模な暴動の数が増え始めた」
「噂ではありますが、自治区内で黒ずくめの不審者を見たという話を聞くようになったのも、たしかこの頃だったはずです」
今度は補足としてアコが合いの手を入れる。
対するホシノは、その言葉を聞いて少しだけ身に纏う雰囲気を変容させた。
とはいえそれはほんの少し、気持ち程度のものであり。同時にごく短時間のものであったため、発言者であるアコは気付かずに説明の主導権をヒナへと返上する。
ホシノ自身もまた、意識してのものかは不明だが黒ずくめの誰かへ関心を示すことはなく。続きを聞く姿勢を保ったままであるため、会議は何の問題もなく進行するはずであった。
はず、であった。
問題があったのは、説明を行っていた人物。つまり、他ならないヒナであった。
(予想していたよりも……随分反応が薄い。あるいは、抑え込めている? それに、少しだけ出た雰囲気も怒りや憎悪のようなものではなかった。どちらかと言えば……疑念?)
風紀委員会の諜報力は高い。人口も面積も大規模なゲヘナ全域の治安を一手に担っているのだから、高くならざるを得ない部分もあるのだろうが。
何が言いたいのかと言えば。対面の彼女とブラックマーケットで話題になっている黒ずくめの怪人、その両者の間に何かしらの因縁がある事は風紀委員会の中核メンバーには既に周知してあるという事だ。
不快な思いをさせないための事前準備である。
それ故アコはただの情報として補足を入れ、それ以上に踏み込んだ話はしないように説明を切り上げた。
ここまでが『風紀委員会』としての話である。
そして、ここからは『空崎ヒナ』個人としての話であるのだが。
彼女はホシノとマクガフィンの間にある因縁というのは2年前の一件…………すなわち、記録上アビドス最後の生徒会長である生徒が倒れた事件と関わりがあるのではないか、と推測していた。
十分な材料もない半ば直感じみた推論であるためこの予測は彼女の胸の中だけに留められていたのだが、少なくとも両者の間にある因縁は並々ならないものであるというのは彼女は確信していた。
そうでなければ、先のミレニアムでの超規模の異変に彼女の姿があったことに説明が付かないからだ。
そんなわけで、説明中に黒ずくめの人物に関する噂には触れざるを得ないが、そこでホシノが大きな反応を示すことやその程度によっては一旦説明を中止する必要性までヒナは考慮していた。
しかし、そんな予想に反して彼女が見せたのはほんの僅かな反応のみ。
(やっぱり、小鳥遊ホシノは凄い。私なんかじゃ到底真似できないぐらいに)
肉体と精神、その両方の疲れも相まってか。
彼女は思わずそんな事を考えてしまった。
普段は意識しないようにしている、溜め込んだ不満の数々。
どうして私だけが。疲れた。もう辞めてしまいたい。私だって、私だって────
不意に現れては引きずり込むように足を掴み、動きを止めるように圧し掛かってくるソレら。
そんな事を考えてしまう自分が嫌いで、けれどそれを思っているのが本心である事もまた事実で。そんな不満や自己嫌悪が、憧れを向ける彼女を前にしたことで溢れ出し────────
「…………員長? 委員長? どうかしましたか?」
いつの間にか閉じていた瞼を開けば、目の前には心配そうにこちらを覗き込むアコの姿が。少し奥へ目を向ければ、対面のホシノもまた心配そうに自分を見つめている。
(やっぱり私、ダメだな……)
またもや浮かび始めた自己嫌悪を軽く首を振ることで押し込め直すと、白髪の少女は口を開く。
「ごめんなさい、少しぼんやりしていたわ……続きを始めましょう。そこからは見てもらえば分かるように、事件数が指数関数的に増加するばかりで────」
普段通りを意識して振る舞う少女。
しかし、その身に圧し掛かった重さはまるで薄れず、だというのに心の中の黒く粘ついたモノは存在感を濃くするばかり。一度気付いてしまったそれはもう止まらない。
必死に不平不満も自己嫌悪も呑み込もうとするが、そうする度に自分が
そんな彼女を、橙と青の瞳は静かに眺めていた。
────────
空に広がる光輪と星々が瞬く夜。
時計の短針が左下を通過し始めた頃、先生たちがゲヘナに滞在中泊まる予定のホテルにて。
「結局今日は風紀委員会の方に行けなくてごめんね、ホシノ」
「まあ、そっちも色々あったみたいだし。しょうがなかったんじゃない? ね、リオちゃん」
「…………色々とあった事は否定できないわね、確かに」
ゲヘナ出向組────つまり先生、ホシノ、リオの三人は情報共有や打ち合わせのために先生の部屋に集まっていた。
とはいえその雰囲気は堅苦しいものではなく、むしろ和気藹々と表現する方が近しいものであったが。
事実、それぞれの傍らにはペットボトルの飲み物が立っており、机の中央に置かれた個包装のクッキーも既にいくつかが空き袋へと姿を変えていた。
そんな中、まずは万魔殿側からの報告という訳で先生が口を開く。
「とりあえず、出発前にマコト────ゲヘナの生徒会長だね。彼女が暴走してカイザーコーポレーションへ喧嘩を売ろうとしている、というのは確認したと思うけど」
「だったね。実際のところはどうだったの?」
「……まぁ、概ねその通りだったね」
少しばかり笑顔の種類を苦笑いに変化させながら、先生はそう答えた。見れば、リオの表情も何とも言えないものになっている。
そのことにホシノが首を傾げていると、万魔殿に向かっていた二人が詳細について語り始めた。
「詳しく話すと、マコトはカイザーがゲヘナで妙な動きをしているって情報を掴んでいたみたいで」
「それで、その情報を使って脅せばカイザーコーポレーションを傘下に入れられると考えた…………らしいわ」
「それはまた、尖った子だね……」
なんとなくゲヘナ学園の傾向を理解したホシノが、二人と同じく表情を微妙なものに変化させる。
「諜報能力は凄く高いみたいなんだけどね……実際、他の誰も気付いていなかったカイザーの動きを掴んでいたわけだし。それも、薬物のようなものをばら撒いてるっていう重大な情報を」
「それはそうなのよね…………あれで詰めが甘い部分であったりが無かったら間違いなく優秀な生徒会長だったのに」
「詰めが甘い部分?」
とても勿体ないものを見たようにボヤくリオ。
その中に気になるフレーズがあったホシノが問い返すと、今度は非常に言い辛そうにしながらも先生が答える。マコトの最も残念な部分を。
「どうやら、証拠は押さえてなかったみたいで。それに、カイザーから反撃されることは考えてなかったらしくてね…………」
「それは……なるほどね…………」
カイザーコーポレーションと浅くない因縁があるホシノとしては、確かにそれでは詰めが甘いと言わざるを得なかった。
連中は先生とはまた別種の『大人』としての戦い方をしてくるのだ。常に裏を疑うぐらいでちょうど良いというのが、今のホシノの考えであった。
「まあ、そんなわけで。一先ずはより詳しい情報であったり物的証拠であったりを押さえるのを目標にして行動する、って感じで会議は終わったかな」
「なるほどね~。それじゃ、次はおじさんからかな?」
そう言うと、隣に置いたバッグの中をゴソゴソと漁るホシノ。数秒後、顔を上げた彼女の手には左上をホチキスで止められた紙の束が握られていた。
「アコちゃんに頼んで追加で貰っといたんだ。特に重要な部分については軽くマーカーを入れといたよ」
「これは……上手くまとめられているわね。助かるわ」
「ありがとう、ホシノ」
手渡した資料に二人が軽く目を通した事を確認すると、ヒナから聞いた話を────昼間にあった風紀委員会襲撃事件も含めて────伝えるホシノ。
やはりと言うべきか、その反応は思わしくないモノであった。
「風紀委員会の方はかなり深刻そうだね……」
「中核のメンバーはまだ大丈夫そうだったけど、普通の子たちの士気はかなり悪くなってたね。対症療法じゃあんまり効果が無さそうなレベルだったし、早い事原因から解決しないとマズいと思う」
「その……ちょっといいかしら」
と、そんな会話に、珍しく困惑の色を露わにしながらリオが割り込む。
「どしたの?」
「いえ、一日当たりの事件数のグラフを見ていると、ここ数日は50件を下回っている日が無い気がするのだけれど…………風紀委員長は休めているの?」
ゲヘナ風紀委員会は委員長の負担が非常に大きくなっている、という情報を持っていたからこその心配。
そんな疑問に対する答えは、困ったように眉を落としながらの言葉であった。
「そうなんだよね。それについては後で触れようと思ってたんだけど……委員長ちゃん、なーんか追い詰められてそうな雰囲気だったんだよね…………」
「ヒナが?」
「うん。目の下に隈もできてたし、相当疲れも溜まってそうだった。できれば先生も気にかけといてあげてくれると助かるかな」
「分かった」
深い付き合いではないとはいえ、彼女の責任感の強さは簡単に読み取れるもの。それ故、先生の返事は素直な了承であった。
そんなこんなで時は進み。
カイザーが薬物をばら撒いている事と暴れる生徒が増加している事に繋がりがあるのではないか、という『もうこれが真相でいいんじゃない?』という推論が出たりもしながら、途中から会議はただの雑談会に変化し。
「遅くまでお邪魔してしまったわね、ごめんなさい」
「それじゃ……先生、おやすみ~」
「二人とも、おやすみ」
なんて会話と共にホシノとリオが部屋を出る頃には、時計の短針は左上へと進み始めていたのだった。
こんな時間でも背筋が立ったままのリオと、眠くなったのかいつも以上の猫背で右目をこすっているホシノ。
そんな対照的な背中を見送ると、室内に戻った先生は軽く息を吐いた。
軽く伸びと脱力を繰り返すことで、意識をリラックスさせる。
まだいくつかやるべき仕事が残っているが、それにしたって気を張り過ぎていたらむしろ能率が落ちる。
そんな先生の視界の端に、ホシノからもらった資料が映り込んだ。
開かれたページに記されていたのは、ゲヘナ自治区の各所で目撃情報が上がっている『黒ずくめの怪人』について。
「マクガフィン…………」
アビドス、ミレニアムに続いて、異変の渦中にあるゲヘナにも出現した……可能性が高い、彼。
まだ確定していないとはいえ、もしこの人物が彼ならば…………
敵か味方か。未だに姿を捉えられない青年を思いながら、先生の夜は更ける。
その疑念と同じように、深く、深くまで。
ホシノは守りよりも攻めの方が絶対強い(ド偏見)
って書こうと思ってたら公式から供給されて「わァ……」ってなったっていう。
でもフルアーマーホシノはかっこいいと思いました、まる
最後になりましたが、黒耀 さん、aaaaaiii さん、けぷひぇん さん、疑心演舞 さん、裏路地の自称9級フィクサー さん、黎兎 さん、鯛羅丹 さん、評価付与ありがとうございました。