「ここが……風紀委員会本部」
「ありゃ? 先生なら一回ぐらいは来たことあるのかなって思ってたんだけど。初めてだったの?」
「実はね」
なんて会話をするのは、桃色の髪と眠たげに閉じられた瞳が特徴的な少女と、スーツとその上に羽織った白地に青の線の差された外套が特徴的な長身の大人。
すなわち、先生とホシノの二人である。
万魔殿とは異なり、派手さよりも機能性や厳粛さが優先されたデザインの風紀委員会本部。
それを前にして思わずといった具合に零れた言葉であったが、実のところそこには二重の意味が込められていた。
一つはシンプルな感嘆の意。
分かりやすく圧倒されるような華やかさではなく、その荘厳さで呑み込むような美しさとでも表現しようか。そんな風景に対する感想である。
そしてもう一つが。
疲れ切った体へ鞭打つように本部へと入る風紀委員の生徒を見ての、無意識での言葉であった。
昨夜ホシノに言われた『対症療法じゃあんまり効果が無さそう』という言葉が、重く現実感を伴ってその身へ圧し掛かる。
はたして、自分はどれだけこの子たちの力になってあげられるだろうか。そんな弱気な思考が浮かびそうになるが、両頬を叩くことで切り替える。
そんな事を考える暇があればさっさと行動に移すべきだし、そもそもこれまでだって最初から解決が見えていた案件なんて一つも無かった。
光明の見えない深刻な状況ばかりだった中で自分がここまで来れたのは、何よりも生徒たちが『それでも』と前を向いていたから。
自分一人でできた事など高が知れている。精々が、拒絶されようと諦めずに────それこそ、何度であろうと手を差し伸べることぐらいだ。
だからこそ、私は私の為すべき事を。
幾度目かも分からない覚悟と共に顔を上げた先生。
それとほとんど時を同じくして、風紀委員会本部から耳を刺すかのような警報音が。
「市街地で暴動!? それも今度はメブキモールで立て籠もりだって!?」
「もう、勘弁してよ!」
同時に、端末に届いた伝令を受けて近くの風紀委員が半ば投げやりに叫ぶ。
こうして。決意を新たにした先生に応えるように、新たな試練が降りかかったのだった。
────────
ゲヘナでは……というか、キヴォトスでは事件や犯罪というのはあまり珍しくない。銃火器という実行力が手軽に得られるのだから、それも当然だろう。
そもそもキヴォトスの治安自体が良いのかと聞かれたら首を傾げる部分があるし、住民の倫理観にしたって言葉を濁さざるを得ない部分が多々ある。
もちろん、まともな住民がいないわけではない。
わけではないのだが……まあ、ヤバい奴のレベルが高すぎるのが悪い。伊達に銀行強盗なんてワードが簡単に出てくる世界ではないのだ。
しかし、そんな中で人質を取った犯罪や立て籠もり事件というのは案外数が少なかった。
そもそもの話として、人質を取って一所に留まるメリットがキヴォトスでは薄いのだ。
生徒はヘイローの保護がある分、多少の攻撃は『痛い』のレベルで済ませてしまえる。場合によっては、人質に取ろうとしたら逆襲されてコテンパンにされました、なんて事まで有り得てしまう。
獣人やオートマタの住民だって、生徒ほどではないにしろそこそこの耐久力を持っているし、護身として爆弾などを携帯している事も多い。というか、それぐらいしない奴は不用心だと呆れられるだろう。
一応は先生だって────ほとんど飾りではあるものの────シャーレの刻印入りの自動拳銃を所持しているぐらいなのだし。
よって。人質を取ること自体が困難なうえ、よしんば取れたとしても本来の役割…………つまりは『自分に手を出そうとすれば人質を害すると示すことで、相手に対する牽制を行う』という狙いを実現するのも困難だという事で、キヴォトスで人質を取った犯罪が行われることは稀なのだ。
もちろん、全く無いというわけではないが……基本的にそこまで考えを巡らせられない人間によるお粗末な犯行となることが大半のパターンであった。
人質を取って何かを要求するなんて回りくどい手を打つなら自分で強盗でもすればいい、という発想に行き付いている可能性もあったが。
また、先に言ったように何らかの犯罪を行った後に移動せずにいる、ということにもメリットがほとんど存在しない。
むしろさっさと移動してしまう方がよっぽど有効であった。
なぜならば。
一箇所に留まるという事は、相手が強力な手段を準備する危険性を上げるという事と等価であるからだ。
基本的に、どんな自治区においても────もちろん、強さの程度であったり強みの方向性であったりに差はあるが────“ゲヘナの風紀委員長”であったり“トリニティの歩く戦略兵器”といった所謂『強い』と呼ばれる生徒が一人は存在する。
いわば一種の抑止力とでも表現しようか。そういった生徒が在籍しているのだ。
一箇所に留まって時間を稼ぐ、というのはこういった手合いを呼び寄せるリスクを引き上げる事になる。
そんなわけで、キヴォトスでは立て籠もり事件というのは中々発生し辛く、発生したとしても
それがどういう事を意味するのか。すなわち────
「くそっ、どうやればいいんだ!?」
事件解決のためのノウハウが一切存在しないという事である。
苛立たし気にイオリが呟くのを耳にしながら、先生は静かに思考を回していた。
生徒による暴動が目立っていたここ最近では珍しく、今回の事件の下手人はマフィア組織。
裏社会では『アランチーノファミリー』なる組織が有名らしいが、今回はそのアランチーノファミリーに対抗しようとする新進気鋭の『スープリ・ファミリー』という名の組織なのだとか。
そして、その組織が要求しているのが身代金500万円とアランチーノファミリーへの攻撃。
従わなければ人質に特殊な薬品を投与する、とも言っていたか。
先に述べた前提知識は先生にも既知の情報である。
だからこそ、抱いた感想は『やられた』というものであった。
生徒の肉体は頑丈だが、それは飽くまでも身体表面……外部からの攻撃に対してのものである。
何が言いたいのかといえば、人間の機能に着目した────例えば、水に沈めることで窒息させるというような────攻撃はヘイローの加護を貫通するのだ。
もちろん、無抵抗で水に沈められる人間などいないため、その段階にまで準備する事自体が困難ではあるのだが。
とにかく。こうして下手人が脅しとして“特殊な薬品”を提示したという事は、おそらくそれは肉体を内側から破壊するような代物なのだろう。
少なくとも、向こうがここまで強気になれるだけの効力は確実に存在すると予想できる。
となると、こちら側は迂闊に動くことができなくなってしまう。人質が正しく人質として機能しているからだ。
風紀委員の生徒たちが苛立たし気にショッピングモールを睨み付けているのは、そんなわけであった。
さて。『やられた』と苦々しく思っていた先生であったが、実のところ既に手は打った後であり、そして今はその結果を待っている最中なのであった。
『先生! AMASの起動および同期、完了しました! いつでも動かせます!』
それこそが、リオに渡されていた小型AMASをシッテムの箱と同期させてほしいというアロナへの要請。
より正確に言えば、小型AMASをアロナの制御化で動かせるようにし、また得られた情報をシッテムの箱を中継してスクリーンへ映写できるようにしてほしいというモノ。
これが完了したという事は、状況が大きく変わるという事を意味していた。
何故ならば、敵に気取られずにモール内の情報を収集できる手段が得られたからである。
さて、そんなわけで建物側面の排気口から侵入したAMAS。
最上階……つまりは3Fから順繰りに映像を送ってくれた彼であったが、しかしその動きは2Fの段階で止めさせられてしまった。
どうやら敵は正面入り口から繋がる大きく開けた吹き抜けに人質を纏めているらしく、そのせいで1Fに集まっている人員が多くなっているので、そこを探索するには発見されるリスクが高すぎるためである。
とはいえ、それでも小さな偵察兵が得た情報はかなりのもの。
例えば、敵の正確な人数とその配置、それに装備類など。
ミレニアムの技術力が注ぎ込まれたAMASにはカメラだけでなく複数のセンサも搭載してある。まさかそんなハイエンドレベルの機械が投入されているとは露にも思っていないマフィア達は、無警戒にそれら重要な情報を丸裸にされていた。
となれば、踊りもしていなかった会議も大きく動き始める。
「1Fの防衛はかなり手厚いですね……正面・裏口だけでなく非常口付近まで固められていますし」
「反面、2F・3Fは手薄になっているように見えますね」
「配備されてる人員は巡回が各階3人だけ、それに装備もそこまでだしね。これぐらいなら私一人でも鎮圧できそう」
「問題は定期的に通信機で連絡しているところね。うまく処理できたとしても、そのせいで1Fの本隊に悟られてしまう」
上からアコ、チナツ、イオリ、ヒナの順で交わされる意見。
風紀委員会の中枢メンバーとして積んできた膨大な経験もあってか、その分析はどれも正確なものばかり。
続いてテロリストの所持しているという薬品は投薬までにどれくらいの手間がかかるのかを議論し始めた4人の言葉を聞きながら、先生は先生でこの事件をどう攻略するべきか考えていた。
やはりネックになるのは各階に配置された連絡員だろう。
1Fに敵の本隊がいる以上、主戦場はそこになる可能性が高い。となると、この連絡員を放置しておくとコチラは上階から一方的に狙い撃たれることになる。
しかしそれを嫌って先に処理すれば、連絡が途絶してしまうため敵の警戒を強めてしまう。最悪のケースは、こちらの攻撃に気付いたテロリストによって人質に手を上げられること。
その点を無視しても連絡員の処理には敵に気付かれずモール内にまで侵入し、さらに敵に気取られないよう静かに、そして素早く攻撃する必要がある。
かなりの難易度であることは想像に難くない。
と、そこで。
AMASのカメラ越しに通信機へ何かを語る連絡員を見て、とあるアイデアが閃かれる。
「ね、アロナ。あの通信機、ハッキングして定期連絡を偽装する事とかってできない?」
『通信機、ですか? うーん……仕組み自体は難しくないものですし、ハッキングは可能ですけど…………声については一度サンプリングしないと厳しいかと。それと、ハッキングにはAMASを中継機にする必要もあると思います』
「十分すぎるぐらいだよ!」
少し申し訳なさそうに眉を下げるアロナに、ポンポンと手を置きながら先生はにっこりと笑いかける。
これで連絡員を処理した後の手は作れた。
次は、誰を送り込むかだが……。
これについては、既に目途はついていた。
「ホシノ、連絡員の処理をお願いしてもいいかな」
「やっぱり、私になるよね~」
「申し訳なくはあるけど……ホシノが一番適任だし、それに君なら何の不安も無く任せられる」
「うへ、そこまで言われたらおじさんもやる気出ちゃうなあ」
この場でも一二を争う強者であり、そしてゲヘナの生徒でないために確実にノーマークの生徒。
隠密・奇襲をする上でこれ以上の適任はいないだろう。
ホシノもそれは分かっていたようで、先生の要請は特に否も無く受け入れられたのだった。
「さて。改めて、作戦の最終確認といこう」
その後、先生の案も含めた諸々の協議を終え、いよいよ行動を開始する直前となった対策本部。
そこでは、先生の声のもと作戦の最終確認が行われていた。
「まずはホシノが先に潜入することで巡回中の連絡員を排除する。向こうの定期連絡に関しては私が偽装できるから、そこについては心配しないで」
「うん」
風紀委員会から提供された高性能サプレッサー付ハンドガンの調子を確認しながら、ホシノが小さく返事をする。
キヴォトスでは滅多にない命に関わる案件、そして普段とは違う得物ということもあってか、その表情はいつもの(≣ω≣)といったのほほんとしたものではなく引き締められた真剣なもの。
また、先生の手元のシッテムの箱では、既に声のサンプリングを終えたアロナが『むん!』と握りこぶしを作って気合を入れていた。
「次に。ヒナが向こうとの取り引きに応じるフリをすることで気を引き、その間にイオリの率いる人質救出部隊が裏へと回り込む。敵に気付かれるとマズいから、ここでの動きはできる限り迅速にお願い」
「ええ」
「分かった」
続いて、名を呼ばれたヒナとイオリが静かに答える。
両者とも風紀委員として顔が知られているため、今回はギリギリまで姿を見せた状態で待機しておかなければならない。その事に歯痒さを感じながらも、しかし自らの為すべき事を行おうとする彼女たちの気合は十分すぎるほど。
きっと普段以上のパフォーマンスを見せてくれるだろうと思わせてくれるものであった。
それに小さく頷きを返すと、先生は作戦の最終段階を確認する。
「交渉で敵本隊が分離したタイミングで、ホシノが上階から奇襲……できれば吹き抜けの非常口付近を優先してお願い。そして、その混乱に乗じてイオリたち人質救出部隊が非常口から突入、人質の安全を確保する。分裂したもう片方の敵本隊の鎮圧はヒナの部隊に担当してもらう」
「りょーかい」
「任せてくれ、先生」
「分かったわ」
続いて、先ほど名前が出なかった二人の方へ顔を向ける先生。
「アコはここに残って私と一緒に指揮の補助を。チナツはイオリと同行して、救出した人質にされていた人たちの安全確認をしてほしい。頼めるかな?」
「お任せください」
「了解しました」
それぞれ簡潔ながらも確かな決意をこめて答えるアコとチナツに再度頷くと、最後の掛け声として先生は口を開く。
「みんな。分かってるとは思うけど、今回の事件は危険度が極めて高いテロだ。人質の安全のため、そして今後同じような模倣犯が現れないようにするためにも…………迅速に、そして徹底的に解決しなくちゃいけない」
「だからこそ────頑張ろう」
『はい!』
全員の声が一つになって響き、そしてそれぞれに行動を開始する。
《メブキモール立て籠もり事件》。後にそう呼ばれる事となる事件の攻略が、始まった。
《メブキモール・屋上》
付近の建物の屋上から飛び移ることで、メブキモールの屋上に着地したホシノ。
制服に付いた埃を軽く払いながらも耳を澄ませるが、彼女の鼓膜を震わせるのは環境音のみ。
(気付かれた様子はなし、と。とりあえず潜入はできそうかな。……にしても、屋上に見張りを置かないのは不用心だよね。ま、想定できなかったんだろうけど)
そんな事を思いながらも、静かにハンドガンを構えながらホシノは出入口へと向かう。
屋上は一般に開放されているわけではないため鍵は閉まっているかもしれないと予想していたが、しかしその考えに反して扉は抵抗なく開かれた。
(ちょっとうまく行きすぎてる? なーんか、不気味だなぁ……)
得体の知れない妙な感覚に襲われながらも、3Fへと繋がる階段へと足を踏み出す。
自分が全ての作戦の起点になっている以上、足を止めている余裕はないからだ。
極度の緊張と僅かな焦り。
常よりも想定外へと向ける意識が削がれた彼女は、物陰で風にはためいた白のガラベーヤと黒の外套の裾に気付かずに、屋上と階段を繋ぐ階段の扉を閉ざしたのだった。
「まったく、迂闊というか手が焼けると言いますか…………私たちが先に排除してなかったらどうなっていたか」
「まあ、まだ学生で子どもなんだ。そう言ってやるな。それじゃ……偽装の方は頼んだぞ」
「ええ、後は手筈通りに。回収、忘れないでくださいよ?」
「はいよ」
《メブキモール3F・家具量販店》
3Fにあった家具量販店でアロナの制御するAMASと合流したホシノは、クローゼットの陰で息を潜めながら機を伺っていた。
大きな家具が複数売られているということもあって、この店内は外から死角になる場所が多い。故に、まずはここに敵をおびき寄せて処理しようという魂胆であったのだ。
そうしてじっと待つことおおよそ30秒、巡回中の連絡員が店の前を通りかかる。
配置されている中で最も警戒心が高そうな────つまり、一番早く落としておきたい敵。事前に得ていた巡回ルートから、彼が最初に通りかかることは計算していた。
そして、既に店内に誘い込むための仕込みも完了している。
ガタン、と硬い音が家具店の中に響き渡った。
敵がちょうど反対を向いていた時に鳴った物音。当然ながら、相手は勢いよく振り返り銃口を店内へ向ける。
しかし、何も居ない。さっきの音が嘘だったように、かすかな気配も感じられない。
その事にむしろ怪しさを覚えた彼は、自分がおびき寄せられているなどと露にも思わずに家具店へと足を踏み入れた。
そうして歩くこと数歩、音源だと予想される勉強机の辺りへと辿り着いた辺りで。
セットになっている椅子の足に、ワイヤーが繋げられているのが目に入った。
「しまっ────」
事ここに至ってトラップだと気付いた彼であったが、それは少しばかり遅かった。
視界の端に桃色のナニカが映ったかと思えば、顎に走る強い衝撃。
ハンドガンで殴られたのだと思考が追いつく前に、無防備になった喉元に一発。
さらに、流れるように足を刈られたかと思えば側頭部に何かが突き付けられた感覚。
そのまま何が起こったのかを理解する前に、彼は意識を手放したのだった。
(とりあえずは一人。異変に気付かれる前に、他の奴もさっさと処理しないと)
喉元とこめかみ。人体の急所でも代表格と呼べる二か所への攻撃で意識を落とした敵を引きずりながら、しかしホシノの顔に喜びは無い。
まだまだ作戦は始まったばかりであり、さらに言えばここは自分にとって実に都合の良い環境だったからである。
奥まった位置で敵を縛り終えると、ホシノは次のポイントへと移動するのであった。
隣のゲームセンターに置かれたプリクラ機の隙間から覗く、黒い仮面に気付かずに。
『うわー、おっかないですね。あんなの対処できるんですか?』
「俺ならまあ奇襲はされないだろうが……ありゃあ普通の連中は厳しいだろうな」
『やっぱそうなんです?』
「ありゃあ最早アサシンだ」
《メブキモール 2F・楽器店》
ホシノが
(この弾丸……何か、変?)
無力化した敵の武器を奪い、念には念をと没収したやけに厳重に格納されていた予備の弾薬。
“.338ラプアマグナム”という貴重で高価な弾丸だからかと最初は思っていたが、それにしても妙なくらいに徹底的な保管具合である。
ただ貴重な弾丸だというだけで、一発ごとに個別でガラスケースに入れ、さらにそれらを別のケースに纏めるなどという事をするのだろうか。
そんな疑問と共に観察してみて初めて気付けた違和感。
(なんだ……? 何がおかしい? 弾頭……雷管…………違う、普通だ)
気付いた以上は見過ごすわけにはいかない。
そうして観察すること数秒、ようやく違和感の正体が掴まれる。
「表面だ。表面に妙な光沢がある」
そう。
弾丸を構成する金属では出ないような、濡れたような光沢があるのだ。まるで、何か
(……だが。だとしたら、何が原因? 濡れてる……水? そんなわけないな。液体、液……体────っ!)
思い当たった一つの可能性。
敵が声高らかに言っていた、おそらく液体であるソレ。
「薬品?」
口から洩れた予測に答える声は無い。しかし、一度思い至れば繋がる事がちらほらと。
例えば、脅迫として出していた薬はどうやって投薬するつもりだったのかという点。
先生が小型AMASで探査した限り、人質はみな意識を残した状態で手足を縛られていたようだった。つまり生徒たちはヘイローの保護下にあるはず。
その状態の生徒相手にどんな方法を取って投薬するのか、というのは作戦会議から議論されていた。
だが、もしこれが
ラプアマグナムは貫通性の高い銃弾である。当たり所によっては生徒でもかすり傷を受ける程度には、貫通性の高い銃弾なのである。
もちろん、この仮説には薬品が発砲時の熱や衝撃に耐えられて、尚且つかすり傷から侵入しただけでも効力を発揮するほどの毒性を持つ、という複数の条件が必要だ。
しかしそれらの前提がパスされていたとすると、途端にこの弾丸は恐ろしい兵器になる。
特に、被弾に対する危機感が麻痺している生徒相手には。
(一先ず、これは先生に伝えといた方が良いかな…………)
取り越し苦労ならばそれでいい。
けれども、そうではなかったのならば。知らず伝っていた汗を拭いながら、彼女は急いで先生へと連絡を飛ばす。
吹き抜けの対角に位置した占いの館、そこに置かれた水晶玉の奥から覗く不気味な視線に気付かずに。
『おや、どうやら向こうの仕込みに気付いたみたいですよ』
「みたいだな」
『いやー、もしかしたら気付けないんじゃないかってヒヤヒヤしましたよ。…………ところで、マクガフィンさん。もうちょっと隠れる場所他に無かったんですか?』
「しょーがねえだろ、二階は遮蔽が少ないんだから」
『ンフ……いや、占いの館に黒ずくめの不審者って絵面がフフッゲホッ面白過ぎてコッチが困ってるんでアハハハッ』
「…………お前覚えとけよ」
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