【本編完結】黒く濁った罪を背負って   作:RH−

60 / 101
データ収集 ブラックマーケット

「いたぞ、こっちだ!」

「囲め囲め!」

「SRTが相手だとしても、敵は孤立した一小隊だけだ! 補給も増援も無い!」

「物量で圧し潰せ!!」

 

 先生がエイミと共にブラックマーケットへと辿り着いた頃、辺りは喧噪に満ちていた。

 しかし、その喧噪は彼らが予想していた種のものとは異なる。なにせ、それはホドの襲来を前にした浮足立った物ではなく、現在進行形で戦闘が展開されている鉄火場のソレであったのだ。

 

 それも、かなりの規模の。

 

「クッ……犯罪者もどきが鬱陶しいな!!」

「RABBIT2、前に出過ぎです! 下がってください!!」

「分かってる!!」

 

 よくよく目を凝らしてみると、どうやら戦っているのは数人の生徒とマーケットガードの大群らしく。悪態を吐きながらもジリジリと追い詰められている生徒の姿が、視界に映った。

 

 そして、それだけで先生には十分だった。

 

「こっちだ!」

 

 マクガフィンの情報収集などで何度も訪れた結果、不本意ながらも詳しくなってしまったブラックマーケットの裏道。そちらへ誘導するように、子ども達に声を飛ばす。

 何も言わずに駆け出してしまったが、エイミもマーケットガードの妨害に回ってくれていた。

 

「早く!」

 

 迷うそぶりを見せる少女たちに、重ねるように声を投げる。動いているマーケットガードの規模からして、あまりゆっくりはしていられないのだ。

 罠を疑うのは分かるが、早く来てもらわなければ。

 

「RABBIT2、行きましょう」

「なっ、正気か!? あんな怪しい大人に────」

「あの制服、おそらくはシャーレの先生でしょう。癪ではありますが……このままジリ貧になるよりはましです。RABBIT3、RABBIT4も合流を」

 

 小隊長らしい白髪の少女がそう言うと、渋々ながらもう一人の少女も後に続く。おそらく、口ぶりからして他の生徒も一緒に来るのだろう。

 

「エイミ! 逃げるよ!」

「了解」

 

 最後にエイミに声をかけると、先生は駆け出した。

 入り組んだ裏道を次々に渡りながら、なるべく視界を切れるよう道を選び続ける。

 

「第三区画に向かってるぞ! 逃がすなよ!」

 

 が、悲しいかな。

 先生の知識が付け焼刃のソレであるのに対し、本職として比べ物にならない量の知識を持っているのがマーケットガードなのだ。

 

 つまり、時間稼ぎはできても追跡を振り切るまではできないワケである。

 ブラックマーケット内での諍いを日々鎮圧しているのだから、それも当然の話ではあったが。

 

(……さっきから、外に出るための道が悉く塞がれてる。ブラックマーケットからの脱出は厳しいか?)

 

 当初の予定では、追っ手を撒きながら外へと逃げるつもりだったのだが。

 徹底的に先読みされている状況に、先生の首筋を冷や汗が伝う。このままでは、結局はジリ貧になる可能性が高い。

 

 いつの間にか合流して4人になった小隊も、その事を感じ取ったのだろう。覚悟を決めたような表情で、残弾などの確認をしている。

 

 と、そんな時の事だった。

 

「借りはこれでチャラにしてくれよ? 先生」

 

 風に乗せられるように、誰かの声が先生の耳朶を震わせる。

 同時に、右手の方に見える大通りに黒々とした影が着地。マーケットガードへと攻撃を開始する。

 

「なんだ、騒がしいと思ったら……鬼ごっこたぁ面白そうな事やってるじゃねぇか。俺も入れろよ、なぁ

「な、マクガフィン!? どこから────」

「ヒッ、止め────」

 

 ジリジリと自分たちを追い詰めていたのが嘘のように、逃げ腰になるマーケットガードたち。

 さっきまでよりも数段激しい戦闘……あるいは蹂躙が始まった。

 

「────っ、今のうちにブラックマーケットを脱出するよ」

「うん、それが良さそうだね」

 

 すぐそこにいる彼に後ろ髪を引かれながらも、躊躇を振り切って足を動かす。

 返答はエイミのものだけであったが、4人組も否やはないようで、大通りの戦闘を気にしながらも続くのが視界に映る。

 

 こうして、一同はブラックマーケットを抜け出せたのだった。

 

 

────────

 

「それで……君たちがなんでマーケットガードと戦っていたのか、聞いていいかい?」

 

 場所を移し、乱立する廃墟群の一つの中で。

 先生は、目の前の『私、あなたを好ましく思ったりはしてません』と表情に書いてある4人組の少女へと質問していた。

 

「…………」

「えーっと……」

 

 沈黙。

 質問への回答はせずに、ジッと見定めるような視線を少女たちは先生へ向ける。

 

 そして────

 

「シャーレの先生、ですね。……助けていただいたことは感謝しています。ですが、それとこれとは別の話かと。あくまでも私たちの問題ですので」

 

 数秒ほどそうした後、小隊長らしき白髪の少女が吐き捨てるように口を開いた。

 

「そーそー。お利口さんでつまんない大人になんかもう二度と会わないだろうし」

「そうだそうだ! これは私たちSRTの問題なんだ!」

 

 それに続くように、丸眼鏡をかけたグレージュの髪の少女と鉄帽を被った灰紫の髪の少女が声を上げる。

 威嚇をする小動物を思わせるその刺々しい態度からは、やはり好意的な色は見付けられない。

 

 しかし、先生はその返答の中に気になる単語を一つ確認する。

 すなわち、“SRT”。口ぶりからして、少女たちの所属校だろう。

 

「SRT……」

 

 どうやらそこに食いついたのは先生だけではなかったようで、傍らに立つエイミも得心が言ったように呟く。同時に、また別の疑問が浮かんだような雰囲気でもあったが。

 

「サキ……」

「あーあ、何やってんの」

「わ、悪かったよ! その……少し、熱くなりすぎた」

 

 どうやら、ブラフでもなんでもなくボロを出していたらしい。

 となれば、そこに触れるのが得策だろうか。

 

 そう思って、先生は思い切り地雷を踏み抜いてしまった。

 こう、走り幅跳びで地雷原に突っ込んだみたいな感じで。

 

「SRTっていうのが、君たちの所属校なのかい?」

 

 文面だけを取れば、極々一般的な質問である。

 一般的な質問ではあるのだが……如何せん発言者と被質問者の組み合わせが最悪過ぎたワケで。

 

 反応は、中々に劇的であった。

 

「……なるほど、大人だの先生だのと持て囃されているようですが。そうですか」

「シャーレの先生はSRTなんてどうでもいいって事か。まあ、そんなところだろうとは思ってたがな」

「ま、お綺麗に成功してる先生さんには関係無いよねー」

 

 先までの『刺々しさは見えるが一応はフラットと言える態度』とは異なり、明確に『敵対者へ向ける態度』へと振る舞いを変える少女たち。

 気弱そうに周囲を窺っていた黒髪の少女まで含めた全員が先生を睨む場の空気は、ともすれば気温が2・3度ほど下がったのではと思わせるほど冷え切っていた。

 

(これは……何か、やらかしたな)

 

 急変した場の雰囲気から、即座に自身の言葉を振り返る先生。しかし、やはりと言うべきか何がマズかったのかが分からない。

 そもそも、必要な知識を持っていない以上は仕方のない事ではあるのだが。

 

 とはいえ、その態度は更にSRTを刺激する事となる。

 なにせ、彼女たちの視点では、シャーレとは『自分たちが活動できなくなってから現れ、まるで自分たちと取って代わるように複数の自治区で活躍して注目を集めている存在』なのだ。

 

 連邦生徒会長の失踪さえ起きなければ……という思いを抱える少女たちにとって、先の発言からの先生の態度は煽りにしかならない。

 言ってしまえば、『お前たちなど気に留める価値すら無い』と告げられているとも受け取れてしまうからだ。

 

 まあ、とどのつまりは。高校へと進学してから一年も経過していないという未だ未熟さの残る少女たちが冷静さを欠くには、先生の一連の言動は十分すぎたワケである。

 

「あ……」

「それでは、私たちは失礼します。行きましょう」

 

 結局、先生が何かを言うより先に少女たちは立ち去ってしまったのだった。

 

 

 

 風が物寂しく吹き抜ける廃墟の一室。

 何がSRTの少女たちの機嫌を損ねたのか分からず呆然とする先生に、エイミが声をかける。

 

「えっと、先生。SRTっていうのはね……」

 

 先の様子から見て、そもそもSRT特殊学園の存在自体を知らないのだろうという予想の下の行動である。

 そして、その予想が当たっているのは説明が進むにつれて悪くなる先生の顔色が証明していた。

 

「なるほど。そりゃあ怒られるか……」

「うーん、でも、なんで廃校になったはずのSRTの子たちがいるんだろう」

「それは……たしかに」

 

 ようやく状況が掴めた先生とエイミが言葉を交わす。

 疑問に思っていた部分の答えは得られたが、しかしまた別の疑問が生えてしまったぞ、と。

 

「まあ、とりあえずあの子たちにもう一回会いに行くべきかな。謝っておきたいし」

「そうだね────っと、部長から連絡だ」

 

 何はともあれ、一先ずもう一度SRTの4人と接触するべきかと方針を立てた先生たち。しかし、その出鼻を挫くようにエイミの端末が着信音を奏でた。

 どうやら相手はヒマリのようだ。

 

『先生、エイミ! 状況が変わりました!』

「どうしたの、部長」

『ブラックマーケット付近で沈黙していたホドが、再度活性化しました。C&Cに侵食を抑えてもらっていますが、このままでは時間の問題でしょう。先生にはできる限り早く援護に回ってもらいたいのですが……どうやら、そちらも芳しくはないようで』

「ごめん、私が失敗しちゃったんだ」

 

 そう、なぜ先生がエイミと二人で────つまりはC&Cなどの他の生徒を付けずに────ブラックマーケット、つまりはホドの目的地に来ていたのかと言うと、援軍になり得る生徒などがいないか探すためであったのだ。

 というのも、ホドはインベイドピラーを通して周囲を侵食する特性上、AMASなどの無人兵器との相性がすこぶる悪いのである。よって、戦闘は極力人の手で行う方が都合が良い。

 

 が、味方になる可能性があった生徒たちは既に立ち去った後。

 

 さらに、マクガフィンが派手にかき回しているブラックマーケットの現状では、他の味方になってくれそうな生徒を探すのもままならないだろう。

 これに関しては、彼ではなく自身の力不足を恨むべき場面ではあるのだが。

 

 ともかく、こうなってはC&Cの援護を優先することも考えるべきかもしれない。

 いや……状況の把握なども考えれば、そちらの方が効果的である可能性が高いまである。

 

 それに────

 

(SRT。教えてもらった理念からして……もしかしたら、あの子たちの目的は)

 

 あの少女たちにも、再び会えるかもしれない。

 

 そう思考を纏めると、先生はホドとC&Cが衝突している場所へと歩を進める。

 

 

 混沌とした舞台は、着実に変化を見せていた。

 

 

────────

 

「チィッ!」

 

 繰り広げられる苛烈な戦闘。その最前線で縦横無尽に駆ける少女が、苛立たし気に舌打ちを零した。

 

「トキ! 調子悪いなら無茶すんな!!」

 

 同じく前線付近で戦う後輩に声を飛ばしながら、橙色の少女は囲まれないように動き続ける。

 ブラックマーケットの中心から離れたその場所、とある青年が隠れ家を構えていた辺りで展開された戦闘は、少女たちが押し込まれる形で推移していた。

 

「申し訳ありません……やはり、アビ・エシュフは少し相性が悪いようです」

「別にンな事は気にしてねえよ! 無茶すんなっ()ってるだけだ!」

「リーダーは素直じゃないですからね。ただあなたがケガしないか心配してるだけなんですよ、トキ」

「は、はぁ!? 誰が言ったそんな事!」

 

 しかし、そこは百戦錬磨のC&Cである。

 多少の苦戦程度で普段のペースを崩すほど、彼女たちもヤワではない。

 

「チッ、にしてもキリが無ぇな」

 

 とはいえ、彼我の物量差に思うところが無いわけではないのだが。

 

 

 

 先生とは別口でブラックマーケットへと向かったC&Cの役割は、ホドの監視といざという時の鎮圧であった。

 ミレニアムの最高戦力の扱いとしてはかなり贅沢な部類ではあったが、ホドの脱走によって齎された被害を思えば必要な事でもある。

 

 インベイドピラーの侵食は、早期に対処しなければ手が付けられなくなるからだ。それこそ、近付く事ですら困難になるほどに。

 

 それこそ────ミレニアムでもトップクラスの頭脳を誇るリオとヒマリが共同で研究してもなお、浸食の中和法の発見に苦戦してしまうほどに。

 

 幸いなことに、自治区を脱走してからのホドは地下を掘り進むだけで地上の侵食はしなかったが、それで油断はできない。

 半ばどうしようもない事が原因ではあるが、ミレニアムの責任問題にまで発展しかねないからだ。

 

 とはいえ、当初はホドが活性化してもそこまでの脅威にはならないだろうと予想されていた。

 そもそもの話として、ホドの特性である“侵食”は、周囲に乗っ取れるような無人兵器が無ければ脅威度が著しく下がるという特徴がある。

 

 なにせ、インベイドピラーによって生徒が受ける影響は“多少神秘を抑制される程度”────言ってしまえば、必殺となる大技を撃ち辛くなる程度でしかないのだ。

 故に、ホドが最も猛威を振るえるのは最新の無人兵器が揃い踏みなミレニアムに他ならない。それ以外の自治区では、手が付けられなくなるより先にインベイドピラーの破壊が間に合う。

 

 それが、対策会議にて挙げられていた分析であった。

 

 だが────これは逆に言えば、浸食が進むまでの時間を稼がれてしまえば結局は手が付けられなくなってしまうという事でもある。

 

 そして、現在。

 活性化したホドが出したインベイドピラーの周囲は、どこから湧いて来たのか白のボディが特徴的なオートマタ兵が護るように固めている事で、着実に侵食の時間を稼がれてしまっていた。

 

 

 

「だあ、めんどくせぇ! どんだけ湧いてくるんだよ!」

「リーダー……これ、違うかも」

 

 無尽蔵に現れ、行く手を阻む壁となるオートマタ兵たち。

 最前線でそれらと戦い続けているネルが、いよいよその鬱陶しさに我慢の限界を迎えはじめた頃、一人の少女が彼女に話しかけた。

 

 C&Cが一人、その人並外れた……というより人智を外れた精度にある直感を持ち味とする、一之瀬アスナである。

 

「多分、これ、あの塔を壊さないと意味がないと思う」

「ああ? そりゃ、どういう……」

『……こちらでも確認した。アスナの言う通りだ、リーダー。こいつら、被弾したらインベイドピラーの所にまで戻って再生してきてる』

 

 続けて、ネルの疑問に答えるように通信機から声が届く。

 送り主は同じくC&Cのメンバーが一人、狙撃手として少し離れた廃ビルの屋上に位置取った角楯カリンである。

 

「再生……? 修理じゃなくてか?」

『自分でも変だとは思うけど……でも、あれは再生って表現するべきだと思う』

 

 そう答える少女の視線の先、スコープ越しに覗く視界では、半壊したオートマタ兵がインベイドピラーから発される光を浴びて機体の傷を癒していた。

 やはり、その光景は“パーツをばらして付け替えて”といった修理ではなく……むしろ“人間が傷を自然治癒で治す”と言う方が近しいモノである。

 

 少なくとも、尋常な機械では起こり得ない現象であろう。

 

 

 

 少女たちには知る由も無い事であったが、これは実はマクガフィン────正確には、デカグラマトン第十一の預言者『ダアト』による影響でホドが獲得した権能である。

 というのも、マクガフィンが再誕を果たした時、デカグラマトンとその預言者たちはpathを通じていくつかのフィードバックを受けていたのだ。

 

 そのフィードバックを受けて限定的に再現された権能こそが、自己再生。

 2年前から現在までの間にマクガフィンが放出し、そして未だ大気中を漂っている膨大な神秘。それを触媒に用いる事で、デカグラマトンは機械の身で人と同じ“治癒”を……修理以外での損傷の回復方法を編み出したのだ。

 

 とはいえ、それはあくまでも()()()な再現……つまりは原本の有する“死者蘇生”には遠く及ばない治癒ではあるのだが。

 しかし、基本が一点物であるデカグラマトンやその預言者にとって、この力は革命的な代物である。

 

 そして、ホドはそれをインベイドピラーを媒介にする事で自身が侵食した存在にまで適応する術を身に付けたのだ。

 今C&Cの目の前で繰り広げられている『倒しても倒してもオートマタ兵が減らない』現象の絡繰りは、そういう事であった。

 

 

 

「って事は……かなりマズくねえか?」

「そうなりますね……」

 

 カリンからの報告を受け、一度前線を下げることで集まった少女たち。

 顔を顰めながらのネルの呟きに、同じく表情を暗い物にしながらアカネが答える。

 

 なにせ、現状は『インベイドピラーを破壊しなければオートマタ兵はほとんど無尽蔵の再生力を有しているが、ピラーの破壊はそのオートマタ兵が壁となって妨害している』という状態なのだ。

 中々に詰んでいる。

 

 もちろん、方法が無いわけではない。

 それこそ、アカネが持ち込んでいる爆弾類を一気に使用すればピラーまでの道はこじ開けられるだろう。あるいは、消耗を度外視するのならばネルやトキも道を切り開けるだろう。

 

 だが、しかし。

 

「問題は、本体が見えてない事ですね」

 

 そう、インベイドピラーやオートマタ兵が現れこそしたものの、未だホドの反応は地下深くに留まったままなのだ。

 大本命であるホドの姿が見えていない以上、リソースを使いすぎるのは悪手以外の何物でもないだろう。

 

 それに、下手に本気を出して刺激した結果、ホドがどんな反応を示すかも予想できない。

 もしミレニアムの時のように方針を逃走に切り替えられてしまえば、かなり困った事になる。そもそもホドの目的が分かっていない以上、今回のように先回りして監視するという事ができるかも怪しいのだ。

 

「だぁあ、めんっどくせぇ!」

 

 さて、どうしたものか。

 解決策を探りながらの硬直状態に、一同がフラストレーションを抱き始めた頃。

 

「誰かは知りませんが……加勢します!」

 

 戦場に、新たな集団が乱入した。

 

 

────────

 

「これは……」

 

 先生たちがヒマリに教えられたC&Cが戦っている辺りへ到着した時、その場は混迷を極めていた。

 

 まず目に付くのは、地面から立ち昇る光の柱と、その辺りの地面から()()()()()機械の触腕たち。

 続けて、光の柱を挟むように並ぶ計2本のインベイドピラーと、その周囲をうじゃうじゃと固めるオートマタ兵の大群が視界に映る。

 最後に、それらを処理してピラーの方へ進もうとするC&Cのメンバーと────困惑、あるいは狼狽している様子のSRTの少女たちを発見。

 

(ん、十分かな)

 

 元々ヒマリから受けていた報告では、戦闘中なのはC&Cだけであり、そしてインベイドピラーは一本だけという話であった。

 そのピラーが二本に増えている事、いつの間にか参戦したらしいSRTの少女たちが消耗した様子である事、ついでにホドが触腕による攻撃をしている事。これらの差異から、おおよその事態は予想できる。

 

(ホドの詳細を知らなかったSRTの子たちが、ピラーが原因だと思って総攻撃。破壊まで事を運んだは良いものの、結果としてホドが本腰を入れ始めた……って感じかな)

 

 ほとんど起きた事象を予想し切った先生は、続けてここから自分はどうするべきかを思考する。

 

 まず、ここまで状況が進んでいるとなれば助力する以外の選択肢は無い。少なくとも、今からブラックマーケットに戻って援軍になってくれそうな生徒を探す……なんていう余裕は残っていないだろう。

 できるとすれば、この騒ぎを聞きつけて生徒の方から来てくれるのを祈る程度だ。

 

 さて、ではここで参戦するとして。

 問題は、どう指揮を執るのかという点だ。あるいは、どちらの集団に対して執るべきか、と表現するべきか。

 

 前提として、指揮の補助に入れる生徒がいない現状では、先生が十全に把握できる人数は6人が限界となる。それ以上は『シッテムの箱』によるアシストから外れる事になるのだ。

 その上で……正直な話、C&Cは様子を見る限り自身の指揮が無くとも問題無さそうに見える。となると、SRTの小隊へ指揮に入る方が戦略的には効果的なのだが。

 

(まあ、無理だよね……)

 

 それができるだけの信頼関係は、自身と彼女たちとの間には存在しない。

 だが、SRTの小隊はかなり動きの精彩を欠いているように見える。おそらく想定外の事態に付いていけていないのだろう。

 

(いざという時は、『大人のカード』も考えておくべきか)

 

 一先ずC&Cの指揮に入るしかないだろうと判断し、懐のカードを確認しながら一歩を踏み出そうとした時。先生に話しかける人物が、現れた。

 

「どうやら……お困りのようですね」

 

 振り返ったそこには、白のガラベーヤを纏った一人の“大人”が立っていたのだった。

 

 




 以前言っていた本作のラストについてですが、アンケート投げることにしました。といってもこれが本当にラストの展開に反映されるかすら不透明ですので、ぜひお気軽に回答してください。

最後になりましたが、出井 さん、ポンコツ太郎 さん、評価付与ありがとうございました!

本作のラストについて

  • 何一つ欠ける事のないハッピーエンド
  • ↑程ご都合主義ではないビターエンド
  • バッドエンドでいいからとにかく曇らせろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。