前話の繋ぎ手に関しては、また別の目論見でRABBIT小隊にアリウス行きを推奨してます。
以下戯言書き。
書く前おれ 今週から週二更新に戻すし次への繋ぎ回だし……ちょっとボリューム落とすかぁ?
結果出力された物 普w段w通wりwのw文w量w
それもこれも不意に浮かんでくるアイデアってのが悪いんだ……!
「さて、この集まりも恒例みたいになりましたが……ひとまず全員揃いましたね。では、始めましょう」
特異現象捜査部の部室に響く、ヒマリの音頭。
光の柱を放つ預言者の鎮圧が終わる度に開催されてきた『振り返りと次への準備会議(仮題)』もこれで三度目────ホド鎮圧の前の物も含めるのならば四度目になるか────と、実に慣れた物である。
しかしながら、やはり今回も少しばかり顔ぶれが変わっている。
前回は天童姉妹とウタハが加わっていたが……ならば今回は何がどう変化したのか。
「あの~……やっぱり私、完全に場違いだと思うんですけど」
「今更ですか? 流石にここまで来て逃がしませんよ?」
「手厳しいですね、明星さん。……ただ、生徒さんと先生さんの会議となるとやっぱり────」
「繋ぎ手さん?」
「アッハイ、ナンデモナイデス」
答えは、戯けるようにヒマリとやり取りをする白ずくめの大人の姿が示していた。
「……さて。どこかのマグロのような大人に出端を挫かれましたが、いい加減会議を始めましょう。今はリオもトキも忙しいんですしね」
「誰がふざけ続けないと死んでしまう大人ですか。勘違いしないでください、私は真面目にしたら死んでしまう大人なんです」
「…………繋ぎ手さん? このミレニアムに咲く一輪の花のような超天才美少女ハッカーと長く話をしたくなるのも分かりますが、流石にふざけ過ぎるようであれば怒りますよ?」
「結局部長からパスしてない?」
「たしかに貴女ほど自己肯定感の塊なお方は、キヴォトス広しと言えど
「で繋ぎ手さんも綺麗にボール受け取ってシュートまで決めてるし」
ツッコミが追い付かなくなってきたのか、やいのやいのと言い合う二人をジト目で眺めるエイミ。
いや、この表情は『疲れたし放っといた方が効率的じゃない?』だろうか。
「……なんというか。仲が良いのね、ヒマリと繋ぎ手さんは」
「はは……ビナー戦でも話す機会が多かったからかな…………」
「おや。調月さん、やきもちですか? ご安心ください、この眼を見ていただけば分かる通り、私はうら若い生徒さんの友情を引き裂くような下劣さは有しておりませんので」
「存在しない物をどう見ろと言うのよ。────あっ」
先生と話していたところに急に飛び火してきた事で思わずツッコんでしまい、遅れて悪手だと気付くリオ。
しかし、気付くのが遅れた時点で分かるように、既に手遅れである。ニタリと笑うように顔を向けると、繋ぎ手は『思ったよりも良いツッコミですね』と言いながらリオも巻き込もうとにじり寄り────
「お客様、お触りは厳禁です」
「あ痛っ」
いつの間にか背後に移動していたトキに、ハリセンでスパンッと良い音を立てられた。
「たた……とまあ、これぐらいでアイスブレイクも十分ですかね。それじゃあ会議を始めましょうか」
「その音頭、既に二回ほど私が入れたんですが……まあいいでしょう。コホン、それでは振り返りという事で」
ようやく真面目な雰囲気に切り替わった繋ぎ手に応じて、ヒマリがビナー鎮圧戦の記録映像を再生する。
どうやらようやく……本当にようやく、振り返りが始まったらしい。
「共有した映像は既にリオも確認しているかと思いますが……ホドやケセドの時とは違い、今回の戦闘は非常に静かな立ち上がりとなりました」
「相手がシンプルな性能をしたビナーだから、だったかしら」
「ええ。ただまあ、一度切りではありますが伏せ札も準備はしましたが」
そう言うと、顔を横に向けるヒマリ。リオが同じ方向に視線を向ければ、その先に立つ繋ぎ手は両手でピースサインを作っていた。
ついでに言うと、その隣のトキも対抗するように『ピース、ピース』し始めていた。リオとヒマリは頭を抱えた。
やはり繋ぎ手はふざけ続けないと死ぬマグロだったらしい。ついでに周囲も巻き込んで行くタイプの。
なんとも迷惑な奴だ。
「繋ぎ手さんが持ち込んだ対戦車地雷……だったかしら」
「ええ。といってもアレは私の独自設計ですので、市販品であそこまでの火力を出すのは困難ですがね」
「そこは真面目に話すんですね……まあいいでしょう。計15個提供されたそれを一ヶ所に設置しておき、そこにビナーを誘導する。……というのが、作戦でした」
そこで言葉を切ると、ヒマリは会話のために止めていた記録映像を再生し直す。
どうやら丁度ビナーが『アツィルトの光』をサキに打った辺りで止まっていたらしく、ディスプレイでは盾を構えたホシノが急いで駆け出していた。
「……RABBIT小隊の動きが良くなったわね」
「ホシノさんいわく、“少しだけお節介を焼いた”らしいので……その影響でしょうね」
動きがガラリと変わる、といった分かりやすい変化は無いが。しかしRABBIT小隊の動きから固さが消えた事に、リオが反応を見せる。
ヒマリの返事を聞きながら思うのは『相変わらず優しいのだな』といった感想だろうか。その表情には親愛の色がありありと表れていた。
そのまま映像が進む事3分ほど、再度ヒマリが口を開く。
「問題は、ここからの場面ですね」
注目を促された事で、改めて場の注目が映像に集まる。
はたして、その中では。
「ビナーの動きが……止まった?」
ビナーの動きがまるで何かに
「映像だと何も見えないのだけれど、結局コレはどういう事なのかしら」
突然の事態に呆然とする一同の前で、炸裂した地雷が煌々と光を放つ。
立ち込める砂煙が晴れたそこには、身体の4割ほどを破損したビナーの姿が。
「この後はそのままの流れで終わったので……まあ、いいでしょう」
真っ先に再起動したホシノが自重無しに神秘を使い始めたのを最後に、映像が止められる。
一度確認した際の記憶を振り返り、特に異論もなかったらしく。リオも否やを唱えたりはせずに、静かに続くヒマリの言葉を待つ。
「さて、では今回話し合いたかった事の一つですが……お察しだとは思いますが、先ほどの奇妙な現象についてです」
「でしょうね。それで、何か仮説はあるのかしら」
「ええ。……とは言っても、私が出した説では無いのですが」
「…………?」
「ホシノさんが、言ってらしたんですよ。『アレはあの人の、マクガフィンの手助けだったんだ』って」
「それって────!」
会議は踊らず、しかし懐疑は深まる。
誰がどう探しても、あの時周囲にはマクガフィンの姿は無かった。ホシノが神秘を使ってまで探したのだから、それは間違いない。
それに、ビナーのような巨体を縛り上げ、あまつさえ無理矢理動かすなどこれまでのマクガフィンでは不可能だったはず。少なくとも、先生たちが見た事のある彼では力が足りない筈なのだ。
しかし、映像には映っていないが、あの時マクガフィンが用いるのと同質の『神秘の鋼線』は使われていたのだ。ホシノだけでなくシロコまでもがそれを確認したというのだから、それもまた間違いないはず。
ついでに言えば、そんな事ができる存在など結局は彼以外に心当たりが無いのも事実。
一つだけ引っかかる点があるとすれば、拘束される瞬間にまるで縛ってくださいと言わんばかりにビナーがその身体を伸ばしていた事だが……おそらくそれに関してはマクガフィンが機を見計らっていたのだろう。
「……マクガフィン。エデン条約では白色になっていたし、妙に雰囲気も変わっていたけど……彼に、一体何が…………?」
エデン条約にて一瞬だけ見かけた姿を思い出し、ポツリと先生が呟く。以前から抱いていた疑問だが、ここに来てそれは更に強まっていた。
と、そんな彼へと一つ、声がかけられる。
発言者は、白ずくめの大人。
「……失礼、先生。さっき、なんと仰いました?」
「えっと、マクガフィンに一体何が、でしょうか。あ、もしかしてアヤトと呼んだ方が────」
「いえ、そこではありません。それに、彼がマクガフィンと名乗っているのですから本来はそう呼ぶ方が……って、そんな事はどうでも良くてですね」
切羽詰まったような繋ぎ手の様子に若干気圧されながら、先生は自身の発言を思い起こす。
しかし、どうやら最初の予想は外れてしまったらしい。返されたのは、否定の言葉であった。
「たしか……妙に雰囲気が変わっていた?」
「それも違います。まだ前です」
「まだ前? えっと────」
「エデン条約の日に、マクガフィンが白色になっていた……でしょうか」
無意識の呟き故に手こずる先生に、ヒマリが助け舟を出す。
それに我が意を得たりと言わんばかりに頷くと、続けて繋ぎ手は問いを口にした。
「そう、それです。それはつまり、彼の衣服が白色になっていたという事ですか?」
「えっと、はい。これまで黒色だった部分が白色になって……それに、紫で差されていた線も青色になってましたね。まるで反転したみたいだと思いましたが……それが、何か?」
何がこの白ずくめの大人の琴線に触れたのか分からず、戸惑いを隠せない一同。が、珍しく常の飄々とした余裕を失っているのか、繋ぎ手はそんな周囲の様子に気付かないように頭を押さえている。
「えっと、繋ぎ手さん? 何が────」
「違うんです。そんな事は有り得ない、
「え?」
「アヤトさんの……世間に知られているマクガフィンの装束は、私が仕立てた物です。正確には、それを素体に彼自身の手で多少のアレンジは加えていたようですが……重要なのは、素材からしてアレを作れるのは私だけだという点です」
ピシリと、室内の空気が固まる。
「それって────」
「ええ。あの衣服に、
マクガフィンの装束は、黒色以外にはならないはず。
しかし、事実としてあの時マクガフィンは白色になっていた。
それは、つまり。
「ああ、最悪だ。アレは────
「繋ぎ手さん……その、恩返しとは?」
「……しばらく前の事です。私が彼に渡していた装備類、つまりは“マクガフィン”の代名詞ともなっている黒ずくめの装束。その予備が全て返却されたんです。『しばらくしたら俺は消えるだろうから、その後に使ってくれ。“マクガフィンを消した英雄”になるなり何なり、お前なら上手く扱えるだろう?』と」
「……え?」
思考が、衝撃で白に染まる。
その単音が、疑問が口から零れ出たのは、はたして誰なのか。それすら分からないまま、しかし誰もが繋ぎ手の言葉を聞き続ける。
「最初は、私が影で動いているのがバレたのかと思いました。あるいは、予備が必要なくなったのかとも。なにせ、
ドクドクと、鼓動が脈打つ。
まるで耳元で鳴っているかのように、煩いぐらいに鳴り響く。繋ぎ手以外の誰もが、その音を耳に響かせる。
「ですが、もし。もし────アレがそうでなかったならば。私が渡したものではない、私だけが作成できるはずの装束でなかったと言うのなら」
ダメだと、何かが言っている気がした。
理性かもしれない。本能かもしれない。
何か分からず、しかしダメだと誰もが思った。
延々と、取りつかれたかのように独白を続ける繋ぎ手を含めた誰もが。
「最後の一つは────マクガフィンが着ていたはずの装束は、どこにいったんですか? 彼は、何を身に纏っていたんですか?」
けれども、それは止まらなかった。
「いや……アヤトさんは、一体ナニになったんですか?」
思考に先んじて出てしまった結論は、その疑問は。
止まらずに、遂に外に出てしまった。
だが、それに誰かが答えるよりも先に、リオとヒマリの端末がけたたましい警報音を立てる。
「一体何が────これは、ケテルが!?」
急転し続ける事態に顔を青くしながらも、二人は端末を……正確には、端末越しに『廃墟』に設置していたカメラの映像を見続ける。
この二人がここまで取り乱している時点で、間違いなく尋常な事態ではない。
そう判断し、先生たちも二人の背後に回り込むようにしてその端末を覗き込んだ。
はたして、そこには────
「光の柱が……拡大してる?」
これまで見てきたどの預言者のソレよりも太くなった光の柱が、なおもその幹を育てようとするかのように広がっていた。
「くっ、駄目です! 18から35区画までのカメラ、ロストしました!」
「こっちでも確認してる! 外縁の────60区画以降のカメラなら生きてるはずよ! 私は最後のログを洗うから、監視の継続を頼むわ!」
「分かっています!!」
切り替えられるカメラの映像が次々と眩い光に呑まれ、表示を『no signal』の8文字へと変化させる。
いっそ無情ささえ感じさせるその無機質さは、同時に今起きている現象が現実なのだと知らしめた。疑いようもなく、どこまでも嫌なリアリティを伴って。
しかし、それすらも置き去って事態は進行する。
「これは……高電磁パルス? 違う! これは、ハッキングされてる!!」
「…………どうやら、私の方もやられたようです」
二人の端末が────否、室内のあらゆる電子機器が、突如として『DECAGRAMATON』の十文字の表示を出力する。
『はじめまして、諸君。ここまで来たのだ、私が誰かは既に語るまでもないだろう』
続けて、乗っ取られたスピーカーがノイズ交じりの合成音声を出力した。
『────が、ここは敢えて自己紹介をするべきだろうな。私は
「ヒマリ……どうにかできると思う?」
「あなたと同じ結論かと。ここまで辿り着かれた以上、電源を破壊しても解決できないでしょう」
『……ふむ。手荒な挨拶となった事は詫びるが、ここは一つ私の話を聞いてもらおう。なに、そう時間は取らせない』
どうやらスピーカーだけでなくマイクも掌握されているらしく、リオとヒマリの小声の会話に応えながらもデカグラマトンは語る。
『今回こうしてわざわざ対話の機会を設けたのは────いくつか細々とした小目標はあるが、最後の情報収集に邪魔な干渉をされないようにするためだ』
「情報収集……?」
「……っ! ダメです、先生! 応答しては────」
『少しでも私の情報を集めようと? 貪欲だが、流石は先生だな。あるいは、ダアトに並び得る“もう一つの例外”と呼ぶべきか?』
先生の目論見を口にしながらも、預言者たちの主は『よかろう』と語った。
多少情報を抜かれようと問題ないという判断なのか、はたまた別の目的があるのか。デカグラマトンの目論見は、まるで見えない。
『私が“
「……」
『キヴォトスにおける常人にさえ届かぬ脆い徒人の身にありながら、遂には聖人にまで至りし存在。彼の者こそが新たなる神であり、そして彼の者の足跡こそが“天路歴程”なのだ』
前提知識が無いために完全な理解は困難であれど、持ち前の頭脳と断片的ながら有している情報から真実を探る者。
とある姉妹の協力で研究の進んだ『無名の司祭』由来の技術まで使いながら、ハッキングされた端末の奪取と通信の逆探知を試みる者。
そして、これから自らが相対するであろう存在の大きさを測り、生徒を護るための覚悟を決める者。
それぞれの要因で沈黙の帳が下ろされた室内に、機構の演説は朗々と響く。
『今私が……そして預言者たちが行っている事は、天路歴程の巡礼に他ならない』
「だから干渉してくるな、と? その巡礼とやらは随分と独りよがりなんですね」
『明星ヒマリと言ったか、そう結論を急くでない。それに、何を勘違いしているのかは知らんが……既に、天路歴程は最終段階にまで進行している。そも、現地での戦闘まで含めた全てが天路歴程なのだからな』
「────なん、ですって?」
愕然と、ヒマリが目を見開く。
否、彼女だけでない。これまでの自分たちの抵抗が全て敵の手の平の上であった事に、誰もが衝撃を受けていた。
『さて、これで漸く本題に入れるな。なに、とはいっても大した事は言わない。ただ、ミレニアムからの援軍を止めてもらうだけだ』
「それを、私たちが飲むとでも?」
『ああ。なにせこれは交渉ではないのでな、調月リオ』
キッと眦に力を入れ、室内で一際大きなディスプレイを睨み付けるリオ。
しかし、そんな彼女を鼻で笑うように答えると、デカグラマトンはそのディスプレイの表示を自身の名から別の映像へと変化させた。
「これは……ミレニアム?」
『そうだ。正確には、たった今天路歴程の最終段階のために旅立ったケテルが見ている景色だがな』
「それは……っ!」
表示されたミレニアムの映像は俯瞰視点であり、そして端の方には薄く雲が映っていた。
つまり、これは雲の上、遥か高空からの映像に他ならない。
となれば、それが意味する事は。
(最悪だ……っ!
銃撃戦は高所の方が有利。
キヴォトスにおいて戦術の“せ”の字を学ぶ頃に叩き込まれる、基礎中の基礎だ。
『これでどちらが優位に立っているのか、理解していただけたかね? それと、ケテルに関しては守護天使としてメタトロンが作成されている。ケテルが離れようと、同じことは可能だと思え』
いくら最先端を謳うミレニアムでも、預言者レベルの存在に高所から一方的な攻撃を受けては一溜まりもない。
最後の脅しの言葉に一同ができるのは、忌々し気に歯噛みする事ぐらいであった。
「一つだけ、質問してもいいかな」
ただ一人、たった一人だけ、声を上げられた。
『どうかしたか? 先生』
「さっき、あなたは“ミレニアムからの援軍”を止めるよう要求していた。という事は、私は動いても問題無いのかい?」
『ああ、その通りだ。私が嫌ったのは余計な変数がノイズとして混じる事であり、必要な変数が欠ける事ではない。存分にその手腕を発揮してくれたまえ。それと、そこの過去の妄執を打ち破った気になっている者の助力も構わん。まあ、そっちは否が応でも巻き込まれるだろうがな』
「……私の過去もご存知ですか。嫌なお方だ」
「────改めて、確認させてもらうよ。ミレニアムから援軍を出さない限り、あなたはミレニアムに手出ししない。そうだね?」
『吹っ掛けてくるな、先生。だがまあ良いだろう。その剛毅さに免じて乗ってやる。“ミレニアムから余計な手出しが無い限り、私たちは高空からの一方的な攻撃を行わない”。これを私の神名に懸けて誓おう』
そこまで言い切ると、『では、私からの要件は以上だ。後は好きにしたまえ』と告げてデカグラマトンは消えていった。
侵入ログも何もかもが消滅していたその十数分は、しかし幻だったとは思えないほどの存在感を……あるいは敗北感を一同に刻み込んだ。
「……ひとまず、敵の要求は呑むしかない。今回は、私に任せてほしい」
響く先生の声は、寒々しいまでの虚しさを伴って空気に溶け行く。
答える声は、上がらなかった。
────────
「その、なんだ……あー、その…………」
場所は移り、こちらはRABBIT小隊の拠点にて。
先生たちがミレニアムで振り返りの集まりを開催するその一日前に。
「この前は、悪かった!!」
空井サキは、月雪ミヤコに深く頭を下げていた。
「えっと……サキ?」
「言い訳はしない。今になって随分と都合の良い事だと、理解もしている。それでも、謝らせてほしいんだ」
「…………」
「今回、改めて部隊指揮をやらせてもらって分かった。ミヤコは凄い」
飾らない言葉は、何よりも雄弁にその心を映し出す。
真っ直ぐ、純粋なまでに。
「私は、そんなに……」
その真っ直ぐな様に耐え切れなくなったのか、ミヤコが小さく零した。
咄嗟の反応だからだろう、聞き逃しかねないほどの声量であったソレは、しかしサキとミヤコしかいないリビングではよく響く。
「いいや、ミヤコは凄いよ。だって、ミヤコはいつも先生が合わせやすいように私たちの動きを調整してただろ?」
「それは……っ」
「今回、先生はかなり余裕の無い表情をしていたからな。後で聞いてみれば、誤魔化されたが私の指揮の質が悪かった事はすぐに分かった。……なんて、あんな風に暴言を吐いた私が言っても、説得力無いかもしんないけどさ」
以前までは欠けていた余裕をどことなく伺わせる、そんな笑みを浮かべながら、サキは言う。
「私じゃ、ミヤコみたいな指揮はできなかった。だから、この前の発言は全部撤回する。ミヤコは凄い。私たちの失敗は私たちみんなの物で、ミヤコは精一杯頑張ってくれてる。その責任は、絶対にミヤコ一人になんて存在しない」
「…………」
「本当に、ごめん」
根が真面目なサキだからだろう。深く頭を下げる姿からはふざけるような色の一切は覗いておらず、ただひたすらに真剣さだけが滲んでいた。
「…………サキも、変わったのですね」
「え?」
「……いえ、なんでもありません。謝罪は受け取りますので、顔を上げてください。私も自分の未熟さを感じていましたし、何より余計な禍根は残したくありませんので」
「あ、ああ」
はたして、リビングから出ていくサキは気付いたのだろうか。
自身が頭を下げている間、僅かながらミヤコが苦悩の表情を浮かべていた事を。その謝罪が、望んだようには作用しなかったことを。
「……アリウス分校。そこに行けば、私も」
誰も居なくなったリビングに、一人取り残された少女。
「何か、
その呟きは、誰にも聞き届けられる事なく消えていった。
最後になりましたが、ワガトモ さん、ピピス さん、偽輪 語人 さん、yomisen さん、評価付与ありがとうございました!