【本編完結】黒く濁った罪を背負って   作:RH−

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これは繋ぎ回です。 This is a makeshift story.
そのため、今話はいつもより短いです。 Since, this story is shorter than usual one.
そんなことよりおうどんたべたい。 Sonnnakotoyori OUDON tabetai.

はい、↑は特にネタが思いつかなかったやけっぱちの結果です。ごめんなさい。
それでは本編、どうぞ。


幕間:先生の回顧・対策委員会編

 カタカタという小気味いいタイピングが一定のペースで響く、窓から差し込む光と等間隔に設置された電灯で明るく照らされた室内。

 部屋の主であり、また打鍵音を立てていた犯人でもある彼は一度パソコンから目を上げると、軽く伸びをした。どうやらそれなりの時間作業をしていたようで、今度は僅かな呻き声とコキコキという音が室内に響く。

 

 ここはシャーレオフィス。

 D.U.は外殻地区に建設された、連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』の本拠とも呼べる場所である。

 

 

「ふぅ……ちょっと休憩にしようかな」

 

 報告書を纏めていた先生はそう呟くと、伸ばした体を今度はだらりと脱力させた。

 普段ならば休憩となればログボ回収も兼ねてソシャゲに邁進するか、プラモデルのような掘り出し物を探して街をぶらつくのだが……今日はそんな気にもならず、キャスター付の椅子をグルグルと回転させながらあちらこちらへと暴走させている。

 …………やっぱり彼はどこか変わった部分があるらしい。

 

「あ、ヤバ。目回ってきちゃった」

 

 しかし、そんな先生であっても何の理由もなしにこんな事をする程の奇人ではない。行き詰まりつつあった思考を一度リセットしておきたかったのだ。

 その結果若干の吐き気に襲われている辺り、なんともアレな感じなのだが。とはいえそれもまた先生らしいと言われれば、誰もが「それは……その通りなんですが…………」と言うしかないだろう。

 それで納得できてしまうぐらいには、生徒たちは先生の奇行を目撃しているのである。同じぐらいには“大人”としての姿も見せているため、向けられる好感度自体はかなり高いのだが。

 

 閑話休題。

 

 

「うーん……」

 

 眩んでいた視界が戻ったことで、先生は改めて思索を巡らせる。

 その対象は、先ほどまで纏めていたアビドス廃校対策委員会に関する一件にも結び付く存在。事件の随所でその姿を見え隠れさせながらも、遂に一度も会うことのなかった人物。

 

 すなわち、マクガフィンと名乗る青年についてである。

 

 

 

 カイザーPMCの魔の手からホシノを取り返した後、落ち着いた頃を見計らって先生は彼女と何度か面談をしていた。

 最初こそ何か良からぬ実験であったりはされなかったかという心配や、ずっと味方でいてくれた事への感謝であったり一人で無茶をしたことへの謝罪であったりが行き交っていた面談であったが、互いに他にも話したい内容があるということでそのメインは次第にマクガフィンに関する話へと変遷した。

 

 

 主だった情報の大半が黒服経由であるという事を念頭に置いたソレであったが、それでもやはりその進歩は以前と見違えるほど。特に彼がホシノへと話した内容はどれも見過ごせないものばかりだった。

 

 例えば、2年前の一件……おそらくユメの倒れた事件であろうそれには『デカグラマトン第三の預言者』なる存在が関わっていることであったり、『生命の危機』と表現されるような状態であったこと。

 

 今はマクガフィンと名乗る青年は、どうやらアビドスに思い入れがあるらしいこと。

 

 そして。彼は神秘だけでなく“恐怖”とやらも使える存在であり、キヴォトス全域を危機に陥れられるほどの力を持っていること。

 

 現場と2年前の彼の姿しか手掛かりの無かった事を思えば、とんでもない前進である。

 

 

 そしてここからは、先生が提供した件の青年と関わりがあるか裏取りの行えていない情報ではあるが。

 

 ホシノが黒服との契約に応じた日、市街地へと襲撃をかけてきたカイザーPMCだが……実は何者かによって襲撃し返されていたらしい。現場には鋭く斬り裂かれたオートマタの手足や戦車の残骸が残されているのみであったが、逃げ遅れて隠れていた住民の証言によれば「真っ黒な死神がいた」とのことらしい。

 

 そしてその翌日、つまりホシノ奪還作戦が決行された日にも、PMCの基地には襲撃があったらしい。

 そちらに関しては何の手掛かりも得られなかったが、地面には大きく抉れたような爆発跡と細かく斬り裂かれた破片が残されていた。

 

 

 最後に、厳重に秘匿されていたカイザーPMCの機密兵器『ネフィリム』について。

 ゴリアテの正式な後継機として作成されたソレは、「機動力と超火力による電撃決戦」を謳い文句として設計されており────製作コストや起動時の消費電力などに目を瞑れば、と言う条件が付きはするが────ゴリアテなど目にならない制圧力を誇っていたらしい。

 事実として、ヴォルフスエック鋼鉄を代表としたオーパーツを惜しみなく使用された機体はゴリアテよりも装甲面積は小さいというのにそれ以上の耐久性を有し、最新技術を注ぎ込んで開発された────レールガンを代表とした────兵装による火力はPMC一個中隊にも勝る規模だったそうな。

 

 しかし、そのネフィリムが実際にその脅威を見せることはなかった。

 起動されるよりも先に()()()()()斬り裂かれていたのである。それもかなり念入りに解体されたようで、格納庫跡地にはパーツレベルに破壊された残骸がうず高く積もっているだけであった。

 一般紳士として先生はその姿だけでも拝んでみたかった気持ちもあったが……当然ながら現場には設計書などは残っていなかった。無念である。

 

 

 とにかく、この3件に関して共通しているのは、銃器では見られないような破壊痕が残されていたという事だ。

 そして、「真っ黒な死神」という住民の証言とマクガフィンは「全身黒ずくめである」という噂を考えれば、これらの襲撃が彼によって起こされたものである可能性は十分あるのではないか、というのが先生とホシノの至った結論であった。

 が、彼らの相談はここで止まることとなった。

 

 これ以上に推論を重ねられる情報が残っていなかったのだ。

 

 

 ────やっぱり、今出せる結論はこのぐらいかぁ……

 

 

 たしかに、今回のマクガフィンによるものと思われる事件は全て先生たちの利になるものばかりである。しかし、それは同時に“彼が度々襲撃している”カイザーPMCの害になるものでもあるのだ。

 つまり、先生たちの予想が当たっていたとしてもその真意までは読み解けないのだ。

 

 生徒たちのために陰から協力してくれたのかもしれないが、逆に一連の騒動を好機と見て乗っかってきただけかもしれない。

 それを判別するには彼の為人であったり行動指針を知る必要があるだろう。

 

「むぅ…………」

 

 加えて先生を悩ませているのが、柴大将が彼を拾ったという日以前の来歴が不明なままである点だ。

 どこで活動していたのか。本当にキヴォトスの外から来たのだとして、どんな手段を用いて入ってきたのか。ヘイローを持たない身体で、どうやって神秘を使えるようになったのか。

 

 ざっと考えるだけでも無数に湧き上がってくる疑問は、その一切が闇の中のまま。

 それこそ、本当にその日にフッと()()()()()()と言われても信じてしまいそうなほどにはそれまでの足取りが残されていないのだ。

 

 マクガフィンとして活動し始めた後の行動は、アロナに頑張ってもらえば────大きな騒動に限定こそされるものの────それなりに判明したというのに。

 

 

「まあ、これ以上は一旦置いておこうか」

 

 またもや堂々巡りに陥り始めたのを察すると、先生はそれ以上の思考を打ち切ることにしたようだ。

 とはいえ、それで考えることが無くなるのかと聞かれれば否であるのだが。

 

「うーん……」

 

 再び唸り声を出し始めた先生が見ているのは、クロノスジャーナリズムスクールの提供するネットニュースの一つ。『大企業カイザーコーポレーションの裏の顔! グループ解体も時間の問題か!?』と題された記事である。

 少々誇張された部分はあるもののアビドスの一件を含めたカイザーの黒い部分が詳細にまとめられており、pv数もかなり伸びているようだ。

 

 個人的にもカイザーコーポレーションの態度は相容れないと思わせる部分も多かったため、問題が多くの人に知れ渡ること自体は喜ばしいのだが……問題は、先生たちがアビドスでの一件を解決してからこの記事が投稿されるまでにかかった時間があまりにも短いことだ。その間わずか半日のみ。

 ホシノに「おかえり」と言ったその翌朝にはこのニュースは話題になっていたのだ。

 

 先生は即座に確認したが、事件に関わった生徒の誰かがタレコミを行ったわけではないらしい。

 もしかしたら連絡手段の無いトリニティの生徒会────たしか、名をティーパーティーと言っただろうか。そこが動いたのかもしれないが、それにしては生徒が知るには難しい内容も多くすっぱ抜かれているように思える。それに、ヒフミも「ナギサ様が何かをなさった、というのは……聞いていませんね」と言っていたのだし。

 

 

 では、この匿名希望の情報提供者は誰なのか。

 さっきも言った通り、彼ないし彼女がクロノスへと密告を行うまでの速さは尋常じゃなかった。

 

 これは以前からカイザーコーポレーションについて探っており、さらに先生たちの動向も把握していなければできない芸当だろう。

 

 

 ────どうやら、まだまだ私の知らない世界は広いらしいし……見落とさぬよう、しっかりと注意しておかないと。

 

 

 自身の知らぬ場所で絡み合っているであろう様々な思惑に思いを馳せながら、先生はキリッとした顔で決意を定めるのだった。

 

 

「えっと……先生? どうしたんですか…………?」

「………………」

 

 なお、彼は未だに────回転させることこそ止めたものの────自身の座るキャスター付の椅子を足で押して暴走させる事は続けたままであり、それを当番にやってきたユウカに見られて困惑されたりしたのだが……それはまあ、余談であろう。

 どうせ犠牲になるのは先生の羞恥心だけであるのだし。

 




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