転生したと思ったら異世界転移した   作:Yuki5021

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2話 謁見

「おお……」

 

 感嘆する声を聞き俺は目を覚ます。すぐに刺されたところを確認するが、何もない。服もそのままだ。周りを見るとローブの男たちと日本人顔の男が3人。

 

「なんだ?」

 

 日本人顔の男たちの方から状況がわかってなさそうな声が聞こえる。

 俺の視界の端にいつものVRゲームの時のアイコンがあるのに気づいた。VRゲームの中なのかと一瞬思うが、すぐ考えを改める。あれほどの出血だ。高確率で死んでる。1回死んでるのでよくわかる。周りを見るとここはレンガ造りの建物の中のようだ。足元には、淡く光る幾何学模様。魔法陣という表現がぴったりな模様だ。今気づいたが、俺は剣を握っていた。青い宝石の着いた少し安っぽく見えるファンタジーなデザインの軽い剣だ。妙に手にひっついている。手をパーにしても地面に落ちない。

 

「ここはどこだ?」

 

 金髪の俺の剣と同じようなデザインの槍を持った男がフードの男たちに尋ねる。

 

「おお、勇者様方! どうかこの世界をお救いください!」

「「「「はい?」」」」

 

 異口同音で俺達は喋った。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

 これまた俺の剣と同じようなデザインの弓を持った奴が尋ねる。

 

「色々と込み入った事情があります故、ご理解頂ける言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました」

「召喚……」

 

 薄々思っていたがここは異世界というやつか?

 

「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください」

 

 ローブを着た男が深々と俺達に頭を下げる。いかにもって感じのセリフだな。

 

「まあ……話だけなら――」

「嫌ですね」

「元の世界に帰れるんだよな? 話はそれからだ」

 

 俺がコミュ障を発揮して黙っていたら1人が話を聞こうとしたのを俺以外の2人が遮る。

 

 気持ちはわかるが俺は話ぐらい聞いた方がいいと思うけどな。勇者らしい力を俺たちが持っていたとしても本気の殺し合いなんてしたことないんだから。まずは従順にして戦いについて学んで強くなってから意見した方がいいと思うんだが。というか槍のやつと弓のやつたくましいな。なんか半笑いだし。異世界に来た不安より嬉しさの方が勝ってんのか?俺は正直不安がだいぶ大きいぞ。今だってビビって一言も話していない。

 

「人の同意なしでいきなり呼んだ事に対する罪悪感があなたたちにはないんですか?仮に、世界が平和になったらっポイっと元の世界に戻されてはタダ働きですしね」

 

 弓を持ったやつがローブの男達を睨みつける。

 

「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ? 話に寄っちゃ俺達が世界の敵に回るかもしれないから覚悟して置けよ」

 

 本当に逞しいな。それになんか上手く言ってる気がする。

 

「ま、まずは王様と謁見して頂きたい。報奨の相談はその場でお願いします」

 

 ローブを着た男の代表が重苦しい扉を開けさせて道を示す。

 

「……しょうがないですね」

「ま、どいつを相手にしても話はかわらねえけどな」

槍と弓がそう言いながら着いていく。俺もその後ろについていき、人の良さそうな顔の盾のやつもその後ろについてくる。

 

 それから俺達は暗い部屋を抜けて石造りの廊下を歩く。

 

 空気が地中海あたりと同じような感じだ。

 

 窓から覗く光景に俺達は息を呑む。

 どこまでも空が高く、そして中世ヨーロッパのような町並みが其処にはあった。

 ん?なんかブレイブスターオンラインの城下町と似てないか?そういえば、ステータス用のアイコンもブレイブスターオンラインのものとよく似ている。ブレイブスターオンラインとこの世界の関係について考えながら廊下を歩いていると、謁見の間にたどり着いた。

 

「ほう、こやつ等が古の勇者達か」

 

 なんか偉そうな爺さんだな。いや王だから実際偉いのか?でも勇者に畏まる王というのもいないわけじゃないよな。うーんよくわからんな。ブレイブスターオンラインはその辺適当だし、俺もよく調べずにやっていたしな。

 

「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を上げい」

 

 下げてねーし。もちろん突っ込まないが。

 

「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつある」

 

 王様の話を纏めるとこうだ。

 現在、この世界には終末の予言と言うものが存在する。いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶというのだ。

 

 その予言の年が今年であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ちだしたらしいのだ。

 この龍刻の砂時計は波を予測し、一ヶ月前から警告する。伝承では一つの波が終わる毎に一ヶ月の猶予が生まれる。

 当初、この国の住民は予言を蔑ろにしていたそうだ。しかし、予言の通り龍刻の砂時計の砂が一度落ちきったとき、災厄が舞い降りた。

 

 次元の亀裂がこの国、メルロマルクに発生し、凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。

 その時は辛うじて国の騎士と冒険者が退治することが出来たのだが、次に来る波は更に強力なものとなる。

 このままでは災厄を阻止することが出来ない。

 だから国の重鎮達は伝承に則り、勇者召喚を行った。

 というのが事のあらましだ。

 ちなみに言葉が分かるのは俺達が持っている伝説の武器にそんな能力があるそうだ。

 

「僕たちにタダ働きしろということですか?都合のいい話ですね」

「さすがに自分勝手が過ぎるんじゃないか。滅ぶのなら勝手に滅べばいい。俺達にとってどうでもいい話だ」

 

 王様相手でもそんなに強気に出れるのか。すごいなこいつら。でもちょっと頼もしい。

 

「確かに、助ける義理も無いよな。タダ働きした挙句、平和になったら『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないし。というか帰れる手段があるのか聞きたいし、その辺りどうなの?」

「ぐぬ……」

 

 盾の男も王様に尋ねる。これは俺も何か言った方がいいか?いやまあいいや。黙っとこう。言いたいことがあるわけでもないし。

 

「もちろん、勇者様方には存分な報酬は与える予定です」

 

 おお!思わず小さくガッツポーズをする。他のやつもしてる。

 

「他に援助金も用意できております。ぜひ、勇者様たちには世界を守っていただきたく、そのための場所を整える所存です」

「へー……まあ、約束してくれるのなら良いけどさ」

「ですね」

 

「では勇者達よ。それぞれの名を聞こう」

 

「じゃあ、まずは俺だな。俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ」

 

 槍の勇者、北村元康。外見は、なんと言うか軽い感じのお兄さんと言った印象の男性だ。

 俺も顔はいい方だと思っているが正直俺より顔がいい。彼女がいそうな顔だ。自信が滲み出ている。

 髪型は金髪にポニーテール。身長は175くらいだろうか。ポニーテールがなぜか似合っている。

 

「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳、高校生です」

 

 弓の勇者、川澄樹。外見は、ピアノとかをしていそうな大人しそうな少年だ。

 なんていうのだろう。儚げそうな、それでありながらしっかりとした強さを持つ。あやふやな存在感がある。俺と同じくらい顔がいい。

 身長は155くらい。髪型は若干パーマが掛かったウェーブヘアー。

 

順番的に俺だな。何気にここに来てから初めてまともに喋る。

 

「次は俺か。俺の名前は天木錬だ。年齢は16歳、高校生だ」

 

とりあえずテンプレ通りに答えておいた。

 

「最後は俺だな、俺の名前は岩谷尚文。年齢は20歳、大学生だ」

 

 盾の勇者、岩谷尚文。彼女のいないリア充という感じ。元カノにあいつと結婚してればなと思われてそうだ。

 身長は170くらいで髪は少しボサボサ。顔は普通よりいい。

 あとお調子者な感じがする。

 

「ふむ。レンにモトヤスにイツキか」

「王様、俺を忘れてる」

「おおすまんな。ナオフミ殿」

 

 なぜか尚文を忘れている。なんかわざとっぽく見えるな。気のせいか。尚文は最弱の盾だからか。いや関係ないか。ゲームの話だし。

 

「では皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい」

「へ?」

 

「えっと、どのようにして見るのでしょうか?」

 

 樹がおずおずと王様に進言した。

 こいつらなんで気づかないんだ?VRゲームしたことあったらすぐ気づくだろ。

 

「なんとなく視界の端にアイコンがあると思うんだが。」

 

俺がそういえば、3人とも空を見つめだす。

 

「それに意識を集中するようにしてみろ」

 

 無事ステータス画面が出てきたようで各々確認している。

 俺も自分もステータスを確認する。レベル1にしては強いが、普通に弱いな。ゲーム基準だが。

 

「Lv1ですか……これは不安ですね」

「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな」

「というかなんだコレ」

「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ」

「そうなのか?」

 

「それで、僕たちはどうすればいいんですか?」

「ふむ、勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたいのです」

「強化? この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」

「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうです」

「伝承、伝承ね。その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」

 

 元康が槍をくるくる回しながら意見する。

 それもそうだな。ただ、伝説の武器というくらいだし、簡単には壊れないだろうから、鈍器としては現段階でも優秀そうだよな。いや、ステータスがある世界だから壊れなくてもダメージを与えられないのか。うーん、どこまでがゲームと同じでどこまでが現実っぽいのかわからないな。

 

「俺達四人でパーティーを結成するのか?」

「お待ちください勇者様方」

「ん?」

 

 これから冒険の旅に出ようとしていると大臣が進言する。

 

「勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になります」

「それは何故ですか?」

「はい。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様たちだけで行動すると成長を阻害すると記載されております」

 

伝説の武器との使い方のヘルプを確認すると、注意、伝説の武器を所持した者同士で共闘する場合、反作用が発生します。なるべく別々に行動しましょう。と書いてある。なんか曖昧だな。近くにいると何ができなくなるんだ?

 

「…近くにいると反作用が発生する、と書いてあるが、具体的に何ができなくなるんだ?」

 

 誰も言わないので渋々俺が質問する。

 

「失伝していること多いですからな。申し訳ありませんが、詳しいことまでは分かりませぬ。」

 

 大臣っぽい奴が答える。

 わかんねーのかよ。まあ、これから別々に行動したら何ができなかったのかわかってくるか。

 

「となると仲間を募集した方が良いのかな?」

「ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく」

「ありがとうございます」

「サンキュ」

 

それぞれの言葉で感謝を示し、その日は王様が用意した来客部屋で俺達は休むこととなった。

 

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