来客室の豪華なベッドに座り、みんなそれぞれの武器をマジマジと見つめながら説明に目を向けている。窓の方を見ると何時の間にか日がとっぷりと沈んでいる。
それだけ集中して説明を読んでいる訳だ。
俺も伝説の武器についてわかってきたが、読めば読むほどブレイブスターオンラインオンラインに似ている。もちろん伝説の武器はブレイブスターオンラインに出てこないので少し違うがやることはほぼ同じだ。
よくあるゲームの世界に転生して無双とかそういうやつか?正直さっきからワクワクしている。
「なあ、これってゲームみたいだな」
尚文が俺たちに向かって言う。俺は心の中で同意する。
「ていうかゲームじゃね?俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」
元康が自慢げに言い放つ。
「え?」
「というか有名なオンラインゲームじゃないか、知らないのか?」
尚文は知ってそうだと勝手に思ってたが知らないようだ。
「いや、俺も結構なオタクだけど知らないぞ?」
「お前しらねえのか?これはエメラルドオンラインってんだ」
なんだそれは?俺は別にゲームについて詳しくないから知らなくてもおかしくないが、一番似てるのはブレイブスターオンラインだろ。
「何だそのゲーム、聞いたことも無いぞ」
尚文も知らないらしい。
「お前本当にネトゲやったことあるのか?有名タイトルじゃねえか」
「俺が知ってるのはオーディンオンラインとかファンタジームーンオンラインとかだよ、有名じゃないか!」
「なんだよそのゲーム、初耳だぞ」
「え?」
「え?」
さっきから知らないゲームばかりだ。というか一番有名なゲームが出てきてないんだが?
「皆さん何を言っているんですか、この世界はネットゲームではなくコンシューマーゲームの世界ですよ」
「違うだろう。VRMMOだろ?」
思わず否定する。さっきからこいつらは何を言っているんだ?おそらくマイナーなゲームの名前ばっかり言いやがって。
「はぁ?仮にネトゲの世界に入ったとしてもクリックかコントローラーで操作するゲームだろ?」
そんなわけないだろ。そんなの物好きしかしないぞ。
「クリック?コントローラー?お前ら、何そんな大昔のゲームを言ってるんだ?今時ネットゲームと言ったらVRMMOだろ?」
「VRMMO?バーチャルリアリティMMOか?そんなSFの世界にしかないゲームは科学が追いついてねえって、寝ぼけてるのか?」
「はぁ!?」
本当に何を言っているんだこいつは?
「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前のゲームだと思っているのですか?」
樹が軽く手を上げて尋ねる。
「ブレイブスターオンライン」
「エメラルドオンライン」
「知らない。っていうかゲームの世界?」
VRゲーム知らないみたいだし時代が違うのか?
「あ、ちなみに自分はディメンションウェーブというコンシューマーゲームの世界だと思ってます」
「まてまて、情報を整理しよう」
元康が額に手を当てて俺達を宥める。
「錬、お前の言うVRMMOってのはそのまんまの意味で良いんだよな?」
「ああ」
「樹、尚文。お前も意味は分かるよな」
「SFのゲーム物にあった覚えがありますね」
「ライトノベルとかで読んだ覚えがある」
「そうだな。俺も似たようなもんだ。じゃあ錬、お前の、そのブレイブスターオンラインだっけ?それはVRMMOなのか?」
「ああ、俺がやりこんでいたVRMMOはブレイブスターオンラインと言う。今のところこの世界とゲームとの間に大きな違いはない」
「それが本当なら、錬、お前のいる世界に俺達が言ったような古いオンラインゲームはあるか?」
「聞いたことはない…が、俺は別にゲームについて詳しいわけじゃない。俺が知らない可能性も十分にあると思う」
そうは言ったものの、俺はそんなゲームない気がする。有名なのにかすりもしないのおかしい。
尚文と元康もそう思っているのかもしれない。
「じゃあ一般常識の問題だ。今の首相の名前は言えるよな」
「ああ」
みんな頷く。
「一斉に言うぞ」
ゴクリ……。
「湯田正人」
「谷和原剛太郎」
「小高縁一」
「壱富士茂野」
「「「「……」」」」
聞いたことも無い首相の名前だ。意外と勉強を頑張っていたのに。それから俺達は自分の世界で有名なネット用語やページ、有名ゲームを尋ねあい。そのどれもが知らないと言う結論に至った。
「どうやら、僕達は別々の日本から来たようですね」
「そうみたいだな」
「という事は異世界の日本も存在する訳か」
「時代がバラバラの可能性もあったが、幾らなんでもここまで符合しないとなるとそうなるな」
なんとも奇妙な四人が集まったものだ。みんなゲームは好きみたいだな。元康はリア充っぽいのにゲーム好きなのかと疑問に思ったが、ゲーム好きの陽キャもいるし普通か。
「このパターンだとみんな色々な理由で来てしまった気がするのだが」
尚文の視線がこっちに向いたので俺から話すことにする。
「俺は学校の下校途中に、通り魔に刺されて死んだと思ったらこの世界に召喚されていた」
「そうか、まあ、なんていうか…気の毒に」
同情されちゃったよ。
「じゃあ次は俺だな」
軽い感じで元康が自分を指差して話し出す。
「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね」
「ああ、そうだろうよ」
ガールフレンドが多いってどういうことだよ。普通1人だろ。腹立つやつだな。
「それでちょーっと」
「二股三股でもして刺されたか?」
俺が思わずそう言うと元康は目をパチクリさせて頷きやがった。
「いやぁ……女の子って怖いね」
「ガッデム!」
尚文が中指を立てる。だよなやっぱハーレムとチャラついたモテるやつは許せないよな。
「次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を渡っていた所……突然ダンプカーが全力でカーブを曲がってきまして、その後は……」
「「「……」」」
それは即死したってことか?俺は苦しんで死んだから少し羨ましいな。
「あー……この世界に来た時のエピソードって絶対話さなきゃダメか?」
「そりゃあ、みんな話しているし」
「そうだよな。うん、みんなごめんな。俺は図書館で不意に見覚えの無い本を読んでいて気が付いたらって感じだ」
「……ショックで忘れてるんじゃないか?死ぬほどの衝撃を受けたんだ。4人のうち1人ぐらい記憶が飛んでてもおかしくないと思うぞ」
「言われてみればそうだな」
「尚文さんだけ例外というのも考えにくいですね」
「うわ、3人の話を聞いてると確かにありそうで怖いな」
まあそれでも死んだ瞬間を覚えてないのは羨ましいな。俺も忘れさせて欲しい。
「話を戻すけど、この世界のルールっていうかシステムは割と熟知してるのか?」
「ああ」
「やりこんでたぜ」
「それなりにですが」
「な、なあ。これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか? 俺の世界には似たゲームは無かったんだよ」
尚文は盾で、しかも知識もないのか。運がないなこいつ。
「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲で教えてあげよう」
何かうそ臭い顔で元康が片手を上げて尚文に話しかけてくる。
「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話なのだが、シールダー……盾がメインの職業な」
「うん」
「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、後半に行くに従って受けるダメージが馬鹿にならなくなってな」
「うん……」
「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」
「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
やっぱ元康もか。ゲームと似てるだけで違うという可能性がないわけでないが…
「アップデート、アップデートは無かったのか?」
「いやぁシステム的にも人口的にも絶望職で、放置されてた。しかも廃止決定してたかなぁ……」
「転職は無いのか!?」
「その系列が死んでるというかなんていうか」
「スイッチジョブは?」
「別の系統職になれるネトゲじゃなかったなぁ」
尚文が盾を見つめた後、俺と一樹の方を見る
「お前らの方は?」
「悪い……」
「同じく……」
「…まあ、ゲームと似てるだけという可能性もある。俺たちの武器は同一規格っぽいし、尚文も、ヘルプをよく読んで真面目に頑張れば強くなれるんじゃないか」
「そ、そうだよな。ゲームじゃないんだから、可能性はあるよな!」
そう尚文が喜んでいるのを横に元康が話しかけてくる。
「地形とかどうよ」
「名前こそ違うが殆ど変わらない。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性が高いな」
「武器ごとの狩場が多少異なるので同じ場所には行かないようにしましょう」
「そうだな、効率とかあるだろうし」
俺と元康と樹で攻略の話を進める。
「ふふ……大丈夫、せっかくの異世界なんだ。俺が弱くてもどうにかなるさ」
正直言って尚文がかわいそうだな。後々強くなるかもしれないけど、攻撃性能が高い方が楽だし。ゲームのままなら強くなれないし。
「よーし! 頑張るぞ!」
尚文が自分に喝を入れている。
「勇者様、お食事の用意が出来ました」
お?どうやら晩飯が食べられるみたいだ。
「ああ」
みんな扉を開け、案内の人に騎士団の食堂に招待された。ファンタジー映画のワンシーンのような城の中にある食堂。そのテーブルにはバイキング形式で食べ物が置いてある。
「皆様、好きな食べ物をお召し上がりください」
「ありがたく頂こう」
「ええ」
「そうだな」
こうして俺達は異世界の料理を堪能した。全体的に味が薄く、見た目と違う味がしたりしたが、どちらかといえばうまいかな。俺は日本の料理の方が好きだが。食事を終えた俺達、部屋に戻ると途端に眠くなって来た。
「風呂とか無いのかな?」
「中世っぽい世界だしなぁ……行水の可能性が高いぜ」
「言わなきゃ用意してくれないと思いますよ」
「まあ、一日位なら大丈夫か」
「そうだろ。眠いし、明日は冒険の始まりだしサッサと寝ちまおう」
元康の言葉にみんな頷き、就寝に入った。