俺はその後、クエストを受ける。新しい剣を解放する。レベルを上げる。武器屋で剣をコピーするを。これらをひたすら繰り返した。
そして、あと3,4日で召喚されてから一か月。つまりもうすぐ災厄の波がやってくる。レベルは俺は40半ばまで上がったし、ウェルト達も40または40近くまで上がった。ゲームと同じなら、レベルはもう十分に上げた。あとはクラスアップと武器や防具、回復薬などの準備をしっかりするだけだ。
俺たちは王都に戻り、龍刻の砂時計のある教会と似た建物までやってきた。
「剣の勇者様ですね。本日はクラスアップでしょうか?」
「ああ」
中に入ると、人当たりのいいにこにことした、シスター服を着ている女性が対応してくれた。
「ではこちらへどうぞ」
案内された先にはゲームでも見た美しい装飾のされた大きい砂時計があった。龍刻の砂時計である。波を予告するものだと思うと、ゲームの時はただ綺麗だった砂時計が少し恐ろしいものに見えてくるのは不思議だ。
さらに近づくと、剣からピーンという音が聞こえ、剣についている青い宝石から一本の光が龍刻の砂時計の真ん中にある宝石に届く。
俺の視界の端に時計が現れる。あと約五日で波の日のようだ。
「じゃあ、ウェルト、バスター、クラスアップをしてくれ」
「わかりました……あ、レン様、我々はどのようなクラスアップを選べばよろしいでしょうか?」
ウェルトがさも当たり前のように聞いてくる。ゲームでは俊敏が上がるのを選ぶのが定番だったが、俺はクラスアップの画面もウェルト達のステータスもHPとMP以外は見えないのだ。
「……一応俺の知識で強いと言われるクラスアップはあるが、この一か月で俺の知識が当てはならないものもいくつかあった。クラスアップでできる差は、相当変なのを選ばない限り小さい。自分たちで選べ」
「そうですか……わかりました」
ウェルトは少しがっかりしたあと、クラスアップをしに向かった。この一か月で実感したが、勇者とは相当特別な存在だ。ウェルトは、クラスアップに関するこの世界の人も知らないようなすごい知識を俺に期待したのだろう。勝手に期待されて勝手に失望される(ウェルトは失望まではしてないが)、持つものにしかわからない気持ちが少しだけわかった気がする。
あ、そうだ。砂をもらうのを忘れていた。もう少しレベルを上げなければ転送剣は使えないが、早めにもらっておこう。
近くのシスターさんに声をかければ、快く譲ってくれた。見るからに貴重そうだからもう少し渋られるかと思ったが、あっさりとしたものだった。やはり勇者の名は絶大だ。
クラスアップを終わらせた俺たちは、冒険初日に会ったエルハルトに防具や武器を準備してもらうことにした。
なぜエルハルトなのかというと、エルハルトが評判のすごくいい鍛冶師だということが、クエストのついでの聞き込みで分かったからだ。ゲームとは違って、腕のいい人は城下町に住んでいるらしい。魔物との戦いでは、ゲームと同じ弱点だったり、行動だったりを取るので意外とゲームの知識が役に立ったが、やっぱり違うところは違うらしい。
「いらっしゃい」
俺たちが武器屋のドアを開けると、中には他の客はおらず、エルハルトが少し暇そうに店番をしていた。
「お、剣のアンちゃんたちじゃねえか。その装備を見るになかなかうまくいってるみたいだな」
「まあ、それなりにな」
「そいつはよかった。それで今日は何かを買いに来たのか?」
「それもあるが、鎧や武器を加工してほしくてな」
俺はそう言って、この前倒した小型の雑種ドラゴンがドロップした鎧を剣から出す。
「うおぉ!どうなってんだ!?」
エルハルトが驚いて声を出す。そういえば、ウェルト達はもう何も反応しなくなったから忘れてたが、ドロップ機能というのは伝説の武器固有のものか。
「驚かせてすまない。これは伝説の武器のドロップという機能だ。魔物を解体せずに武器に入れたら、たまにアイテムや装備が手に入るんだ」
「そんなこともできるのか伝説の武器ってやつは……」
エルハルトはそう言いながら、俺の出した鎧を手に取る。
「しかも結構いい出来じゃねえか。こんないい装備が冒険一か月で手に入るのはさすが勇者様ってところか…」
「それでこいつを加工しようと思ったら他の素材もいるんだが、何か持ってるか?ないならこっちで用意するが、そうすると少し高くなっちまうぞ」
「それなら、同種のドラゴンのものと、使えそうなドロップいくつかある」
俺はそう言って、鱗や皮、骨、牙といったドラゴンの素材と、たまたま売らずにとっておいた金属のドロップ品をエルハルトに渡す。
「こんだけありゃ十分だ。他に加工してほしいもんはあるか?」
「ああ」
俺はバスターとテルシアの方を向く。バスターとテルシアは近接担当なので優先的にいい装備をしてもらっている。バスター達は意図がわかったのか、俺が渡していたドロップ品をエルハルトへ渡す。
「四日後に取りに来る。それまでにできるか?」
「ああ、そんだけ時間がありゃ大丈夫だ」
「あとはウェルトとフェリーの装備も新しいのを売ってくれ。予算は……ウェルト、頼む」
「わかりました」
俺は値段交渉などやったことないし、できる自信がないので、ウェルトに丸投げした。まあ、一応横で聞いてはいる。今回はエルハルトが、俺が勇者だからかだいぶおまけしてくれているようであまり勉強にはならないが。
俺たちはその後、まだレベル40に到達していないフェリーとテルシアのレベルを上げるため、四日で行って帰れる距離のクエストを受けた。
クエストの内容は人里に生息域を拡大しつつある魔物の駆除だ。
レベルの割に敵が弱かったため、連携もクソもない雑魚狩りになってしまったが、クエストはクリアした。しかし、テルシアたちのレベルがまだ40になっていないため、少し急ぐことになるが、新しい剣を解放することもかねてまだ倒していない魔物がいるところに寄り道しながら王都に帰った。