境界戦機 〜猛虎伏草〜   作:寒ブリP

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第十四話 黒幕。

 

 

 

 ―1―

 

(忙しい一日だったな……)

 

 『鋼のゆりかご』と合流した次の日。

 椎葉アモウは小千谷ナナミから基地内のさらなる説明を受け、ケンブ二式の調整と整備に参加し。

 更に午後には基地の中庭に育てられていたトマトやナスなどの手入れを手伝い。

 

(まあ、でもこうやって人の間で働いたりするのも……悪くないかな)

 

 忙しいながらも、久方ぶりに平和で充実した一日を過ごしたと実感するのだった。

 そして――

 

「聞いてますかアモウさん!!だからァ、ケンブ二式は各部のユニット化が更に進んでいてですネェ!!頭部・両腕・両脚はトレーラーと連携すれば戦場でも1分30秒で換装できるんですよォ!!」

 

「あ、ああ……ええと、そうなんですか?でも基本、戦場では欠損したらもうそこは使えないって感覚で戦ってるからなぁ……ってか、初芝さん飲むと人が変わりますね」

 

 ――ジュウジュウという小気味よい音と共に、野菜や肉の焼ける匂いが鼻孔をくすぐる。

 基地内のグリーフィングルームでは、その広い室内の中央に幾つかのテーブルが並べられ。

 椎葉アモウは、ナナミをはじめとする『鋼のゆりかご』のメンバーと共にパイプ椅子に座り歓迎を受けていた。

 壁には分かりやすく『ようこそ椎葉アモウ』『北陸戦線の英雄、来たる』『ゆっくりしていってね』『アモウさん大好き』等の垂れ幕やバルーンで飾られていて。

 

「んなぁことはぁ……ひっぐ……わがっでますよぉ!!でもでずねぇ……でも換装システムはですねぇ……おっぐぇ……」

 

「ひどい絡み酒だな、おい誰か水もってきてくれ」

 

 初芝を前にドン引いたユウシロウは、周りを見渡すが。

 背後から現れた少年に、彼は更にドン引いた。

 

 

「はい、お水です❤︎」

 

 

 それは、フリルのついた白黒のメイド服に身を包んだアラタだった。

 小柄な身体と微笑みを浮かべるその外観は、少女にしか見えず。

 片手で丸いお盆を持ち、片手で水を差し出していた。

 

「お、おう、すまんな……」

 

 ユウシロウはやや気圧されながら、それを受け取り。

 

「アラタ……その服はアレか?少しでも『アモウさん』に自分の魅力を伝えようとする涙ぐましい努力的なやつか?」

 

「みなまで言うなよ、辛気(しんき)臭いおっさんよう」

 

 

 アラタは瞳を細めて笑顔を凍らせながら、ユウシロウの肩をポンとたたき。

 

「へいへい」

 

「ふへへっ、アモウさんどうですかぁ!?潜入任務のときはいつもこのプリチーな容姿で敵を欺いてるんですよ!!」

 

 そして、お盆で胸を隠しながらニコニコとアモウへと接近していく。

 

「へ、へえ……」

 

 アモウは、そんな彼の姿をまじまじと見て。

 確かに少女にしか見えないなあ、とぼんやり眺めてしまっていた。

 銀色の髪がさらさらとなびいて。

 ひらひらとスカートが揺れて、手首や足の白さと肌のきめ細やかさが際立ち。

 その四肢に、目が釘付けになる。

 

 だが、男だ。

 

「まあ、ボクは何を着せても似合うんですけど……アモウさんも、北陸戦線の時の服装かっこいいですよね❤︎」

 

「そ、そうかなぁ?あ、あれは実はガイがコーディネートしてくれた服なんだ!」

 

 未だに眠っている幼態のガイが映し出されたスマホを突き出し、アモウはへらへらと笑顔を浮かべた。

 相棒がかつて選んでくれた服装を褒められて、うれしくないわけがない。

 

「流石はアモウさんのベストパートナーです!羨ましい!」

 

 羨ましい。

 アラタはアラタで、素直にそう思っていた。

 椎葉アモウを神聖視している彼にとって、彼の相棒であるAI『ガイ』もまた敬愛の対象であり。

 ガイの完全復活もまた、アラタには悲願であり。

 椎葉アモウともっとも近い位置にいる相棒、それが羨ましくて仕方がなかった。

 

「そういうアラタだって、相棒のアイレスがいるんだろ?」

 

 スマホをポケットに入れて、アモウは傍らに立つアラタに問いかける。

 

「ボクの『ジャック・オー』は無口ですからねえ、あんまり喋ってくんないんですよ」

 

『……』

 

 アラタは紫色のケースに入れられたスマホを差し出すと、そこには黒いマントとディフォルメされた四肢を持ったカボチャ型のアイレス『ジャックオー』が映し出されていた。

 カボチャをくりぬいた頭部の口元は笑みを浮かべていたが、まったくの無言で。

 

『……オシャベリハ、好きジャナイ』

 

 くりぬかれた瞳を細めて、片言の言葉を放つと。

 そのまま画面の端に歩いていき、横になってふて寝するのだった。

 

「まあ普通に戦ってくれるし、やることはやってくれるからボクはいいんですけどねー」

 

 カナタにとって、ジャックオーはアメインを稼働させ電子戦をするための『道具』であり。

 相棒ではあるが決してそれ以上ではない。

 

「……」

 

 そんな距離感を、アモウはつぶさに感じ取り。

 AIとともに戦い『相棒』となったときの人の……メイレスの強さを知る彼は、非常に惜しいと心底思ってしまっていた。

 

 だが、今それを口で指摘するのは容易(たやす)い。

 

 人とAIの関係性とは、他人に言われて変えていくものではなく。

 共に戦い、共に過ごし、共に生きて作るものだと思うから。

 今はまだ彼らを見守ることとした――

 

 

「……最近は、結構いろんなレジスタンスでアイレスが使われているよな」

 

 

 アモウは思案顔でそう呟く。

 全国を巡り人々を助ける中で、さまざまなレジスタンス組織を見てきた。

  

「第一世代を基盤にして作られたコピー品だから性能も据え置きだけどメイレスの性能発揮には必須だし、あればあるだけ便利だからね――ミスズ博士もアイレスの利権で潤ってると思うよ、ホント商売が上手いよあの女ァ」

 

 焼肉を焼きながらもナナミが口をはさみ。

 

「そ、そうなんですよねえ……で、ででも他勢力も自前の自律思考型AIを搭載し始めたから、まったく油断はできないんですよね」

 

「確かにィ!!4大勢力の新型アメインも自律思考型AI(アイレス)を搭載したものが増えてきましたよね!!ひっぐ!!げほっげほっ!!……ぶ、分類こそアメインとなっていますがァ性能的にもォ機能的にもすでにメイレスと呼んでも問題ないものが戦場で散見されますね!!ゲホッ!!」

 

 刈谷ユミとジョウジもまた、口を挟んで。

 

「明らかに去年までよりも敵のアメインの動きと集団行動での判断が早くなって……ジョウガン改二でも割とひやりとする瞬間が増えた、俺たちレジスタンスもウカウカしてられないぞ」

 

「ど、どどど同感です、メカニック的にはなんとかしてあげたいところですが、ジョウガン改自体が現状アップデートで性能向上できる限界に近い、これ以上は完全新規設計の次世代機でないと無理です……」

 

「まだアレがロールアウトして二年ぐらいしか経過していないだろうにな、まあ俺はまだまだやれると思うが」

 

 鋼のゆりかごのスタッフたちは自律思考型AIの有用性や、メイレスなどの機体群の性能。

 AIと機体の今後の発展、果ては日本の今後について。

 

「『関西決戦』で接収した北米軍の軍事工廠もブレンゾン社のスタッフが入って本格稼働するから、もう少しそのあたりは楽になるはずだよん――現在、ジョウガン系列の新機体も開発が進んでいるしね」

 

「そ、そそうでしたね、ジョウガンの新型機はすでに原型は出来ていて細かい調整に入っていたと聞いています」

 

「早くこっちに回してほしいもんだが……ヤタガラスに優先的に配備されるんだろうな」

 

「ま、そこはさぁ許してくれよおユウシロウさん、北陸戦線と関西決戦、どっちもヤタガラスとアモウ先輩ちゃんたちの活躍が凄まじかったんだからさあ」

 

「そうだな、確かにそれを言われたら……納得しかねえ」

 

 実にいろいろな話をお互いにしながら。

 

「あ、そこのカルビ肉焼けてるぞえ」

 

「は、はいです代表……ん?あれ?佐橋副代表は?」

 

「あー、佐橋さんは忙しンだよ、私のフォローほぼ全部あの人ひとりがしてるんだからサア」

 

「は、ははは……た、大変ですよね」

 

 肉や野菜を焼いて白飯とともに食べていくのだった。

 

 

「みんな好き勝手口をはさんだあげくに離脱して盛り上がりやがって……ま、まあとにかく各組織でアイレスが活躍しているのはアモウさんとガイさんが活路を開いたからです!!」

 

 

 にこにこと、アラタは言い。

 

「そ、そんなことないって!」

 

「いえ、アモウさんとガイさんは最高です!!」

 

 正直に褒められて、アモウはさすがに気恥ずかしくなり。

 

「ま、まったくアラタは……調子がいいなもう!!」

 

 バンバンと、アラタの肩を片手で叩いていくのだった。

 

 

「えへへー、そんなことないですってアモウさん!やだなあ、アハハ!!」

 

 

 アラタはアラタで有頂天の極みといった様子で、へらへらと笑みを浮かべながら。

 

 

(あーやっべ、これ脳みそ溶けそう)

 

 

 崇敬し、全身全霊で追い求めてきた椎葉アモウに触れられたことにより脳が絶頂しそうなのを全力で耐えていた。

 幸せだった。

 コップ一杯分が許容量のところ、2リットル近くの幸せをぶち込まれたような感覚。

 だが、それを全身で素直に表現されると流石にドン引かれると思い。

 彼は全力をもって自分を律していた。

 正直、アメインと戦うよりもよっぽど神経を使った。

 そして……

 

「あ、想像以上にちょろいぞ先輩」

 

「だ、大丈夫なんでしょうか……」

 

 そんな微笑ましい(?)二人の様子を傍目に見て、やれやれと肩をすくめるナナミと。

 わりと簡単にアラタに取り入られそうな椎葉アモウの貞操の心配をする刈谷ユミなのだった。

 

 

「まあ、大丈夫っしょ……先輩には5人の彼女がいるのは有名だし、ノンケのノンケよ」

 

 

 小声でユミに耳打ちする、ナナミ。

 

「えっ、あの噂は本当だったんですか?」

 

 

「ああ、確かな情報筋だ……というか『鏑儀(かぶらぎ)重工』の一人娘が北米軍の師団長との婚約を蹴ってアモウ先輩とヤタガラスに救出されたことが『関西決戦』の直接の原因となった、前も言ったろ?もう彼はその戦闘力だけじゃない……」

 

 

 へらへらとした笑みを消して。

 ひどく冷静な瞳で、ナナミはアモウを見据えた。

 

 

「……周囲に与える影響力が大きすぎる、彼もそれは自覚しているだろうが、おそらく周りの人間も気を付けないと事態の収集がつかなくなる」

 

 

 その戦闘力も人格も影響力も、すでに歴史に残るレベルの英傑と言っていいほどのものだとナナミは考えていた。

 だからこそ彼女は、信頼しつつも彼とともに行動することでのリスクも常に頭に入れており。

 

 

「実際、先日アモウ先輩をイエロ・サーカスに差し向けた『レドガー・ダンバム』はおそらく棚ぼた式に半壊した要塞都市の監査官になるのだろう、だが……そんな風に彼を上手く利用しようとするのはクレバーなやり方じゃない」

 

 

 へらへらとした笑顔の下で、自分の大願を果たすためのプランをいくつも練っている――

 

「アモウ先輩は彼の想像以上に強かった……レドガーとしては要塞都市の一部を復旧し、軍の立て直しなどを見守ればいいという算段だったんだろうが、そうはいかない」

 

「あ、あそこまで要塞都市の戦力を削った状態だと、他の勢力……特に今はアジア協商とユーラシア連邦との全面的な衝突は避けられませんよね」

 

「そゆこと」

 

 チュドーン!!

 

 そうこう話していると、ナナミの胸ポケットからガンダムのビームライフルの効果音の通知音が響き。

 

「ふぅむ……刈谷ちゃん、佐橋さんに呼ばれた」

 

「わ、わかりました……い、い行きましょう」

 

 ショートメールを見た彼女は、周囲を見回して席を立った。

 

「悪いね先輩……私たちは少し用事ができたから、おいとまさせてもらうヨ」

 

「す、すすすみませんアモウさん!!」

 

 刈谷ユミを連れ、ナナミはテーブルから離れていき。

 

「了解です、代表は大変だな…」

 

「まあ、そういうことさ……先輩はゆっくりしていってネ」

 

 アモウに対して苦笑していると、満面の笑みのアラタが彼女の顔を見上げていた。

 

「さっさとどっか行けや♡」

 

「その台詞はもう少し小声で独り言として言いなクソガキ」

 

 メイド服のクレイジーサイコホモに満面の笑みを見せて中指を立てながら、ナナミはその場を後にした。

 

「まったく、アラタの野郎……まあいいや、あんな頭おかしいアホに構ってたらクレイジーサイコが移っちゃうわい」

 

 明るい照明が照らす、白い廊下。

 ナナミはブーブーと口をとがらせながら、その端をつかつかと歩いき。

 

「あ、あはは……椎葉アモウさんに脳を焼かれたんですね、彼も」

 

「あのアジア軍に乗り込んだ時の最初の放送でアラタは『自分が生まれた意味を見つけた』らしい、だからアモウ先輩と一緒に戦うことは彼の悲願だった……まあ、あんなでも私と出会ったころよりはギラギラしたヤベーやつ感はだいぶマシになってたけどさ」

 

 ふと、感慨深げに言うナナミ。

 

「こ、この『鋼のゆりかご』に合流したときは凄かったですよね、まるで抜き身の刃みたいでした」

 

「まあ、今もそんな大差はないけどさ……それでもやつも、『鋼のゆりかご』の主力だし信頼もしている、アモウ先輩に任せておけば大丈夫さ」

 

「あ、アモウさんへの信頼が厚いですね」

 

 安心した様子で言うナナミに、刈谷ユミが告げ。

 

「まあね、私も周りのことをやいのやいの言ってるけれど……椎葉アモウという人間に魅入られているのかもしれないね」

 

 ナナミは瞳を細めて、自嘲気味に笑う。

 

「彼が……貴女が探していた『主人公』なんですか?」

 

 そんな彼女に、刈谷は神妙な面持ちで問いかけ。

 ナナミは深くうなずいて。

 

 

「ああ、そうさ……だからこそ、私たちの計画のために協力していただくのさ」

 

 

 その瞳の中に、信念と決意の炎を燃やしていく。

 そして彼女たちはしばらく廊下を歩いて、エレベーターに乗り。

 

「待ってましたよ、代表」

 

 ドアが開くと、そこは基地の最深部である研究所だった。

 白い壁に囲まれただだっ広い部屋には無数のスパコンや基盤、パソコンなどが並び。

 十数人の白衣を着た研究員がモニターや機材を操作し。

 

「新人歓迎会は盛り上がりましたか?」

 

 佐橋レン副代表は、スーツ姿でタブレットを持ちながら作業をしており。

 彼の傍らには、全長6メートルほどの長方形の漆黒の基盤が設置されていた。

 基盤はその表面から無数の半透明状のチューブが四方に伸びて周囲の機械につながれており。

 表面が緑色に明滅して、異様な雰囲気を醸し出していた。

 

「ごめんよ佐橋さん、やっぱ参加したほうがよかったんじゃない?」

 

「いえ、私はあまりにぎやかな場所は得意ではないので……それに、『これ』を少しでも早く稼働させたいですからね」

 

 佐橋副代表がタブレットを操作していくと、漆黒の基盤はその表面に無数の刻印が赤く輝いて。

 繋がれた周囲のコンピューターも、モニターにさまざまな波形を表示していく――

 

 

「……これでなんとか明日中にはテストができそうだね」

 

 

 ――その異様な機械を見上げ、ナナミは満足そうに言い。

 

 

「ええ、貴女が開発した『日本奪還』のための要(かなめ)……超量子コンピューター『天沼矛(アメノヌボコ)』、その性能をいよいよ試すことができる」

 

 

 副代表は小さく頷き、感慨深げにその機械を見据えた。

 10メートル級のロボットが戦争を繰り広げる2063年の現在においても、各国が実用化にこぎつけることができなかった超技術の結晶。

 

「げ、現在の4大勢力の使用するスーパーコンピューターを遥かに凌駕した次世代機械『天沼矛』に自律思考型AI『アイレス』を移植すれば、理論上はあらゆる機械をハッキングできます」

 

 それは、彼ら日本人にとっては希望の光であり。

 同時に世界各国を脅かす、もっとも危険な『矛(ほこ)』であった。

 

 

「天性の知識をもって生まれた私が作り上げたこの『天沼矛(アメノヌボコ)』と、同じ力をもつミスズの作った『アイレス』、その二つが完全起動した暁には……世界各国のコンピューターを制御できる、その圧倒的な武力をもって日本を独立させる――」

 

 

 圧倒的な武力による、日本の独立。

 それが、小千谷ナナミの考える手段であり。

 

「――アメインによる局地戦や他の勢力とともに新日本を立ち上げるだけでは到底日本の解放はできない、独立とは力だよ、他のすべてに存在を認めさせる圧倒的な『力』」

 

 3勢力との結びつきが強い『新日本協力機構』にすら秘匿された、鋼のゆりかごの設立理由。

 新型のアメイン開発も、すべてはこの『天沼矛』の防衛のため。

 

 

「そして、新たな日本を導いていくのは私でもあなたでもない――」

 

 

 副代表はタブレットを傍らに置いて、ナナミを見つめ。

 ナナミも、大きく頷いた。

 

 

「そうさ、新たに生まれる日本の初代総理大臣、それは――椎葉アモウ、私の物語の『主人公』だ」

 

 

 圧倒的な武力による、日本の独立。

 だが、それだけでは『国』は完成しない。

 彼女が目指す『ガンダムシリーズ』の続編が制作されるような、平和で安全で文化に満ちた国。

 それを再生させるためには、人々をまとめあげるリーダーが必要だった。

 

 それが、椎葉アモウ。

 

 平凡な日本人として生まれ、鉄の巨人と電子の相棒との邂逅を果たし。

 人々と関わりあう中で戦う意味を見つけ、かけがえのない仲間との絆を作り上げ。

 知らないだれかを守るために戦い、そして獅子奮迅の戦いの中で鬼神のごとき戦果をあげ。

 虐げられた日本人たちの『希望』となった存在。

 そんな少年こそ、表舞台に立たせておくにふさわしい。

 

 

「『天沼矛』と『アイレス』を搭載するケンブの開発も、もう中盤まで来ている」

 

 

 この物語の『黒幕』。

 複数の平行宇宙の『超技術』の知識を生まれた段階で認識している異能の存在『観測者(ウォッチャー)』である小千谷ナナミは、心底そう思うのだった。

 

 

「日本の境界線をすべて取り払う最強の機体――真の『境界戦機』に君が乗る日を、私は楽しみにしているよ」

 

 

 真の戦いが、始まる。

 世界のすべてを敵に回す、小千谷ナナミと『鋼のゆりかご』の戦いが。

 『北陸戦線の英雄』椎葉アモウの人生の行方は、如何に――

 

 

 つづく

 

 

 

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