境界戦機 〜猛虎伏草〜   作:寒ブリP

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第十七話 共同作戦。

 

 

 

 

 

 ―1―

 

「もう3時間か……少し疲れてきたが、『奴ら』が攻めてくるとしたらそろそろだな――」

 

 数日後。

 

 レジスタンス組織『鋼のゆりかご』と行動を共にする椎葉アモウに、初めての共同作戦の機会が訪れる。

 

 『鋼のゆりかご』が間借りしている工場がある新日本協力機構が統治する都市から数百キロ離れた山岳地帯の山村に、アジア軍が侵攻して土地を接収。

 難民となった者たちが十数台の大型トラックに乗り、新日本協力機構の都市へと避難を開始。

 

 既に避難を開始してから7時間が経過し、険しい緑の山と小川に囲まれた曲がりくねった県道を大型のトラックが列をなして前進しており。

 その周囲を2機の白いゴウヨウカスタムと、瀬川ユウシロウが駆る大型のスナイパーライフルを構えた赤いジョウガン改二が警備していた。

 

 

(故郷を追われる人間たちを見るのは忍びねえな……だが、これも仕事だ)

 

 

 ジョウガン改二は『メイレスジョウガン改』の腕部と脚部をゴウヨウのものにアップデートし、両肩と腰横には可動式アームによって縦長のシールドを兼ねた追加スラスターが装備されており。

 頭部の額部分には、通信性能を底上げするブレードアンテナが伸びていた。

 また、両膝の前にはハンドガン、腰裏には両刃のナイフを備え。

 鮮やかな明るい赤によって染められた機体は、原型機と違い機動力を活かして遠・中距離で敵を攻撃することを基本戦術としていることが一目で理解できた。

 

『ユウちゃん、『高度な情報戦』で誤魔化すのも限界みたい……数キロ圏内にアメインの反応アリなのだ』

 

「了解した代表、ジョウガン改二はこれより戦闘モードに移行する」

 

『頼んだぜおじさん』

 

「おじさん言うな」

 

 ユウシロウは通信を切ると、自らの右横に浮遊している自律思考型AI『ダイモン』のグラフィックを見据えた。

 

「頼むぞ、ダイモン」

 

『了解シタ、ジョウガン改二……戦闘システムオールアクティブ』

 

 青い四角い結晶状のデザインの『ダイモン』は、ユウシロウに対して淡々とした機械音で返事して。

 ジョウガン改二は頭部のカメラを輝かせると、両腕でスナイパーライフルを構えていく――

 

 

「アモウ、アラタ、俺たちの部隊は引き続きトラックの最後の砦として戦う、お前らは敵の中枢を叩いてくれ」

 

 

 ――そして彼は、通信回線を開いてアモウ達に連絡して。

 

「ええ、任せてください」

 

「オジサンの出番はなさそうだね」

 

 礼儀正しい返答と、クソ失礼な反応にやれやれとため息を漏らし。

 両腕でグリップを構えて、ユウシロウは機体を駆動させていく。

 

 

「言ってろアラタ、そしてアモウ……頼むぜ、お前の実力なら、こいつらを全部守ってやれる、そうだろ?」

 

 

 願いを込めて、ユウシロウは問いかける。

 自分の持ちうる力など、自分ができることなどたかが知れている。

 

 だが、彼ならば。

 

 『北陸戦線の英雄』椎葉アモウならば、そのアメインの手と剣の届く場所のものならば守れると。

 そう、信じてみたくなったのだ――

 

 

「――努力はします」

 

 

 ――少しだけ間をおいて、椎葉アモウは短く返し。

 そして、通信回線を切るのだった。

 

 

 ―2―

 

 

 

「三時と六時、十時の方向にぞれぞれ6機以上の熱源反応――来るぞアラタ、背後は任せた」

 

 

 椎葉アモウは、コクピットの内部でそう告げると。

 川の瀬を踏みしめて、ケンブ斬二式は周囲を見回しながら跳躍する。

 背後に熱振式戦闘直刀と折りたたまれたレールガンを備えた白と赤の機体が、軽々と宙に舞い。

 超熱振式戦闘長刀を片手で構えた機体は、脚部のスラスターを吹かして加速して。

 無数の機影が見え隠れする深い森の中へと飛び込んでいく――

 

「わかりましたアモウさんッ!!」

 

 ――その背後についていたゲンリャクは身をひるがえすと、川の近くの砂利を強く踏みしめ。

 右腕の大型を構えたまま、背面のスラスターを噴射しながら大地を駆けて。

 

「行くぞゲンリャク……アモウさんとの初めての実戦だ!!ジャック・オー、戦闘システム全解放!!ケチケチしないで最初から飛ばせよ!!」

 

『ワカッテイル、出力90パーセント以上をキープ、各部アクチュエーター出力安定、ジャミング開始』

 

 紫色の装甲のひどく細身の機体は、意気揚々と木々の間を真っ直ぐに突き進んでいく。

 次の、瞬間。

 

 

 ズドドドドドドドドドドォォッ!!

 

 

「レジスタンスどもがッ!!ハチの巣にしてくれるッ!!」

 

 

 四方八方の大木の影から姿を現す、深く赤い装甲に包まれた人型の巨人。

 アジア協商のニュウレンの面影を残しながらも、よりマッシブに、より重装甲に進化した次世代機『焔狼(ヤンレァン)』。

 背中に二基のスラスターを備えたその機体は額の装甲を開閉し、球体状のカメラで周囲を見回すと。

 

「この新型ヤンレァンの機動力についてこれるかあッ!?」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドッォオオッ!!

 木々の間を縦横無尽に駆け回り、銃身下部にブレードがついた新型アサルトライフルを連射していく。

 焔(ほむら)の狼(おおかみ)の名に恥じぬ獲物を駆る獣のような機敏な挙動は、前世代機の牛人(ニュウレン)とは比較にならず。

 

 

「当たるかよおォオオッ!!」

 

 

 ジャミングによって照準が狂った弾丸の雨をかき分けるように、ゲンリャクはヤンレァンの一機に狙いを定めて加速する。

 ツキュウウンッ!!

 避けた弾丸が、木々に反射して明後日の方向へと飛んでいき。

 

「どっせええええぇッ!!」

 

 バキイィイイイッ!!

 背面のスラスターを吹かせながら、最低限の動作で右腕の鉄槌状の大型複合兵装を胴体にねじ込み。

 

「へあっ!?」

 

 先端からパイルバンカーが赤い巨人を貫き通し、オイルが周囲に一気に飛び散る。

 予備動作がほぼないその一撃を前に、パイロットは全く反応できないまま即死した――

 

「まずは一機……次はァ!!」

 

 好戦的な笑みを浮かべて、咆哮するアラタ。

 きびすを返したゲンリャクの大型複合兵装の先端上部の砲口が火を噴き。

 

「ぐばあああッ!?」

 

 ドガアアッ!!

 ドガアアアアッ!!

 

「なっ!?」

 

 ドゴオオオオンンッ!!

 

「な、なんて火力だっ!?ぐべえええっ!?」

 

 装甲榴弾砲の圧倒的な火力が、木々の間を駆けていく数機のヤンレァンに着弾し。

 バラバラに装甲とフレームが砕けて四散し。

 大きな木に血しぶきのようにオイルが飛び散って。

 

 

「くそッ!!このままやらせるものか……刺し違えてでもッ!!」

 

 

 ヤンレァンの一機が爆風の中でアサルトライフルを前面に構え、ブレードを突き立てるようにゲンリャクへと向け。

 吹っ飛んでいく木々をかき分けて、背面のスラスターを吹かせて肉薄する。

 巨人の踏み抜いた大地が泥をはねて。

 

「レジスタンスがああッ!!」

 

 咆哮とともに、ヤンレァンは鋭い刺突を繰り出す。

 だが――

 

「いい気迫ッ!!だけどさああッ――」

 

 巨大な右腕の側面で、ブレードを完全に受け止めるゲンリャク。

 刀身の2割程度が突き刺さった段階で、右腕を振り払うと。

 

 

「――アモウさんの邪魔するならァ、死ねええェエッ!!」

 

 

 バキイイイインッ!!

 ブレードは強引にへし折られ、突進の勢いだけが残った無防備なヤンレァンを右腕で打ち払い。

 

「ぐべええええッ!!」

 

 左腕でとっさに腰裏から引き抜いた大型ナイフを胴体に深々と突き刺し、ゲンリャクは噴出するオイルを全身に浴びていく――

 

 

「ハァ……ハァッ……あ、クッソ!!『バルディッシュブレイカー』言うの忘れたッ!!僕のバカタレッ!!」

 

 

 悔恨の声を漏らしながらも、アラタはヘラヘラと笑いながら機体を操作していき。

 異形のメイレスは、その細見の巨体で森の中を抜け出して。

 アスファルトの道に飛び出して、着地し――

 

 

「だけど……最高に幸せだ、僕ってやつは」

 

 

 ――紫色の機体は、頭部の鋭いカメラアイをぎらぎらと赤く輝かせ。

 物言わぬはずの巨人の全身からは、研ぎ澄まされた殺意が溢れ出ているようだった。

 

 

 

 

 つづく

 

 

 

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