境界戦機 〜猛虎伏草〜   作:寒ブリP

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第七話 悪夢。

 

 

 ―1―

 

「……上州忍軍、戦国時代から脈々(みゃくみゃく)と受け継がれてきた忍びの技術をもって汚れ仕事を一手に引き受ける武装集団」

 

 蛍光灯の灯りが照らす薄暗く冷たい通路に、ナナミは連行されていた。

 

「明治維新のあとは政府のお抱え集団になったはずだけど、やはり外国に戦力として売られる者も多かった感じかな?」

 

 両腕を後ろ手にして手首を縄で厳重に縛られ。

 

「……ほう、よく知っているな」

 

 その縄を背後の女忍者であるツルギが握りしめ。

 更に逃走を避けるために、彼女の周囲を四人のマシンガンを携帯したピエロが囲んでいた。

 

 

「同じ日本人が遊び殺されてるのに、それに手を貸して……良心の呵責(かしゃく)はないわけ?」

 

 

 苦々しく言い放つナナミに、ツルギは思わず失笑してしまっていた。

 

「笑わせる、忍者は仕事なら誰であろうと殺す、雇い主が誰でも同じこと……それに鎖国以前は主に日本人を殺してきたのだ、それで痛むような心がある奴は忍者にはなれない」

 

「はー、忍者スゲーのな」

 

 嫌味たっぷりに言い放つナナミ。

 それが気に障ったのか、ツルギは冷笑を浮かべて唇を開く。

 

 

「私もお前のことは知っているぞ、ブレンゾン社でアメインを開発していた天才少女『小千谷ナナミ』、暴走したアメイン『ゴースト』をはじめ、多くのアメイン用の武装や新兵器の開発に尽力し……その技術は各国のアメインも模倣し、戦闘の激化が進んだ」

 

 

 それは事実だった。

 

 日本で猛威を振るった『アメインゴースト』には、彼女が考案した革新的な技術が用いられている。

 

 だからこそ強大な力を得たゴーストは意図的に暴走させられた挙句、多くの人間の命を奪った。

 それだけではない。

 新兵器を作れば、世界各国がそれを模倣する。

 そしてブレンゾン社は、日本にだけ武器を卸していない。

 

 

「お前が作った兵器が日本人を殺しているのだ……その事実に心を痛めることはないのか?」

 

 

 意趣返しとばかりに、ツルギはその事実を突きつけた。

 

「ウチは道具を作っただけ、日本人を殺してるのは……それを使う連中だっての」

 

「ハッ、兵器メーカーがよく使う詭弁(きべん)だな」

 

 ツルギが吐き捨てるように言うと、ナナミの表情が崩れ。

 

 

「そうだ……詭弁だ、アモウ先輩の仲間もウチが創った『ゴースト』でたくさん死んだ、だから私はそう思いたかったんだ」

 

 

 ふるふると、震え始めた。

 飄々(ひょうひょう)としていた声色が変わったのを、瞳の光が濁ったのを、ツルギは見逃さなかった。

 

「ウチは許されたくて、ブレンゾン社を辞めた……そして日本人を助けるための活動を始めたんだ、少しでも罪を償いたくて、ウチは……」

 

「ハッ!そんなことをしても……死んだ人間達はゴーストを作った貴様を許さないだろうな!」

 

 もう、この女は限界だ。

 そうツルギは判断した。

 別に、日本人を殺すことや殺戮に手を貸していることには本当に良心の呵責は一つもない。

 だが、何も知らない少女に偉そうに言われたので内心は非常に腹が立っていた。

 

「ウチは……違う、ウチが悪いわけじゃ…」

 

 何不自由なく、生きてきた人間に。

 

「いや、貴様が悪い、その天才性は平和利用できたはずだ……しかし貴様は兵器だけを作った」

 

「違う…違う!」

 

 泥の味も知らないような、美少女に。

 無限の選択肢が選べた、選ばれた人間に。

 生まれた時から忍者として、クノイチとして育てられ。

 

「どれだけ言葉を並べようと、取り繕うと……貴様は『選べた』側の人間なのに、自分で人を殺す道を選んだのだ!」

 

「ちが……ウチは……そんな」

 

 地獄のような日々を日常として生きてきた彼女は、激しい憎悪を抱いた。

 

「まあいい、貴様の苦悩もすぐ終わる、ここが貴様の処刑限定配信が行われる……処刑ルームだ」

 

 バンッ!!

 通路の横に備えられた大きな扉を、ツルギが開くと。

 アイアンメイデンや、天井から吊るされた先が輪になった縄。

 鉄ゴテやムチ、曲刀などが黒い壁に無数に立てかけられた処刑部屋があらわになり。

 蛍光灯の灯りが照らす薄暗いその部屋の奥から、無数の眼光が光り。

 その全てが、部屋に足を踏み入れたナナミ達を見つめていた――

 

 

「ひどく虐めてやったようだなツルギ、その女は我々『セブンスターズ』が直々に絶望させ血祭りにあげてやるのだから、少しは加減をして欲しかったところだな――」

 

 

 ――それは、奇妙な格好をした7人の殺戮者だった。

 『イエロサーカス』に所属するプロの殺し屋(ヒットマン)7人衆、『セブンスターズ』。

 世界各国から集まった、様々な人種や性別をもつポリコレに配慮した連中であり。

 

「――まあ、日本のクノイチなど同族に当たり散らしてストレス発散する術がないのだから仕方ないと言ったところか」

 

 そのリーダー格である、2メートルほどの長身をもつ赤毛のアフロヘアーの男が野太い声で吐き捨てた。

 上半身には黒い半袖のTシャツを着て、筋骨隆々の両腕には鮮やかな炎のタトゥーが彫られ。

 首筋から厳つい顔の右頬にかけて、そのタトゥーは伸びていた。

 どっしりした下半身はジーンズを履いて、その両腰にはハンドガンが入ったガンホルダーが二つずつ計4丁備えられていた。

 彼の名は『ダスト・ベイル』。

 オーストラリア出身の暗殺者であり、一週間で小国の要人の8割を暗殺したことがある『ヒットマン界の絶対王者』の二つ名をもつ。

 

 

「そーだよ♪ツルギちゃんはほんと冷たいなあ!日本人のサル同士、仲良くしなよね!えへへっ!」

 

 

 その傍らで、ゴロゴロと喉を鳴らしているライオンに乗った少女が無邪気に笑う。

 金髪のボブヘアと幼い顔立ちが特徴的な、赤いフードつきのドレスを着た童話の『赤ずきん』のようないでたちの小柄な少女だった。

 彼女の名は『ペロ・レオール』。

 相棒のライオン『ジョー』を駆りマシンガンなどの重火器を扱い夜の闇に紛れ、多くの要人を暗殺してきた16歳の少女だった。

 

 

「シュコー……シュコー!」

 

 

 その隣で、ペスト医師のようなクチバシのように先端が尖ったガスマスクで顔面を覆い。

 黒いマントで全身を隠した男が頷いて。

 

「シュコー、シュ、シュコー……シュコー、シュシュシュ」

 

 大きな呼吸音を響かせる。

 彼の名は、『ドーク・ヴェノム』。

 両腕に隠し持った毒矢とナイフで標的を確実に仕留める、ドイツ出身の暗殺者である。

 

 

「何言ってるかわかんねえよ、まあいい……オイ、ツルギ!さっさとそいつを殺させろ!日本人を殺してねえと俺は頭がおかしくなっちまいそうだ!」

 

 

 スキンへっと頭と黒く染められた顔面に白い髑髏の大きなタトゥーが彫られた、いかにも頭がおかしそうな男が口からよだれを垂らしながら叫ぶ。

 両耳には無数のピアスがつけられ、首筋には千切れた鎖のついた首輪がついていて。

 すらっとした長身の身体に白黒の囚人服を着た彼の名は『キル・イレカポンティ』。

 かつては北米同盟に所属していた傭兵だったが、日本のレジスタンスとの交戦で弾丸が頭部を貫通。

 

「日本人の肉が砕けてヨォッ!!血が噴き出る瞬間を見ねえと熟睡できねぇんだよッ!!脳がよぉっ!!痛日本人を殺さないといけねえって叫んでるんだよォオオオッ!!」

 

 一命はとりとめたが、それ以降は精神を壊して暗殺者へと転身。

 日本人を対象に、どんな汚い手でも使い。

 そして標的は可能な限り残虐な方法でいたぶり尽くしてから殺すという、見た目通りに頭がおかしい人間である。

 

 

「あなたはいつもおかしいわよ、ふふふ……しかしいいわねぇ顔は可愛いじゃない、私の生首コレクションの一つにしてもいいわよ」

 

 

 そんな男を見下すようにして隣に立つ、背中まで伸びた黒いウェーブヘアの婦人がニコニコと笑う。

 肩まではだけた深い紫色のドレスを着た、大人の雰囲気をかもし出す妖艶な印象の女性は右手に刺突用の片手剣(レイピア)を持ち。

 その切っ先をナナミに向けて、瞳を細めた。

 彼女の名は『カルマ・バートリー』。

 ハンガリー出身の暗殺者で、レイピアを使った刺突を得意としている暗殺者であり。

 

「私は日本人とて差別はしないわ、綺麗なものは綺麗……でも、どの部屋に飾るかは迷うわねえ」

 

 綺麗で若い女性の身体を解体して自宅に飾り、それを眺めながら血を啜るのが趣味という狂気に満ちた美魔女である。

 

 

「なんでもいいんで早くやりましょうよ……眠い」

 

 

 部屋の隅に置かれたビーズクッションに身体を預けながら、足を組んでアイマスクを外した美少年が投げやりに言う。

 さらさらとした、金髪のウェーブヘアは肩まで伸び。

 少女にしか見えないほどに可愛らしい顔立ちと、大きくきらきらと輝いた瞳とリップが塗られた唇。

 そして華奢で小柄な身体を、ダブダブの大きな紫色のジャージと、ミニスカートに包んだ少年。

 彼女の名は、『アガタ・ノヴァック』。

 生物学的には男性であるが、心は女性のポーランド人であり。

 

「早く帰りたい早く眠りたい何もしたくないさっさと終わらせようよホントやだ」

 

 その可愛らしい外見と残虐性を最大限に活かしたハニートラップで要人の弱みを握ったり。

 純粋に身体能力も高いために普通の暗殺も簡単にこなす反面、非常に労働意欲が少ない気持ちにムラのある暗殺者である。

 

 

「ソウダ、ナンデモイイ、オデ……オデ、ニホンジンコロス、ニホンジンコロス、タノシイ」

 

 

 そんな彼女の隣に立つ、全長が3メートルほどの大男が顔を歪めながら笑って。

 

「ニホンジンコロス、タノシイ」

 

 片言の言葉で、そう言い切った。

 白い肌の身体に人の頭骨を繋げたネックレスを首にかけ、上半身は裸であり。

 

「オデ、親ニ育テラレテ、イキモノコロスノ大切ダトシッタ、コロサナキャイキノコレナイ」

 

 下半身は所々が敗れたダメージジーンズを履いて、足は素足であり。

 右腕には、柄(え)の長い斧が握られて。

 アジア人特有の醤油顔と細い瞳、そして長い耳が目を引く男だった。

 彼の名は『カン・エイジャン』。

 幼い頃に飛行機事故に逢い彼だけが生き残り、アマゾン川に放置され。

 

「デモニンゲンコロスト捕マル、ダガラ、ニホンジンコロス、ニホンジンコロスノハ犯罪ジャナイ、ニホンジンコロス、タノシイ……弱イイキモノコロス、タノシイ」

 

 野生のジャガーに育てられた野生児であったが、7歳の頃に国によって発見され母国に帰還。

 その巨躯を活かした戦闘能力で、白兵戦では無類の強さを誇る暗殺者である。

 

 

「さて、簡単に死んでくれるなよ女……貴様はこの『ダスト・ベイル』様が直々にブッ殺してやるからなあ」

 

 

 そんな一人一人が無類の強さと狡猾さ、個性を誇る『暗殺界のアベンジャーズ』と影で言われ恐れられている集団が『セブンスターズ』であり。

 コーロギン大佐が大金と人脈を駆使してかき集め、オセアニア軍の裏の仕事を一手に引き受けて完遂するのが彼らである。

 現在こそ有人機が普及してしまって役割こそ減ったが、無人機が戦場の主役であった数年前までの日本では、彼らはときに人型兵器(アメイン)よりも活躍した。

 人知れず、アメインにすら探査・知覚されずに無人機の指揮車に接近。

 各々の方法で車両ごと爆破して無人機アメインを無力化し、他の部隊に鹵獲させる。

 そんな戦法すらとることができ、オセアニア軍の一部の人間には『暗殺者(ヒットマン)さえあればロボットは不要』と極論に走る者まで出たという――

 

 

「や、やめて……」

 

 

 ――彼らは、数えきれないほどの日本人を殺してきた。

 命令で、趣味で、癇癪(かんしゃく)で、気分で。

 ありとあらゆる手段で、丹念に、雑に、入念に、簡単に、執拗に、無邪気に。

 ありとあらゆる感情を込めて殺してきた。

 

「残念だったな女、彼らは私以上に殺戮のスペシャリストだ、そのダイコンのようなフトモモごと全身を切り刻まれて豚の餌になるがいい――」

 

 だから、ツルギは彼らに獲物をとられる悔しさを噛み締めつつも。

 眼前の腹立たしい女が無惨にも殺される光景を、眼(まなこ)に焼き付けて。

 現状の自分の惨めさを、不自由な現実を。

 少しでも忘れようと努めた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――数秒の空白。

 

 その間に、すべてが終わっていた。

 

 7人の暗殺者は、その全身をバラバラに切り刻まれて薄暗い部屋に散らばっていた。

 ライオンも、すべての足を捩(ね)じ切られ首を落とされ。

 あれほどまでに息巻いていた7人はまだ熱をもった新鮮な死骸になって、壁には真っ赤な血がブチ撒かれて。

 飛び散った内臓が、べちゃりと生々しい音をたてて壁から落下した。

 

 

「――つまんねえ奴らだったな、戦闘シーンは全カットになるぞこれ」

 

 

 冷たく言い放ち、血まれの両腕を広げ。

 部屋の中央に立って周囲の肉片を見回して、ナナミは残念そうに首をひねった。

 

 

「な、な……なっ!?」

 

 

 その、おぞましい光景に思わずツルギは絶句した。

 

 これは、現実なのか。

 

 悪い夢でも見ているんじゃないか。

 そう、彼女は思った。

 この前、任務の際に深手を負い強めの鎮痛剤を使ったが、今さらその副作用で幻覚でも見ているのかと。

 

(何が、何が……何が起きた!?今、この一瞬で……ヤツは何をした!?)

 

 理解が全く出来なかった。

 忍者として生きてきた彼女は、普通の人間よりも優れた動体視力をもつ。

 

「――おい、おいって」

 

 だがそれをもってしても、この一瞬で何が起きたのか。

 あの七人の精鋭の暗殺者(ヒットマン)の身体をどのようにバラバラに切り捨てたのか。

 殆どの者が銃火器をもっていたはずだ。

 ライオンすらいたはずだ。

 しかし、数秒でそれはすべて一方的に虐殺された。

 

「なんか気の利いたこと喋れよクノイチ、つまんねー女だなお前」

 

 武器らしきものを全く持っているようには見えない、この女に――

 

「き、貴様はいったい何者(なにもの)――」

 

 気が遠くなるような感覚を振り切って、ツルギは振り返ったナナミに問いかけつつ。

 腰に備えた小刀を引き抜いて構え、彼女に抵抗しようと駆け出そうとする。

 だが――

 

「――ぎゃあああっ!?腕がッ!?ぎいぃい!?」

 

 ――構えた瞬間に、その腕は綺麗に両断され。

 肉眼で動体視力をフルに使用したが、ナナミが右腕を振り上げた動作をした。

 

(反応できなかった、動きは見えたが……何が起きたか理解できなかった!!)

 

 それぐらいしか、ツルギには分からなかった。

 振り上げた動きに呼応するようにして、腕が切断されたようだった。

 

「私が何者かって?ただの日本人だよ、人より優れて生まれた……アニメが大好きな美少女様だよ」

 

 そして、ようやく彼女は理解した――

 

 

「なあ、お前アニメ好き?……『ロボットアニメ』って見る?」

 

 

 ――眼前で瞳を見開いて笑う女が、人の姿をした『化け物』であり。

 関わってはいけない存在であることを。

 

「ろ、ロボットアニメ……だと?知らんッ!!」

 

 逃げたい。

 今すぐここから、逃げ出したい。

 だが、全身の細胞に走る危険信号で理解できた。

 逃げ切れるわけがない。

 

「日本のロボットアニメってすげーんだぜ、面白くて自由でかっこよくてさ……シナリオも良い、80年代のリアルロボット作品もいいけど、スーパー系もいいよな」

 

 既に生殺与奪の権理は、眼前の『化け物』が握っているのだと。

 ツルギは本能で理解した――

 

「き、貴様はなにを言っている……なぜ、こんなことをッ!!これほどの強さをもっていながら、なぜレジスタンスに甘んじている!?」

 

 だが、吠えずにはいられなかった。

 あらゆる理不尽に、耐えてきた。

 

「お前はなぜ……こんなところにいるッ!!」

 

 忍者の家に生まれた理不尽、日本人として蔑まれ、利用され、同族を殺していく理不尽。

 すべてに耐えてきた彼女でも、眼前の存在の理不尽さには耐えられなかった。

 

 人知を超えた能力(ちから)を持ちながら、飄々として力を隠し。

 

 地方の一レジスタンスの一員として、こんなちっぽけな施設を蹂躙するために戦っている。

 そんな存在を、彼女は許せなかった。

 

 

「『ガンダムシリーズ』を見るため」

 

 

 だが眼前の少女は、心底嬉しそうにそう語る。

 言葉の意味は、分からない。

 

「日本が没落したせいで、『ガンダムシリーズ』が途中で作られなくなった……っていうかロボットアニメ、アニメ全般作られなくなった」

 

 一つも、ツルギには理解できない。

 言葉は通じているはずなのに、話が通じない。

 

 

「だから私は、私の創った最強のロボットで本気で日本を奪還させるんだよ、その最強のロボットを扱えるヤツを探してた――誰でもいいわけじゃないんだ、乗るヤツはマジで大事なんだ」

 

 

 同じ言葉で話しているような感じがしない。

 

「でもよーやく見つけたかもしれない、最強の操作技能と精神性をもった主人公、新しい日本を引っ張っていける最高の日本人……主人公がッ」

 

 だが、しゃべり続ける彼女の眼差しや表情は至極真面目であり。

 

 

「そんで、そいつの治める新しい日本で新しいアニメ制作会社を作って、時間をかけてアニメーターやスタッフを育ててノウハウを取り戻す、そンで――」

 

 

 拳を握りしめて、彼女は宣言する。

 ツルギには何一つ理解できない。

 

 

「――『ガンダムシリーズ』の完全新作を創る、それが私の戦う理由だ」

 

 

 だが、満面の笑みを浮かべて両手を広げた彼女を見て。

 次の瞬間には、ツルギの全身に切れ目が入り。

 

 

「だから、お前も糧(カテ)となれクノイチ……その弱者に甘んじて不満だらけの瞳が、私は本当に嫌いだったよ」

 

 

 その意識は一瞬で暗闇の中に消えていくのだった。

 

 

 つづく

 

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