夢の中で出会ったドラゴンは病んでいた   作:ドラゴンの夢

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第13話

「ユウトッ!」

「エンド様……おっと」

 

 眠りに落ちた瞬間に待ち構えていたエンド様が俺に飛び掛かってきた。

 

「――んっ」

 

 触れるだけでも分かる熱を宿した身体と情欲で濡れた瞳は間髪入れずに唇を奪い、俺の一日のプライベートの全てを覗き見て、そしてエンド様の一日が俺に流れ込んで来る。

 

 隠し事出来ないってちょっと怖いな……互いに見せ合うから問題ないけど。

 

 流れ込むエンド様の一日の記憶は凄まじいものだった。

 俺が消えてから再び現れるまでの間はずっと発情をし続け、自身の産んだ子に殺される事を夢見ながら疼きを抑えてひたすらに欲望を高め続け、その結果が俺に現れた瞬間に抱き着くという行動に帰着した。

 

 あー……これマジでヤバい。絶対に逃げられないし、俺が目覚めるまで完全に搾り取るつもりだわ。この歳でパパになるのはちょっと準備が……。

 

 そんなことを考えながら記憶の共有を終えると、エンド様の情欲に塗れた瞳には僅かな嫉妬の炎が見え隠れしながらも蕩けた笑みで頬を擦り。

 

「眷属を作ったのは気に食わぬが、これより我とユウトで子を作るのだから不問とする。それに準備もしてきているとは良い心掛けだ」 

 

 どうせ抵抗しても無駄だからと寝る前にトイレと風呂に入り全裸で就寝した。きなこには寝ている間は消えるから絶対に俺に触れるなと厳命して、覚悟を決めて望んだ訳である。

 

 本来なら説得を考えたけど……これは絶対に無理だ。諦めよう。

 

 この歳で父親になるということは、子供が一人立ちするまで俺の数十年を捧げる事であるが、子供は嫌いではないしどうせ止められないのなら、せめて愛し合って出来た子であると胸を張って産まれる子に教えられるようにするしかない。

 

「覚悟を決めたようだな、ユウト。己の全ての力を子種に注いで最高の仔を作ろうぞ」

 

 足を絡ませて、目覚めるまで絶対に離さない意志を感じさせる声音で囁く。俺は爆発するような自身の鼓動とエンド様の鼓動を聞き。

 

「せめて地球を滅ぼさない良い子にしような」

「それはユウトの教育次第だ。我は終焉の素晴らしさと本能をたっぷり教え込むからな」

「パパの責任重大過ぎる……」

 

 身体が重なり、唇を重ねて互いの五感を共有しながら二つの意識が溶け合う。そして底なしの情欲と子を為すという原初の本能の赴くままに互いに交じり合い――

 

「我とユウトの仔……あぁ……早く欲しい」

 

――この世を終わらせる最強の終焉の竜が芽生えようとしていた。

 

 

☆☆☆

 

 

「ユウト様……どこに行ってしまったんだろう……」

 

 僕はユウト様の居なくなったベットの上で、僅かに残る温もりの中で身体を温めていた。力を頂いても心に刻まれた死の恐怖はまだ僕の心を侵食していた。

 

 早く会いたいなぁ……朝になれば戻るって言ってたけど、僕には怖くて怖くて仕方ないよ。もしこのまま消えてしまったら僕はどうすれば良いんだろう……。

 

 神様の居ない最悪の世界を想像して僕は身震いする。もう二度とあの手の温もりも、声も神様の何もかもが二度と感じられない世界は僕には地獄だ。

 

「眠れば僕もユウト様に会いにいけるかな……?」

 

 神様に出会って、その腕の中に抱きかかえられ眠り、神様の部屋でその膝の上に乗りながら温もりを感じる幸せを思い出しながら僕は目を瞑る。

 ドクンドクンと脈打つ自身の鼓動を聞きながら、神様との記憶を何度も何度も何度も回想して、その幸せな記憶の中に溺れて睡魔が襲う。僕の死の恐怖を遠ざけてくれる神様のベットに染み込んだ匂いを嗅ぎながら僕は闇の中に沈みこむ。

 

 朝起きたら神様がいて……僕を愛してくれて……そして僕は……僕は……。

 

――眠りに落ちる寸前、僕の心には神様に愛でられる以上の何かになりたいという気持ち気付いて意識が途切れる。

 

 

 深い意識の底に沈んだ僕を引き上げたのは神様の気配だった。

 

「ユウト様!」

 

 目を開けば僕はユウト様のお腹の上に乗っていて、その温もりに心から安堵を覚えるとともに神様が身じろぎ一つしないので視線を向けると――

 

「ユウト様……どうしたのですか?……ッ!神様ッ!!」

「ぅ……ぁ……きなこ」

 

――僅か一晩の間に何が起きたのか憔悴しきった瞳で僕を見て弱弱しく微笑んだ。

 

 神様の手が僕の頭を撫でるけど、喜びよりもその生気の抜けた神様の容態に僕の心を不安にさせる。

 僕は何があったのか知りたくて、

 

「一体何があったんですか?!ユウト様のお身体はどう見ても昨晩より変です!」

 

 思わず叫んでしまう。眷属としてユウト様の力に陰りはないことは理解しているが、精神的に憔悴しきっているのは明らかだった。

 

「ちょっと子作りで力を使い過ぎてしまってね……。うん、流石に一晩もぶっ続けで力を全力で注ぎながらの愛し合う行為はとても体力を使うんだ……」

「……ッ!」

 

 ナニかが僕の心に刺さって痛みを伴った。流れる血は感情となり渦巻くどす黒いモノは心を染め上げる。

 

 僕は神様の一番のペットなんだ……それなのに僕を差し置いて神様と愛し合うなんて……ッ!それは僕が与えられる役割なのに……ッ!

 

 僕はこの世でもっとも強い存在である神様の眷属。そしてもっとも愛されるペット。僕以外のナニかが神様と愛し合うと言う事態に言葉に出来ない感情が吹き荒れる。

 

「どうした……きなこ?一人にして怒っているのか?」

「そんなことはありません!僕はただユウト様をこんな風にするナニかが許せないだけです!」

 

 こんなに力を使って主様を弱らせるナニが僕は許せなかった。殺してやりたいと思うけど、それでも神様の大切なモノなんだと思って耐える。

 すると神様は僕を抱き寄せて、

 

「これは俺とエンド様が望んでやった行為だから後悔はないし、この程度の疲労なんて一時間もせずに全快するから心配しなくて良いぞ、きなこ」

「……………………………はい」

 

 抱きしめられる幸せとエンド様と言う存在に対する嫉妬と憎悪を抱きながら、僕は幸せと嫉妬の混じった複雑な胸中で神様に愛でられる。

 

 エンド……エンド……エンドエンドエンド……ッ!僕から神様を奪うな……ッ!

 

 僕こそが神様に愛されるもっとも相応しい存在なのに、それを邪魔するエンドというまだ見ぬ敵に僕は憎悪を募らせるのだった。

 

 

★★★

 

 

「腹に溜まる力が凄まじい……ふははは、これは本当に楽しみだ……ッ!」

 

 気を抜けばその力に飲みこまれそうになる我は、久しく全力で己の力の制御に尽力をしていた。

 

「我の与えた力が何十……何百倍となって注がれて芽生えた命……これは本当に凄まじい仔が誕生するぞ。それまで我が持つか心配になってきたわ!」

 

 芽吹いた命は凄まじい力を伴い、今にも我の身体を壊してしまいそうな程に強大な力を秘めていた。まさに終焉のエンドである我の力を持つ仔に相応しく破滅的で、愛おしくて堪らずに腹部を撫でる。

 

 萌芽したばかりで母体を壊しかねない力を放つとは、これは産まれるまで気が抜けんな。くくく、予想以上の相性であったなユウト。

 

「ガァ……ァ!……グッ……ッ!ここまで心躍るのは初めてだぞ?産まれてきたらたっぷりと我とユウトで愛でてやるからな……ふぅー……ッ!ふぅー……ッ!」

 

 言葉を話す余裕すら与えない手の付けられない我が子に思わず笑みがこぼれる。愛しい眷属との愛の結晶の生命の波動に母親としての母性が芽生え始めるのを感じながら。

 

 ふははは!我とユウトで心の底から愛して育ててやるから……最後には我に終焉を与えてくれ。

 

 肉体を構成する全てが愛しい我が子の力により崩壊寸前の激痛の中、魂の全てに満ちる満足感と共に我は全身全霊を籠めてこの終焉の仔をお腹の中で育てるのであった。

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