ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

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第12話:ピカチュウの大機転

王女とそれに従うメイドを誘拐し、2人をインキュバスの妻にすると脅して大金を得ようとしている大男と対峙するグートミューティヒ。

「その前に、お前達の様な僕の大嫌いな悪党を、檻の中に放り込んでやる!」

グートミューティヒの宣戦布告に対し、それを鼻で笑う大男。

「檻?この俺に勝てるとでも?」

グートミューティヒが気にする事は目の前の大男との実力差ではない、大男とその部下の性根の腐敗具合である。

「勝ち目有る無しの問題じゃない。お前達が紳士か屑かの問題だ!」

それも鼻で笑う大男。

「偽善者の様なつまらん考えだな。お前、人生の100割を損しているな?」

「黙れ。俺は罪悪感に圧し潰されるつまらない人生を歩みたくないだけだ」

大男はグートミューティヒとの口論に飽きたのか溜息を吐いた。

「お前の様な偽善者はもういいわ。インキュバスの妻になっちまいな」

大男はグートミューティヒにインキュバスをけしかけるが、何故かインキュバスのノリが悪い。

「ぎ?」

「ギ?」

(何!?見境無く女を犯す筈のインキュバスの食い付きが悪い!?まるで目の前の偽善女を女として診ていない様な……)

大男の最悪な予想は、インキュバスがグートミューティヒを無視してアムを襲う形で現実となった。

「やっぱり!あそこの糞男より私の方が美味そうに見えたか!?」

「おい!そっちの偽善女はどうするんだ!?」

今度はグートミューティヒが鼻で笑う。

「偽善女か……誉め言葉として受け取っておくよ!」

それが大男の隙となり、グートミューティヒにモンスターボールを投げつけられた。

「ピカチュウ!頼んだ!」

モンスターボールから威勢良く出たピカチュウは、先手必勝とばかりにエレキボールを放つが、

「く!?……ふん!」

大男が持つ盾に弾かれてしまう。

「ピカ?」

(やはり正面からの攻撃は駄目か?それにアイツは、鎧を着てばかりのせいで雷に弱くなった事を理解して『雷避けの盾』を使用している!)

それに、グートミューティヒにとって都合が悪い事をそれだけではなかった。

「は!く!?……くそ!この馬鹿サキュバス!この俺に食い付きやがった!ふざけるな。自信を無くすだろ!」

グートミューティヒを襲い犯そうとするサキュバスを観て混乱する大男。

「……見境無く男を犯す筈のサキュバスが偽善女を襲うだと?何がどうなっている?」

で、グートミューティヒを襲ったサキュバスはピカチュウに退治された。

「サンキューピカチュウ。でも……インキュバスじゃなくてサキュバスに襲われたのは、やっぱ凹むなぁ」

「……意味が解らん……あのサキュバスはレズビアンか?」

 

サキュバスに襲われたショックに蝕まれているグートミューティヒだが、気を取り直して倒すべき敵である大男を睨む。

「やはり……頭が悪いザコモンスターや駄目手下では埒が明かん様だな?」

そう言うと、大男は鎖付きの鉄球を頭上で振り回す。

「お頭!?ちょっと待って!俺が巻き込まれてる!?」

大男の攻撃を慌てて避けるダイスケを視て、大男の自分勝手に呆れるグートミューティヒ。

「危ないなぁ……味方に当たったらどうする心算だったんだ?」

だが、大男の味方の心配をしている暇は無いと言わんばかりに鉄球をグートミューティヒに投げつけた。

「と?……危ない!こいつ、雷避けの盾と言い……戦い慣れしている!」

そうこうしている内に、ピカチュウが大男の背後に回り込もうとするが、大男はそれを察して鉄球を後ろに放り投げた。

「ピカ!?ピカァー!」

「エンジェル!」

グートミューティヒが放った光弾は、大男の雷避けの盾に阻まれて大男には届かない。

「やっぱ駄目か」

大男はグートミューティヒの頭上に向けて鎖付き鉄球を振り下ろした。

「ふん!」

「うわ!?あぶねー!」

辛くも避けるグートミューティヒとピカチュウだったが、このままジリ貧だと癪に障る。

それに……

「それだけの力を持ちながら、自分勝手で自己中とはね……もったいないねぇー!」

「下らんな偽善女。そんな事だから貴様は大損しかない人生を送っているのだ」

グートミューティヒと大男の意見と信念は、何時まで経っても平行線のままである。

「……なっさけないな。貴様も僕も」

そんな中、インキュバスを退けたアムが大男に向かって雷を放った。が、

「ふん!」

「盾!?あの盾、何で出来てるのよ!?」

自身の雷が大男に効かない事にアムが驚く中、グートミューティヒが何かを思い浮かんでピカチュウに目で合図した。

「アム!アイツの周りを回れ!」

だが、肝心のアムが意味を理解出来ていなかった。

「回れ?何の事?」

「周れ?どう言う―――」

「いいから泳げ!アイツの周りを!」

「あ……あぁ……」

グートミューティヒとピカチュウは意気揚々と、アムは首を傾げながら、鎖付きの鉄球を乱暴に振り回す大男の周りを回った。

「何!?くそ!」

大男が走り回るグートミューティヒ達に向かって、イライラしながら鉄球を振り回し、投げつけ、振り下ろす。

だが当たらない。

「くそ!くそ!くそぉー!」

しかも、ピカチュウに再び背後を盗られ、ピカチュウのでんじはを防ぎきれずもがき苦しむ。

「ぐおぉーーーーー!」

ここで漸くグートミューティヒの作戦を理解したアム。

「……なるほどね♪あの変な盾の外なら撃った雷が当たると?」

カッコつける様に指を鳴らすアムに呆れるグートミューティヒ。

「アム?君はこいつの何を視たの?」

 

一方、大男から王女を奪還しに来た軍隊は混乱した。

「あの娘……モンスターを見事に操ってる」

「何で?あのモンスターは彼女の言う事を素直に聞くんだ?」

それに対し、隊長は冷静に戦況を観て何らかの目論見が浮かんだ。

「今の内なら……姫様を助け出せるのでは?」

「え?」

隊長の思惑に困惑する軍隊。

「……あの娘はどうするのです?」

「バカ!声が大きい。この好機を逃す気か?」

「ですが―――」

だが、軍隊の困惑に反し、隊長の目論みを察したかの様に微笑むグートミューティヒ。

「ん?」

「おーい!こっちだぁー!」

グートミューティヒの声に反応して鉄球を投げつける大男だが、グートミューティヒはそれを簡単に避けて光弾を放った。

「エンジェル!」

「クドイ!」

グートミューティヒが発射した光弾は雷避けの盾に阻まれてしまったが、怪我の功名とばかりにアムが放った雷が大男の背中に命中する。

「があぁーーーーー!」

「こんな金ピカ鎧を四六時中着てたら、雷に弱くなるわな!」

それを視たグートミューティヒは、隊長の顔を見ながら力強く首を縦に振った。

そして、静かにかつ力強く命令する。

「行くぞ。この隙に姫様の許に向かうのだ」

だが、グートミューティヒと隊長はダイスケの存在を失念していた。

「あ!?お頭!お頭!あいつら逃げやすぜ!?」

ダイスケに見つかってしまった隊長が悔しそうに苦虫を噛み潰した様な顔をした。

「ぐ!?しまった!」

「あの馬鹿!エンジェル!」

勢い余ってチクリを犯したダイスケに向かって光弾を放ってしまうグートミューティヒ。

そんな隙を見落とさない大男は、最後の手段に打って出る。

「くらえぇー!」

大男の最後の手。それは、頭頂部を前に突き出しながらのタックル頭突きだった。

「うわ!?うわぁー!」

それに気付いたグートミューティヒが慌てて走る中、

「ピカ?」

ピカチュウは大男の何かに気付き、大男の背中に飛び乗った。

「ピィー……カアァー!」

「ゴオォーーーーー!?」

ピカチュウの渾身のでんきショックのもがく苦しむ大男を尻目に、ピカチュウは大男の兜を奪って乱暴に投げ捨てた。

 

「ピカ!」

ピカチュウが兜を奪って投げ捨てた事で、大男は兜に隠した素顔を晒す事になったが、

「……え?」

「あれは……確か……」

「ちょ!?」

「お……お頭……まさか……」

大男の正体に敵味方関係無く驚いた。

何故なら……

「サイクロ……プス……」

そう!

山賊を束ねていた大男の正体は、単眼巨人の『サイクロプス』のメスだったのだ。しかも、絶世の美少女である。

「え?……は!?」

サイクロプスのメスは自分の声が変わっている事に気付いて慌てて兜を探すが、もう何を言っても引き返せない位置にいた。

「あー、なるほどね♪人間のフリして山賊や犯罪者を操って、上手い事魔王軍に都合が良い展開を造り出そうと……そう言う訳ね?」

しまったと思ったサイクロプスのメスだったが、グートミューティヒの言う通り彼女の計画は完全に露見していた。

一方、アムはスカルオクトパスにトドメを刺した時にグートミューティヒに言われた警告を思い出して蒼褪めた。

『考え直せアム!アムがそいつにトドメを刺せば、アムは魔王軍での居場所を失うぞ!』

「私ぃ……もしかして随分ヤバい所にいるって言うの?」

金色のプレートアーマーで正体を隠していたとはいえ、サイクロプスのメスをただの人間と勘違いして何度も攻撃してしまったアムは、滝の様な大量の汗を掻きながら真っ青に蒼褪めた。

「アム……今頃気付いてももう遅いから」

一方、ダイスケも蒼褪めていた。自分達が無意識下で魔王軍に加担していたからだ。

「嘘だろ?……お頭が……サイクロプスの……メス……」

グートミューティヒにしてみたら、山賊に堕ちて強奪とポケモン虐待の限りを尽くした悪人が何を今更と言った感じだったが。

「お前はどの道駄目」

その間、サイクロプスのメスは体を震わせていた。

「見たな……見たな……」

そして、サイクロプスのメスは見境無く周囲を攻撃し始めた。

「見たなぁーーーーー!」

自分までサイクロプスのメスの攻撃にさらされて慌てるダイスケ。

「落ち着いてくれお頭!俺は今日の事を誰にも話しませんので!」

だが、サイクロプスのメスの見境無い攻撃はダイスケにも容赦なかった。

「お前ら全員死ねえぇーーーーー!」

「えーーーーー!?」

ダイスケが混乱しながら逃げ回る中、諦めの極致にいるアムはただ静かに訊ねた。

「私も裏切り者って訳ね」

だが、アムの質問は焦り狂うサイクロプスのメスの耳には届かない。

「みんな死ねぇーーーーー!」

で、サイクロプスのメスからの攻撃に納得しながら回避するアム。

「やっぱりね!」

で、目の前の混乱を重く視たグートミューティヒはピカチュウにサイクロプスのメスへのトドメを命じようとしたが、

『私の許へ来い』

聞き慣れない声がいきなり聞こえたので、注意深く周囲を見渡すが、そこにいるのは慌てるダイスケ達と回避を続けるアムとピカチュウだけ。

少なくとも、誰かが誰かを呼ぶ余裕は―――

『君の仕事が近付いている。だから、私の許へ来い』

「誰だ!?誰が僕を呼んでいる!?」

声の主はグートミューティヒの質問には答えず。

『私の許へ』

すると、グートミューティヒの目から光が消え、突然変な踊りを踊った。

それを見たアムは、グートミューティヒを呼ぶ声が聞こえていない事もあってか、遂に本当に変になったと勘違いした。

「……何やってんの?」

しかし、その疑問はピカチュウの異変によって氷解した。

「何!?あのオーラは!?」

サイクロプスのメスもそれに気付いたのか、慌ててピカチュウを攻撃した。

「どいつもこいつも死ねぇーーーーー!」

そんな中、グートミューティヒが力無く呟いた。

「スパーキングギガボルト」

すると、ピカチュウは雷撃の槍を作り出し発射する。

「何と!?……ぬん!」

サイクロプスのメスは雷避けの盾で防ごうとするが、呆気なく溶解してサイクロプスのメスを跡形も無く消滅させた。

「ぐお!?お!?おーーーーー!?」

スパーキングギガボルトの圧倒的な破壊力に、アムと軍隊は呆然とし、ダイスケは慌てて逃げた。

「ママぁーーーーー!」

ダイスケの情けない叫びで目を覚ましたアムは、グートミューティヒに声を掛けようとするが、反応が無く、ピカチュウも勝手にどっかに行ってしまった。

「……どうなってるの?」

 

グートミューティヒが目を覚ました。

「……あれ?僕は大暴れしているサイクロプスを止めようとして……」

そこで、意識を失う直前に聞こえた謎の声の事を思い出した。

「そうだ!誰かに声を掛けられて!」

が……

「……あれ?その後の記憶が無いぞ」

そこへ、ピカチュウを追っていた軍隊がグートミューティヒの許に戻って来た。

それを見て、大慌てしながら言い訳をしようとするグートミューティヒ。

「あ……彼らは違うんです!彼らはポケモンと言って―――」

「ぽけもん?それは、姫様の恩人の事か?」

軍隊の言ってる事がまったく解らず首を傾げるグートミューティヒ。

「え……恩人?」

「ああ、姫様とその同行者を強姦しようとしていたインキュバスなら、そこの黄色いのが追っ払ってくれたよ」

「ピカ!」

自信満々に声を上げるピカチュウだったが、グートミューティヒはますます混乱した。

「ピカチュウが人質を助けた?何時?」

「ピカ?」

そんなグートミューティヒに懐疑的になるアム。

「何言ってるの?アイツを跡形も無く消して以降のアンタ、もの凄く変よ?」

「変って……何が?」

「何がって……あんた、まさか立ったまま寝たって言うの?」

アムの「立ったまま寝ていた」に辻褄が合うかの様な納得感を感じるグートミューティヒ。

「だとしたら、あの時の声は夢か?」

「夢?……冗談でしょ?」

で、人質を救助した軍隊と共に下山したグートミューティヒだったが、彼自身はずっと消えた記憶の事について悩んでいた。

その後、王女救出の最大の功労者と言う事で王様に謁見する事になったグートミューティヒだが、どうも頭が混乱した。

「我が娘を助け出してくれた事、まことに感謝する」

「何したの?僕?」

とは言え、本音を言えば部外者が図々しい事を言っている気分だが、この好機を逃す訳にはいかなかった。

「そこで、其方に褒美を与えたいのだが、何が良い?」

「僕が魔王軍と戦う理由はただ1つ!人間とポケモンが仲良く暮らせる様にする為でございます!」

「ぽけもん?それは何だ?」

グートミューティヒはポケモンに関する知識を慎重かつ丁寧に説明した。勿論、魔王軍所属のモンスター群とポケモンが完全に別物である真実を付け加えた事は言うまでもない。

「すまぬ……話が永い」

「でしたら、僕の恩師に手紙を書かせてください。この国に来る様にと」

国王は首を傾げた。

「わしから貰う褒美は、本当にそれだけで良いのか?」

グートミューティヒは喜んで答えた。

「僕のワガママに付き合ってくれたこの御恩!僕は一生忘れません!」

「……無欲よのう」

こうして、グートミューティヒの育ての親達がこの国に招かれ、彼らのモンスター研究を全面的に協力して貰える事となった。

 

だが、

「なんだろう……僕の働きとそれに伴う報酬が釣り合わない気がして、すっげぇ罪悪感」

「罪悪感?アンタが悪さする姿が想像出来ないんですけど?」

「でもさ、やっぱりあのサイクロプスを倒した実感が無いんだよ」

アムはグートミューティヒの言い分に困惑する。

「あんたまさか、無意識の内にあいつを倒したって言うの?」

グートミューティヒは頭を掻く。

「無意識?まるで僕の体が勝手に……は!」

グートミューティヒが思い出したのは、あの時の謎の声。

「つまり……僕はあの声に操られていた?」

アムはますます困惑した。

「……しっかりしてよね。アンタの生き死に私の運命が懸かってるんだから!」

「え!?」

「その理由はアンタの予想通りよ!」

「……やはり、あの糞蛸のせいで裏切り者扱いって事?」

「そうよ。文句ある?」

こうして、アムと共に人間とポケモンが仲良く共存出来る時代を目指して再び旅を始めたが、

(問題はあの声の主が僕に何をする気かだ?あの声は本当に味方なのか?それとも……)

そんなグートミューティヒの疑問の答えが見つかる日は何時になるのか?そして、それが何を意味するのか?

そんな不安を抱えながら、グートミューティヒは旅を再開するのであった。




鉄球兵士Lv30

HP:4200
EX:2000
耐性:打撃、斬り
弱点:雷
推奨レベル:18

悪徳山賊の頭領。王女を捕らえ、王女をインキュバスの妻にすると言って脅して大金を手に入れようとした。
常に金色のプレートアーマーを着用しているせいで雷属性が弱点になってしまったが、正面から攻撃を雷避けの盾で防いでしまう。また、複数のインキュバスとサキュバスを従え、鎖付きの鉄球を振り回す。
その正体はサイクロプスのメスで絶世の美少女。
因みに、勇者マドノの予想推奨レベルは26。

攻撃手段

鉄球振り回し:
頭上で鎖付きの鉄球を振り回す。

鉄球振り下ろし:
鎖付きの鉄球を振り下ろす。

鉄球突き出し:
鎖付きの鉄球を突き出して相手にぶつける。

ダッシュ頭突き:
頭頂部を突き出しながら突進する。壁にぶつかると気絶する。

インキュバス召喚:
インキュバスを2匹呼び出す。

サキュバス召喚:
サキュバスを2匹呼び出す。

手下を呼ぶ:
山賊の手下を5人呼び出す。
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