ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

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第16話:ポケモントレーナーVS悪徳勇者

グートミューティヒとアムは無慈悲で自分勝手な経験値稼ぎを繰り返す事への怒りから、マドノ一行は無秩序にボスモンスターを倒してダンジョンからザコモンスターを追い出す行為への怒りから、両者は激突する事になった。

グートミューティヒは早速、所有ポケモンを全てモンスターボールから出した。

「本性を出したな魔王軍のスパイ」

マドノの見当違いな言い分に首を傾げるグートミューティヒ。

「は?」

「はじゃねぇよ。お前がボスモンスターを倒すフリしてダンジョンからモンスターを追い出したのは、俺達の経験値稼ぎを邪魔して魔王を勝たせる為なんだろ?」

呆れて溜息を吐くグートミューティヒだが、その隙にマドノ、フノク、ンレボウがグートミューティヒ達に向かって突っ込んだ。

「いきなり突撃戦法かよ!?」

そこで、マドノ達3人をムウマに任せ、ムウマとメタモン以外のポケモンをマシカルに向かわせた。

(マドノ率いる勇者一行の中に防御担当がいたから、メタモンにそいつの足止めを頼むつもりだったが……)

マドノ達3人は経験値稼ぎを目的とした雑魚狩りに没頭し過ぎた代償を早速支払う羽目になった。

ムウマがマドノ達3人に攻撃され続けたが、ムウマは全くの無傷なのだ。

「なんだ!?あの黒いのは!?当たらない!」

経験値稼ぎを目的とした雑魚狩りの影響で、マドノ達の攻撃パターンが単純化していたのだ。

何故なら、経験値を稼いでレベルを上げ過ぎた故に大抵のザコモンスターは通常攻撃だけで倒せてしまうからだ。

だから、相手の属性に合わせて攻撃を変える必要性が薄れてしまったのだ。

生憎、ムウマはゴーストタイプのポケモン。かくとう・ノーマルタイプのわざは、効果無しとなる。しかも、ムウマはふゆうという特性を持っている。故にじめんタイプのわざまで効果無しなのである。

だから、ムウマに対して無知で何の工夫も無い攻撃は無力なのである。

(馬鹿だなぁこいつら?ノーマルとかくとう以外の攻撃をすれば良いだけの話なのに)

故に、マドノ一行との戦いで最も危険な存在をどう封殺するかがこの戦いの分水嶺。

それがマシカルである。

ウォーロックである彼女はノーマル・かくとう以外の攻撃である黒魔法が使え、相手の属性に合わせた戦いが出来るのである。

だからこそ、ムウマとメタモン以外のポケモンをマシカルに差し向けたのだ。

「ぐ!?」

ピカチュウ達に呪文詠唱を妨害されたマシカルは、手にした杖でピカチュウ達を殴打しようとしたが、強力な黒魔法に頼り過ぎた事もあってかその動きはほぼ素人である。

メタモンにある事を命じながらピカチュウ達に苦戦するマシカルの方を視るグートミューティヒ。

(良し!いいぞピカチュウ!このままあの魔法使いの黒魔法を阻止すれば、こっちにも勝ち目は有る!)

 

一方、アムは隙あらばマドノを殺そうと様子見していたが、グートミューティヒの戦術に翻弄されるマドノ達を観ていると、あまりの情けなさに殺意が阻害される。

「なんだこれ?完全に遊ばれているじゃん」

しかも、グートミューティヒの平均レベルは22なのに対し、マドノ一行の平均レベルは34。普通に考えればマドノの圧勝で終わる筈である。

だが、蓋を開けてみれば格下のグートミューティヒの戦術が格上のマドノの戦法を凌駕しているのだ。

それは、諄い様だが魔王軍と戦う決意をしてから今日までの言動が影響していた。

グートミューティヒは初めから相手のタイプに合わせた戦い方を心がけており、マドノ一行の非道さを目の当たりにした事とお人好しな性格が災いしたのか、経験値稼ぎをサボった状態で格上のボスモンスターと戦う事を余儀なくされた影響で、グートミューティヒの戦術は十分に磨かれていた。

その一方、マドノ一行は事前に目標レベルを多めに設定し、目標レベル到達までボスモンスターとの戦いを避けて雑魚狩りに没頭。よく言えば慎重。悪く言えば臆病な戦略が、マドノ一行から格上との戦いを奪い、戦術の幼稚化・単純化を招いてしまったのだ。

そんな圧倒的な戦術差を魅せられたアムは、グートミューティヒの殺害を決意してから初めて敗北を認めた。

(ああ……グートミューティヒはただ強いのではなく、狡賢いんだ……こりゃもう敵わないや)

その上で、アムが攻撃したのは……マシカルであった。

「ちょっと!?ただでさえ1人でこれだけの数を相手にしているって言うのに!」

「あの女装糞男がアンタに攻撃を集中するって事は、あの糞男にとってアンタが厄介って事でしょ?」

「ちょ!?私があの女装小僧に何したって言うのよ!?」

「そんな台詞が出る時点で、あの糞男の事を解っていないのはアンタの方よ。アイツは、そんなくだらない憎しみを戦い方に盛り込む程バカじゃない」

アムの言葉通り、マドノ一行の中でゴーストタイプのポケモンを殺せるのはウォーロックであるマシカルのみであり、他の3人はムウマのゴーストタイプとしての特性を生かした防御策に完全に翻弄されていた。

しかも、その3人がこの戦いで最も重要なマシカルを無視してムウマへの無意味な攻撃を繰り返しているのだ。

1対3で3の方が苦戦していると聞かされれば、1の方が強いと誰もが思ってしまうだろう。

そこが戦術の幼稚化の怖いところである。

 

戦いも終盤になった時、ポケモン達に指示を出していたグートミューティヒが突然戦闘とは関係ない事を言い始めた。

「ここまでハンデ……もとい白星を貰って負けたら、僕は言い訳出来ないね」

グートミューティヒと違ってちゃんと経験値稼ぎを行っている自負があるマドノにとっては聞き捨てならない言い分だった。

「俺達がお前に勝ちを譲っただと?何を言ってる!俺達はまだまだ動けるし戦える!」

「違うよ馬鹿脳筋。僕はもうお前達から白星を貰ってんだよ。特にそこの斧を持ってる奴」

グートミューティヒに指を指されたンレボウが困惑する。

「な!?なんて濡れ衣!私はちゃんと攻撃してるじゃないか!」

ンレボウの頭の悪さに呆れながら説明を続けるグートミューティヒ。

「ちゃんと攻撃してる?アホかお前は?」

「ダニィ!?」

「つまり、そこの斧を持ってる奴がムウマを攻撃してくれたと言うハンデをお前達から貰ったの僕は」

マドノ達は馬鹿を観る目でグートミューティヒを見た。

一方のグートミューティヒは、マドノ達が何故停まったのか解らなかった。

「何これ?どう言う事?」

マドノは呆れながら自分の頭を人差し指でトントンと叩いた。

「お前は馬鹿か?」

「僕が?」

「そうだよ。攻撃をしないといつまで経っても勝てないだろ。そんな事も理解出来ないのかよ?」

その途端、グートミューティヒは改めて勝利を確信した。

「勝った勝った勝った!ありがとうございます!」

拍手しながら勝利宣言をするグートミューティヒを見て、改めて呆れるマドノ達。

それに反し、アムはグートミューティヒが何かを企んでいると予感し警戒した。

(これは何かある……今度は何を始める気だ?)

一方、今度はマシカルの方を指差すグートミューティヒ。

「なら……何で僕のパートナー達はあそこの魔法使いしか攻撃していない?」

その途端、マシカルがバツが悪そうに汗だくとなる。

が、相変わらずグートミューティヒの言ってる意味が解らないマドノ達は呆れ果てた。

「何言ってんだお前―――」

「つまり、お前は彼女の黒魔法の本当の価値を知らないって事だよね?」

「ダニィ!?」

そして、勝ち誇りながら勝因を高々に語り始めるグートミューティヒ。

「つまり、この戦いで僕が最優先すべき事は、あそこの魔法使いから詠唱時間を奪う事。そうする事で、お前達からゴーストタイプであるムウマにダメージを与える方法を奪う。それが出来るか否かで、この戦いの勝敗は決まるんだよ」

そして、グートミューティヒは再びンレボウの方を指差した。

「それなのにそこの斧を持ってる奴が、指示役を余儀なくされる勇者マドノや防御に不向きな格闘家と一緒にムウマを攻撃してくれて助かったよ。お陰で、1番厄介な魔法使いを孤立無援に出来てあっさり詠唱時間を奪えたよ。そこの斧を持ってる奴に感謝する事は有っても恨む理由はもう無いよ」

だが、グートミューティヒが語る勝因を全く理解出来ないマドノは、改めてグートミューティヒを馬鹿を観る目で見た。

「……お前……本当に馬鹿か?ンレボウはお前を攻撃してるんだぞ」

一方のグートミューティヒも呆れていた。

「つまり、百聞は一見に如かずって訳ね。なら、そこの斧を持ってる奴が本来の役目を果たしたらどうなるかを実演してやるよ。僕とメタモンが」

すると……何故かグートミューティヒの後ろにマシカルがいた。マドノ達の後ろにマシカルがいるのにである。

「え!?私!?」

これこそ、どんなポケモンにも細胞レベルでコピーして変身するメタモンの真骨頂。

メタモンは戦闘中にマシカルに変身し、マドノ達がムウマやアムに構っている間に上級魔法の詠唱を終えていたのだ。

「僕の仲間達が時間を稼ぎ、君達が馬鹿やってくれたお陰で、メタモンの呪文詠唱は完了したよ」

アムが歓喜しながら叫んだ。

「その手があったかぁー♪」

「さて……ほんの一部だけど君達がこの洞窟で行った悪行の一部をお返しするよ」

それを合図に、メタモンが火の最上級魔法を容赦無く放った。

「ライナロック!」

強力な炎と爆発に襲われたマドノ達だが、経験値稼ぎに費やした時間の差なのか思った程のダメージを与える事は出来なかった。

「てめぇ!星空の勇者である」

そう言いかけて、

ドックン

マドノは何故か嫌な予感がして撤退を選択した。

「……今日はこのくらいにしてやる。俺達はもっと経験値を稼がなきゃいけないからな」

そう言いながらグートミューティヒに背を向けながら足早にこの洞窟を去るマドノ。

他のメンバーも困惑しながらマドノを追うが、フノクだけは未練がましい捨て台詞を吐いた。

「く!?……そこの女装偽乳糞男、今日はこのくらいにしてやるが、次こそは死をもってあの時の罪を償う準備を整えておけ」

 

どうにかマドノ一行を追い払ったグートミューティヒとアムは、マドノ達に蹂躙され虐殺されたオーガ達を焚火の中に次々と投げ込んでいた。

「……魔王の言ってた事は……間違ってた……」

「魔王『様』じゃなくて?」

その途端、アムは激昂した。

「『様』?これで人間よりモンスターの方が優れているって言えるのかよ!?」

今度こそアムが魔王軍から追い出されるのではと、少し引いているグートミューティヒ。

「良いの?そんな事を言って?今度こそ―――」

だが、牛乗りオーガが巣食う洞窟で起こった惨劇がアムから魔王への忠誠心を奪ってしまっていた。

「うるせぇよ!あんな選民詐欺こっちから願い下げよ!」

ポケモン以外のモンスターを率いて人間社会を蹂躙して支配しようとする魔王への軽蔑を込めた決別の言葉。

それは、ツノクジラの許から死別して外の世界に出てしまった事で、マドノ一行の経験値稼ぎと言う名の蹂躙と言う現実を見てしまったが故の、残酷な現実を顕す言葉であった。

それに対し、グートミューティヒは返す言葉が無かった……

アムから魔王への忠誠心を奪った非道な蹂躙を行っていたのは、あろう事か人類の代表である星空の勇者マドノなのだから……




マドノLv34

HP:4200
EX:2500
耐性:あく
弱点:ゴースト
推奨レベル:22

ポケモンに該当しないモンスター達の王である『魔王』を討伐するべく旅立った星空の勇者。
平静な人物の様でいて、推奨レベルに到達する為なら蹂躙すら厭わない利己的な乱暴者。また、世間一般的な大衆同様にポケモンとそれ以外のモンスターの判別が出来ない。ただ、功を焦る行為を嫌うぐらいの冷静さは持っている。
逃走するゴブリン達に容赦無くトドメを刺したところをグートミューティヒに観られて以来、ずっと彼に敵対視されている。

攻撃手段

ソードコンボ
剣による連続攻撃。マドノが使用。ノーマルタイプに該当する為、ゴーストタイプのポケモンを盾にするだけで簡単に防げる。

アックスコンボ
斧による連続攻撃。ンレボウが使用。ノーマルタイプに該当する為、ゴーストタイプのポケモンを盾にするだけで簡単に防げる。

ナックルコンボ
拳による連続攻撃。フノクが使用。かくとうタイプに該当する為、ゴーストタイプのポケモンを盾にするだけで簡単に防げる。

ロッドアタック
杖で殴る。マシカルが使用。ノーマルタイプに該当する為、ゴーストタイプのポケモンを盾にするだけで簡単に防げる。

黒魔法
各種黒魔法で攻撃する。マシカルが使用。詠唱中は無防備になる。
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