ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

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第20話:依頼拒否の代償

マドノ率いる勇者一行による経験値稼ぎを目的とした雑魚狩りの陰惨な惨状を知り、モンスター存続の為に魔王に叛旗したアム。

そんなマドノ率いる勇者一行を解雇され、行く当ても無くグートミューティヒに拾われたマシカル。

その2人を連れ、ポケモンとポケモントレーナーの地位を改善する為に魔王軍と戦い続けるグートミューティヒ。

 

が、彼らが行える事はただ1つしかなかった。

「何かお困りな事はありませんか?」

グートミューティヒの質問に困惑するマシカル。

「え?そうやって地道に探して回ってるの?」

一方のアムは既に慣れているのか、マシカルの焦りなどどこ吹く風である。

「いつも通りの事よ。不思議がる事は無いわ」

その間、グートミューティヒがある学者と交渉したらしく、

「未発見の花が向こうに山にあるらしいから、採りに往って来て欲しいんだと」

「華?」

「どこの山の事よ?」

グートミューティヒが指差した方向を視て、マシカルは少し蒼褪めた。

「あの山は確か……」

「ん?何か知ってるの?」

「そうだ!この依頼、1度マドノに拒否された依頼だった!」

マシカルの証言にグートミューティヒは驚き、アムは呆れた。

「え!?花を採りに往くだけでしょ?何でそのくらいで怯えてるの?」

「どうせ、『レベルが足りない』だの『経験値稼ぎに向いていない』だのと駄々を捏ねったんでしょ?」

アムが呆れながら言った冗談に対し、マシカルは答える事が出来なかった。

(ある!この中に答えが!)

 

その後、この山に暮らす魔王軍側のモンスターの妨害を数回受けるも、そこまで苦労する事無く例の花を手に知れた。

「やはり断るべきじゃなかったね。それなりの強さがあれば、ポケモンがいなくても採りに行ける場所に有ったのに」

グートミューティヒの何気ない言葉に頭を抱えるマシカル。

「……仰る通りで……」

一方のアムは、逃げ出すモンスターの姿を視て、この山にはボスモンスターらしき存在はいないと確信した。

「どうやら、群れからはぐれた流れモンスターがこの山で新たな群れを作る最中だった様ね?」

「それって!」

「恐らく、このまま流れモンスターがこの山に集結して、ボスモンスターを有する群れになったら。この山は間違いなくダンジョン化してたわ」

「じゃあ、僕達は図らずもそれを阻止したって事か?」

グートミューティヒとアムのやり取りを聴いて、マシカルは更に頭を抱えた。

「マドノ……あの時何でこの依頼を断ったの?」

 

グートミューティヒは、依頼された花を持って依頼主である学者の許を訪れた。

「おや?依頼してからまだ3日しか経っていませんよ」

「いえ。こう言う事は早い方が良いと思いましたので」

「それは助かります」

花を受け取った学者は、ポロっとマドノへの愚痴をこぼした。

「なにせこっちは1ヶ月前に『忙しいからそんな場合じゃない』と、星空の勇者に言われましたからな」

学者が渇いた笑い声をあげる中、グートミューティヒとアムはそっぽを向くマシカルを追求する。

「1ヶ月前?それはどう言う事だマシカル?こっち見ろ!」

「何した?お前らこの町で何した?いやアイツらに訊いた方が早いな!」

そこで、今度は学者を尋問するアム。

「マドノの奴、この町で何やらかした?」

「寧ろこっちが訊きたいですよ。星空の勇者と言うモノは余程忙しい様で」

再びそっぽを向くマシカル。

「さっき言った通り……マドノは……断った」

「なんでさっきから片言なんだよ!こっち見ろって!」

「何してんの!?お前何してんの!?」

呆れる学者。

「貴方方は逆に暇そうですな……」

で、改めて花の採取に関する報酬の話になったが、

「え?襲われた!?」

「はい。今はまだダンジョン化には至っていませんが」

「あの山がダンジョン化するですと?」

「あー、それは大丈夫。その花を探すついでに追っ払ったから」

「僕達が行った時ははぐれモンスターが複数居た程度でしたが、あのままほっておいて、流れ着いたはぐれがボスモンスターに成長していたら……」

「あの山は魔王軍に乗っ取られてダンジョンになる……」

先程までマドノ達に依頼を断られた事を愚痴っていた学者の頬を冷や汗が伝う。

「で、1つ訊きたい。貴方は衛兵にどこまで伝手がある?」

「それを聴いてどうするのです?」

グートミューティヒは真顔で答えた。

「衛兵達に定期的にあの山を巡回して欲しいのですが、その話を貴方の権限で通して貰いたい」

「それは勿論の事ですが、それと我々が貴方方に支払う報酬と何の関係が?」

「いえ、あの山に関する事件はまだ終わっていません。だから、報酬は要りません」

学者はグートミューティヒの言い分に驚いた。

「……なんて無欲な……どこぞの忙しいが口癖とは大違いだ!」

バツが悪そうにそっぽを向くマシカル。

 

結局、衛兵にダンジョン化しつつあった山の巡回を依頼する以外の報酬を拒否したグートミューティヒ。

「勿体無い事をしたわね糞男」

「良いんだよ。後であの山にモンスターが居る事がバレるよりは大分マシだよ」

「……そんなモノかしらね」

その間、バツが悪そうに俯くマシカル。

「暗いわね……さっきの追及がそんなにきつかった?」

マシカルは首を横に振った。

「違うわ。思い出したのよ」

「思い出した?」

「マドノ達から追い出された理由よ」

グートミューティヒが聞かされた理由は、上級魔法の詠唱時間が長過ぎる事による攻撃回数の減少にマドノ達が耐えられなくなったであるが、もう1つ在ると言うのであれば、そっちの方がメインではないかと思えるグートミューティヒ。

「……訊きたいね。その理由」

観念したかの様に話し始めるマシカル。

「私がマドノ達に就いて行った理由は、手柄や名声が欲しかったのよ」

「そこに星空の勇者が現れたら……と言う訳か……」

「そう。私は喜んで就いて行ったわ!でも……」

マシカルは思い出す。マドノとのやり取りを。

「ねぇ」

「ん?」

「この依頼を受けてみない?この依頼を成功させればこの国の貴族にいい顔で―――」

「その貴族が指定した場所に経験値稼ぎに適したモンスターはいるのか?」

「いや……そこまで強いモンスターは関わってない……」

「経験値稼ぎをサボってまで受けるべき依頼か?」

「この国の貴族に伝手が出来るけど―――」

「じゃあ断れ」

「でも―――」

「断れ。こっちは経験値稼ぎで忙しいんだ」

「……はい」

マシカルがマドノ率いる勇者一行を解雇されたもう1つの理由が、名声欲しさに経験値稼ぎをサボってまで依頼を受けようとする態度だと知って、アムは怒った。

「何それ!?私達モンスターを何だと思ってるのあいつら!」

グートミューティヒもその理由に不快感を抱いた。

「依頼するって事はそこまで困ってるって事だよね?マドノの奴、よくそれを平気で断れるな?」

更に項垂れるマシカルだが、それをグートミューティヒが慰める。

「マシカル、理由はどうあれ困ってる人からの依頼を受けようとしたんだ。君は何も悪くない。悪いのは、自分勝手な理由で困っている人からの依頼を断ったマドノ達の方だ!」

そんなグートミューティヒに微笑むアム。

「相変わらず、アンタらしい考えだわ」

こうして、グートミューティヒ達のマドノ率いる勇者一行への評価が更に激減したのだった。

 

一方、ツノクジラとダークマーメイドの暗躍によって激減した漁獲量に苦しめられていた貴族の許に、グートミューティヒの尽力によって宝石採掘用鉱山の奪還に成功した商人が訪れた。

「して、わざわざこちらにいらっしゃった要件は?」

「貴方様が管轄している港町での星空の勇者マドノの実際を活躍をぜひお聞きしたいと思いましてな」

商人の要求に困惑する貴族。

「私は直接その場面を観た訳じゃないからね」

「噂でも構いません。ぜひ御聴きしたい」

貴族は本当に困った。そして白状した。

「現場に戻ったら、モンスターの死骸だけが残されていただけだったのだ。つまり、誰もマドノ殿が戦っている所を観た訳ではないのだ」

「つまり、マドノがそのモンスターを倒した確証は無いと?」

「無いと言われれば……確かに無いが……」

とは言え、ツノクジラ程のボスモンスターを倒せる冒険者など数に限りがある。故に、マドノ以外の他の人物がツノクジラを倒したとハッキリ言えないのも事実である。

ただし、商人は違った。

「なら、彼女が倒した可能性も有ると言う事ですな?」

貴族は言ってる意味が解らなかった。

「彼女?マドノ殿は男の筈では」

すると、商人はハッキリと断言した。

「確かにマドノは男でした。ですが、私はあの男をまったく信じておりません」

「と……言うと?」

「あの者達、我々を散々待たせておいて、結局、例の彼女がダンジョン化した鉱山を奪還してしばらくしてから来たのです。あまりにも遅過ぎるとは思いませんか?」

「それは……」

貴族は反論しようとしたが言葉に詰まった。

言われてみれば、マドノ達が貴族の屋敷に来たのはツノクジラが倒された後だったし、マドノ達との会話は全く噛み合わなかった。

でも、

「とは言え、あれ程のモンスターを誰にも気付かれずに倒すという芸当が出来る者が、勇者マドノ以外におりますか?」

商人は再びはっきりと断言する。

「グートミューティヒ。彼女ならあるいは」

「グートミューティヒ?」

「現に、ダンジョン化した鉱山の奪還に最も貢献したのが、そのグートミューティヒと言う少女だった」

「彼女、そんなに凄いのか!」

こうして、マドノの預かり知らずな所でマドノは依頼拒否の代償を支払っていた。

信頼消失と言う名の代償を。

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