ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

23 / 33
お詫び

本作の連載を楽しみにしていた読者の皆様、申し訳ございません。
悪魔城物語IF(https://syosetu.org/novel/354613/)などの別作品の執筆に熱心になり過ぎて、本作の執筆が滞っておりました。
大変申し訳ございませんでした。


第22話:霧の中の試練

自分の善意せいでマドノと衛兵達が大喧嘩している事などつゆとも知らぬグートミューティヒは、最近異様に霧が濃くなった森があると聴き、アムとマシカルと共に調査に向かった。

が、アムは必死に記憶を辿れば辿る程、逆に理解に苦しみ困惑してしまう。

「んーーーーー……思いつかないなぁー?」

「何がよ?」

「何がって、この霧の正体よ」

アムの言い分に動揺するグートミューティヒ。

「それってつまり、魔王軍の仕業じゃないって事?」

「私の記憶の中では。でも、確証は無い」

それを聞いたマシカルがアムを揶揄った。

「それってつまり、アンタがたんなる下っ端って事よね?」

「悪かったわね!」

だが、そんな暢気な口喧嘩もここまでだった。

「待て!……今、茂みが動かなかった?」

「茂み?」

「まさか……待ち伏せ!?」

そうこう言ってる間も、何者かが近付いて来る音が霧に包まれた森に響き渡る。

「これ……ダンジョンで迷子になった一般人って、展開よね?」

「だと……嬉しいけどな」

その間も近付く音は響き続け、そして、

「危ない!」

グートミューティヒがマシカルを庇いながら何かを避けた。

それに対し、マシカルはグートミューティヒの男らしくない胸の感触に嫉妬してしまう。

「グートミューティヒ……男のクセにその胸は卑怯よ……」

「そんな事を言ってる場合じゃない!」

そんな中、グートミューティヒが躱した物体を視て困惑するアム。

「こんなモンスター……私は知らない!其処の糞男!これもポケモンの仕業だって言うの?」

グートミューティヒがさっき躱した物体の動きを視て確信した。

「これは……ルカリオ!」

ルカリオと呼ばれた者は、グートミューティヒを発見するやいなや、容赦なくグロウパンチを見舞った。

「グロウパンチだって!?こいつ……本気かよ?」

マシカルがルカリオに向けて攻撃魔法を放とうとするが、今度はラムパルドがやって来てもろはのずつきを行う。

「2体目!?」

マシカルは慌てて避けるも、ラムパルドの攻撃を避ける事に集中し過ぎて呪文詠唱をサボってしまう。

「ちょっと!これじゃあ呪文詠唱できない……」

「ムウマ!ラムパルドを惑わしてくれ!」

頭の上を飛び回るムウマにイラっとしている隙にラムパルドを無重力化して遠くに飛ばそうとするアムだったが、アムの目の前にスリーパーが現れ……

「ん?」

「不味い!ブーバー!スリーパーを止めてくれ!」

だが、時既に遅く……

「あー……がー!」

アムはいびきを響かせながら熟睡してしまった。

「やられた!スリーパーのさいみんじゅつにかかってしまった!?」

「それにしては早過ぎでしょ……起きなさいよ役立たず人魚!」

その間、スリーパーがマシカルにさいみんじゅつを見舞おうとするが、

「効くわけないでしょ!ネタが古いのよ!」

マシカルのファイアーとブーバーのほのおのパンチでスリーパーを追っ払ったが、その隙にルカリオがマシカルを誘拐してしまう。

「な!?ちょ!放せ!放しなさいよぉー!」

「しまった!マシカル!マシカル待てぇー!」

慌ててルカリオを追うグートミューティヒだったが、まるでルカリオを庇う様に霧が更に濃くなった。

「クソ!何だこの霧は!?」

そして……グートミューティヒはとうとうマシカルを誘拐したルカリオを見失った。

「やられた!呪文詠唱の時間を稼ぐと約束しておきながら……くっ!自分が情けない!」

仕方なく熟睡中のアムの許に戻ろうとするグートミューティヒだったが、ラムパルドやスリーパーと戦っていた筈のムウマとブーバーが戻って来て、

「すまない……ルカリオを取り逃がした……」

まるでグートミューティヒを誘導するかの様な動作を行った。

「ん?こっち?そっちに何かあるのか?」

そのまま……ムウマ達に導かれる様に霧の中へと消えていくグートミューティヒであった。

 

マシカルがルカリオに誘拐されている間、ずーーーーーと熟睡していたアムが目を覚ますと……

「……ここ……何処……」

どうやら、アムは闘技場に連行された様だ。

「……何だろう……物凄く嫌な予感がするんですけど……」

そうこうしている内に、反対側の入場口が開き、そこからは見慣れたくは無いけど見慣れてしまった不俱戴天の仇敵達の姿があった。

「な!?……マドノ!?」

アムは慌ててグートミューティヒに訊ねる。

「おい!糞男……」

だが、誰もいなかった……

「誰も……いない……」

そんなアムの背中を襲おうとマドノ達が駆け出した。

「いやぁー!」

「げ!?」

アムは慌ててマドノ達の攻撃を避けるも、しつこいマドノ達の猛攻との距離を思う様に広げられずに歯噛みする。

「ちょっと!?これを、うわぁ!?1人で、ちょ!?停まれよお前ら!」

が、マドノは即座に反論する。

「そう言うテメェだって、今の今まで俺達人間様に同じ事をしてきただろうが?」

今のアムにとって、その言葉は罪悪感を刺激する図星だった。

「た……確かに、私達魔王軍はあんた達人間共を下に見て、偉そうに弄び殺して来たわ―――」

「だからこそ、俺達の様な真面目にモンスターを狩って経験値稼ぎをする善人が必要なんだろうが」

「く!」

アムはぐうの音も出ず歯噛みした。

(魔王……今日ほどアンタの選民詐欺を恨んだ事は無いわ!)

 

一方その頃、マシカルは炎の音で目を覚ました。

(アレ?……私は確か……)

辺りを見回すマシカルだったが、そこにはもうルカリオの姿は無かった。

「こんな所に置き去りにされた……て事?」

「キャァーーーーー!」

突然の悲鳴に慌てて周囲を見回すマシカル。

「何!?何が遭ったの!?」

マシカルが近くに在った町に向かうと、その町は4匹のゴブリン達に襲われていた。

「あいつら!?」

マシカルがサンダーストームで4匹のゴブリンを一掃しようとするが、直ぐにゴブリンに気付かれて襲われてしまう。

「ちょっと!?グートミューティヒ!」

だが、誰もいなかった……

(そうだった……私、ルカリオとか言うモンスターに連行されて―――)

ゴブリン達はマシカルに考え事に没頭する隙を与えようとはしない。

「不味い!避けないと!」

マシカルに攻撃を躱されたゴブリン達が自分勝手な事を言いながら怒り出した。

「避けてんじゃねぇよザコ!」

「雑魚って」

「こっちは魔王様の御役に立つ為に人間共を沢山殺さなきゃいけないのによ!」

「魔王の役に立つ為に人間を沢山殺す……ですって?」

マシカルはカチンとくるが、ゴブリン達はお構いなしに持論をぶちまけた。

「だってそうだろ?人間共を沢山殺して経験値をたっぷり稼いで、レベルをしこたま上げて星空の勇者に勝たなきゃいけないんだよ!」

ゴブリン達のこの言葉に、マシカルは少しだけドキッとする。

「レベル上げの為の経験値稼ぎ……ですって?」

反論しようとするマシカルだったが、目の前のゴブリン達がかつての自分に、マドノ率いる勇者一行の一員だった頃の自分に見えてきてしまった。

「……あんた達がやってる事とマドノ達がやってる事って、全くの同じだって言いたいの?」

「うるせぇ!こっちは経験値稼ぎの為の人間殺しで忙しんだよ!」

経験値稼ぎを目的としたモンスター大量虐殺にかまけてイベント進行や依頼受付を怠り、その事を指摘しても進言に見向き見せずに経験値稼ぎを目的とした大量虐殺に没頭するばかりの、星空の勇者マドノ率いる勇者一行……

マシカルは、まるでかつての自分の罪と戦わされてる気がして機嫌が悪くなった。

「喧しいのはそっちの方よ!他にやる事が有るでしょ!」

 

熟睡しているアムの許へ戻ろうとするグートミューティヒだったが、

「ん?人?」

霧の中の人影を発見して立ち止まった。

「誰だ?」

霧から出て来たのは……グートミューティヒとは完全に真逆なあの男であった。

「貴様は……マドノ!?」

マドノとの予期せぬ再会に緊張するグートミューティヒ。

(まさか、こいつもこの霧の噂を聞きつけて……)

と……1度は考えたが、直ぐにその予想は自己撤回された。

(な訳無いか。そこの勇者様は、経験値稼ぎの為の雑魚狩りで忙しいらしいから)

そんなグートミューティヒの予想を肯定する様に、マドノはグートミューティヒに質問した。

「何故だ?」

「何故って……何の事だ?」

「何故貴様は、レベル上げを目的とした経験値稼ぎをサボりたがる?」

その途端、グートミューティヒは不機嫌になって静かに激怒した。

「経験値稼ぎと言えば聞こえは良いけどな……体のいい虐殺なんだよ。お前のやってる事は」

だが、グートミューティヒの言葉はマドノには響かず、寧ろグートミューティヒの甘さを指摘する。

「だが、敗けたら意味無いぞ」

「負けだと?」

マドノにしては理論的で論理的な言葉がグートミューティヒを襲った。

「お前はお人好しだから、困ってる人を看ると直ぐそっちに行っちまうが、悩みの発端を殲滅できなきゃ、ただの無駄な御節介……騒音でしかない」

「俺のやってる事が、騒音だと?」

「例えば、お前が今回の様にダンジョンにいるボスモンスターの討伐を依頼されたとする。で、もしそのボスモンスターがお前の倍以上強かったらどうなると思う?」

「だとしても、そのボスモンスターが多くの人々を苦しめていると言うのであれば、誰かがそのボスモンスターを倒すしかないだろ。寧ろ―――」

「つまり、ボスモンスターを倒さなきゃ意味が無いって事だろ」

グートミューティヒが不覚にも停止してしまった。

「依頼を受けた奴がボスモンスターに敗けて死んだら、依頼した意味が無いだろ?寧ろ、依頼主は弱いザコに無茶で困難な依頼をした事について悩んで欲しいくらいだ」

「う……」

「それに、依頼を受けた奴が敗けて死んだら、その分だけ希望が減り、その代わりに絶望が増える。その責任、ただの死体に払い切れると思うか?」

グートミューティヒはまた停止してしまう。

「更に言えば、そのボスモンスターを倒したところで、そいつの背後にいる魔王が健在なら、また何時か代わりのボスモンスターが後釜としてやって来るかも知れないぜ?」

「それは……」

反論を試みるグートミューティヒだが、言葉が思い浮かばない。

「だからこそ、俺は経験値を稼ぐ必要がある。経験値をたっぷり稼いで、レベルを沢山蓄えて、万全の体勢で魔王を倒す。そうすれば、手下のボスモンスターは怯え臆し、そして逃げる」

「だが、その為に殺されるザコモンスターはどうなる?」

「くだらない理想論だな」

「……何……」

「戦いは綺麗事じゃないんだよ。どんなに偉そうな事を言っても、敗けて死んだら偉い理由の全てを他者に伝える事は出来ない。寧ろ、勝者に嫌われた敗者は偽りの汚名を着せられて、何も知らない馬鹿共に勘違いされて見当違いな侮辱をする」

「伝わらない……だと……」

「だから、勝ち続けないと意味が無い。だからこそ、何も知らない馬鹿共から視た貴様は……ただの愚者だ」

マドノがグートミューティヒに突き付ける『理想と現実の乖離』は、確かにグートミューティヒの心を抉った。

だが、牛乗りオーガが拠点としていた洞窟での惨劇に立ち尽くすアムの涙目を思い出した事で、漸く反論の言葉が浮かんだ。

「いや……違う!」

「何がだ?」

「例え当時の事を知らない未来人が何と言おうとも、俺は当時の人々を救う。不要な殺戮に苦しむ命を救う。理不尽に虐げられている者を救う」

だが、そんなグートミューティヒをマドノを見下す。

「お前の様な馬鹿雑魚に出来る訳無いだろ。お人好しに現を抜かして経験値稼ぎをサボる馬鹿雑魚な貴様に」

でも、突き付けられた『理想と現実の乖離』を完全に振り払ったグートミューティヒ。

「誰に何を言われようと構わない。目の前に救いたい者がいるなら、例え結果がどうなろうと、持てる全ての力を使って救いを試みる!」

「俺の言ってる意味解ってる?そいつを救ったと言う結果が無いと意味が無いって―――」

「だから逃げるのか?」

今度はマドノがグートミューティヒに追い詰められ始めた。

「……何?」

「目の前に苦難に苦しむ人がいたとしても、『俺は弱いから何も出来ません』と言って見放す心算か?『今はまだ力が無いから』と言って助けを求める人々から逃げる気か?」

「いや……だから救えなきゃ―――」

「俺はそっちの方が恥ずかしいよ!俺は、未来人に無力な馬鹿と罵られるより、当時の人々に心無き臆病者と馬鹿にされる方が100倍恥ずかしいんだよ!自殺したくなる程な!」

 

3人は別々の場所にいる筈なのに、3人は異口同音、全く同じ事を叫んでいた。

「大量殺戮が作った汚い平和は要らない!」

 

アムは何度目かの魔王軍との決別の言葉を口にする。

「私はもう、くだらない選民には手を出さない!誰が何と言っても、命は命なんだよ!」

マドノ達を撤退させたアムは改めて魔王との決別を誓った。

「今の私に必要なのは殺し合いを促すだけの無駄な選民じゃない。平和で安全な生存だ!」

 

マシカルはマドノ達に酷似したゴブリン達の攻撃を躱しながら攻撃魔法を連発した。

「あんた達の大嫌いなグートミューティヒは、あんた達とは違って目の前の依頼からは逃げないわ!」

こうして、攻撃を躱しながら呪文詠唱をすれば良いと言うアイデアを得たマシカルは、漸くマドノ率いる勇者一行への未練を断ち切った。

「どんなに強くても、名声が伴わなきゃただの暴力。醜くて見苦しい虐殺よ!」

 

グートミューティヒは『理想と現実の乖離』を武器に反論するマドノを無視して素通りする。

「やめとけよ。それ以上言っても、今のアンタが心無い臆病者にしか見えないよ」

改めて自分が理想とする自分が何者かを理解したグートミューティヒは、マドノに背を向けながら駄目押しの言葉を口にする。

「目の前にいる救いを求めている人々が苦しんでいるのは、今なんだよ!」

 

そして、謎の霧が生み出したマドノ達の幻影を振り払った3人は、見慣れぬ草原で合流した。

「みんな無事だったんだ」

「ええ……何とかね……でも」

「モンスター側からかつての私達を観たらどう思うかを、散々思い知らされたわ」

「……それって、マドノの屑野郎の許にいた時のって事?」

マシカルはげんなりしながら答えた。

「そうよ。お陰で、恥ずかし過ぎて機嫌が悪いわ」

が、アムはマシカルが何でげんなりしているのかが解らなかった。

「その割には、何かを得たって感じの顔をしてる様にしか視えないんですけど?」

「あんた達もね。なんか……吹っ切れたって感じ」

それを聞いて考え込むグートミューティヒ。

「吹っ切れた?……そう言う事で、良いんだよな?」

とは言え、3人はそんな事を言ってる場合じゃなかった。

「そんな事より……」

マシカルは見慣れぬ草原を見回してさっきまでいた山を探しながら質問する。

「ここ……どこ……?」

マシカルの質問に、アムは漸く自分達が置かれている状況を察した。

「ここって……あ!?」




前書きでも記載した通り、悪魔城物語IFなどの別作品の執筆に熱心になり過ぎて、本作の執筆が滞っておりました。
大変申し訳ございませんでした。

で、第22話の内容なのですが、最初は、第21話に登場したタンジュにグートミューティヒ達が惨敗している所を、とあるポケモンが救出する形でポケモンの生まれ故郷である白魔界に辿り着くのだが、グートミューティヒは先程の惨敗に経験値稼ぎを目的とした大量虐殺の必要性を教えられ、理想と現実の乖離に悩まされ、せっかくポケモンの楽園である白魔界に到着した事を素直に喜べない展開を予定しておりましたが、この私自身がそう言う展開が嫌いと言うのもあって気分が乗らず、結局、第22話は今回の様な形になりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。