ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

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第26話:遅参勇者と焦る魔女⑤

『偽一休』事件以来『偽』を口にして変なトラブルに遭いたくないからか、あからさまに口数が減ったフノクやとンレボウであったが、

「お?あの女、胸デカいねぇ♪」

「ちょ!?フノク殿!?」

結局、フノクの巨乳目当てのセクハラ行為は一向に治らなかった。

「おい、いい加減に行くぞ」

「どちらへ」

「ここから北東に向かうと廃塔が在るんだが、そこが魔王軍に乗っ取られたんだと」

「して、マドノ殿はその塔をどうする御心算で」

その後の言葉は、マドノ率いる勇者一行のお決まりのパターンであった。

「勿論、その塔にいるモンスターを全て倒して経験値を稼ぐ」

「つまり、いつも通りな訳ですね」

その時、フノクの目が鋭くなった事にマドノは全く気付いていなかった。

 

で、件の廃塔に到着し、いつも通りに中にいるモンスターを殲滅しようとするマドノ率いる勇者一行。

そこへ、

「おい。俺の出来の悪い部下が、随分お世話になったそうだな?」

どうやら、この女デビルがこの塔を支配したモンスター達を率いるボスモンスターの様であるが、マドノにとってはある意味不都合である。

「来るのがはえぇよ!」

女デビルは理解に苦しんだ。

「早い?敵の親玉を殺すチャンスが向こうからやって来たのにかい?ま、殺せればの話だけど」

だが、まだ経験値を稼ぎ足りないマドノにとっては有難迷惑だった。

「馬鹿野郎。俺達はまだ、上の階にいるモンスターを倒してねぇだろが」

女デビルはやはり理解不能だった。

「上の階の連中と戦ってからこの俺と戦う気かい?アンタらにとっては、そっちの方がアンタらの消耗が激しいんじゃないのかい?」

戦闘効率においても戦略効率においても女デビルの言い分の方が理に適っている。

が、マドノの目的的には戦闘を最小限抑えながら敵大将を倒す展開の方が不都合である。

「もし、万が一テメェが死んでもこの塔のモンスターが逃げないって言うのであればここで戦っても良いが、もしテメェが死んだ途端にこの塔にいるモンスター全てが逃げたら、俺達はこの塔に来た意味が無いんだよ」

相変わらず、女デビルはマドノの言ってる意味が解らなかった。

「……何しに来たんだい?この塔を奪還しに来たんじゃないのかい?」

女デビルの質問に対し、マドノは当然の如く答えた。

「違うよ」

「……は!?」

ただでさえ理解に苦しんでいる女デビルを更に理解不能に陥れた。

「違うぅー!?じゃあなんだよお前ぇー!?」

その質問に、マドノより先に答えたのはフノクであった。

「で、そこの魅力的な胸の娘!この塔に何か変わったアイテムは有るか?」

そんなフノクの質問に、女デビルはマドノ率いる勇者一行を助平なトレジャーハンターと勘違いした。

「さあぁねぇ。この俺を倒してからゆっくり探すんだね。ま、殺せればの話だけど」

が、マドノは怒って女デビルをこの場から殺さずに追い出そうとする。

「馬鹿野郎!なら、最上階にあるその変わったアイテムを大切に守ってろ!」

女デビルはやはりマドノの言い分の理解に苦しんだ。

「何でそんなにこの俺をこの塔の最上階に閉じ込めたい?ここでさっさとこの俺を倒して戦闘を最小限に抑えながらアイテム漁りすれば良いじゃない。それを何で―――」

マドノはつい怒って本音を口にしてしまう。

「そんな事をしたら、手に入る経験値が減るじゃないか!それくらい解れ!」

その時、フノクのマドノを視る目が怪しく光ったのだが、マドノは全く気付いていなかった。

一方、自分が最上階に追いやられた理由を聞いて呆れてしまう女デビル。

「……何それ……あんたはどれの味方なんだい……」

が、マドノは聞く耳持たない。

「いいから!さっさと最上階に戻れ!其処でお前と戦ってやるから!後日な」

 

で、結局、女デビルは最上階でマドノ達の到着を待たされたが、マドノがその女デビルを討伐したのはあの騒ぎの2週間後であった。

「そこそこ経験値を稼げたな。ノチのレベルも大分上がったしな」

それに対し、フノクはマドノに質問した。

「それより、あの塔の探索はあれだけで良かったのか?」

マドノはフノクの質問の意図が解らなかった。

「探索?そんなの意味有るの?」

マドノのこの言葉に、フノクは意味深な表情を浮かべたが、マドノは別段気にしなかった。

 

その日の夜、フノクはンレボウに自分の猜疑心について相談した。

「ンレボウよ、例の『偽一休』についてどう思う?」

「何を言っているのです!?『偽一休』の話はもうやめようって―――」

慌てるンレボウに対し、フノクは冷静に話を進める。

「静かに。マドノに訊かれたら色々と都合が悪い」

「だったらなおの事!」

だが、フノクは懐いてしまった疑念を我慢出来なかった。

「わしは、何を理由にマドノの事を『星空の勇者』と呼んでいる?」

ンレボウはその質問に意味を深読み出来ず、ただただ呆れるだけだった。

「そんなの決まっているでしょう。例の星空バッチをマドノ殿が身に着けている。それ以上の証拠が何処にありますか!」

ンレボウはそう断言したが、フノクはかえって疑念を強めてしまう。

「つまり、たったそれだけか?」

「それだけ……何を言っているのです?」

「わしらの使用している武器を視て視ろ……特にマドノのな」

ンレボウはフノクの主張に理解に苦しみつつも冷や汗を掻いた。

「私達の使っている武具は最高級品ばかりですが……それのどこが不都合だと言うのです……」

フノクは首を横に振った。

「もしかしたら……星空の勇者はその程度の武器では満足しないかもしれんのだ?」

フノクの疑問に、蒼褪めながら冷や汗を掻くンレボウ。

「満足していない?マドノ殿が?」

ンレボウの質問を補足修正するフノク。

「いや、『星空の勇者』がじゃ」

「言ってる意味が解りません!」

それに対し、フノクはある事をンレボウに白状した。

「わしが独断で聞いた話によるとな―――」

「独断!?」

そう、フノクは『偽一休』事件以降、巨乳へのセクハラ回数を増やすフリをしながら自分なりに星空の勇者に関する情報を収集していたのだ。

その結果、

「星空の勇者に関するとある都市伝説を聴いたのじゃ」

「都市……伝説……」

「世界のどこかに星空の勇者専用の武器が隠されていると」

漸く冷静になったンレボウがフノクを問い詰めた。

「で、証拠は?」

「無い。だが、わしが言いたいのはそこだけではない」

「やめましょう。この話はもうお開きです」

フノクの口調は更に強くなった。

「わしが問題視しているのは、マドノが何故その噂に触れようとしないのかじゃ。マドノは魔王に勝つべく経験値を必死に稼いでいる。にも拘らず、マドノは何故強力な武器が手に入るかもしれない噂に目を向けない?」

「う……」

ンレボウは返答に困った。

だが、フノクはンレボウの返答を待たない。

「星空の勇者専用武器に関する噂、ただ否定するだけならまだしも、何故否定の意思を口にしない?お前さんの様にさっさと否定してくれるならわしはまだ理解出来る」

「そ……それはぁ……」

「だが、マドノは違う。肯定どころか否定すらしなかった。もしかして、星空の勇者専用武器に関する噂すらマドノは知らんのではないのか?」

フノクがマドノに向けた疑念。

それを解く術は今のンレボウには無かった。

「まあよい。この都市伝説はまだ決定的証拠が無い。マドノが経験値稼ぎに飽きたら専用武器を探しに往く可能性も有るしな」

そう言うと、フノクは眠りについた。

「マドノ殿の……専用武器……」

一方、ンレボウはフノクが口にした『星空の勇者専用武器』と言う単語が頭から離れなかった……

 

次の日……

「次はどこ行きましょうか?」

呑気なノチに対し、マドノもまた暢気に答えた。

「そうだな……」

(!?)

フノクは鋭い視線でマドノを注目した。

しかし……

「もっと張り合いのあるダンジョンに往かないとなぁ……こんな調子じゃ経験値稼ぎの効率が悪いからな」

結局、いつも通りの経験値稼ぎを目的とした大量虐殺の繰り返しだった。

それがフノクの猜疑心を更に強くし、ンレボウの苦悩を更に深くする行為だと気付かずに……

(まだ触れぬか?星空の勇者専用武器の噂に)

どんなに他を圧する強大な城も、内部から腐敗すれば宝の持ち腐れとなってしまう。

マドノが他者の意見を無視して経験値稼ぎを目的とした大量虐殺を繰り返せば繰り返す程、勇者一行の猜疑は深まってしまう。

マドノはもしかしたら……薄氷の上を気付かずに歩いているのかもしれない……

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