ポケットモンスター対RPG   作:モッチー7

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第30話:タンジュの味見

マドノの両親と出会いを機に、マドノ達の暴走を止める意志が更に強くなったグートミューティヒ達であったが、その背後を一筋の光が襲った。

「なんだ!?」

グートミューティヒとマシカルは驚きを隠せないが、アムは身に覚えが有った。

「不味い!デビルだ!」

「デビル?」

「人型モンスターの中でも特上中の特上。魔王軍の中でもかなりの上級だよ」

アムの言葉にマシカルが身構える。

「上級!?今までの敵とは一味違うって事!?」

確かに魔王軍と戦う者にとってデビルは恐るべき強敵だが、アムはこのデビルの行動に違和感が有った。

「しかし……」

その答えは、グートミューティヒと対立しているデビルの口から出た。

「まさか、このタンジュ様があんなあからさまな嘘に騙されると、本気で思っているのか?」

「嘘……」

タンジュの言葉にマシカルはドキッとした。

何故なら、マシカルはグートミューティヒ達に出遭うまでマドノを星空の勇者と思い込み、マドノ率いる勇者一行に留まろうとあらゆる努力を行ってきた。

その結果は前述通り、マドノは偽物でマドノと対立していたグートミューティヒこそが本物だった。

その一方、グートミューティヒはタンジュの言い分に違和感を感じた。

「何故、そう思う?」

その質問を不快に思うタンジュ。

「何故だと?俺のこの鼻を舐めているのか?」

「……花?」

「そうだ。俺のこの鼻はな、口や身体の匂いで心理や行動を読み、動きを予測出来んだよ」

「だから、マドノが常に着けている星空バッチには騙されなかった、と?」

「ま、そんな事をしなくても、あんな雑魚は直ぐに()れるがな」

そんなタンジュの傲慢な態度に激怒するアム。

「何時でも()れる、だと……だからこんな事になるまであいつらをほっといたのか?」

それに対し、タンジュは悪びれる事も無く無知の振りをした。

「こんな事?どんな事だ?」

その途端、怒りのあまりタンジュを攻撃しようとするアムだったが、グートミューティヒがそんなアムを止めた。

「やめておけアム」

「でも!」

血の涙を流すアムの姿を見て頷いたグートミューティヒは、静かにタンジュを蔑視した。

「こんなマドノの足元にも及ばないボケとの口論なんて、時間の無駄以外のなにものでもないよ。やめときなって」

そんなグートミューティヒの目は明らかに怒りが宿っていたが、タンジュは自分が『分不相応なくせに星空の勇者を騙る偽物より劣る』と言われた事に不快感を抱いていた。

「このタンジュ様が……あんな口だけの雑魚連中より弱いだとぉー……」

タンジュは明らかに激怒していたが、グートミューティヒはアムの怒りを代弁する様に悪口を続けた。

「だってそうだろ?お前はマドノとの戦いから逃げたんだろ?マドノが偽物?だから戦わずに逃げた?言い訳にしては品が無いね……バカなの?」

「どうやら……お前達はただの自殺志願者らしいな……お望み通り殺してやるよ!」

 

「死ねぇー!」

怒りに狂ったタンジュは、額の邪眼からレーザーを放った。

だが、グートミューティヒ簡単に回避し、アムはやみのいしの力で得た闇魔法で防いだ。

「ルナΛだと?ほう、言うだけの事はある様だな?だが!」

タンジュが背中の翼を羽ばたかせて上昇しながら、自身の剣の刀身を炎で包んだ。

「この俺にこの技を使わせるとはな……でも、これで簡単には死ねなくなったぞ?」

タンジュは低空飛行しながら炎に包まれた剣を振り回した。

それに対して、百戦錬磨なグートミューティヒはそれも簡単に躱してしまう。

しかも、マシカルの呪文詠唱は既に終わっていた。

「ちょっと!こっちも忘れないでよね!」

襲い掛かる隕石をギリギリで回避したタンジュは、余裕に魅せたい笑みの額に冷や汗を滲ませる。

「メティオだと?……下等な人間にしてはいいもん持ってんじゃねぇか……」

一方、グートミューティヒにとってはこの程度の時間稼ぎだけで十分だった。

「ポワルン!あまごいだ!」

ポワルンがあまごいを始めると、本当に雨が降り始めた。

「雨?急に?」

グートミューティヒが自信満々に解説する。

「ポワルンね、天気を変えるわざを3つも持ってるんだ。本来なら、そんなポワルンの能力をもっと有効活用する予定だったけどね」

申し訳なさそうにポワルンを見るグートミューティヒに対し、タンジュははったりだと決めつけた。

「こんな魔王軍に召集されない程の雑魚が天候操作だと?ふん!そんなあからさまな嘘が―――」

タンジュの傲慢な見下しを聞き取る暇無く、アムは指先から雷を発射する。

「黙れ!」

タンジュは咄嗟に剣で防御するが、ダークマーメイドの筈のアムが雷を武器にする事態に驚いた。

「どう言う事だ?ダークマーメイドが雷魔法だと?そんな事をすれば―――」

「そんな事より、君の剣はどうなってんの?」

グートミューティヒの指摘を受け、タンジュが自分の剣を視ると、刀身を包んでいた筈の炎が綺麗に消えていた。

「何!?」

「ポワルンはただ何の意味も無くあまごいをした訳じゃない。天気を『あめ』状態にした事で、みずタイプのわざの威力を1.5倍にし、ほのおタイプのわざの威力を半分にしちゃうんだよ」

しかも、アムが放った雷がダメ押しとなってタンジュの剣を包んでいた炎を完全に霧散させてしまったのだ。

「……なんだそれ?……卑怯だろそれ!」

今度はマシカルがタンジュを馬鹿にする。

「卑怯?今、私達は何を()ってると思ってるの?」

「なんだ―――」

「それに、あんたの後ろを見て視なよ」

ルルがタンジュに殴りかかろうとしていたのだ。しかも、グートミューティヒの神具球の力でメガシンカした状態で。

「何!?」

「あんた?その鼻で相手の心理を予想するんじゃなかったの?」

ルルのはどうのあらしを受けて吹っ飛んだタンジュは、この事態を信じられないでいた。

「何!?これだけの力を持ったモンスターが、なんで人間如きに加担する?」

だが、グートミューティヒ達の猛攻はこれで終わりではなかった。

「スライムB!」

「フィンブル!」

「エンジェル!それに、ポワルンのハイドロポンプだ!」

グートミューティヒ達の猛攻を受け、タンジュの不快感と怒りは更に深まった。

「この俺が、膝を付かされただとぉ……!?ありえねぇー!」

しかし、タンジュに悔しがる暇は無かった。

「メティオ!」

慌てて隕石を回避したタンジュ。

そんなタンジュを見て、アムは彼が哀れに思えた。

「無様ね」

「何!?」

「あんたは魔王のくだらない選民詐欺に騙され、外の世界を一切視なかった。そのツケがこれよ。あんたの最大の敗因は、人間を見下し過ぎてモンスターが人間に加担する可能性を視野に入れなかった事よ」

だが、タンジュは邪な微笑みを浮かべるだけだった。

「抜かせ……自分で自分の首を絞める馬鹿が……この様な身の丈に合わねぇ愚行を魔王様が許すと思っているのか?」

そう言うと、タンジュは舌打ちしながら去っていった。

 

タンジュが逃げ去った事で漸く冷静になったグートミューティヒは、改めてアムが現在置かれている状況を心配する。

「これで良かったのか?」

対するアムは少しイラっとした。

「くどい!寧ろ、魔王の選民詐欺に騙され続けてマドノの糞野郎に殺されるなんて、今更ごめんよ!」

だが、問題はグートミューティヒがタンジュを取り逃がしてしまった事である。

「今更遅いと思うけど……」

タンジュが逃げ去った方向を見たグートミューティヒは、今回の戦闘をタンジュが魔王にどう報告するかが不安で後ろめたさが募る。

「今頃、タンジュって奴がアムの裏切りを魔王に伝えてるかもしれないぞ?」

マシカルもまた、タンジュの逃亡が何を齎すのかが怖かった。

「それに、グートミューティヒが本物の星空の勇者だと魔王にバレちゃったんじゃない?」

マシカルの指摘にグートミューティヒが困惑する。

「そうか……今まではマドノが星空の勇者と間違われたんだよね」

「……耳が痛いわね……でも、怪我の功名だったとは言え、マドノが星空の勇者を名乗ってたから、グートミューティヒの危険性はそんなに注目しなかったのよね?」

それについて、アムはやんわりと否定した。

「私は今更だと思うけどね」

「何でよ?」

「じゃあ逆に聞くけど、今まで各地域を支配していた魔王軍の幹部を倒したのは誰よ?」

それを聴いてマシカルの目が引きずる。

「……耳が痛いわね……」

現に、マドノ達の行動は経験値稼ぎと言う名目による雑魚狩りばかりで、魔王軍幹部との戦いは慎重を通り越して臆病とも言えた。

それに対し、グートミューティヒはお人好し故に各地で苦しむ人々を無視出来ず、結局、魔王軍幹部と戦うのはいつもグートミューティヒが先だった。

そう言う経緯と実績があるから、アムはマシカルの懸念を『今更』と言ったのだ。

 

だが、グートミューティヒ達の危惧は杞憂に終わった……

グートミューティヒの正体を魔王に報告に往ったタンジュは、新たなる指令に困惑した。

「迎撃?!あの偽物をですか!?」

しかし、魔王はタンジュの報告を信じていなかった。

「偽物?何の事だ?そんな事より、もう直ぐこの城を攻める勇者マドノを返り討ちにしろ」

「あの偽物が?そんな度胸があるとは思えませんが―――」

確かにタンジュの読みは正しかったが、魔王はそう思わなかった。

「だが、実際に此処に向かって進軍中だそうだ。しかも、諜報部隊の見立てではレベルは既に70を超えているそうだ」

レベル70以上……と言えば聞こえは良いが、マドノ達のレベルのほとんどが雑魚狩りで得た経験値が溜まった結果に過ぎず、悪い意味で『質より量』に過ぎなかった。

でも、星空の勇者と目されるマドノのレベルが70を超えたと聞けば、流石の魔王も警戒してしまうと言う訳である。

例え、真実を知ってる部下がどっちを警戒するべきか正しく知っていても……である。

「……解りました。そこまで言うのであれば、その偽物をさっさと殺して御覧に入れます」

偽り(魔王はこの事に気付いていない)の勇者マドノの迎撃命令を渋々引き受けるタンジュであった……

(命拾いしたなぁー、星空の勇者とそれに寝返った裏切り者共ぉー。せいぜい……もう直ぐこの俺に殺される偽物のしぶとさに期待するんだな!)




タンジュLv50(初戦)

HP:6500
EX:4800
耐性:炎、闇
弱点:光
推奨レベル:35

人型モンスターの中でも最上級とされる『デビル』の1体。
非常に優れた異常嗅覚によりマドノ及びグートミューティヒの正体を的確に見抜き、グートミューティヒの方を危険視するが……
ただし、最初の戦いはグートミューティヒの実力を試す様なものなので、ある程度ダメージを与えるとそこで戦闘終了となる。
因みに、勇者マドノの(戦闘終了に必要なダメージを与える為の)予想推奨レベルは69。

攻撃手段

ソードコンボ:
手にした剣による通常攻撃。剣が赤色を帯びていると、炎の追加効果あり。

デビルブラスター:
額の邪眼から高威力のビームを発射する。弾道は真っ直ぐなうえ、攻撃中は動かない。横ステップならば簡単に避けられる。

空中体当たり:
飛行しながら勢いをつけた体当たり攻撃。
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