とある港町で漁獲量がガクンと減衰したと聴き、凶暴なモンスターの仕業と判断したグートミューティヒ。
で、実際に現場となった港町に到着すると、
「やはり今日も帰ってこなかったか……」
(帰ってこなかった?漁獲量が減衰しただけじゃないのか!?)
事態が更に悪化していると感じたグートミューティヒは、事の大きさに戦慄した。
「何が帰って来なかったんですか?」
大人達は、最初の内はグートミューティヒの質問に反応したが、
「なんだガキか……」
グートミューティヒを少女と見間違えた途端、興味を失ってそっぽを向いた。
「ここは子供が来る場所じゃねぇよ。けぇんな」
これ以上有益な情報は得られないと判断したグートミューティヒは、この港の近くで監視を行う事にした。
グートミューティヒは運が良かった。
監視初日から動きがあった。
「最近、我々に献上する魚介類の量が少ないぞ!一体何が遭った?」
漁獲量の減衰に対してとある貴族が文句を垂れたのだ。
が、そんな貴族の尋問ですら真相を吐かせるには至らなかった。
「それが解らないのです」
「ふざけているのか!?解らないとはどう言う意味だ?」
「最近、漁船がこの港に帰って来ないんです」
貴族に問い詰められている大人達の言葉に、グートミューティヒはある確信を得た。
(それってまさか……その漁船が襲われてる)
貴族もまたモンスター犯行を疑った。
「まさか、魔王軍の仕業だと言うのか?」
だが、大人達は貴族(とグートミューティヒ)の予想を否定した。
「それがそうでもないんです」
「は?どう言う事だ?」
(え?違うの?)
が、貴族(とグートミューティヒ)の予想を否定する理由がとてつもなくしょうもない事だった。
「漁船が帰って来ないのは朝の部と昼の部だけでして……」
「魔王軍の関与を否定した理由がそれだけだと?犯人が昼行性の可能性があるとは疑わなかったのか?」
「まぁ……夜の部は普通に帰って来てますけど……」
「反応が悪いのう……とにかく、原因をさっさと究明しろ。人数が足りぬと言うのであれば、その旨をさっさと我々に訴えでよ」
貴族との会話を立ち聞きしたグートミューティヒは、次の日に行動を開始する事を決意する。
次の日の昼。
試しに複数の漁船を出港させると言うので、グートミューティヒがその漁船に紛れ込んだ。
(さて……鬼が出るか蛇が出るか何が出る事やら……)
そして、漁船群が小さな岩山に近付いた時に早速異変が起こった……
「なんだこの歌は?」
「どこから聞こえて来るんだ?」
その時点でグートミューティヒは漁船が帰って来ない理由を知ったが、肝心の漁船が謎の歌の方に向かって進んで行ってしまう。
(なるほど!その歌を聞くと、誰でもフラフラーッと、誘い寄せられちゃうって訳か?)
グートミューティヒが今回の事件について推測している間も、漁船群がどんどん小さな岩山に近付いて逝く。
「ってやば!?このままじゃ岩山に激突する!」
グートミューティヒは隠密行動を諦めて船員を叩き起こそうとするが、
「歌に誘われたら駄目だ!殺されるぞ!」
「それにしても……なんと美しい歌声だろう……」
「皆さん!目を覚まして!これは罠だ!」
「もうどうでも良いわ」
「あんな素晴らしい歌を聞きながら死ぬのなら」
「それも良いんじゃないの」
既に船員全員が謎の歌に完全に洗脳されていた。
「これは……ただの大声だけじゃ駄目だ!他に何か手は……」
だが、グートミューティヒがもたもたしている間にアンコウとノコギリザメが合体したかの様な巨大魚が水面に現れた。
「やはり人間と敵対しているモンスターの仕業だったか!?と言うか、あの貴族が指摘した時点でこの展開は予想出来た……」
グートミューティヒは港町の大人達と文句を垂れた貴族とのやり取りを思い出し、改めてあの港町の危機感の少なさを実感した。
「……無理だろうな。あの様子じゃ証人や目撃者も帰って来ないっぽいし……」
取り敢えずモンスターボールからムウマとピカチュウを取り出した。
「ムウマ!なきごえだ!」
ムウマが大声で泣き出すと、さっきまで謎の歌に操られていた船員達が一斉に目を覚まし、岩山から何かが水面に落ちた音がした。
「ハッ!?」
「俺達はいったい何をしていたんだ!?」
そして、ムウマとピカチュウの姿を確認した途端、船員達は一目散に漁船から逃げ出した。
「うわぁー!?モンスターだぁー!」
「まさか……あの歌もこいつらの仕業か?」
「船を捨てろぉー!歌が届かない所まで逃げるんだぁー!」
ムウマのなきごえのお陰で正気に戻った癖に、恩を仇で返す様に漁船を捨てて逃げ出す船員達を見て呆れるグートミューティヒ。
「……今回だけは……ポケモンとモンスターの区別がつかない設定に感謝だな……」
それに、グートミューティヒにとって問題はこの後だ。
水中から紫色の人魚が次々と現れ、先程の巨大魚もグートミューティヒしか残っていない漁船を恨めしそうに睨んだ。
巨大魚がジャンプしてグートミューティヒが乗る漁船を飛び越えた。
「うお!?あぶねー!」
そう、巨大魚はわざとグートミューティヒに当たる高さで漁船を飛び越えたのだ。
グートミューティヒが慌ててしゃがんだのでどうにか躱したが、紫色の人魚達が先程の歌を再び奏で始めた。
「クソ!あの歌を何とかしないと、冷静さが奪われる!?」
すると、ムウマが何かに気付いてグートミューティヒを突き飛ばし、グートミューティヒの背中すれすれを大量の水流が通過した。
「クソ!油断出来ないのオンパレードだな!サンキュームウマ!」
その間、ピカチュウが巨大魚に電撃を浴びせようと試みるが、思った程効果が無い。
「みずなのに……でんきが効かない!?」
グートミューティヒにとっては想定外の事だった。
みずタイプのポケモンはでんきタイプのポケモンに弱いと思い込んでいたからだ。
だが、グートミューティヒは冷静に戦い方を変えた。
「予想外の前では常識は無力って訳ですか……頭が痛いなぁ……」
次はフシギダネを出すが、つるのムチもあまり効果が無さそうである。
「くさタイプも駄目か!?『理屈じゃないのよ男は!』とはよく言ったモノだが、ここまで理屈が効かないと……やっぱ作戦が立て辛い!」
その間も、巨大魚は漁船に何度も体当たりをして甲板を何度も揺らした。
「うわぁー!?そこまでして冷静さを失いたいかぁー!?」
だが……それが巨大魚の首を絞める結果となった。
モンスターボールからバニプッチが飛び出してしまったからだ。
「バニプッチ!?みずタイプにこおりタイプ……」
でも、でんきもくさも効かないのであれば、常識や理屈も効かないと判断するのが妥当だろうと結論付けたグートミューティヒは、改めてバニプッチにこごえるかぜを放つ様命じた。
すると……こうかはばつぐんだ!
「もがき苦しんでいる!?アイツ……寒さに弱かったのかぁー」
バニプッチのこごえるかぜに苦しむ巨大魚は、誘惑の歌を歌い続ける人魚達にバニプッチを襲わせようとするが、当の人魚達は普通にでんきに弱かった。
「あ、人魚達は普通にでんきに弱かったのね?」
人魚の全滅を確認した巨大魚は慌てて逃走を謀る。
だが!
「逃がすか!お前達に騙された漁師達の鎮魂の為にも!エンジェル!」
グートミューティヒが放った光弾が巨大魚に命中したのを確認したバニプッチがダメ押しのこごえるかぜを放った。
「オエーーーーー!」
断末魔の叫びを上げながら水中に沈み、しばらくして水面に腹を晒しながら息をひきとる巨大魚であった。
先日漁獲量減衰に対して文句を言った貴族が、例の巨大魚から逃げ切った漁師の証言を基にモンスターの索敵を開始する。
すると、
「あれは!?」
「何が遭った!?」
「ダークマーメイドです!既に死んでおりますが」
「死んで?」
そう。
証言の場所に有ったのは、グートミューティヒが撃破した複数の紫色の人魚達と巨大魚の死体だけだった。
だが、
「そんな馬鹿な!?俺が見たモンスターはそこまで大きくねぇ!」
目撃した漁師の証言と現場の惨状との食い違いに困惑する討伐隊。
そこで、腹を晒しながら屍を晒す巨大魚をその場で解剖してみると、胃から人骨や衣服などが大量に発見された。
「やはり、漁船行方不明事件はこいつらが犯人で間違いないです」
「そんな!?」
漁師達が目撃と現実の乖離に混乱している中、貴族はある推測を立てた。
「まさか……お前達を叩き起こして逃がしてやった者こそが、俗に言う『星空の勇者』なのでは?」
「そんな筈は……だって、そいつはモンスターを―――」
「モンスターなら、ここにいるではないか?既に全滅しているがな」
「それに、ダークマーメイドは、美しい歌声で船乗りを魅了して岩礁へ引き寄せ、船を難破させてしまうと聴きます。やはり彼らが犯人ではないでしょうか」
その後……
貴族達の推測が正しい事を証明するかの様の漁船が行方不明になる事態はぱったりと消え、それに比例して漁獲量もみるみる回復していったのであった。
漁師達が現場で見たモンスターの死体をまだ見ていないと言う不安を残しつつ……
「でもぉ……」
「大丈夫。彼らはポケモンだから」
一方、討伐隊を避けて港町に戻っていたグートミューティヒは、今回の巨大魚討伐で大活躍したポケモンの治療に専念していた。
特に、巨大魚が吐く水流から身を挺して守ってくれたムウマは念入りに治療する。
「後は、漁船が帰って来ない事態が解消されて、この海がもう安全だと判って貰えるのを待つだけだ」
だが、グートミューティヒは小さなミスを犯していた。
巨大魚に漁師を提供して餌付けしていた紫色の人魚が、まだ1匹だけ生きていたのだ。
「この恨み……晴らさで置くべきかぁ……」
こうして、たった1匹の紫色の人魚の無謀な復讐旅が始まったのであった。
ツノクジラLv24
HP:2500
EX:1500
耐性:雷、炎、草
弱点:氷
推奨レベル:16
ダークマーメイドの歌に誘われた船員を食べていた巨大魚。アンコウとノコギリザメが合体したかの様な姿をしている。
魚系の魔物でありながら、雷属性と草属性の攻撃に完全耐性を持っており、弱点は氷属性と言うポケモントレーナー泣かせな体質の持ち主である。ただし、協力者であるダークマーメイドは普通に雷や草に弱い。
イメージモデルはツノクジラ【のび太の魔界大冒険】。
因みに、勇者マドノの予想推奨レベルは20。
攻撃手段
ジャンプ体当たり:
わざと対象者に当たる様に足場を飛び越える。
水流:
口から大量の水流を噴射する。
船揺らし:
船に体当たりする事で甲板を意図的に揺らす。